女性の働きにくさの解決から始まった、
中小企業のABW


200名の業務委託メンバーと成果を出す方法

その後、「cococi」の運営は2021年で終了し、コワーキングスペース「co-ba」に統合する形で「co-ba CHOFU」として新たな歩みが始まりました。Polarisのオフィス機能も兼ねて、コミュニケーションを大切にゆるやかな人と人とのつながりを意識した空間をつくっているそうです。

大槻さんたちは「co-ba CHOFU」を起点に、200名もの業務委託メンバーたちとのプロジェクトを展開しています。では、どうマネージメントしているのでしょうか。

一人の違和感をチームの課題として共有

現在、Polarisの経営層は5人。約200名の業務委託メンバーの中でも15~20名が組織や事業の運営に関わり、常にいくつものプロジェクトを同時に走らせています。スムーズに事業を進め、成果を出すために行っているのは、一人の困りごとや違和感をみんなの課題としてチームで共有し、一人で抱え込まない環境をつくること。

「Polarisでは、業務の振り返りとして『うれしかったこと』『困ったこと』などを事前にアンケートで集め、メンバー全員で振り返る場を設定したりと、「みんなが居心地良く仕事ができる環境であること」を大事にしています。また、もし自分が置かれた環境に違和感があれば具体的に言葉にしてもらえるような、心理的安全性が高まるようなチーム運営も大事にしています。」(市川さん)

「ポストイットに困りごとや違和感を書き出して分類し、どうすれば解決できるかをみんなで考えます。ひとりの課題をみんなで分析したり、俯瞰することで、解決方法をチームのものにしていくことが、お互いの信頼関係を育てるためにも大事です。

また、『質問をすることも、チームへの貢献になる』とみんなに伝えています。誰かが『わからない』と言うことで、他の人たちも自分の疑問や思いを声に出しやすくなりますから。

前向きに課題を捉えられる人もいれば、慎重な人もいます。バリバリ仕事ができる人だけが活躍できるのではなく、いろいろな貢献のかたちがあることをみんなで体感しながら、思考をアップデートしています」(大槻さん)

いつでも立ち戻れる指針を何度も検証し、実践と改善を繰り返す

また、メンバーと共有している「Polarisの仕事こころえ」が、何か迷った時に立ち戻れる指針になっている、と市川さんは話します。

「このこころえには、どんな心もちでPolarisの仕事に向き合ってほしいかをまとめています。例えば、『ゴミを拾いましょう』と言うのではなく、『なぜゴミを拾うのか』、そういった理由を丁寧に言語化したものです。

チームの信頼関係を保つためにNGな考え方や行動も、業務がスタートする前にみんなで確認します。こうやって何度も実践して改善しながら、私たちの“あたりまえ”をつくっています」(市川さん)

参考記事

子どもたちの未来の「あたりまえ」な働き方を増やしたい

最後に、これからの社会について、大槻さんは、「地域の中でいろいろな人が関わり合える働き方をつくっていきたい」と話します。

「子育てや介護など、ライフスタイルの変化に合わせて、その時々の自分に合わせて働き方や学び方を選び直したり、人との関係性を再編集したりすることができたら面白いと思いませんか? そのための場として、コワーキングスペースが地域で働きながら学び合える関係性を育てる役割を担えるといいですね」

「コワーキングスペースには、受付の人がいない場所もありますが、私たちが運営する場所には、常に“つなぐ”役割の人がいます。程よい距離感で、親身になってくれる“斜めの関係”が育つといいなと思っています。それは、何かあった時に声をかけられるゆるやかな関係性です。そんな関係が育つ環境で仕事をすると、暮らしがもっと豊かになる気がするんです」

自分たちに合わせて「ABW」を進化させる

Polarisがコワーキングスペースをつくったきっかけは、出産や育児で離職した女性たちの働きづらさに直面したことでした。そこから「自由な働き方をつくりたい」という意志のもと、一人ひとりが地域で働くスタイルを作り、独自のワークシェアを生み、育てていきました。今では海外も地方も関係なく、働く時間も自分たちで選びながら働くことを当たり前のこととして、働き方や事業の新たな可能性を広げています。

また、離れた場所で仕事をする多くのメンバーと成果にこだわったプロジェクトを並走させるために、業務の振り返りを通して自分たちの考え方や行動を見つめ直し、違和感を課題として解決していく過程もチームで共有しています。

みんなが迷わずに前進するための指針も何度も見直し、改善し、アップデートすることで「なぜするのか」「どこへ向かいたいのか」といった目指すべき方向性を自分事化する工夫も見られました。こうしたアイデアは、コミュニケーションのオンライン化が進んだ企業と人の信頼関係を深めるヒントになりそうです。


参考記事

中小企業がなぜ自然なかたちで、働く場所と時間を選ぶ「ABW」の考え方を実現できるのか。限られた人数でスピードを求められる事業運営を行うことも理由としてありますが、中小企業が培ってきた柔軟性も大きいのではないでしょうか。コミュニケーションが行き届き、判断も早く、何より行動が早い。また、うまくいかなければすぐに修正や改善の判断ができる。

「小さな組織だからできる」というより、小さな組織だからこそ、そうすることが必要だったとも言えるでしょう。これはどの企業にも当てはまるわけではありませんが、中小企業ならではの柔軟な視点や行動、工夫の一つひとつは、「ABW」を導入するにあたって生まれる課題を解決するための参考になることがきっとあるはずです。

Polarisが地域とつながる働き方を広げたように、企業のチャレンジが社会に影響を与える場合も少なくはありません。この記事をきっかけに、ぜひ何か一つでも取り入れられる部分や考え方のヒントが見つかり、自分たちらしい働き方がつくられていくことを願っています。

大槻昌美(おおつき・まさみ)さん

非営利型株式会社Polaris代表取締役/Chief Community Officer

1976生まれ。茨城県潮来市出身。大学卒業後、一般企業にて営業事務を6年経験し、出産を機に退職。子育てに専念する。2005年に利用者として通っていた子育てひろばで市川と出会ったことをきっかけに、地域で活動をする人たちの多様な「はたらく」に出会い、第2子出産後、娘ふたりと共に子連れでボランティアを始める。産後の家事援助「マザリングベル」(子育て支援グループamigo)の産褥シッターやNPO法人せたがや子育てネットの理事、保育メンバー、子育てひろばのメンバーなども経験。きっかけと役割、仲間がいることで引き出される力の凄さを実感。その人らしさが発揮できるチームビルディングを行う。2016年、より変化に強い組織づくりを目指し戦略的意思決定主体を、代表を中心とする経営メンバーから参画する多様なメンバーへと拡張する「フォロワーシップ経営」を行うために代表取締役就任。また、プライベートでは、娘の小学校で2年間PTA会長として活動。Polarisのエッセンスを取り入れながら、PTAの組織改革に取り組んだ。

市川望美(いちかわ・のぞみ)さん

非営利型株式会社Polaris 取締役ファウンダー

Chief Story Officer/ソーシャルデザイン事業部統括

1972年生まれ、東京都江戸川区出身、世田谷区在住。青山学院女子短期大学卒業後、IT系企業へ入社。2002年長男出産後、育児休業を取得したのち退職。2003年に長女を出産し、年子2人の育児をしながら“当事者発信型・循環型”の子育て支援に従事。NPO 法人せたがや子育てネット理事、アミーゴプリュス合同会社代表社員などを経験。2011年内閣府地域社会雇用創造事業ビジネスプランコンペで起業支援案件として採択され、地域における多様な働き方を支える基盤づくり事業を開始。2011年8月「ここちよく暮らし、はたらくための拠点」として
”cococi”Coworking Space立ち上げ、2012年非営利型株式会社Polaris設立。2016年からは日々の実践と学びを統合するために立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科に進み、2018年3月修了。修士論文は「半分幸せの考察―選択における個人と社会の関係性」。日本ファンドレイジング協会准認定ファンドレイザー、社会デザイン学修士。

紹介記事

2021年にリニューアルしたコニカミノルタの 『新』本社オフィス コンセプトブック

2021年5月に本社オフィスをリニューアルしたコニカミノルタが考えるニューノーマルな働き方を実際のオフィスの様子と共にご紹介しております。これからの働き方や働く場所のご参考に、ぜひご覧ください。

Download

オフィスコンセプトブック

Contactオフィス環境に関するお問い合わせ

商品およびサービスについてご不明な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

電話でのお問い合わせ
※総合受付(お問合せ後、担当より折り返しさせていただきます)

03-6311-9450
[対応時間]9:30~17:00
(土日祝日・年末年始休業を除く)

メールでのお問い合わせ

お問い合わせフォーム

コニカミノルタジャパン株式会社
マーケティングサービス事業部  空間デザイン統括部

〒105-0023 東京都港区芝浦1-1-1 浜松町ビルディング26F(総合受付)

許認可

東京都知事 特定建設業許可:

建設工事業 大工工事業

左官工事業 管工事業 ガラス工事業 塗装工事業 防水工事業

内装仕上工事業 建具工事業

第一種貨物運送利用事業