フリーアドレスの目的から導入手順のほか、“全員でのフリーアドレスは難しい” という場合の選択肢、導入後の課題と解決策までまるっとご紹介!オフィス改善のヒントに、ぜひご覧ください。
在宅勤務、テレワーク・・・ コロナ禍で働き方の多様化が進んだ今、アフターコロナのワークスタイルとして注目されているオフィスデザインがあります。働く「時間」と「場所」の両方を自由に選べる、アクティブ・ベースド・ワーキング(ABW)です。4、5年前から、クリエイティブ性を必要とされる業界など一部の企業では導入されていましたが、アフターコロナを見据える今、急速に関心が高まっています。ABWでオフィスやワークスタイルがどう変わるのか、実際の導入事例を通して、業務の効率や仕事の質、オフィスの価値、という観点から、ABWを解説していきます。
目次
コロナ禍におけるニューノーマルとしてのABWの重要性
コロナ禍で、なぜABWが注目されているのでしょうか。まずはコロナ禍でワークスタイルがどう変わったのかを振り返りながら、アフターコロナのオフィスの役割について考えていきましょう。
コロナでワークスタイルはどう変わったか
コロナ禍において、急速にテレワーク(在宅勤務)が広がりました。安倍晋三前首相が声高に提唱しながらもなかなか進まなかった「働き方改革」が、まるでオセロをひっくり返すかのように一気に進みました。
それによって、家でも、出先でも、カフェでも、どこでも支障なく業務を遂行できる体制を急ピッチで整える必要が出てきました。通勤時間を短縮できる分早い時間から業務を始め、出社せざるを得ないときもできるだけ朝夕の通勤時間帯を避けて出社するーーそんな働き方ができるよう、既定の時間にとらわれず自分で働く時間を選べるフレックスタイム制度を導入する企業も増えました。
2021年6月、ニッセイ基礎研究所とIT企業の「クロスロケーションズ」(東京)が公表した、「オフィス出社率指数」 によると、東京都心のオフィスで働く人の2021年5月の出社率は、「丸の内・大手町」など16地区で、コロナ前の52%へ減少していることがわかりました。
すでに1年以上、ウィズコロナのワークスタイルが続いており、アフターコロナでも「オフィスへの出社が基本」という以前の状況に戻ることは考えにくくなっています。
働く人たちの意識も変わりました。コニカミノルタジャパンが2020年春の緊急事態宣言による在宅勤務環境において行ったアンケートでも、約8割の社員が「アフターコロナでも多少の在宅勤務を希望する」と回答していました。
出社とテレワークを勤務状況に応じて変えていきたい、そう考える社員の意向を汲んだ新しいワークスタイルの設計が急務になっています。これこそが、ABWが注目されるようになった背景です。
アフターコロナのオフィスの役割
ワークスタイルが変化すると、オフィスが果たす役割、そしてオフィスに求められる機能も変わってきます。
従来のオフィス作りと言えば、社屋の中に社員一人ひとりのスペースを確保し、無駄なく配置していくことでした。窓際に管理職の席が配置され、グループごと、部署ごとにお互いが向かい合わせになるように島型に机が並べられてきました。
ところが、出社する社員の数が減った結果、固定の席に縛られないフリーアドレスを導入する企業が増えました。全員が出社するわけではないので、フリーアドレスにすれば席数を減らすことができ、また空いたスペースをコラボレーションを促進するようなエリアや集中力を高めるエリアなどにすることで、効率的かつ効果的にオフィスを使えるようになります。
そして、出社する機会が減ったからこそ、オフィスに本当に必要な役割が改めて見直される動きが増え、オフィスの価値をいかに高めていくかがより重要視されるようになりました。生産性や業務効率が高く、社員の創造性とモチベーションが上がるオフィスをどう作るか。そんな視点でオフィスデザインを見直すことが求められるようになってきました。
ABWは、まさにそれらを実現させるためのオフィスデザインです。
導入事例① コロナ後の働き方の多様化に対応
オフィスにABWの考え方を取り入れることで何が変わっていくのか、具体的な事例を参考にしながら見ていきましょう。
コミュニケーションが活性化するオフィス
まずは、アフターコロナを見据え、オフィスのレイアウトを変更をし、ABWを充実させた株式会社ネットワールドさまの事例から。
ITインフラストラクチャのソリューション・ ディストリビュータとして革新的な技術製品と関連サービスを提供している同社は、2021年1月、働きやすい環境づくりのためにレイアウト変更を行いました。
レイアウト変更の目玉は、フリーアドレスの導入に伴い、社員同士のコミュニケーションが活性化するように、明るく、集まりやすい打ち合わせスペースを多数設けたことです。
同社に限らず、テレワークが広がる中で顕在化してきた大きな課題の一つが、社員同士のコミュニケーションの希薄化でした。それに伴い、帰属意識の薄れ、孤独感、精神的なストレスへの対応が必要になってきました。
2013年から働き方改革をスタートし、コロナ前でもテレワーク頻度の高かったコニカミノルタジャパンでさえも、2020年春の緊急事態宣言下でのテレワークについて、コミュニケーションの希薄化を感じていたことがわかっています。
長期化するテレワークにより、特に、若い社員は一人で仕事をしていると、慣れない業務を一人でやる不安感、孤独感からストレスを感じ、精神的な支障が出やすくなっているようです。
そこで株式会社ネットワールドさまは、フロアごとに実際に利用する社員の方たちの意見を取り入れ、働きやすいオフィスを実現させました。
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Office Right Sizing ~ニューノーマル時代のオフィスづくり~|コニカミノルタのオフィスデザイン・移転ソリューション|コニカミノルタ
立ち話の延長で、気軽に腰をかけながら意見交換ができるようなスペースから、しっかりと腰を落ち着けて話せるスペースまで、その時々の状況に応じてコミュニケーションが取れるようになっています。
感染症対策としてのフリーアドレス
フリーアドレスを導入したもう一つの目的は、感染症対策です。固定席では、空いている座席がたくさんあっても、その席に座ることができませんでした。フリーアドレスにすることで、ゆとりある座席を選ぶことができるので、社員同士の物理的距離を取りやすくしました。
それによって、感染の懸念という本来の業務とは関係ないところで余計なストレスを抱えることなく、集中して快適に働くことができる環境を実現しました。
同時に、集中して作業したい時のソロスペースやボックス席なども設けたことで、その日の作業に合わせた執務スペースを選べるABWオフィスになりました。
導入事例② ワークプレイスと生活空間をつなぐ次世代オフィス
– コニカミノルタ施工事例 ENEOSホールディングス株式会社様 –
コロナ対策だけでなく、さらなる未来を見据え、ABWの考え方を取り入れた導入事例をもうひとつご紹介します。
コミュニケーションを促すコラボスペース
20年先という長期ビジョンの実現に向け、次世代オフィスへとリニューアルしたのがENEOSホールディングス株式会社さまです。ワークプレイスと生活空間の両方が、リアルとデジタルでつながる次世代オフィスへとリニューアルしました。
最大のこだわりは、他部門との交流地点となる場所に、さまざまなコラボレーションスペースを配置したことです。
他部門とのコミュニケーションには、事前に予定していた打ち合わせから、バッタリ顔を合わせたところから始まるコミュニケーション、話が盛り上がり「あの部署にも声をかけようか」と広がっていくコミュニケーションなど、さまざまあります。
可動式の机と椅子で、自由に人数や配置を設定できるミーティングエリアは、開放感のある明るい雰囲気。植物を配置し、温かな雰囲気のあるミーティングエリアも生まれました。
ちょっとした隙間時間で打ち合わせができる立ちミーティングエリアでは、何気ない会話からキラリと光るアイデアが生まれてくることでしょう。
リニューアルに伴い、オフィスでの最も大切な役割ともいえるリアルなコミュニケーションを増やす仕組みを埋め込むことができた事例といえます。
一人ひとりの能力を引き出すオフィスデザイン
オフィスでの業務効率を上げるための工夫も、随所に散りばめられています。
一人で集中して作業をしたい人には、グリーンと木目調でやわらかく、優しいデザインに仕上げたソロワークエリアを。ふっと力を抜いて一人でリラックスできるような空間も生まれました。
ABWが目指しているのは、その時の業務に応じて自らが働く場所を選択する働き方です。一括りに「業務」といっても、一人で集中できる環境が求められる仕事もあれば、部署の垣根を超えたコミュニケーションを必要とするもの、アイデアを刺激するような環境を欲する仕事など、内容によって最適な環境は変わります。
それぞれに最も適した環境を整えることで、一人ひとりの能力を最大限に引き出すのがABWです。ENEOSホールディングス株式会社さまは、リニューアルによって自部門の業務遂行と他部門との交流推進を両立させるオフィスを実現しました。
アフターコロナを見据えた今、オフィス環境を見直そう
株式会社ネットワールドさまの事例も、ENEOSホールディングス株式会社さまの事例も、どちらも画一的ではなく、それぞれの社風や社員の要望に合わせて作り上げたことがポイントです。その過程を踏むことで、オリジナルのABWオフィスを実現することができるのですね。
「場所」という制約を取り払ったワークスタイルであるテレワークと、「時間」という制約を取り払ったフレックスタイムという働き方。この二つが融合するだけでなく、社員一人ひとりのベストパフォーマンスを引き出すことを考える、ABW。
アフターコロナを見据えた今だからこそ、オフィスに出社する必要があるのはどんな時? どんな機能がオフィスにあったら、出社時の仕事の質が高まる? と考えるいい機会です。
ぜひ二社の事例を参考にしながら、オフィスをただの場所と捉えるのではなく、ABWの考え方に基づいて、より生産性や効率を高め、モチベーションを高める空間として捉えてみてださい。
「日経ニューオフィス賞」を受賞したコニカミノルタがデザインしたオフィス事例をまとめた一冊です。最新のトレンドが知りたい!新しいオフィスのアイデアが欲しい場合などにご活用ください。