「日経ニューオフィス賞」を受賞したコニカミノルタがデザインしたオフィス事例をまとめた一冊です。最新のトレンドが知りたい!新しいオフィスのアイデアが欲しい場合などにご活用ください。
新型コロナウイルス感染症への対応や、事業継続への取り組みなどを通して、多様な働き方を模索する動きが活発化するなか、オフィスについてあらためて考え直す企業も増えています。大都市圏では、多くの業務をテレワークへ移行する動きが浸透しています。しかし、地方へ目を向けて企業の動きを見ると、オフィスワークの必要性はそれほど低下していません。働き方の大きな変革期を迎え、オフィスにはより業務に貢献する場所としての役割が期待されます。
本コラムでは、オフィスワークにふさわしいオフィスレイアウトについて解説します。
目次
オフィスワークにふさわしいオフィスレイアウトとは
コロナ禍を経て大都市圏では、テレワークとオフィスワークのハイブリットワークという働き方が注目されています。オフィス設置の意義を明確にするためには、オフィスだからこそできることやオフィスの方がはかどる、などオフィス環境の価値を高める必要があります。
一方、地方の企業では大都市と比較するとテレワーク導入率は低い状態にありますが、働き方が多様化する市場動向を受け、採用面や離職率低下など経営視点の課題を含めて、オフィス環境を見直す企業も増えています。
以上の社会的背景をふまえて、これからのオフィスワークには、どのようなオフィスレイアウトが求められているのかを紹介していきます。
オフィス重視の傾向は健在
総務省の調査によると、2020年11月地域別のテレワーク実施率は関東が36.3%、次いで近畿20.8%、東海・北陸・甲信越15.9%の順となっています。
感染症対策としてテレワークが推奨されるなか、東京圏、名古屋圏、大阪圏という三大都市圏が含まれる地域ではテレワーク実施率が高いものの、地域ごとに格差が生じている傾向にあります。
また都市圏であっても、テレワークを積極的に実施しているのは大企業が中心で、中小企業のテレワークの割合は高いとはいえません。
一時はオフィス不要論が聞かれることもありましたが、実際には働き方が変わるなかでもオフィスでしかできないことやオフィスのほうがはかどるといった業務もあることから、オフィスが必要と考える人や企業が半数以上を占めており、オフィスの必要性は失われていないことがわかります。
引用:「令和3年版情報通信白書」総務省
引用:2021 JOIFA アンケート調査報告書 ニューノーマル時代の働き方とオフィス
良いオフィスの条件とは
では、これからの働き方に対応した良いオフィスとはどのような条件をそなえておくべきなのでしょうか。
業務効率を考慮した作業環境
オフィスワーカーのなかには、オフィス環境が労働生産性、働き方に与える影響は大きいと考える人が多く見られます。例えば、個人業務の効率を上げる集中スペースやプロジェクトの効率化や効果的な推進を目指した機能性の高いスペースなどもそのひとつです。
職種や業務内容、タスクに応じて最適なオフィス環境を用意することが重要視されており、働きやすさを大きく左右する要因となっていると考えられます。
集中スペースの設置に関心をお持ちの方は設置するポイントや設置例などを紹介した「集中スペースが業務効率化を促進!重要性と設置のポイントを解説」のコラムをご覧ください。
なお、プロジェクトの効率化や効果的な推進を図る工夫のひとつに、クリエイティブなアイデアを創出するためのオフィスデザインやレイアウトの構築があります。また、活発な議論を促進するため、ホワイトボードなどの機能を充実させるのもポイントです。
プロジェクトメンバーのクリエイティブなアイデア創出を手助けする取り組みについては、「アイデア創出を可能とするには?考え方や手順など役立つ情報をまとめて解説」で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
スムーズな動線
利用頻度の高いエリアや機器まで到達するのに多くの障害がある、通路が複雑で面倒を感じるというのでは、業務上のストレスを生じます。また通路が混雑して他人との距離が近いのは、昨今の状況を考えても好ましくありません。
スムーズな動線の確保は、業務的に必要となる作業の円滑化を図り、必要に応じたコミュニケーションをとるうえでも重要なポイントです。
円滑なコミュニケーションの場を提供
オフィスが事業運営の現場であることを踏まえた場合、組織としての目的が共有できることは、良いオフィスの大切な条件です。レイアウトを工夫することによって、オフィスが従業員同士の一体感や信頼関係の醸成の場となり、人と人との交流が活発になることが求められます。
精神的な余裕をもたらす工夫
業務や作業のしやすさはもちろんですが、機能面が充実しているだけでは不十分です。自然と歩き回りたくなるような仕掛けがなされ、窮屈さを感じさせない雰囲気が演出されているとよいでしょう。また、人と人の距離が近すぎるとつねに監視されている気がしたり、圧迫感を受けやすくなったります。このような精神的なストレスは心や思考に不安定さをもたらすことにもなります。そうした観点から、ある程度の空間が用意されており、精神的に安全と安心を感じられる環境であることは重要です。その場所で働くこと自体が楽しく感じられるようなオフィス空間が理想的です。
心理的安全性の確保
上記にも少し関係してきますが、業務における心理的安全性の確保はパフォーマンスに大きな影響を与えます。心理的安全性が確保されている環境とは、各社員が個性を発揮し、個人の意見やアイデアを自由に発言できる状態が確保される環境を指します。
チーム内の雰囲気づくりに加え、気軽に立ち話ができるスペースやメンバーが集まりやすいミーティングスペースなどの設置が、心理的安全性の向上に役立ちます。
安全性の確保・快適な空間
長時間を過ごすオフィスは、そこで働く人にとって安全・安心・快適な場所でなければなりません。オフィスワーカーが共感するオフィス像は、各企業によっても異なります。業種や業務内容、働く人の層にあわせたオフィスレイアウトの検討が求められます。
レイアウトによって解決できるオフィスワークの課題
オフィスレイアウトを工夫することで、以下のような業務上の課題を解決できます。
コミュニケーションの活性化
多様な働き方が浸透し、従業員同士のコミュニケーションの希薄化を懸念する声も多く聞かれます。フリースペースの充実・オフィス内カフェの設置など、会話が自然発生するような仕掛けを、オフィスレイアウトで実現できます。人が自然と集まるような工夫(マグネットスペースなど)や偶発的な出会いを創出する動線の工夫なども効果的です。
また最近では、BGMや香りなどを取り入れ、コミュニケーションを促進する企業もみられます。コニカミノルタが設けているコラボレーションエリアやコミュニケーションエリアでは、小鳥の声や香り、植栽を取り入れ、コミュニケーションやそこから生まれる発想力の向上に取り組んでいます。こうした環境づくりの効果は、利用2か月後の従業員アンケートで66%の従業員がこれまでの環境と比べて『発想力が豊かになった』との回答が示しています。
コミュニケーションを活性化するオフィスづくりのヒントに、コニカミノルタの「オフィス見学ツアー」をぜひご活用ください。
従業員同士の距離の確保
コロナ禍を通じてソーシャルディスタンスが浸透するなか、業務時における対人距離も重視されるようになりました。限られたワークスペースでも適度な距離を保てるようにするためには、既存の考え方にとらわれないデスク配置がポイントとなります。
また集中力を要する業務には、プライバシーの確保が必要となります。周囲の視線や声を気にせず仕事に取り組めるよう、業務への集中の妨げとならないようなデスク配置が必要です。
個室や集中ブースを設置するといった方法のほか、従来の対向型だけではなく、互い違いにずらしたポジションをとる方法や、固定席を決めないフリーアドレス制などさまざまな方法があります。デスク配置を工夫することで、適切な距離の確保が可能です。
デスク配置やオフィスレイアウトの基本については、以下の記事も併せてご覧ください。
長時間のデスクワークによる健康への影響
近年、長時間座り続けることによる健康リスクが注目されています。従業員の健康への配慮は、企業としての義務でもあります。
デスクワークが主体となる業務の場合には、適度に立ち上がる機会を与えるための、フリースペースやリフレッシュスペース、カフェスペースなどを設置したレイアウト設計が有効策となります。気分転換やストレス解消が可能となる空間設定が求められます。
軽くストレッチができるスペースを設けて、休憩時間に軽い運動をしたり、グループでストレッチをしたりするのも工夫のひとつです。適度な休憩は、心の健康面にも大きく左右します。心のケアも企業責任と言われる今、オフィスレイアウトにもそうした考えを取り入れる必要があります。
従業員の心身の健康に配慮したオフィスづくりの参考として、以下の記事も併せてご覧ください。
利便性の改善
使い勝手の悪いオフィスは従業員の不満を生み出します。業務効率ばかりに注目しすぎず、収納スペースの見直しや、ロッカールームを含めた福利厚生設備の設置を検討すれば、利便性を上げることが可能です。
またコピー機やプリンター、FAXなど出力するための場所や利用する機器が一か所に集まっているマグネットスペースを設置することで、作業上の利便性向上を図るとともに、自然な会話を生み出す場所としての機能も持たせられます。
作業効率の改善
動線を工夫することで、作業効率が改善することもあります。作業効率の悪さを感じる場合には、実際の業務に沿った動線の見直しが必要です。ひとつの作業を終えるために何度も同じ場所を往復する、ほかの人が作業している狭い通路をすり抜ける必要があるなどの、不都合な個所を修正していくことで、物理的、心理的な障害を解消できます。
また、設けてある作業スペースの機能を充実させることも作業効率改善に結びつきます。例えば、みんなでアイデア出しができるホワイトボードや資料共有ができる大型モニターなど、スペースの目的に合わせた機能を備えることで効率的に作業が行えるようになります。
業務効率向上に結びつくオフィスレイアウトについては、以下の記事も併せてご覧ください。
セキュリティー対策への懸念
業務内容が外部の来訪者の目に触れる、書類の保管場所が入口に近いといったセキュリティーリスクは、早急にレイアウト変更によって対処する必要があります。
来客スペースの位置変更、従業員の情報アクセスレベルを意識したゾーニングの再検討が求められます。
セキュリティーに配慮したレイアウトについては、以下の記事も併せてご覧ください。
安全性の確保
複数の人間が集合する場所で、もっとも配慮しなければならないのが安全性の確保です。万が一の場合に、各人が安全に避難できるための、十分な通路幅の確保が必要です。また、地震の際の転倒・落下防止策を講じ、法令遵守と現場の状況確認をもとに、安全なオフィスレイアウトを設計します。
安全性の高いオフィス設計については、以下の記事も併せてご覧ください。
多様性のあるワークスタイルへの対応
テレワークやリモートワークとオフィスワークの併用といった、多様性のあるワークスタイルが浸透しています。しかし、テレワークやリモートワークをしている社員であっても、定期的なプロジェクトの会議には出社をすることも少なくありません。そうした場合、オフィスには機能性の高いミーティングルームや少人数で集まれるスペースを設けるほか、座席を固定しないフリーアドレスの導入や業務に応じてワークスペースを自由に選択できるようにするABWなどを導入することもひとつの方法です。こうした、一人ひとりが業務内容や働き方に合わせて最適な働く場所を選べることができるオフィス形状であれば、柔軟な働き方への対応が容易になります。
ABWについて詳しくは、「企業の生産性を高める新しい働き方 − ABWの基本的な考え方とメリットとは」をご覧ください。
快適なオフィス環境をつくる際のポイント
先述した「良いオフィスの条件」を踏まえて、快適に働けるオフィスづくりのポイントを紹介します。
現状の課題を把握し解決できるレイアウト
レイアウト変更を検討する際には、現状の課題をリスト化し、解決に向けた設計を考えます。見た目だけ変わっても、課題が残り、オフィスとしての使い勝手が変わらないのでは意味がありません。
課題の把握方法としてはトップインタビューやアンケート、ワークショップなどの例があげられます。
従業員の声を反映すべく、定期的にアンケートを実施するのもよいでしょう。コニカミノルタでも、オフィスの移転やリニューアルの際は従業員アンケートやワークショップにより、理想の働き方や働く環境についてヒアリングやアイデア出しを行いました。こうして作られたオフィス見学ツアーも毎日開催しておりますので、ぜひ見学にいらしてください。リアルな裏話などもお聞きいただけます!
執務スペースは出社率も考慮して検討することが必要
オフィス本来の目的である執務スペースについては、従業員のパフォーマンスの最大化を念頭に、じっくりと検討することが大切です。コニカミノルタでは、30~40%の出社率を想定して、オフィスをリニューアル。これからのオフィスを考えると、カウンター席やファミレス席の設置など、自由度が高く柔軟性があるレイアウトのほうが、状況の変化にも対応しやすくなります。
オフィスレイアウトでは、島型固定席、フリーアドレス、ABW、もしくはエリアやフロアによって分けるなど、どのタイプや配置が自社にもっともマッチするのかという見極めが重要です。さまざまなオフィス事例を参考にしながら、検討を重ねましょう。
作業スペース・通路の十分な確保
業務効率や作業の安全性、精神的な安心・安定の観点から、作業スペースや通路、人と人との距離は必要十分な広さを確保することが重要です。オフィスに対しては、機能を過不足なく絞りこむという観点が求められます。限られたオフィス面積に機能を詰め込みすぎて、せっかくのフリースペースが混み合うようでは、逆にストレスの原因となります。収納庫や各種機器といった大きさが変えられないものについては、先に設置場所を確定しておくとよいでしょう。
応接スペース
応接スペースについては、オフィスサイズと照らし合わせて、設置の必要性も含めて検討します。場合によっては、オフィス外の公共施設を活用するという方法もあります。
設置場所としては入口近くで、業務内容が見えないこと、カフェサーバーが近いことなどを考慮して設計します。
従業員の層にも配慮
オフィスレイアウトでは、従業員の層を考慮することも大切です。例えば、女性が多いオフィスであればサニタリースペースを充実させる、従業員の年代層が幅広い場合には交流しやすいスペースづくりを行うといったように、オフィスを使う人を中心に考えてレイアウト設計を実施します。
オフィスレイアウトでオフィスワークの質が変わる
働き方が多様化するなかでも、オフィスでなければ果たせない役割があります。従来のオフィスレイアウトのままで、多様な働き方を許容しようとしても難しいでしょう。働き方や課題解決の視点をもってオフィスレイアウトを整えるだけで、オフィスワークの質を変えることができます。
自社のオフィスレイアウトを考えるうえでは、どのような機能をもっとも重視するのか、従業員が求めている要素は何かをしっかりと洗い出していくことが重要なのです。
企業運営の課題のいくつかは、オフィスレイアウトで改善できることを理解し、経営視点と現場の視点を融合させながら、オフィスワークの質を高めることを目指しましょう。
社内で検討するだけでは、さまざまな意見が取りまとめられないケースも考えられます。そうした際には、専門家の視点や意見を活用するのが最適解を導き出す近道にもなります。
コニカミノルタでは、快適なオフィスワーク環境の実現に向けたサポートを提供しています。オフィスレイアウトでお悩みの際には、ぜひご活用ください。
「日経ニューオフィス賞」を受賞したコニカミノルタがデザインしたオフィス事例をまとめた一冊です。最新のトレンドが知りたい!新しいオフィスのアイデアが欲しい場合などにご活用ください。