働き方改革の推進とそれに伴うワークスタイルの多様化によって、オフィスを取り巻く環境は大きく変化しました。従業員の働きやすさが重視される時代にあって、オフィスの休憩室への注目度がこれまで以上に高まっています。使いやすく快適な休憩室は、業務の質を高め、企業の生産性向上に貢献することが期待されます。今回は、オフィスの休憩室について、設置のメリットやレイアウトのポイントを解説します。
目次
オフィスの休憩室が注目される背景

オフィスにおける休憩室の設置は、事業者の努力義務 として、法令で以下のように定められています。
「事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない。」
(労働安全衛生規則:第六百十三条)
働き方改革の推進によって、従業員の心身をケアすることに関して、これまで以上に目が向けられるようになりました。休憩室にも、よりリフレッシュ効果の高いあり方が求められるようになっています。
2007年に経済産業省が提唱した「クリエイティブ・オフィス推進運動」の一環として、休憩室を活用する企業も多く見られます。こうした企業にとって休憩室のとらえ方は、単なる休憩用のスペースではなく、知識創造行動を誘発する空間の一部へと進化しているのです。
また、生産性を考えるうえでも、一日の業務のなかでオンとオフの切り替えが必要であるという認識が高まりました。どれほど優秀な人材であっても、人間の集中力には限界があります。長時間の作業継続は、効率の低下を招く原因となります。
心身の状態を切り替えることにより、新しいアイデアが生まれる、業務へのやる気が増すなどの効果がもたらされ、最終的には生産性の向上が期待できます。そのためには、オフィスの業務状況に合った、従業員がくつろげる休憩室が必要です。
さらに、働き方の多様化により、自然に交流ができる場の創出が求められていることも、休憩室が注目される背景にあります。テレワークが浸透したことにより、従業員同士がオフィスで顔を合わせる機会が減少しました。そのなかで、チームワークの維持、プロジェクトの円滑な推進のために、コミュニケーションをいかに活発化させるかが企業の課題となっています。気軽に声をかけ合える雰囲気に満ちた休憩室であれば、社内の一体感を醸成できる場となる可能性があります。
オフィスの休憩室がもたらすメリット

オフィスの休憩室が企業にもたらすメリットとしては、以下のようなことがあげられます。
リフレッシュ効果
ワークスペースとリフレッシュスペースを明確にすることにより、物理的・精神的な区切りをつけられます。休憩時間を自席で過ごすよりも、休憩室で過ごすほうが頭が切り替えられ、体を伸ばすこともできるでしょう。柔らかな照明、心地よい音楽、落ち着けるアロマなど、五感を刺激する手法によってリラックス効果を高めることも可能です。
コミュニケーションの活性化
休憩室は社内の共有スペースであり、異なる部署の従業員が交流する機会が得られます。なにげない会話から互いの業務の様子を知ることができ、相互理解につながります。時差出勤やテレワークといった出社の状態が違う者同士でも、わずかな機会をとらえてコミュニケーションがとれるようになるでしょう。
アイデアの創出
休憩室での会話やリラックスした状態などが、新しい考えが生まれるきっかけとなることもあります。最新の脳科学では、ぼんやりしている時間が脳を活性化させるといわれています。心身をリラックスさせた状態が英気を養うと同時に、新たな発想のスタート地点となる可能性もあります。
従業員満足度の向上
休憩室の整備は福利厚生の一環となります。従業員にとって居心地の良いオフィスの要素となり、満足度が高まることでエンゲージメント強化への貢献も期待できます。
企業ブランディングに貢献
充実した休憩室を提供することにより、「従業員の心身の健康に配慮し、環境を整備している企業」として社会的に認知されれば、企業価値の向上につながります。
従業員を大切にする企業というイメージが外部に伝われば、採用活動へのプラス効果も期待できるでしょう。
休憩室のレイアウトのポイント

オフィスの休憩室を考える際、どのような視点を持つとよいのでしょうか。休憩室のレイアウトのポイントを解説します。
業務との区切りを明確にする
リフレッシュ効果を高めるためには、心身の状態が切り替えられる環境が必要です。レイアウトを考える際には、物理的・視覚的に業務と切り離すことを意識します。スペースの関係で距離をとれない場合には、会話が聞こえず、視線を遮断できるような工夫をして、休息の場を確保することが大切です。
リフレッシュスペースとしての配慮
休憩室では、なによりも快適さを優先させます。
機能よりも座り心地を重視した椅子やソファ、間接照明の活用、落ち着ける色の壁紙、気分が切り替えられる景観、グリーンの設置など、くつろげることを重視して設計する必要があります。
また、見える部分だけではなく、健康面にも配慮し、空調・空気清浄機などの設備面も整備していくことが大切です。
以下の記事では、いやし効果を高めるオフィス環境について解説しています。オフィスづくりの参考に、ぜひご覧ください。
多様な目的を考慮
ひと昔前の休憩室といえば、椅子や小テーブルを配置しただけといった光景も珍しくありませんでした。しかし現代は、オフィスの休憩室には多様な役割が求められます。
雑談スペース、個別ブース(個別席)、ランチ・カフェコーナー、仮眠席、イベント利用など、自社の業態や業務に合わせてニーズを探りながら、加味できる要素を検討しましょう。
従業員の意見を重視
見た目が美しく整えられたスペースであっても、活用しづらい休憩室では意味がありません。従業員の意見を聞くことは、休憩室の整備に必要不可欠です。人数に対して十分な広さがない、落ち着かないなどの声が挙がれば、運用しながら随時意見を吸い上げ、改善していくことも大切です。
また、運用ルールの設定も必要です。長時間の占有は避ける、喫煙は禁止、必ず後片付けをする、といった基本的なことから、イベント利用時の運用フローまで担当部署がしっかりと管理します。
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