目次
- ユニバーサルデザインとは
- バリアフリーとは
- ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い
- ユニバーサルデザインとバリアフリーの具体例
- ユニバーサルデザインが注目されている背景
- 性別を問わず活躍できる職場環境が求められている
ユニバーサルデザインが注目されている背景

ここからは、近年オフィスにおいてユニバーサルデザインが注目されている背景について解説します。主な理由として挙げられるのは「雇用の多様性を実現する必要があること」「性別を問わず活躍できる職場環境が求められていること」の2点です。
雇用の多様性を実現する必要がある
1つ目の理由は、障がいがある人の雇用促進が求められていることです。身体に障がいのある方が、健常者と同等の教育を受けたり、就業したりする機会が十分に提供されていないケースは依然として多く見られます。
一方で、障がい者の法定雇用率は2.5%と定められています。従業員を40人以上雇用している場合、障がい者を一人以上雇用することは事業者としての義務です。企業は雇用の多様性を実現するための取り組みを推進し、すべての人が快適に働ける環境を提供していく必要性が高まっています。
性別を問わず活躍できる職場環境が求められている
性別を問わず活躍できる職場環境が求められていることも大きな要因の1つです。総務省統計局「労働力調査」によると、2022年の時点で労働力総人口に占める女性の割合は54.2%(男性71.4%) と、女性の就業者数が年々増加しています。労働基準法の改定や男女雇用機会均等法の施行などに伴い、男女間の仕事内容や働き方に差がなくなりつつあるのが実情です。
こうした背景から、男女がそれぞれの強みを発揮し、活躍できる職場づくりが求められています。性別を問わず活躍できるオフィス環境の整備は、あらゆる企業にとって急務といえるでしょう。
ハード整備とソフト整備

ユニバーサルデザインを取り入れたオフィスを実現するにあたって、考慮しておきたいポイントとして「ハード整備」と「ソフト整備」の2つが挙げられます。
| 種別 | 概要 | |
|---|---|---|
| ハード整備 | ユニバーサルデザイン | すべての人にとって利用しやすいデザイン |
| バリアフリー | 高齢者や障がい者にとって利用しやすいデザイン | |
| ソフト整備 | ユニバーサルデザイン バリアフリー |
やさしさ・思いやり |
ハード整備とは
ハード整備とは、都市基盤や建物・乗り物の構造といった、物理的な面に関する整備のことを指します。前掲の例のように、スロープを設けたり車いすごと乗り込めるエレベーターを新設したりするといった、具体物によるユニバーサルデザイン/バリアフリー化の試みのことです。
ソフト整備とは
ソフト整備とは、心の啓蒙・教育のことを指します。ハード整備によって建物などの構造にユニバーサルデザインを取り入れたとしても、実際に建物を利用する人々がその意図や目的を十分に理解していなければ、効果が薄れてしまいかねません。
オフィスデザインに関しても同様のことがいえます。企業の方針としてユニバーサルデザインやバリアフリー化を掲げ、設備を整えるだけでは、従業員にその意図や目的が伝わらないおそれがあります。多様性を尊重し、必要に応じて助け合う風土が醸成されていくことによって、誰もが働きやすく能力を発揮できる職場環境が実現可能となるのです。
オフィスのユニバーサルデザイン/バリアフリー化の例

オフィスのユニバーサルデザイン/バリアフリー化を推進するにあたって、参考にしておきたい具体例を紹介します。
手すり・スロープの設置
オフィスの通路や階段に手すり・スロープを設置することで、歩行がやや困難な人や視覚障がい者も安全に通行しやすい環境を整えられます。手すりの設置に関しては、既存の建物に大がかりな変更を加えることなく施工できるケースも少なくありません。エレベーターが設置されていない建物や、業務の特性上階段を利用せざるを得ないようなケースでは、手すりやスロープの設置を検討してみるとよいでしょう。
自動ドアの設置
オフィスの出入り口などに自動ドアを設置することも、ユニバーサルデザイン/バリアフリー化の実践方法として有効です。手動でドアを開けにくい状況にある従業員にとって、動線がよりスムーズになる効果が期待できます。
また、自動ドアはドアノブにふれる必要がないことから、衛生面が向上するといったメリットもあります。さらに、セキュリティ対策や入退室管理などに活用できるため、すべての従業員にとって快適なオフィスの実現に向けた施策としても効果的です。
センサー式照明の設置
人の通行や室内の照度を感知して自動的に点灯/消灯を切り替えられるセンサー式の照明を設置する方法もおすすめです。照明のスイッチを探す必要がなく、スイッチを操作しにくい状況にある方にとって利便性が向上する可能性があります。
また、センサー式照明を導入することで電気代を削減する効果も期待できます。エコロジーの観点からも、取り入れておきたいオフィスの工夫といえるでしょう。
ピクトグラム・多言語対応
オフィス内の各種掲示にピクトグラムを取り入れることで、使用言語を問わず意図が正確に伝わりやすくなります。ピクトグラムには国際規格が定められているため、これに則ったサイズ・デザインのものを導入するとよいでしょう。
さらに、オフィス内の表示を多言語化する対策も有効です。使用言語によって得られる情報量に差が生じるのを防ぐ効果が期待できます。オフィスの多言語対応は、たとえば災害発生時に避難経路や非常出口を全従業員が正しく把握し、安全に避難する意味においても重要な取り組みです。
バリアフリートイレの設置
通常のトイレに加え、バリアフリートイレを設置するのもおすすめの施策です。車いす利用者や介助犬を必要とする従業員も利用しやすくなるほか、従業員が着替えなどに利用したい場合にも利便性が向上します。
バリアフリートイレを増設する際には、利用方法や対象者についても明確にルールを決めておくことが大切です。たとえば、身体に障がいがある従業員しか利用してはいけないと思われていたり、反対に必要な従業員が利用できない状況に陥ったりする事態を回避する必要があります。
オフィスのユニバーサルデザイン/バリアフリー化を進めるポイント

オフィスのユニバーサルデザイン/バリアフリー化を推進する際に、意識しておきたいポイントをまとめました。
オフィスのゾーニングを十分に検討する
オフィスづくりにおいて必ず考慮しておきたいのがゾーニングです。仕事内容や具体的な利用方法、求められる機能などに応じて、各ゾーンの位置関係や動線を十分に検討しておく必要があります。
とくにユニバーサルデザインの観点においては、すべての従業員にとって使いやすく快適な環境かどうかを慎重に判断することが重要です。新たに設備を追加するようなケースでは、従来のオフィスの機能性や利便性が損なわれることがないか、多面的に検証しましょう。
設備や什器のサイズや設置場所を計画的に決める
オフィスレイアウトを検討する際には、設置する設備や什器もあわせて選定を進めましょう。たとえば、車いすを利用している従業員が通行しやすいよう、オフィスの通路を広めに確保したとします。図面上では問題がないように見えたとしても、実際に什器を搬入したところ、想定以上に通路が狭くなってしまうといった可能性も否定できません。設備・什器のサイズや設置場所も考慮しつつ、オフィスレイアウトを決めていくことが大切です。
助成金・補助金の活用を検討する
ユニバーサルデザインやバリアフリーの推進に向けたオフィスづくりは、国や自治体の助成金・補助金の対象となっているケースがあります。申請可能な助成金・補助金があれば、改装や設備の導入にかかった費用を助成・補助してもらえる可能性があるため、必ずチェックしておきましょう。
ただし、助成金・補助金は後払いとなるのが一般的です。施工費用や設備の購入費用などを一時的に負担する必要がある点に注意してください。また、助成金・補助金によって申請方法や申請できる条件が異なります。自社のケースが該当するかどうか、事前によく調査を行うとともに、不明点については各窓口へ問い合わせておくのが得策です。
すべての人が快適に働けるオフィスを目指そう

オフィスのユニバーサルデザイン/バリアフリー化は、多様な人材が能力を発揮できる職場づくりに欠かせないポイントといえます。改装や設備の導入にはコストがかかるものの、長い目で見ると優秀な人材の確保や従業員満足度の向上に寄与する効果は決して小さなものではないでしょう。すべての人が快適に働けるオフィスづくりの一環として、ユニバーサルデザイン/バリアフリー化を検討してみてはいかがでしょうか。
コニカミノルタジャパンでは、働く環境・働き方・コストの最適化をトータルで実現する空間コンサルティングを実施しています。ユニバーサルデザイン/バリアフリー化を実現するためのオフィスづくりはもちろんのこと、施工後のオフィスが事前に掲げたコンセプトと合致しているか、課題解決につながっているかを検証する効果測定も含めて対応可能です。すべての人が快適に働けるオフィス環境を実現したい事業者様は、ぜひコニカミノルタジャパンにご相談ください。
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