2021年5月に本社オフィスをリニューアルしたコニカミノルタが考えるニューノーマルな働き方を実際のオフィスの様子と共にご紹介しております。これからの働き方や働く場所のご参考に、ぜひご覧ください。
コロナ禍によって、仕事の場所はオフィスからオフィスの外に広がりつつあります。テレワークがスタンダードになりつつある今、企業はどのような変革が必要とされているのでしょうか。グループウェア事業を展開し、テクノロジーによる新しい働き方を提案する「サイボウズ」は、自社でこれらの課題にいち早く取り組んできた企業のひとつです。今回はコーポレートブランディング部長・大槻幸夫さんに、ハイブリッドワークを含む、未来の働き方についてお話を伺いました。
♯ハイブリッドワーク ♯働き方 ♯コミュニケーション ♯オンラインファースト ♯リモート
目次
社員のために100通りの働き方に取り組む
──サイボウズさんはコロナ禍以前より「100人いたら100通りの働き方」の実現に取り組んでいますね。そのような社風が形成された背景をお聞かせいただけますか。
大槻さん:私がサイボウズに入社したのは2005年です。そのときは残業も厭わないし、土日も出社する「バリバリ働いてこそベンチャー企業」と言うような環境でした。離職率は28%、1年間に4人に一人が退職していました。しかもBtoB企業なので、一般的な知名度が低く、新卒採用も困難。「人は辞めていく、新規採用はできない」という状況を改善するためには、既存の社員に長く働いてもらえる会社になる必要がありました。それが働き方改革につながっています。
── 2006年に開始したのが育休6年制度ですね。
大槻さん:「お子さんが小学校に上がり、育児が一段落したらサイボウズに戻って来てほしい」というメッセージをこめた人事制度です。この制度によって、出産を機に退職する女性社員が0人になりました。これを契機に経営陣の中に「社員のためになる制度が重要」という認識が芽生え、働き方の多様化が進みました。
── 離職率は、どの企業も悩ましい問題だと思いますが、それでも改革するためには勇気が必要だと思います。育休6年という制度も、当時はかなり斬新だったと思いますが、そのあたりの是非はどんな風に議論されましたか。
大槻さん:いろんな意見があったと思いますが、それ以上に採用が難しいという現状解決が急務でした。
── 育休自体は、1992年に育児休業法が施行され、かなり以前から存在していましたが、本当の意味で市民権を得たのは、最近になってからかもしれません。サイボウズさんは、世の中の一歩先を走る形で「育休6年」といったメッセージを出されたと思いますが、すぐに手ごたえを感じましたか。
大槻さん:退職する女性社員が0人になりましたし、メディアにも注目されました。2007年からは、「残業は可能」、「積極的に残業はしたくない」、「子育のために短時間だけ働きたい」など、三つの働き方を選択できるようにしました。そして、2010年に在宅ワーク制度がスタートし、2018年からは自分がどう働きたいかを自由に記述する「働き方宣言制度」が始まりました。
──2010年にすでに在宅ワーク制度を始めていただけでなく、さらに自由度の高い制度を導入されているんですね。
大槻さん:そうですね。会社が用意した働き方から選ぶのではなく、「何曜日は早帰りします」や、「何曜日は副業のためお休みします」など、自分自身で自由に働き方を決めてもらっています。これまでの働き方改革のプロセスを土台に人事が案を作り、それをもとにワークショップでニーズを取り入れながら進化してきたことが、社員のマインドセットを変える原動力になりました。
SNS的なコミュニケーションで孤独感を減らす
──2020年にコロナ禍で在宅勤務の必要に迫られ、多くの企業がそれを導入したわけですが、「リモートワークでも大丈夫」と感じた企業もあれば、「なかなか難しい」と思った企業や、「コロナが落ち着いてきたら出社」と考える企業もあります。リモートワークをネガティブにとらえている企業の多くは、主にコミュニケーションがとりにくいことやマネジメントの難しさを課題に挙げていますが、サイボウズさんでは、それらをどう乗り越えてきたのでしょうか。
大槻さん:私たちも以前はマインドセットはあまり変らず、雑談はオフラインの会議やオフィスでしていました。しかしコロナ禍で出社できなくなり、オンラインで会議するようになって、初めて気づいたことがたくさんありました。
──どのようなことですか。
大槻さん:弊社の青野(代表取締役社長)も言っていたことですが、オンラインがオフラインを補うための役割では意味がない、ということ。では、どのようにオンラインを活用すれば効果的なのか。私たちは「オンラインファースト」と呼んでいますが、基本はオンラインで業務を進め、足らないところがあればオフラインで補っていく、という感覚がコロナ禍で根付いていきました。
──オンラインを主軸にするということですね。そうなると、これまでオフラインで行うことが多かったコミュニケーションのフォローも必要になりますよね。
大槻さん:オンラインでのコミュニケーションが難しいと、オフラインに戻そうとする圧力が強くなります。それはサイボウズでもありました。その解消のために、弊社のクラウドサービス「kintone」上で、ツイッターのような感覚で「今から会議に入ります」とか、「休憩に入ります」など、行動をつぶやくようにしました。
──SNS時代らしい方法ですね。
大槻さん:出社率が10%台と低くなる一方で、オンライン上の書き込み量が5~7倍に増え、コミュニケーションの場がオンラインに入れ替わりました。これによって一緒に働いているメンバーの悩みや、在宅で何をしているかなどを感じられるようになり、離れていても様子を伺いながら仕事ができるようになりました。
──あまりSNS的なコミュニケーションが得意ではない方もいると思うのですが、自分の気持ちや状況をつぶやくことに難色を示した方はいませんでしたか。
大槻さん:そこはあえて強めに「社会人の必須スキルが変わった」と伝えました。今までは直接の会話に重点が置かれていましたが、これからはいつも同じ場所にいるとはかぎらないので、オンラインで自分の存在感を出していかなければなりません。そうは言っても最初のうちは抵抗があると思うので、まずは「いいね」ボタンを押すことからはじめることをおすすめしています。
──なるほど。あと、テキストでのやりとりは会話と温度感が違っていて、必要以上に冷淡に伝わったりしませんか。
大槻さん:それはたしかにありますね。私自身は温度感を伝えるために、「いいね」の他に絵文字なども積極的に使っていますね。そして、テキストの作成が難しければ、伝えたいことを録画して共有することもできます。動画や音声ファイルなど、社内でも個人の特性に応じてメディアを使い分けるようになってきているのが面白いです。
──サイボウズさんではすでにオンラインファーストが浸透し、個人がいろんな工夫をされているのですね。
大槻さん:「オンライン中心では仕事が回らない」と一律出社に戻す会社も多いですが、それはただ単に「オンラインでできることの可能性の追求をあきらめているだけ」のようにも感じます。会うことも大事ですが、オンラインでできることもまだまだたくさんあるはずです。
- 1
- 2