テレワーク推進から始まった富士市との4年間の挑戦。
地域課題に寄り添う、持続可能な官民連携モデルに迫る

集合写真

富士市様

市職員総数

2‚807人(2025年4月1日現在)

業種

公共・組合

導入目的

テレワークやDXを活用し、若者流出や人手不足といった地域課題の解決を図る

実現手段

官民連携での共創スペースの設置や業務のデジタル化支援、IT活用による働き方改革と情報発信を推進

富士山のふもとに位置する静岡県東部の中核都市、富士市。トイレットペーパーの国内生産量で全国シェアの約37%を占める製紙業を中心に、「産業のまち」として発展してきた同市では、デジタル変革(DX)を通じた地方創生に取り組んでいます。

市内には東海道新幹線の新富士駅が置かれていることから東京へのアクセスが良好である一方、市内に大学がないことで進学する若者が市外へ流出していることが喫緊の課題です。富士市はこの課題解決に向け、SDGsやデジタル技術を活用した官民連携プロジェクトを推進し、住み良い地域づくりに取り組んでいます。その一環として始まったテレワークの推進や情報の発信、共創スペースの企画、DXの推進など、2021年からおよそ4年間続いているコニカミノルタとの官民連携プロジェクトについて、富士市産業交流部産業支援課 地域産業支援センターで主査を務める松葉 剛哲氏にお話を伺いました。

課題解決のポイント

導入の背景:コロナ禍の対応をきっかけに民間企業との協働を視野に入れる

産業のまちが直面する構造的な人口減少の課題

富士市の産業構造は、長年にわたって製紙業を中心とした製造業によって支えられてきました。国内屈指のトイレットペーパー生産量を誇る富士市は、安定した産業基盤に支えられ、富士山の恵みを受けた工業都市として発展してきたと、富士市の松葉氏は話します。

「産業基盤は安定しているものの、富士市には構造的な課題を抱えています。市内に大学が存在しないため、高校を卒業した若者の多くが進学とともに市外へ流出し、そのまま戻ってこないケースが多いのです。東京まで新幹線で約1時間という利便性の高さも、若者の流出を加速させる要因のひとつだと考えています」(富士市 松葉氏)

富士市役所の松葉様
富士市産業交流部産業支援課 松葉氏

人口減少が続く中で従来の産業構造を維持していくためには、人手不足を補う新たなアプローチが必要ではないかと認識され始めた矢先の2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が発生しました。テレワークの導入や業務のデジタル化といった、政府が掲げる「働き方改革」への対応が求められたのです。

「コロナ禍の対応をきっかけに、富士市ではDXやテレワーク推進を地域経済の再設計に活かすべく、民間企業との協働を視野に入れるようになりました。現場作業が中心の製造業において、業務のすべてをテレワーク化することは困難であることは理解していましたが、それでも業務効率化やDXの推進によって企業の生産性を向上させる余地は十分にあると考えています」(富士市 松葉氏)

富士市と企業、富士市と都市をつなぐ、テレワーク推進のご提案

コニカミノルタジャパンの田村氏
コニカミノルタジャパン 田村

富士市がDX推進のパートナーを模索していた2021年、コニカミノルタが提供している自治体・企業向けDX事例をご紹介させていただきました。過去に自治体支援を担当していたコニカミノルタの担当者より、若者の流出や「働き方改革」への対応、テレワークの推進といった当時抱えていた課題とニーズのヒアリングを実施。コニカミノルタジャパンの田村は、ご提案の趣旨について以下のように振り返ります。

「当初は自治体向けのご提案でしたが、課題とニーズをヒアリングした結果、富士市の中小企業向けの施策に方針を転換しました。東京には副業や兼業を希望する人材が豊富に存在する一方、地方にはそうした人材を受け入れる体制や快適に働ける環境が整っているケースはまだまだ多くありません。また、体制や環境が整っていたとしても、情報を届けられていないことも。こうした需給のミスマッチを解決できれば、地方と都市、行政と企業、それぞれにとってメリットがある仕組みを構築できるはずとご提案しました」
(コニカミノルタジャパン 田村)

2021年10月、富士市とコニカミノルタは富士商工会議所及び富士市商工会とともに「テレワーク先進都市を目指す」という共通目標と地域の未来に対する共通認識のもと、「テレワーク推進に関する連携協定」を締結しました。この協定は単なる業務委託関係を超えた、長期的なパートナーシップの基盤となっています。

導入の効果:デジタルとリアルの垣根を越えて首都圏の人財と地元企業との接点を生み出す場を形成

キャッチフレーズを起点に構築されたコミュニケーション設計

新富士駅に開設されたシェアオフィス「WORX新富士」のマーケティング事業からスタートした取り組みは、より包括的な地域活性化戦略として事業を拡大することになりました。「テレワーク推進に関する連携協定」に基づくさまざまなプロジェクトの核心となったのは、「『はたらく』の側に、いつも富士市。」というキャッチフレーズの策定だったとコニカミノルタ静岡の滝本氏は話します。

「デジタルとリアルの垣根を越えて活用されたこのキャッチフレーズには、物理的な距離に縛られない新しい働き方の提案が込められています。テレワークやリモートワークの普及により、必ずしも職場と居住地が一致する必要がなくなった現在、『働く場所の選択肢のひとつ』に富士市を想起させることを意識しました」
(コニカミノルタ静岡 滝本氏)

コニカミノルタ静岡 代表取締役社長 滝本氏
コニカミノルタ静岡 代表取締役社長 滝本氏(中央)

キャッチフレーズの策定後には、富士市での働き方や暮らし方を紹介するWebサイトを開設し、SNSとの連動や既存メディア、地元企業とのタイアップによって多層的な情報発信が図られました。マーケティング戦略の設計において、コニカミノルタが特に重視したのは、ターゲット層の視点に立った情報発信です。

コニカミノルタ静岡 奥村氏
コニカミノルタ静岡 奥村氏

具体的には、首都圏の人材と地元企業との接点を生み出す場である「富士市ビジネス交流会」や、参加者が自発的に富士市の情報を発信したくなるようなモニターツアーなどの企画を組み合わせています。参加者自身が体験を通じて富士市の魅力を発見し、参加者自身の言葉によるコンテンツ(UGC:ユーザー生成コンテンツ)が発信されるよう設計されました。

「自治体の情報発信は往々にして内向きになりがちで、実際に移住や副業を検討している人々のニーズとずれてしまうことは珍しくありません。そこで一方的な情報発信だけでなく、実際の体験者による信頼性の高い情報が自然に拡散される仕組みを構築しました。そこから富士市に関心を持った人が自ら情報を取りに行き、自然とWebサイトにたどり着ける導線を設計しています」(コニカミノルタ静岡 奥村氏)

富士市が企業に示した、新しい働き方のモデルケース

富士市内の中小企業にテレワークの導入を促すことを目的に、富士市は率先して新しい働き方をモデルケースとして示すために市役所内でワークプレイス改革が進められました。コニカミノルタジャパンにてリニューアルを支援させていただいたフロアにはフリーアドレス制を導入し、また市民と活発な議論ができる共創スペースも設置しました。この共創スペースの取り組みは、富士市役所職員の意識を大きく変える契機となったと高く評価いただいています。

「富士市役所内の取り組み効果は劇的なものでした。職場環境に対する以前のアンケートでは、『職場を他人に勧めたい』と回答する市の職員は皆無だったのですが、フリーアドレス制導入後は24.5%の職員が『勧めたい』と回答するようになったのです。職場環境に対する否定的な意見も、約90%から46.9%まで大きく減少しました。

こうした成功事例を見た市内企業からも『自社で導入したい』との声が上がり、市は企業向けのフリーアドレス導入補助金制度を創設するに至っています」(富士市 松葉氏)

プロジェクトのもうひとつの重要な側面は、最新技術の実証実験への取り組みです。コニカミノルタが社内で開発したクラウド型のオンラインマニュアル作成・運用ツール「COCOMITE(ココミテ)」を、富士市内の企業で実証実験する機会が設けられました。ベテラン技術者が持つノウハウを若手に効率的に継承するためのデジタルツールとして、高齢化が進む製造業における課題解決として期待されています。

その他にも、富士山を目的に増加する訪日外国人観光客向けの多言語音声翻訳サービス「KOTOBAL(コトバル)」の試験運用いただきました。今後、自治体だけでなく、観光や公共機関、医療機関など、外国人対応が求められる現場での活用が期待されています。

技術以上に重要なのは、持続可能なパートナーシップ

これらの多岐にわたるプロジェクトの背景には、取り組みの窓口としての役割を果たしたコニカミノルタ静岡の存在がありました。東京に本社を置くコニカミノルタと富士市の間に立ち、地域密着型のサポートを提供しています。

地方自治体との協働において、物理的な距離は想像以上に大きな障壁となります。Web会議の普及により遠隔でのコミュニケーションそのものは可能になりましたが、信頼関係の構築や細かな調整作業においては、やはり対面でのやり取りが不可欠です。プロジェクト開始当初は、ほぼ毎日のようにコニカミノルタ静岡の担当者と富士市の職員が顔を合わせ、事業の詳細を詰めていきました。

インタビューを受けた方の集合写真
写真左から、富士市 松葉氏、コニカミノルタ静岡 奥村氏、
コニカミノルタ静岡 滝本氏、コニカミノルタジャパン田村

「4年間にわたるプロジェクトを通じて得られた成果の中でも、持続可能なパートナーシップを得られたことは特筆すべき成果です。技術やシステムだけでなく、人と人との信頼関係が基盤にあったと感じています。さらにコニカミノルタ静岡が単なる窓口機能にとどまらず、富士市の地域イベントに積極的に参加し、地域コミュニティの一員として活動していたことも印象に残っています。利益を度外視して市のイベントに協力し、地域住民にコニカミノルタの技術や製品を紹介する活動を続けてきたことで単なる業務委託関係を超えた真のパートナーシップが構築されたと思います」(富士市 松葉氏)

今後の展望:持続可能なテクノロジーを活用した住みやすいまちづくり

人口減少時代に求められる、持続可能な地域戦略

富士市だけでなく、全国の地方が抱える人口減少問題。移住促進策だけでは根本的な解決は難しく、人口減少を前提にした持続可能な地域社会の構築が急務です。松葉氏は「テクノロジーを活用した住みやすいまちづくりが重要である」と強調します。

「今回のコニカミノルタとの取り組みのように、役所の職員だけでは思いつかない発想や技術を民間企業との連携によって取り入れていく必要があります。そのためには一過性の利益ではなく、地域の未来と課題に寄り添った継続的なソリューションをご提案いただけるパートナーが求められると考えています」(富士市 松葉氏)

人材不足や働き方改革の対応などの地域課題の解決には、紙による販促施策やデジタルを活用した情報発信、リアルな体験の創出など、一人ひとりにストーリーを届けるための丁寧なコミュニケーション設計が必要不可欠です。私たちコニカミノルタでは、デジタルと紙が持つそれぞれの強みをかけ合わせた「デジタル×リアル」のアプローチで、地域社会に寄り添いながら課題の解決に取り組んでまいります。

数多くのプロジェクトで培ったノウハウをもとに、地域・企業ごとの課題解決をサポートいたしますので、まずはコニカミノルタまでお問い合わせください。

お客様プロフィール

富士市 様

コニカミノルタのロゴマーク

名 称

富士市

住 所

静岡県富士市永田町1丁目100番地
※上記は富士市役所の住所になります。

従業員数

2‚807人(2025年4月1日現在)