PFOSを含有する医療用X-レイフィルムの取扱いに関する自主基準

1. 表示について

医療用X-レイフィルムは表示を不要とする。

2. PFOS含有医療用X-レイフィルムの取扱い

PFOS含有医療用X-レイフィルムの現像作業は以下※1に従って行うように努める。

※1 「PFOS又はその塩及び化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令第三条の三の表PFOS又はその塩の項第一号から第三号までに定める製品に関する技術上の基準を定める省令」の第三章を参考にした。

1)現像作業に係る措置

医療用X-レイフィルム取扱事業者は、現像作業を行うときは、次の各号に掲げる措置を講じるように努める。

  1. 使用済みの現像液及び定着液を回収すること。
  2. 現像液又は定着液が飛散又は流出した場合に備えて、布等を準備すること。
  3. 前二号に掲げるものの他、現像作業を行うに当たって必要と認められる措置を講ずること。

2)医療用X-レイフィルムを現像する機器等に係る措置

医療用X-レイフィルム取扱事業者は、医療用X-レイフィルムを現像する機器等について次の各号に掲げる措置を講じるように努める。

  1. 医療用X-レイフィルムの現像を行う機器を設置する床面については、PFOSの地下浸透を防止するため、コンクリートとする措置又は合成樹脂等により被覆する措置を講ずること。
  2. 医療用X-レイフィルムの現像を行う機器からの配管等については、腐食しにくい材料を用いるか、又は有効な腐食防止のための措置等を講ずること。
  3. PFOSを含む廃水については、地下浸透を防止できる材質の排水管又は排水路を使用すること。

3)現像作業に係る汚染物の保管

  1. 関係者以外の者が容易に立ち入ることができない場所に保管すること。
  2. 現像作業に係る汚染物が漏れ、こぼれる等のおそれがない密閉式の構造の堅固な容器であって、浸透しにくい材料を用いて製作されたものに収めること。
  3. 雨水等によるPFOSを含む廃液の流出を防止するため、現像作業に係る汚染物を保管する容器は屋内に保管し、床面をコンクリートとする措置又は合成樹脂等により被覆する措置を講ずること。

4)現像作業に係る汚染物を保管している容器の表示

医療用X-レイフィルム取扱事業者は、現像作業に係る汚染物を保管するときは、汚染物を保管している容器の見やすい箇所に、当該容器に汚染物を保管している旨を表示するように努める。

5)現像に係る医療用X-レイフィルムの数量

医療用X-レイフィルム取扱事業者は、事業所ごとに、医療用X-レイフィルムの現像を行った数量を把握するように努める。

6)現像作業に係る機器等の点検

  1. 医療用X-レイフィルム取扱事業者は、現像作業に係る機器等について次の各号に掲げる事項を定期的に点検するように努める。
    1. 機器又は配管等からPFOSを含む廃液が漏出していないこと。
    2. 機器又は配管等に損傷又は腐食が生じていないこと。
    3. 床面等にひび割れがないこと。
    4. 前三号に掲げるもののほか、PFOSを含む廃液を取り扱うに当たって現像作業に係る機器等に異常が認められないこと。
  2. 医療用X-レイフィルム取扱事業者は、前項に規定する点検の結果において異常が認められた場合は、速やかに補修その他の必要な措置を講じるように努める。
  3. 医療用X-レイフィルム取扱事業者は、第一項の点検の結果の記録を作成し、これを作成の日から起算して五年間保存するように努める。

7)現像作業に係る措置

医療用X-レイフィルム取扱事業者は、現像作業を行う場合において、PFOSを含む廃液が漏出したときは、次の各号に掲げる措置を講じるように努める。

  1. 速やかに漏出の拡大の防止のために必要な応急措置を講ずること。
  2. 漏出したPFOSを含む廃液を回収すること。
  3. 回収したPFOSを含む廃液又はその廃液をふき取った布等を、密閉できる容器に入れて保管すること。
  4. 前三号に掲げるもののほか、漏出したPFOSを含む廃液を取り扱うに当たって必要と認められる措置を講ずること。

3. 廃棄

PFOSの含有の有無に関わらず、医療用X-レイフィルム、廃現像液及び廃定着液、及び、現像作業に関わる汚染物を廃棄する場合は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等に従って適正に処理する。環境省より「PFOS含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」※が策定されており、PFOSを含有する場合にはこの技術的留意事項に従い環境上適正な処理の確保に努める。

https://www.env.go.jp/recycle/misc/pfos/tptc.pdf New Window

4. 自主基準策定に係る背景説明

1)表示について

  1. 化審法では、PFOSが使用された業務用写真フィルムを譲渡又は提供する際に、PFOSによる環境の汚染を防止するために表示をすることが求められているが、医療用X-レイフィルムは、届出を行った販売業者により販売され、専門の医療機関の中で使用される製品であるために、取扱い方法や廃棄方法は周知徹底されており、既に散逸・紛失の防止は行われている。
  2. 医療用X-レイフィルムの譲渡・提供では、前項を熟知した医療機関のみで行われており、例えPFOS含有医療用X-レイフィルムを扱った場合でもPFOSの漏洩・拡散のおそれはない。
  3. メーカーのホームページにPFOSを含有するフィルムの情報が掲載されている。

2)PFOS含有医療用X-レイフィルムの取扱い

化審法では、PFOSが使用された業務用写真フィルムの現像作業に関わる事項について技術上の基準が定められている。しかし、医療用X-レイフィルムは医療機関という限定された専門家の範囲内で取扱われること、今後医療用X-レイフィルムに占めるPFOS含有医療用X-レイフィルムの割合は減少していくことから、医療用X-レイフィルムに基づくPFOSによる環境の汚染リスクは極めて小さいことが予測される。

3)廃棄

  1. 医療機関では、現像済み医療用X-レイフィルムについては、個人情報の保護及び銀回収の理由で産業廃棄物として専門業者により回収・焼却処理されている。
  2. 医療機関では、患者ごとに種々の診断画像が混在して保管されており、診断画像毎に製造番号や刻印等の情報からPFOSの有無を判別することが困難である。また、現像済みX-レイフィルムのPFOS有無を確認しようとする場合、撮影年月日などから製造時期を特定するなど、PFOSの含有を正確に識別することは出来ない。もしPFOSの含有を識別できたとしても、その分離・隔離作業は事実上不可能である。
  3. 医療用X-レイフィルムの現像処理に使用する現像液・定着液は、PFOSを含有しないが、処理するフィルムに含有されるPFOSの一部が現像液・定着液中に溶出する。ただし、医療用X-レイフィルムの現像液及び定着液は、PFOSの有無にかかわらず産業廃棄物として専門業者により回収・焼却処理されている。(廃定着液は銀を含むので、銀回収業者が引取り、銀回収を行い、回収後の残渣は焼却処理される。廃現像液は銀を含まないが、定着液とともに排出されるので、定着液とあわせて銀回収業者によって回収され焼却処理されている。)

以上