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メディカルネットワーク
No.261 No.2-2002
放射線科における教育プログラム

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放射線科における教育プログラム

Konica Minolta Medical Network No.261 No.2-2002

宗近宏次

宗近宏次
昭和大学医学部放射線医学教室

一般撮影、CT、MRI、造影検査、超音波検査、核医学検査、IVRなど、すべての画像診断は、現代の医療において重要な役割をなしている。それだけに教育病院では、画像診断に用いる大型装置の新機種が発表されるたびに、経営的には多少無理をしてでも、教育と研究の面からそれらを導入せざるを得ないことが多い。教育は医療と切り離して考えられない。

病院経営面から考えるなら、画像検査はまだ包括化されていないので、審査で査定されない程度に検査件数は多い方が望まれる。しかし、医療と教育面から考えると、当然、患者の病気の診断と治療を目的に、患者に必要で十分な検査が行われなければならない。そのためには、過去の検査を含めて、1つ1つの検査の適応性を十分に検討しないと、無駄な検査が多くなる。無駄な検査が多くなれば、高い適応性をもつ患者の検査が待たされることにもなる。教育面では、無駄な検査が行われた場合、なぜその検査を行われたのかを研修医や学生に説明するのが難しくなる。しかし患者をもつ臨床医とカンファレンスを毎日しているわけでもないので、また検査オーダーを出した詳しい理由もわからないので、検査を必要でないと言うわけにもいかず、また検査のオーダーについて検討を促すこともできない。だから一般のオーダーはもちろん、救急オーダーの検査もすべて我々は引き受けて行っている。

そこで放射線科としては、検査オーダーをすべてこなし、しかもどの検査の質も下げることのないようにするために、いろいろ対策を考えなければならない。ヘリカルCT以前には、検査部位が胸部、上腹部、骨盤など、検査する範囲が限られていたが、ヘリカルCT、とくにMD-CTの導入以後は躯体(胸腹骨盤)全体など、広い範囲の検査オーダーが多くなった。この種のオーダーには、コリメーションとギャップを比較的大きくして、最終的に単純と造影の検査を含めて、フィルム4枚以内(1枚20イメージ)に全イメージを収めるようにした。また検査室で、事前に放射線科医が出来る限り検査オーダーの目的と内容をチェックして、その検査の適応性の強弱を判断して、通常の検査目的なら検査マニュアルに従って、検査法をルーチン化して行なうようにした。そして適応性の強い検査には、検査法を放射線科医がモニターして、その場で診断がつけられるような検査を行い、読影もその場でディクテーションして報告書も作るようにした。ルーチン検査法には放射線科医が検査に直接関与せず、技師に任せるので、検査プロトコール(マニュアル)の作成があらかじめ必要である。

検査オーダーは臨床医の仕事なので、放射線科医は臨床医に各種検査の利点欠点とその有用性などについて教えなければ、無駄な検査オーダーを減らすことは出来ない。臨牀研修医の教育プログラムが必要である。そこで放射線科では、放射線科レジデントの専門医教育だけではなく、臨床研修医のための画像診断の教育プログラムも考えなくてはならない。読影室での画像診断に加えて、各検査室においても検査の仕方とその適応などを勉強する。症例カンファレンスにも出席してもらい、臨牀研修医に症例の提示と解説もしてもらい、放射線科の仕事の理解を深めてもらう。さらに放射線科では、臨床実習として配属される医学部5年生と6年生の卒前教育もしなければならない。以前は、医学部学生の教育を、放射線科レジデントや臨牀研修医とは別々の教育プログラムで教育していたが、今では、放射線科専門医―放射線科レジデント―臨床研修医-医学部6年生-医学部5年生のグループを作り、グループで教育するシステムにした。問題解決型の勉強法を取り入れて、それぞれ下にいる人を教え、学生も出来る限り実践に参加するようにした。しかし、放射線科レジデント、臨牀研修医、医学部学生は、それぞれ放射線科における勉強の目標が違っているので、教育効果を出すのはなかなか難しい。

放射線科におけるもう1つの大切な教育プログラムは、診療放射線科技師と看護師の教育である。以前の放射線科では考えられないほど、今では放射線科における看護師の役割は大きくなった。CT、MRI検査室、DR血管造影室、核医学検査室はもちろん、放射線治療室でも、看護師なしには仕事が安全に、また順調に進まない。検査のスループットを上げようと思っても、医師や技師だけではどうにもならず、看護師の数で決定される状況である。そこで、放射線科医、技師、看護師が各検査部門別にグループを作り、運営会議を定期的にして、看護師が放射線科の仕事内容にも興味をもってもらうようにした。また、ある程度の画像診断の内容を理解してもらうため、勉強会やカンファレンスを看護師に行なっている。診療放射線技師の教育はさらに大切である。良い画像検査を放射線科医の関与なしに行なうには、技師の教育は欠かせない。とくに画像検査のルーチン化をしようとすれば、なおさらで、技師が画像診断に知識があるかどうかで検査の質が大きく異なる。

放射線科の仕事内容は、検査オーダーをこなすことが主なので、その病院の診療内容に左右されてしまうことが多い。内科系の慢性疾患の患者を主に取り扱っている病院では、どうしても患者の在院期間が長くなり、また疾患も限られるので、画像検査は経過観察を主にした退屈なものにならざるを得ない。診療内容が変わり、急性疾患の患者が多くなり、また外科系疾患の患者が多くなれば、取り扱う画像検査件数も多くなり、また画像検査の内容も変わるので、放射線科は活性化し、放射線科での教育も変わることになる。つまり、放射線科における医療も教育プログラムも、医療保険制度に左右されるところが大である。

教わる者が真剣に学ぶようにするには、学んだことの評価がなくてはならない。それには、適切に評価する試験が必要になるが、それをプログラムに入れるにはかなりの労力が要求される。

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