「日経ニューオフィス賞」を受賞したコニカミノルタがデザインしたオフィス事例をまとめた一冊です。最新のトレンドが知りたい!新しいオフィスのアイデアが欲しい場合などにご活用ください。
応接室や受付などに観葉植物の鉢を置く企業は、昔から数多く見られました。近年はオフィス環境の向上を目的に、植物を積極的に活用する「グリーンオフィス」が広がりつつあります。
この記事では、グリーンオフィスに期待できる効果や企業における実践事例、導入時のポイントをわかりやすくまとめています。自然を感じられる環境を実現する「バイオフィリックデザイン」の考え方とあわせて見ていきましょう。
目次
グリーンオフィスとは

はじめに、グリーンオフィスの基本的な考え方と注目されている理由について解説します。
オフィス内に疑似的な自然環境をつくり出すこと
グリーンオフィスとは、オフィス内に植物を計画的に配置することにより、疑似的な自然環境をつくり出すことを指します。オフィス内に観葉植物の鉢植えを置くケースは昔から見られますが、グリーンオフィスはここから大きく進化した「オフィスの緑化」と捉えてください。
グリーンオフィスでは、壁や天井、床、頭上の空間などあらゆるスペースを利用して植物を配置します。配置の方法も、置く・つるす・埋め込むといったようにさまざまです。多彩な方法を駆使し、緑豊かな室内環境を実現します。
グリーンオフィスが注目されている背景として、オフィス環境の改善が重視されるようになったことが挙げられます。オフィスの「緑視率(視界に占める緑の割合)」を高め、快適なオフィス環境を実現するための取り組みとして、多くの企業で導入されつつあります。
フェイクグリーンの活用も有効
精巧なフェイクグリーン(人工観葉植物)を活用したグリーンオフィスづくりもおすすめです。フェイクグリーンであれば、水気を嫌う場所や、壁面など手入れの難しいスペースにも取り入れられるため、設置の制限がありません。
また、組み合わせによっては大胆なデザインも実現できます。レイアウトの自由度が高いのもフェイクグリーンならではの特徴です。本物の植物より安価な場合が多く、手入れにかかる手間も少ないことから、コストとの折り合いがつけやすいのも魅力の1つです。
バイオフィリックデザインとは

オフィスの緑化を推進する際に押さえておきたい概念の1つが「バイオフィリックデザイン」です。バイオフィリックデザインの基本的な考え方や注目されている背景、グリーンオフィスとの違いについて解説します。
自然を感じられる環境を実現するデザイン手法
バイオフィリックデザインとは、私たちが本能的に抱いている「自然と結び付きたい」という欲求に応えるデザイン手法のことです。植物をはじめ自然音・自然光などの要素をオフィスデザインに取り入れることにより、ストレスの軽減や快適性の向上につながる効果が期待できます。
バイオフィリックデザインが注目されている背景
バイオフィリックデザインが注目されている背景には、オフィスが担う役割の変化があります。従来、オフィスは人が集まって働くための場所でした。近年ではテレワークをはじめ働き方の多様化が進んだことにより、コミュニケーションを促し生産性を高めるための場所へと、オフィスに求められる機能が大きく変化しました。
私たちの心理やストレスの感じ方は、環境と深く結び付いています。無機質で味気ないオフィスではなく、自然を感じられる環境に身を置くことは、ストレス低減や創造性の発揮にも大きな影響を与える要因といえるでしょう。こうした背景から、オフィスの緑化をはじめとする自然とのつながりが重視されるようになりました。
グリーンオフィスとの違い
グリーンオフィスとバイオフィリックデザインには、共通点と相違点の両面があります。オフィスに自然を取り入れるという発想そのものは共通している一方で、大きく異なっているのはその手法と目的です。
観葉植物を設定したり人工芝を敷いたりするグリーンオフィスでは、オフィスの外観を緑化することに主眼が置かれています。これに対して、バイオフィリックデザインでは植物の配置にとどまらず、自然音・自然光を取り入れるなどオフィスの機能性や快適性を総合的な視点で捉えてデザインされる点が大きな違いです。
グリーンオフィスに期待できる4つの効果

グリーンオフィスを実現することで、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。主な4つの効果を紹介します。
効果1:仕事への意欲や活気が向上する
オフィスに緑を配置することで、仕事への意欲や活気が向上することがわかっています。千葉大学の研究によれば、植物が設置されたオフィスでは被験者(オフィスワーカー)の環境満足度が満たされ、仕事への意欲や活気が向上することが判明しました。また、疲労やストレスが軽減されることも確認されています。
生花がもたらす効果を調べた別の実験では、花のある部屋では「混乱」や「疲労」、「緊張・不安」、「抑うつ」、「怒り・敵意」が低下するという結果が得られています。同時に、交感神経の活動が抑制されることでストレスが緩和され、副交感神経の活発化でリラックスした気分になることも明らかになっています。具体的には、リラックス時に高まる副交感神経活動が29%上昇、逆にストレス時に高まる交感神経活動が25%低下。数値上でも、生花の視覚的効果が実証されているのです。
効果2:空気環境の快適性向上
植物を配置することで、オフィス内の湿度が適度に保たれたり、エアコンの乾燥からのどや肌を守ったりする効果が期待できます。植物は体内に蓄えた水分を空気中に放つ蒸散の働きがあるからです。
また近年のNASA(アメリカ航空宇宙局)の研究により、植物にはホルムアルデヒドやアセトン、キシレンといった空気中の有害物質を吸着・分解する力があることが発見されました。このように、オフィスの空気環境を改善し、快適性を高める上で植物は重要な役割を果たします。
効果3:視覚疲労の軽減
植物には視覚疲労を軽減する効果もあると考えられています。緑が身近にあることで、目の疲れがほぐれる感覚を覚えた経験のある方も多いのではないでしょうか。実際、東京農業大学の研究では植物には視覚疲労軽減効果があることが立証されています。
ただし、こうした視覚疲労の軽減効果はフェイクグリーンには認められていません。視覚疲労の効果を期待するのであれば、本物の植物を配置することをおすすめします。
効果4:企業イメージの向上
グリーンオフィスは従業員や来訪者に好印象を与え、企業イメージの向上に寄与する可能性があります。植物が配置されたオフィスは、殺風景で無機質なオフィスと比べて新鮮さや癒やしが感じられるものです。毎日オフィスで長時間を過ごす従業員にとっては、自社に対するイメージアップにつながることでしょう。来訪者にとっても、快適で明るい印象を与えることから、好感を抱いてもらえる可能性が高まります。このように、グリーンオフィスは企業としてのイメージアップやブランド力向上にもつながる点が大きなメリットです。
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