オフィス環境が働く人の「パフォーマンス」に影響する!ウェルビーイングの観点から見る労働環境の作り方

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日本の企業では今、働きやすさを追求したオフィス環境づくりが広がっています。そこで注目を集めているのが、「ウェルビーイング」という概念です。「良い状態」「幸せ」などと表現されるこのウェルビーイングとオフィス環境の関係性について、ウェルビーイングの専門家である前野隆司教授(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授兼慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長、一般社団法人ウェルビーイングデザイン代表理事)にオフィスデザインブログの編集部がお話をうかがいました。オフィス環境が働く人に与える影響、またウェルビーイングをオフィスデザインに取り入れるポイントなど、前野教授のお話とともに解説します。

ウェルビーイングとは?

ウェルビーイングの意味

海外をはじめ日本のビジネスシーンでも浸透しはじめた「ウェルビーイング」ですが、詳しい内容についてご存じですか?

幸福学学術研究の第一人者であり、慶應義塾大学教授である前野隆司さんは、「ウェルビーイング」の定義についてこう話します。

「辞書で『ウェルビーイング』を調べると、『健康』『幸せ』『福祉』といった言葉で説明されています。『ウェルビーイング』は、まさに『健康』と『幸せ』と『福祉』の3つ領域を包み込む大きな概念です。英語では、『well-being』または『wellbeing』と表記され、『良いあり方』『良い状態』を意味します。健康=身体の良い状態、幸せ=心の良い状態、福祉=社会を良い状態にするための活動。つまり、身体と心と社会のすべてが良い状態のことを『ウェルビーイング』というのです」

日本では、「健康」と和訳されることも少なくないようですが、前野教授からうかがった「ウェルビーイング」の概念はもっと幅広いものでした。一人ひとりが心身的にも社会的も「良い状態」かつ幸せを感じられること、といえそうです。

ウェルビーイングが広まり始めたのはいつ?

いつ頃から、ウェルビーイングという概念が世の中に広まり始めたのでしょうか。前野教授はこう話します。

「1946年、ニューヨークで61か国の代表により署名され、1948年より効力が発生した世界保健機関(WHO)憲章がきっかけの一つといわれていれています。世界保健機関(WHO)憲章で『健康』を定義する際に、『肉体的、精神的、そして社会的に良好な状態(well-being)を広い意味で健康と呼ぶ』と表わされ、そこで『ウェルビーイング』という言葉が使われたのです」

<参考>
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
※「世界保健機関憲章前文」より(日本WHO協会仮訳)
https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/

このように、世界保健機関(WHO)憲章で健康を定義するために表現された一節からはじまり、今日、ウェルビーイングが「満たされた状態」「良い状態」を推進する言葉として世界中の人たちが知られることになったといえそうです。

世界でウェルビーイングが注目される理由

この数年間で、さらにウェルビーイングが注目され始めたと前野教授は話します。具体的な理由は二つあるそうです。一つは、世界各国で様々な課題解決に向けて意識が大きく変化したこと。

「2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)によって、今、環境問題や貧困問題などを解決するために各国が取り組みを進めています。世界中に、解くべき課題がたくさんある中で、『成長が第一の時代ではない』、『人間が幸せに生きることが大事』、という考え方に大きく変わっていきました。新型コロナウイルスの問題もそうですが、先がまったく読めないVUCA(ブーカ)の時代において、人が生きることの根本に立ち戻るときがきたのではないでしょうか」

 

「そもそも私たちは何のために生きているのか。その問いを持った時に、『幸せ』、つまり『ウェルビーイング』のために生きているのではないかと見直す動きが、世界中で加速しています」

そして、医療福祉や心理学の分野でウェルビーイングの研究が進んだことが、ウェルビーイングが注目を集めたもう一つの理由です。

「医療福祉や心理学の分野では、この40年程度の間に、『幸せだと長寿になる』、『幸せな人は創造性や生産性が高い』といった研究結果が出ています。そして今、医学や心理学だけでなく、ITなど様々な分野の研究者たちが協働し、ウェルビーイングを取り入れた課題解決に取り組んでいます」

ウェルビーイングがビジネスシーンで注目されている理由とは?

wellbeingのオフィス

ビジネスシーンでウェルビーイングが広がる背景

では、なぜウェルビーイングはビジネスシーンでも注目されるようになったのでしょうか。その背景には、少子高齢化による労働人口の減少、国による働き方改革の推進、社会的な価値観の多様化があります。

2020年の総務省統計局の推計によると、日本における65歳以上の高齢者は総人口の28.7%を占め、過去最高を示しました。この割合は世界でも最高の数値となっています。これによって、労働力となる若年人口の割合は減少し、年々深刻さを増しています。同時に、働く人一人ひとりの労働力がとても重要な価値をもつことも表しています。

一方で、人々の価値観は多様化しています。たとえば、週3日や週4日勤務の正社員など、週5日制にとらわれない働き方が広がったり、仕事と家庭を両立しながら働くことが当たり前になったり、やりがいや自らの人生へのビジョンをもって仕事を選択する傾向が高まっています。

2019年4月には厚生労働省より「働き方改革関連法」が順次施行され、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の確実な取得、フレックスタイム制の拡充などが推進されました。このように日本の社会全体で労働者にとって働きやすい環境づくりが進んではいますが、価値観が多様化する中で、優秀な人材に働き続けてもらうため、企業独自のさらなる働きやすさを追求する動きが広がっているのです。

また、厚生労働省が2018年に行った「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、「現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 58.0%」とのこと。50%を超える人が、日々、ストレスを感じながら仕事をしていることがわかります。

こうした事実がある中で、企業は社員一人ひとりのストレスを軽減し、心身ともに満たされた状態で働き続けられるようオフィス空間をつくることが必要とされています。社員の主体性や高いパフォーマンスを促すことで、結果的に組織の成長にもつながるように。そのためにも、働きやすい環境づくりを進める中で大きな指針となっているのが、働く人の幸せや良い状態を保つこと、つまりウェルビーイングなのです。

※出典
総務省統計局「高齢者の人口」(2020年9月15日現在推計)
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1261.html
厚生労働省 平成 30 年「労働安全衛生調査(実態調査)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h30-46-50_gaikyo.pdf

「社員の幸せ」を第一に考えた企業の取り組み

日本の企業ではどんなふうに「ウェルビーイング」に注目が集まっているのでしょうか。前野教授は、こう話します。

「京セラ・第二電電(現・KDDI)創業者の稲森和夫名誉会長が、京セラグループの経営理念で『全従業員の物心両面の幸福を追求する』と掲げたことが、注目され始めたきっかけです。また、『日本でいちばん大切にしたい会社』で紹介されたネッツトヨタ南国、伊那食品工業などは、社員を幸せにすることを第一に考えた経営を行っています。最近は、そういった企業がより注目されるようになりました」

前野教授は、もっと多くの企業が幸せな経営を実現できるよう、働く人たちを巻き込んだ活動も行っています。一般社員を含めた多くの働く人を対象にした「働く幸せ研究会」や経営者による「みんなで幸せにい続ける経営研究会」です。

「どちらもみなさん熱心で、活発に動いています。ほかにも『ホワイト企業大賞』、『日本でいちばん大切にしたい会社大賞』、また世界的な取り組みとしては『働きがいのある会社』ランキング(Great Place to Work)など、働く環境づくりが高く評価された企業が表彰される仕組みもあります。こんなふうに企業の幸せを追求する活動はいろいろなところで盛り上がっていて、今後さらに注目されるでしょう」

※出典
坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社』(2008)あさ出版

なぜオフィスデザインにウェルビーイングが必要?

働きやすい環境づくりとは?

では、社員にとって働きやすい環境づくりとは、具体的にどんなものがあるのでしょうか。日本の企業では、有給休暇や特別休暇、家庭と両立するための制度など、福利厚生を充実させる企業も増えてきました。1on1ミーティングや健康診断など、社員の思いや健康状態を定期的に確認する取り組みも進んでいます。

これらと合わせて取り入れたいのが、オフィス環境を見直すこと。社員にとって愛着を持ちやすい環境にすることで継続的な効果も期待できます。

緑化推進やキャンプ用品の活用

オフィスのテントスペース

前野教授に、ウェルビーイングを取り入れたオフィス環境づくりの具体例をいくつか教えていただきました。

「たとえば緑化の推進なら、オフィス空間の視界の2割くらい緑があると、ウェルビーイングが高まるという研究結果があります。デスクの周りやデスクの上に植物を置くことは、明日からでも取り入れられるのではないでしょうか。また、キャンプ用品を活用したオフィス環境もあります。オフィス椅子の代わりにキャンプ椅子に座るだけで、わくわくして仕事が楽しくなるんですよね。テントが会議室になっている企業もあります」

 

「たくさんの人が交わる場所に休憩場所を設けた会社は、コミュニケーションが活性化しています。『あの件、どうなった?』『最近、お宅の犬は元気?』など、仕事の話題だけでなく、ライフとワークの両方の話題が盛り上がるそうです。これはとても大事なことで、コロナ禍の今、大きな課題になっているコミュニケーション不足を解決する工夫にもなります」

 

「人は、人とのつながり、また仕事へのやりがいを持つと幸せを感じることができます。『最近、どう?』『おもしろいことがあったんだよ』。こういった会話をするだけで幸せな気持ちになりませんか? そんなつながりを積極的につくっている人は、幸福度を維持しています」

また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として浸透したテレワーク(在宅勤務)によって、オフィスの重要性はこれまで以上に高まっています。在宅勤務とオフィス勤務をハイブリッド化することで、社員の創造性や生産性が増すともいわれています。

オフィス環境の大きな要素である、

「社員の集中力を高める」、「社内でのコミュニケーションを活発化する」、「業務を効率的に推進する」といった点などを重視することで、社員にとって快適なオフィス環境になるでしょう。そして、ウェルビーイングは、社員一人ひとりの働きやすさが多様化する中でも、すべての人が満足した状態で仕事に向き合える環境づくりの指標になるといえます。

参考記事

オフィスデザインへのウェルビーイングの取り入れ方

若手社員から管理職まで、全員で話し合う

これまでウェルビーイングが企業の働きやすさに与える効果について解説してきました。では、実際にウェルビーイングをオフィスデザインにどう取り入れることができるのでしょうか。前野教授はこうアドバイスします。

「ぜひ若手社員から管理職まで、みんなで話し合ってほしいですね。フリーアドレスが良いらしいと聞いてフリーアドレス化したものの、実は使いづらかった、という失敗談をよく耳にします。トップダウンでオフィス空間の真ん中に休憩場所を置いても、実際は人が集まらないということもあります。そういった企業をたくさん見てきました」

 

「決してフリーアドレスの導入や、休憩場所を中心にすることが問題ではないのです。要は、幸せなオフィス空間を作るには、みんなで話し合うというプロセスから始めることが大切なんです。そうすれば、自分たちの会社に必要なオフィス環境が見えてきます。『フリーアドレスは全体の2割くらいが良い』という会社もあれば、『すべてフリーアドレスが良い』という会社もあるでしょう。経営層から一般社員まで、膝を突き合わせて話し合う中で、『こんなスペースがあったらおもしろいね』『キャンプ用品にチャレンジしてみようか』など、少しずつ自分たちに合ったオフィスデザインが具現化していきます」

 

「話し合いが進むと、『自分の幸せとは何だろう』という問いに向き合うことになります。その結果、見えてくるものがウェルビーイングなオフィス環境になるのです。ですから、まずは話し合ってみてください。そうすれば、どんな会社もウェルビーイングなオフィス環境をつくることができると思います」

さらに、「個性的であってほしい」と前野教授は続けます。

「良い事例として出てきた企業の取り組みをそのまま真似するのではなく、その企業らしいオフィスデザインを形にしてほしいですね。人もそうですが、企業もその会社らしい良さがあります。それを活かしたオフィス空間が実現できると、ウェルビーイングなオフィスづくりは成功といえるでしょう」

働く人の声から実現したオフィスデザインの事例

コニカミノルタでは、働きやすいオフィス空間づくりとして、働く人たちの声を大切にしたプロジェクトを多数実現しています。たとえば、化学メーカーA社様では、社員参加型のワークショップを開催しアイデアを集め、そこからキーワード「コミュニケーションの活性化」と「リフレッシュ」を決定。オープンミーティング、ソロワーク、コラボレーションエリア、リフレッシュエリアなど様々なエリアを配置し、自由なコミュニケーションとコラボレーションが生まれるオフィス空間を設計しました。

コニカミノルタ施工事例 化学メーカーA社様

株式会社シーイーシー様のオフィスデザインでは、「会議室が常に満室状態。今後の成長戦略を担うようなビジネスの新しいソリューションを生み出せるオフィスを構築したい」という声があがりました。その結果、コミュニケーションの活性化を考慮した、交差するようなレイアウトを採用し、各デスクをゆったりと配置。執務室のほか、社員がくつろぐリフレッシュスペースは、窓際のカウンター席が空港をイメージさせる空間にするなど新しいオフィス環境を作りました。

施工事例B–  コニカミノルタ施工事例 株式会社シーイーシー様

また、社員のリフレッシュ効果を高めるとして導入が進んでいるカフェスペース。株式会社アイキューブドシステムズ様のカフェスペースは、受付の役割も担っています。社内外の人が行き来しやすいよう、ソファ席やカウンター席、1on1など多様な働くシーンを限られたスペースの中に作りながら、カフェスペースへの導線設計など様々な工夫を施したオフィス空間づくりを実現しました。このオフィス空間では、昼夜で印象が変わる照明計画も行っています。

施工事例C –  コニカミノルタ施工事例 株式会社アイキューブドシステムズ 様

また、コニカミノルタジャパンの本社オフィス(東京浜松町)は、社員の声を活かした形で、2021年5月、「つなぐオフィス」をコンセプトにしたオフィス空間にリニューアルしました。社員に向けたアンケート結果から、コロナ禍のテレワークでも80%の社員が生産性が落ちなかったと回答する一方で、社員の孤独感が増えたという声もありました。それらの意見をベースに、社員やお客様などの様々な人がつながる場所として、新しいオフィスデザインへ。コロナ禍で進んだテレワークとオフィス出社のハイブリッド化に合わせて社員がより高いパフォーマンスを発揮できるよう、「集中できる空間」「チームを超えたコラボレーションが加速する空間」「偶然の出会いを生み出すクリエイティビティ空間」を創りました。

「集中することは、幸福感を高めるためにとても重要なクリエイティブ活動です。また、創造性を発揮するためには偶発的な出会いが必要だということもわかっています。『集中』『必然的な出会い』『偶然の出会い』と3つの空間に分けたことによって、多様性が生み出されるでしょう。多様性は幸せを感じるためにとても重要なんです」(前野教授)

また、社員がワークスタイルに合わせて座席の場所やスタイルを選択できるフリーアドレスを採用しているほか、様々なコミュニケーションスペースやソロワークスペースを完備。社員もお客様もリフレッシュの場として活用できるカフェスペースもこだわりのオフィス空間として工夫を凝らしています。

つなぐオフィス

社員一人ひとりの働きやすさとは、幸せな状態とは、一体何なのか――。これからも引き続き、ウェルビーイングをもとに満足度の高いオフィスデザインを追求する動きは進みそうです。誰もが幸せを感じながら、自然と高いパフォーマンスを発揮し、それが企業の成長につながるように。ぜひ、それぞれの企業に合った理想のオフィス環境を実現していただきたいですね。

 

インタビュアープロフィール
前野隆司(まえの・たかし)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長、一般社団法人ウェルビーイングデザイン代表理事。
1962年山口県出身。東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。ヒューマンインタフェースのデザインから、ロボットや教育、 地域社会、ビジネス、価値、幸福な人生、平和な世界のデザインまで、様々なシステムデザイン・マネジメント研究を行なう。著書は「幸せのメカニズム」(講談社)、「幸せな職場の経営学」(小学館)など多数。

一般社団法人ウェルビーイングデザイン
https://www.well-being-design.jp/

【最新のオフィスがぎっしり】オフィスデザイン事例集

「日経ニューオフィス賞」を受賞したコニカミノルタがデザインしたオフィス事例をまとめた一冊です。最新のトレンドが知りたい!新しいオフィスのアイデアが欲しい場合などにご活用ください。

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