「日経ニューオフィス賞」を受賞したコニカミノルタがデザインしたオフィス事例をまとめた一冊です。最新のトレンドが知りたい!新しいオフィスのアイデアが欲しい場合などにご活用ください。
オフィスレイアウトを考える際には、デザイン面だけではなく寸法にも配慮する必要があります。快適に働くためには最低限必要な寸法を確保する必要があり、おしゃれさだけを重視してしまうと不便に感じることがあるからです。今回はオフィスレイアウトを決める際に知っておきたい寸法の基準値についてお伝えしましょう。
目次
こんなオフィスになってない!?寸法が最適でなかった場合に起こること
オフィスデザインは、どんなレイアウトでもOKというわけではありません。働きやすい労働環境をつくるための最適な寸法があり、法律がかかわってくる部分もあります。
たとえば、通路の幅を考えてみても、思い当たる点があるかもしれません。オフィス内の導線となる通路が狭ければ社員同士がすれ違うことができず、道を譲りあうような時間が発生します。通路の幅が狭いからといって、大きな問題になることはないように思われがちですが、毎日多くの時間を過ごすオフィスで1日に何度も他の人が通るのを待つことは案外ストレスになるものです。上司や先輩など目上の人に対して、ちょっとしたことで気を遣うことになり、そうした理由からデスクを離れて休憩をとること自体が億劫に感じる人もいることでしょう。また、デスクのある執務スペースでの通路が狭いと、背後を通る人の流れを意識せねばならず、業務への集中力も低下してしまいます。
そのほか、扉を開くタイプの書類棚についても同様のストレスが発生するケースがあります。狭いスペースに書類棚を置くと、扉を開けるたびに人の通行を妨げる結果になるでしょう。人の流れを止めないためには、通過したい人に合わせて何度も開け閉めしたり、書類棚が閉まるまで待っていたりする手間がかかります。そうなれば、書類を落ち着いて探すこともできず、当然業務としては非効率になりかねません。加えて、ここでもやはり本来なら必要のない気遣いをしなければいけないために、慢性的なストレスがかかってしまうでしょう。
おさえておきたいオフィスの寸法の基本
では、実際にオフィスレイアウトを作る際の寸法について、どのような基準にすればよいのかを考えてみましょう。代表的なものを紹介します。
通路
上述した通路について、最適な寸法を考えてみましょう。基準を設定するにあたり、ひと1人の標準的な横幅とされている500mmが参考になります。あくまでも平均的な数値ではありますが、幅500mm以下の通路は、正面を向いたまま通行することが難しい可能性が高いということになります。また、2人がすれ違う広さを確保するのであれば、最低限1,200mmが必要になるでしょう。2人以上がすれ違う可能性があるメイン通路では、さらに幅を広げて1,600mm程度の寸法を確保することで、余裕を持って移動できます。
執務スペース
執務スペースについては、より慎重に寸法を考えなければいけません。まず、デスクに着席して業務を行うためのスペースとしては、奥行き700mmが標準とされています。ただし、最近ではノートPCが普及したこともあり、600mmのデスクも多く用いられるようになってきました。次に、デスクが集まる場所の通路は、椅子に座っている人のスペースも考慮して1,600~1,800mmとするのが一般的です。日本企業に多い島型の座席レイアウトの場合、通路は背中を向け合ったスペースになりますが、1人当たりのデスクスペースとして700mmを採用した場合、通路を挟む2人のデスクスペース1,400mm(700mm×2)さらに上記の基準での通路を足すと3,000~3,200mmの幅が必要になるでしょう。
また、背面が壁となるデスクの後ろを通路にする場合には、デスクから壁までを最低1,200mm程度確保できれば、通行が可能です。逆に、コンフィデンシャルな部門などでデスクの後ろを通行してほしくないような場合に、あえて幅を狭めることも考えられますが、通常は小部屋にしたり壁側を背に配置するなどのレイアウト自体を変更することで配慮することが多いです。
書類棚
壁際にある書類棚の作りによって、通路の幅も異なります。両開きの書類棚を設置している場合には、扉を開けて書類を取り出す人がいる状態で、さらに別の人が通行できるかどうかを考慮するとよいでしょう。この場合、通路の幅と扉を開けた時の幅を確保することになります。デスクの後ろに書類棚を設置するのであれば、デスクの奥行分の幅と、扉のサイズ、通路の幅を足して計算します。
打ち合わせスペース
大型のデスクを囲むようにした打ち合わせスペースでは、人が通行する部分に椅子が配置されている場合には、1000~1200mmの空間が確保できると余裕があります。逆に奥側で椅子の配置がないと想定する導線では、800mm程度を確保しておくとよいでしょう。スクール式にデスクを並べる場合は、執務デスクの奥行よりさらに余裕を持たせ、1人当たり最低800mmを目安に確保し、ゆとりある空間を目指すならば1,000mm程度で計算してみましょう。
応接スペース
お客様をお迎えする応接スペースには、ソファとテーブルを設置することになります。狭さを感じさせず余裕を持った空間を作るためには、ソファとテーブルの間となる足元のスペースを500mm程度確保できるとよいでしょう。広さが限られている場合でも、足元スペースとして最低限300mmを確保しておきましょう。
複合機(MFP)までの距離
複合機周りも人が集まるスペースです。複合機前でコピーやFAXといった操作を行うために必要なスペースは、複合機から450mm程度。さらにその後ろを別の人が通行する場合には、通路分の寸法を確保しておくとよいでしょう。業務効率上、各デスクからアクセスしやすい位置に複合機を設置する場合、一番近いデスクから1,500mm程度(デスク周り450mm+MFP作業スペース450mm+通路分600mm)を目安に確保します。
遵法(じゅんぽう)の面から対応が必須な寸法
先の段落で紹介した寸法の例は、あくまでもオフィス空間の快適性を考えた基準値になります。ただし、上記の寸法は法的に定められたものではなく、ワークスペースとしての機能を高めるための設定です。こうした条件に加えて、法的に定められた寸法についても確認しておきましょう。
主に注意すべきなのは「建築基準法」です。建築基準法では、有事の際の避難経路として、片側に部屋がある場合の通路幅は1,200mm、両側にある場合は1,600mmと定めています。(※1 教育機関等、児童用によっては異なりますのでご注意ください。)
また、床面積500m2ごとに排煙設備を設置しなければならず、窓のような自然排煙か、ダクトを通じて排煙させる機械排煙のどちらかが必要です。排煙設備はオフィス内の防煙区画内として30m以内の距離になるよう設置し、自然排煙の場合には天井などから80cm以内であることなどが定められています。さらに、壁だけではなく天井に届くほど高いパーテーションで区切ったスペースにおいても、それぞれ個別に条件を満たさなくてはいけません。有事の際の被害を最小限に止めるためにも、所轄の消防署などに相談し、確認しておくとよいでしょう。
レイアウト変更時にやっておきたい基本のチェックポイントは、こちらの記事<「オフィスレイアウトを変更する際の流れと費用の目安・成功させるポイントまとめ」>をご覧ください。
より良い職場環境を整えるためにも見直したい寸法
オフィス環境が業務への集中度に影響を及ぼすことは研究でも明らかにされており、生産性向上を左右する大きなカギとなります。オフィスが手狭になったという理由から移転を行ったり、レイアウト変更を考えたりする場合には、適切な寸法で快適な空間を作れるように意識してみましょう。現在のオフィスにおいても、適切な寸法になっているかどうかを、一度見直してみてはいかがでしょうか?
「日経ニューオフィス賞」を受賞したコニカミノルタがデザインしたオフィス事例をまとめた一冊です。最新のトレンドが知りたい!新しいオフィスのアイデアが欲しい場合などにご活用ください。