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来訪者にとって、もっとも印象に残りやすいのがオフィスのエントランスです。エントランスはまさにオフィスの「顔」であり、コーポレートイメージを表す場所となります。それだけにオフィスエントランスの設計においては、自社の事業内容にマッチし、使い勝手も配慮されたものが求められます。今回は、自社ならではのオフィスエントランスづくりを成功させるためのポイントについて解説します。
オフィスのエントランスが重要な理由
エントランスを“ただ出入りするところ”と思い込んではいないでしょうか。
オフィスエントランスの重要性をよく理解していなければ、他社との区別がつきづらい、凡庸な設計ともなりかねません。ここでは、オフィスエントランスが重要な理由について見ていきましょう。
顧客にとって最初の視覚的な情報となる
オフィスエントランスは顧客などの来訪者にとって、その企業について最初に入ってくる視覚的な情報となります。よく「人の第一印象は数秒のうちに決まる」といわれますが、これは場所についてもいえることです。
エントランスによって雰囲気の良し悪しが一瞬のうちに感じられ、その第一印象はなかなか打ち消しにくいものです。例えばエントランスが雑然としていると、会社全体に清潔感がなく落ち着かない印象を与えます。明るく温かみのあるエントランスであれば居心地がよく感じられ、商談もくつろいだ雰囲気のうちに進められるでしょう。
会社のブランドイメージを確立しやすい
多様なデザインが可能なオフィスエントランスは、会社のブランドイメージを確立しやすい場所です。ことば以上に、コンセプトを端的に伝えられます。事業内容や企業のもつ使命を内外に示すことも可能です。入った瞬間に「この会社は他の会社よりすごい」と感じられるような、こだわりのエントランスは企業のブランドイメージの向上に大きく貢献します。
オフィスエントランスを設計する際のポイント
自社のイメージを誤りなく伝えられ、エントランスとしての役割を最大限に果たす場所とするためには、設計時点でどのようなポイントをおさえておけばよいのでしょうか。
コンセプトの統一
オフィスエントランスづくりに大切なのは、テーマやコンセプトを明確に決めることです。伝えたい企業イメージに基づいて決定していきましょう。コンセプトが決まったら、それに基づいた統一感のある空間を目指します。社内に進んでいったときにエントランスとの違和感がないよう、オフィス全体のコンセプトを統一しておくことも大切です。
ロゴやシンボルの活用
オフィスエントランスで重要なのは、どのような企業なのか、何をしている会社なのかを一目で来訪者にわかってもらえるかということです。ロゴやシンボルをうまく活用し、情報や特性を打ち出していきましょう。驚くほど大きなロゴや、引き込まれるかのように設計されたエントランスに出会ったことはないでしょうか。ロゴもただのはめ込みではなく光で投影して浮かびあがらせるなど、各社の工夫が見られるポイントです。
コーポレートカラーの使用
コーポレートカラーを効果的に使っている会社も多く見られますが、コーポレートカラーがブルーだからブルーをそのまま使うというのでは芸がありません。企業の「先進性」や「挑戦する文化」といった伝えたい企業メッセージを示せるように設計を工夫していくことが、差別化を図るうえでは重要です。
おもてなし空間づくり
最近はエントランスにおいて、自然の音やアロマの芳香など五感を刺激するようなものでおもてなしを意識している例も見られます。来訪者をリラックスさせて友好的な空気をつくることは、ビジネスの円滑化に役立つでしょう。
明るさの視点
外の光を取り入れたり調光で心地よさを演出したりするなど、感覚に訴える手法は無意識のうちに好感度をあげる効果が期待できます。来訪者に「雰囲気が良い会社」と感じさせるためには、明るさなど細かな部分にまで深慮していくことも必要です。
機能性の付与
待合スペースにPR用パネルやモニターを設置したり、商品・サービスを掲示したりと、機能性をもたせるのもエントランスの有効な使い方です。手に取ってながめられる商品モデルや広報誌、情報を発信する動画などで、事業内容をアピールできます。プロモーションの場として見てみると、エントランスの概念も違ったものとなるでしょう。エントランスの規模にもよりますが、あれもこれもと詰め込みすぎてしまうと逆効果になる場合もあります。何をメインとして設計をしていくのか、方針を定めておくことも大切です。
オフィスエントランスを設計する際に気をつけるべきこと
オフィスエントランスはデザインに気を奪われがちですが、設計の際に見落としてはいけない注意点もあります。
出入りから各所への動線
出入りが多い会社であれば、複数名がすれ違って行き来をするのに十分なスペースを確保しておきたいところです。また来客の多い部署への動線や、業務上の利便性も考慮しなければなりません。さらに、場合によって配送物等のサービス動線にも配慮する必要があります。来客動線とサービス動線が交錯することは来場者に良いイメージを与えませんので、用途や規模にもよりますが動線を分離したほうがよいエントランスデザインと言えます。デザインに凝りすぎて出入りしづらいといったことにならないよう、機能面もあわせて重視していきましょう。
ほかのスペースとの関係性
企業として外部の人間にあまり見られたくない機密性の高い部署など、ほかのスペースとの関係性にも考慮が必要です。会議の内容がエントランスに聞こえないか、机の上の資料がのぞかれることがないかといった点にも注意しましょう。
セキュリティ
開放的なエントランスは気持ちがよいものですが、一方で外部の人間が知らないうちに入ることのないように、セキュリティ面にも十分な配慮が必要です。業態などによってもセキュリティの考え方は異なりますが、一般的にはカードリーダーによる入退出管理をしているケースが多く見られます。最近ではタブレットを活用した無人受付アプリを導入することで受付の人員コストを削減している場合もあります。状況にあわせて、最適なセキュリティ対策を考えていきましょう。
従業員の利便性
オフィスエントランスが、来客に与える印象において重要な役割を担っていることは間違いありません。しかしそれと同じくらい重要なのが、従業員にとっての利便性です。毎日もっともよく利用する従業員が使いづらいエントランスでは、企業としての在り方に問題があります。社員の帰属意識を高め、モチベーションアップにつながるようなすぐれたオフィスエントランスを心掛けましょう。
オフィスエントランスにどのような役割を与えるのかは、それぞれの企業によって違います。自社にマッチした設計を考え、与える役割をふまえながら、そこで働く人にとっても快適なエントランスをつくっていくことが求められます。
オフィス全体との整合性
オフィスエントランスは開放感がある方が好まれますが、業種や業態によっては必ずしもそうであるとは限りません。広々としたエントランスよりも、むしろこじんまりとしたたたずまいの方がマッチする場合もあります。また、エントランス部分にばかり費用をかけすぎてオフィス内とのバランスが悪くなり、室内に進むにつれてがっかりされるようなことは避けたいものです。
オフィスエントランスを設計する際には、事業内容と照らし合わせながら、オフィス全体との整合性も考慮に入れて検討していくことが大切です。
まとめ
オフィスエントランスには、ただの出入り口以上の役割があります。会社のなかでは小さな空間のひとつですが、独自のデザインを考えることで企業のアイデンティティを示し、訪れる人にさまざまな思いをアピールする場となります。どのような業種や規模の会社であっても、同じエントランスはひとつもありません。たとえスペースが小さくても、工夫次第でどこにも負けないエントランスをつくりあげることはできます。規模の大小にかかわらず、自社の在り方を内外にきちんと示せるようなエントランス設計にしていきましょう。
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