公開日2025.12.10
【導入事例】 株式会社オダプリント 様
事業領域拡大目指してラベル市場へ展開
教育関連の印刷物を一手に請け負う 地域密着型のビジネス推進
※本記事は、ラベル新聞2024年11月15日号に掲載された内容をもとに構成しています。
株式会社オダプリント(青森県八戸市北インター工業団地、TEL0178-21-2711)は地域密着型の一般商業印刷会社として事業を推進。広報誌や機関誌ならびにチラシ、リーフレットなどを製造することで企業成長した。さらに事業領域の拡大を目的に、コニカミノルタ製電子写真(EP)方式のデジタル印刷機を導入。多品種小ロットのラベル製造ビジネスへと進出を果たした。同社の事業動向とラベルビジネスの現状、今後の展望について、小田正徳社長に話を聞いた。
最初に貴社の概要を
当社は1970年、現会長である私の父親がオフセット印刷を主体とする一般商業印刷会社として創業しました。地元・八戸に密着し、書籍やチラシ、ポスター、ダイレクトメール(DM)などの印刷・製本事業を展開してまいりました。八戸は水産業、農業および工業など地場産業が根付いており、それに付随して印刷物の仕事を獲得できる強みがあります。
株式会社オダプリント 小田 正徳 社長
手がける印刷物で特にシェアの高い分野は
教育関連は、当社の売上で半分近くの比率を占めています。大学では設立に向けて莫大な資料が作られます。加えて研究用の資料を印刷する仕事もあり、これらの業務をこなすことで、当社は成長したといえるでしょう。
学校の卒業文集や生徒会、教育委員会などの資料、さらには学祭やスポーツイベントの応援グッズで多くの実績を上げています。近隣に高校野球の甲子園常連校が所在しており、応援グッズは横断幕やうちわ、メガホン、オリジナルTシャツなどといったように、紙媒体以外への印刷も少なくありません。ビジネスの特徴を挙げるならば、一つの学校で採用されると、他の学校からも同じように受注できること。また学校のイベントは定期的に実施されることも魅力といえるでしょう。これらの印刷物にはデザイン性が求められますが、当社では5人のデザイナーが在籍しており、長年にわたって蓄積したデザインのノウハウを持っているため、信頼を得て注文をいただいています。
一般商業印刷向けの設備は
両面印刷のオフセット枚葉機を複数台保有しているほか、断裁機や折り加工機、カッティングプロッタといった加工機などを保有。さらに印刷物を圧着させて封筒一体型のDMに加工するシステムも導入しています。都市部ならば印刷後の加工などを外注するケースも多いと思うのですが、当社のような地方の印刷会社は外注先が少なく、社内で印刷から加工・製本までを一貫してこなす必要があるのです。
オフセット枚葉機や断裁機、折り加工機などを設備。あらゆるニーズに応じる
また、モリサワが販売展開しているシートタイプのデジタル印刷機「RISAPRESS Color 14000」や大判のインクジェットプリンタ(IJP)も設備。先ほど申し上げたような応援グッズなどは極小ロットの要望が多く、これらのオンデマンド印刷システムを活用しています。当社は地元のお客さまから依頼される印刷物に対応するため、数多くの印刷・加工機器を備えています。
シートタイプのEPデジタル印刷機も導入し、オンデマンド対応も
少子化傾向にらみラベル印刷に着目
コロナ禍ならびにアフターコロナを迎えた現在、ビジネスに変化などは
これまでの実績や設備投資などを理由に、当社はコロナ禍以前まで、業績は比較的堅調に推移していました。それがコロナ禍では、学校関連のイベント中止が相次ぎ、受注案件の喪失が続くなど、厳しい状況となったのです。幸いなことに八戸市の広報誌を落札。おかげでなんとか苦境を乗り越えることができました。
アフターコロナを迎えた現在、業績はコロナ禍以前の水準へと戻りつつあります。しかし、教育関連について県内・市内はもとより全国的な少子化の傾向からも、厳しい見通しとなることが否定できません。そのような観点から、従来の仕事を守りつつも企業成長のために新たな需要開拓に取り組むべきと考えました。その1つとして、ラベル製造への道を見いだしたのです。
ラベル印刷事業への展開を決断した理由を
かつては〝ラベル=特殊印刷分野〞との認識が強く、当社の仕事ではないという印象であり、実際にラベルを受注しても、外注にお願いするケースがほとんどでした。そのような状況からラベル製造ビジネスへと踏み切ったのは、価格以外の理由で注文をいただけるからです。
一般商業印刷の世界は、営業活動を行ったとしても、大体が価格の話で終始してしまいます。しかしラベルは近隣に競合が少ないせいか『この容器に貼るラベルができないか』『デザインや色合いはこんな感じに』など、お客さまとのやり取りが中心となります。それならば本格的にラベルの営業活動してみようと考えたのです。
これまでラベルを印刷した実績は
地元のワイン醸造会社に同級生がいて、その商品に貼付されるラベルの印刷を受注しています。もっともワインラベルは当社が手がける一般の印刷物よりも製造枚数が少なく、またシーズン商品となることから、定期的な注文は難しいといった特徴があります。そのような理由から、印刷機ではなくIJPを活用してラベルを製造しています。
当初は、粘着剤の知識や印刷・加工のノウハウがなく、お客さまや粘着紙メーカーからアドバイスを受けて作業をこなしていました。やがて、ある程度の手応えを感じたこともあり、ラベル印刷機の導入を検討することにしたのです。シートタイプのデジタル印刷機などでお世話になっているモリサワの担当者に協力してもらい、2020年にラベル用デジタル印刷機の設備を決断。事業再構築補助金の採択を得て、翌21年12月にコニカミノルタ製のEPデジタルラベル印刷機『AccurioLabel 230』の導入へと至ったのです」
コニカミノルタ製のデジタル印刷機を選んだ理由は
これまでの設備導入や、今回のデジタルラベル印刷機に関する補助金申請で大変お世話になったモリサワの担当者から紹介を受けたこともあり、他メーカーの機種は最初から選択肢にありませんでした。それでも当機種を設備して間違いはなかったと感じています。
導入した機種はCMYKの4色機で、オペレーターはデジタルデータの扱いに慣れている製版担当のデザイナーが兼任。1〜2カ月のトレーニングで使いこなせるようになりました。前述の通り、当社ではすでにシートタイプのデジタル印刷機を3台設備していますが、ラベルでもスキルレスで稼働できることをあらためて実感しました。
デジタル印刷機導入 コニカミノルタ製「AccurioLabel 230」
21年に設備
現在の稼働状況を
製造するラベルの平均ロットは1,000枚といったところですが、時には3万枚の仕事もこなしています。色の再現性については、すでにEP方式のトナーで経験があったために認識の違いはなく、十分に満足しています。ただし、先ほど説明したワインラベルについては、IJPのインクで出力していた色がトナーとやや色合いが異なるとの判断から、品質維持を理由に、従来通りIJPでこなしています。
また当機種には白トナーのユニットを搭載していないため、下地となる白のベタ印刷が必要な場合は協力会社への外注で対応しています。そのほか、タクシーの車体やウィンドーに貼付するフルカラーの長尺ステッカーも当機種で製造しています。当社が設備するオフセット枚葉機ではサイズ的に印刷が難しいため、重宝しています。
ECサイト構築で幅広い営業活動も
抜きなどの後加工に関しては
既設のグラフテック製シートカッターや、AccurioLabel 230と同時期に設備したサンワコーケン製のカッティングプロッタをオフラインで活用しています。トンボを読みつつ抜き加工を施しています。
抜きなどの後加工はカッティングプロッタを活用
ラベル製造ビジネスを拡大するための戦略について、どのように考えていますか
サンプルを作成して既存の顧客へ提案することで周知に努めています。当社は『普通の印刷屋さん』というイメージが定着していますので、このような新しいビジネスを手がけているという点を訴求する必要があるのです。また事業再構築補助金を活用して自社のホームページにECサイトを開設。地元に限定されていた商圏の拡大を目指しています。実際に、関東や近畿などの遠方からもラベルの受注をいただくようになるなど、着実に実績を伸ばしています。
とはいえ、当社はラベル製造のノウハウがまだまだ足りていないとも実感します。粘着紙の種類と特徴をもっと多く理解していれば、お客さまへの提案もスムーズになるでしょうし、ビジネスの幅をさらに広げることができるでしょう。その点に関しては、コニカミノルタをはじめサプライヤーからの情報提供を望みたいところ。また私はかつて、日本プリンティングアカデミーで印刷の知識を学んだのですが、同級生だった株式会社ワールドプリンターの齋藤和則社長、同校の先輩かつ同郷でもある津軽印刷株式会社の大宮裕介社長がおり、ラベル製造で困った時にアドバイスをもらっています。
印刷サンプルを配布してラベル製造事業をPR
多品種小ロット・フルカラーの製造を
ラベル製造ビジネスの今後については
当社はAccurioLabel 230を導入したことによって、事業の幅は格段に広がったと認識しています。事実、ラベル製造ビジネスへの展開により、当社全体の売上でラベル製造が占める割合は15%となりました。当機種を設備してから3年間ですので、年率5%の成長を達成していることになります。ラベルに関する問い合わせも順調に増加しており、当社がさらに成長する事業へとなり得るでしょう。大いに期待できます。
もっとも製版を必要とするようなコンベンショナル機を設備して、大がかりなラベルの製造を行うつもりはありません。前述の通り、当社はラベル製造に対する技術ノウハウが蓄積されておらず、急速な事業の拡大は難しいと考えます。加えて多品種小ロット、フルカラーの高付加価値なラベルを製造するビジネススタイルが当社にマッチしているとも感じています。
最後に展望をお聞きします
当社はこれまで、著しく変化する印刷技術の追求に加え、お客さまのニーズを正確に把握し、情報伝達やデザイン力を駆使することで、成長してきた経緯があります。中でもデジタル印刷技術は近年、急速な進歩を遂げており、それに関連するビジネスとして多品種小ロット、フルカラーのラベル製造があると考えています。今後も、これまで蓄積してきた経験と技術に基づき、付加価値の高い製品をお客さまにご提供することで、社会に貢献できるように努力していきたいと思います。
― 小田様ありがとうございました!
お客様プロフィール
名 称 |
: | 株式会社オダプリント |
住 所 |
: | 青森県八戸市北インター工業団地三丁目2-100 |
設 立 |
: | 昭和45年4月 |
従業員数 |
: | 16名(2023年6月現在) |
事業内容 |
: | 印刷物の企画・印刷・加工(製本)・発送代行,デザイン制作,オンデマンド印刷 |
U R L |
: | https://odapri.jp/ |
※掲載されている情報は取材時のものであり、閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。(取材時:2024年10月)
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