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メディカルネットワーク
No.270 No.1-2007
画像診断医と遠隔画像診断、PACS

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「画像診断医と遠隔画像診断、PACS 」

Konica Minolta Medical Network No.270 No.1-2007

山下康行 熊本大学大学院医学薬学研究部放射線診断学部門教授

山下康行
熊本大学大学院医学薬学研究部
放射線診断学部門教授

最近の医師不足は我々放射線科にとってもゆゆしき事態である。若い医師の都会志向に呼応して遠隔地に派遣できる医師が激減し、地方の病院はどこも患者数が減り、収益も悪化している。この原因はいくつかあるが、その中で初期研修(いわゆるスーパーローテート)の義務化の影響は極めて大きい。多くの研修医は都会を志向するため、地方の大学病院では研修医が足りず、地方から医師を呼び戻し辛うじて診療を行っている。そのしわ寄せを最も食っているのがいわゆる弱者である地方の病院である。返す返すも厚労省の愚策にはあきれるばかりである。

そのような中、人手不足を解消する手段として、放射線科では遠隔画像診断という方法に関心が集まっている。この遠隔画像診断はわが国において1970年代より実験的に行われていたが、最近のIT技術の進歩によって急速に進歩した。さらに2002年の社会保険診療報酬改訂でへき地、遠隔地の病院から特定機能病院、研修指定病院などに画像送信をすれば、送信側の病院で画像診断管理加算できることなどが認定され、本邦でも遠隔画像診断が医療の一分野として認知されるに至っている。それを受け日本全国に遠隔画像診断をビジネスとして行う施設があちこちで登場している。その形態は多様であり、特定の施設同士を専用の回線で接続するようなものから、開業という形態をとるもの、広く全国的なビジネスとして展開するようなものまである。

しかし、この遠隔画像診断がうまくいっているかというと、その評判は必ずしも芳しいものではない。その理由はいくつか存在するようであるが、その中でも、読影レポートの質の問題と、過当競争による読影医への低報酬が大きな理由として挙げられよう。この両者は密接に関連しており、大多数の読影センターで悪循環に陥っている印象を受ける。これは、遠隔画像診断は画像診断の手段であるにも拘わらず、それが目的と化してしまって遠隔医療の本質を見誤ってしまっているからではなかろうか。もう一度、遠隔画像診断のあり方を問い直してみる必要がありそうだ。

私自身は、本来の遠隔画像診断は放射線科医のアルバイトとして行うのではなく、大学などのスタッフのいる基幹病院が中心となって地域医療に貢献すべきものと考えている。提携先の画像システム(PACS)をそのまま基幹病院でカバーすることで、依頼病院と大学病院のPACSが癒合しているかのようなシステムを作ることで、遠隔地の患者も質の高い医療を享受することが可能となる。勿論、常勤医は必要であろうが、逆に少数の放射線科医によってすべての領域をカバーすることは到底不可能であり、必然的に質の低下を招く。

またIVRや放射線治療のようにどうしてもon siteで行わなければならないようなものもある。そのような数少ない常勤医を後方支援するような考え方である。ある程度集約化することで、読影の効率と質は大幅に良くなると考えられる。症例収集も可能であり、研究上も有利であろう。しかし、放射線科の読影件数はtotalでは変わらないのであるから、非常に賢いCADなどが開発されない限り、やはり放射線科医のマンパワーの確保は不可欠であろう。

いずれにせよ遠隔画像診断は、それをビジネスの目的として行うべきものではなく、放射線診療における一つの手段として進化していくべきものであろう。

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