ターミナルケア加算の要件・単位数とは?
ACPの手順とICT活用法も解説
2026年3⽉2⽇
日本は現在、多死社会へと突入しており、病院のベッド数だけでは最期の場所を確保しきれない状況が近づいています。こうした中で、介護施設は単なる生活の場としてだけでなく、終の棲家としての役割も期待されるようになりました。
国も在宅や施設での看取りを推進しており、その体制を評価する仕組みとして設けられているのが「ターミナルケア加算」(または「看取り介護加算」)です(※)。
この記事では、ターミナルケア加算の算定要件や単位数、そして重要となる人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)のプロセスについて解説します。また、見守りセンサーなどのICT機器を活用することで、スタッフの精神的な不安を和らげ、ご本人やご家族に寄り添う温かい看取りを実現するための方法についても紹介します。
※「ターミナルケア加算」は訪問看護、介護老人保健施設(老健)などの医療系サービスが対象です。「看取り介護加算」は、特別養護老人ホーム(特養)、グループホーム、特定施設(有料老人ホーム等)などの福祉系サービスが対象となります。
ターミナルケア加算とは、在宅での看取りを推進する施設を評価する加算
ターミナルケア加算(または看取り介護加算)とは、人生の最期まで尊厳ある生活を送れる体制を整えている施設を評価する加算です。
利用の対象となるのは、医師が「回復の見込みがない」と判断した方で、ご本人やご家族の同意を得た上で、身体的・精神的な苦痛を緩和した生活を送ることになります。
この背景には、高齢者人口がピークを迎える「2040年問題」があります。死亡者数の増加に伴い、病院だけでなく、住み慣れた地域や施設での看取りニーズが急増しているのです。対象となる施設は、介護老人保健施設(老健)、特別養護老人ホーム(特養)、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)など多岐にわたります。
これからの介護施設にとって、ターミナルケア加算を取得できる体制を整えることは、経営的なメリットだけでなく、地域の社会的インフラとしての信頼性を高める上でも不可欠な要素となっています。
ターミナルケア加算では「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」の取り組みが重要
ターミナルケア加算の算定において、近年特に重視されているのが「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」のプロセスです。ターミナルケア加算を算定するためには、厚生労働省が定める指針を遵守する必要があります。代表的な指針としては厚生労働省の「⼈⽣の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」が挙げられます。「⼈⽣の最終段階における医療」では、単に医療的な処置を行うだけでなく、利用者本人やご家族と十分な話し合いを行い、本人の意思に基づいたケア方針を決定することが求められています。
ターミナルケアを行う際は、ご本人が大切にしている価値観や、どのような最期を迎えたいかという希望について、ご本人、ご家族、そして医療・ケアチームが繰り返し話し合い、その意思を共有するプロセス、つまり「人生会議(ACP)」が重要です。
人の気持ちや身体の状態は時間の経過とともに変化します。そのため、一度決めたら終わりではなく、状態の変化に応じて何度も話し合いを重ね、その都度合意形成を図り、その内容を文書として記録に残すことが算定要件においても重要となります。
ターミナルケア加算の単位数
利用者やご家族と話し合い、ターミナルケアの方針が決定し、実施された場合、死亡日を起点としてさかのぼって加算が算定されます。具体的な単位数は施設の種類によって異なりますが、一般的には死亡日に近づくほど手厚いケアが必要となるため、単位数が高くなると捉えて問題ありません。
例えば、介護老人保健施設(老健)のターミナルケア加算の場合、死亡日当日は1,900単位、死亡日前日と前々日は910単位、死亡日30日前から4日前までは160単位といった形で設定されています。なお、特別養護老人ホーム(特養)やグループホームなどの福祉系施設では「看取り介護加算」という名称になり、算定期間や単位数が異なるため、必ず自施設の種類の最新の介護報酬算定構造を確認してください。
算定に必要な4つの要件
ターミナルケア加算を算定するためには、単に看取りを行ったという事実だけでなく、国が定める厳格な体制要件とプロセスを満たす必要があります。ここでは主な4つの要件について解説します。
1. 医療連携体制
看取り期には、容体の急変や疼痛管理など、医療的な判断が求められる場面が増加します。そのため、配置医や協力医療機関との緊密な連携体制が必要です。具体的には、24時間いつでも医師や看護師に連絡がつき、必要に応じて往診や指示を仰げる体制が確保されていることが前提となります。
2. ACPの実施
ターミナルケアでは利用者ご本人の意思決定支援が重要視されます。ご本人の意思確認が難しい場合でも、ご家族を含めた話し合いを通じて、ご本人の尊厳を守るためのケア方針を決定するプロセス(ACP)を踏んでいることが求められます。
3. 計画の作成
決定した方針に基づき、医師、看護師、介護職員などが共同して「ターミナルケア計画書(または看取り介護計画書)」を作成します。この計画書には、予想される身体変化やそれに対する具体的なケア内容が記載され、利用者またはご家族へ丁寧に説明し、同意を得る必要があります。
4. 記録の整備
日々の心身状況の変化、実施したケアの内容、ご本人やご家族との話し合いの経緯、医師からの指示内容なども詳細に記録することが求められます。これらの記録は、適切なケアが提供されたことを証明する重要な根拠となります。
ターミナルケア現場の課題
ターミナルケア加算の取得は経営の安定化に寄与しますが、ターミナルケアは支援する現場スタッフに相当なプレッシャーがかかります。特に見守りと連携における課題は深刻です。現場ではどのような課題があるのかも見ていきましょう。
「見逃し」の不安
夜勤スタッフなどは、「巡視の間に呼吸が止まっていたらどうしよう」「変化を見逃してしまうのが怖い」という不安を常に持っています。常に居室に張り付いているわけにはいかないため、次回の巡視までの間に容体が急変するリスクに対し、スタッフは常に強い緊張状態に置かれます。
こうした不安を解消するために有効なのが、見守りセンサーの活用です。特に、バイタル測定(心拍数など)だけでなく、微細な動き(呼吸に伴う体動や起き上がり)を検知できるドップラーセンサーなどを搭載したシステムを活用すれば、モニター越しにご本人の状態をリアルタイムで把握できます。動いている(息をしている)ことが確認できれば、スタッフは安心して他の業務に集中できます。
また、不要な訪室(生存確認のためのドアの開閉)を減らすことで、ご本人の安眠を守り、静かな環境を提供できる点もメリットです。
スタッフやご家族との連絡タスク
看取り期には、施設内のスタッフのみならず、外部の医師や訪問看護師、そしてご家族との情報共有が頻繁に発生します。これらを電話やFAX、紙の申し送りといったアナログな手段で行っていると、伝達ミスやタイムラグが生じ、対応の遅れにつながるリスクがあります。
しかし、ICTツールを活用し、バイタルデータや日々の経過記録、睡眠状態などをクラウド上でリアルタイム共有できれば、医師への報告もスムーズになり、的確な指示を素早く仰ぐことが可能です。また、遠方に住むご家族に対して、Google MeetやZoomなどのオンライン会議ツールを活用して面会や病状説明を行うことも、納得感のある看取りに貢献するでしょう。
法的リスクと「記録の証拠化」
看取りケアにおいて避けて通れないのが、ご家族とのトラブルや法的リスクです。「もっと早く病院に送ってくれれば結果は違った」といったご家族との意見の食い違いは、訴訟問題に発展する可能性もあります。
こうしたリスクからスタッフや施設を守る最も重要な手段は、記録です。いつ、誰に、何を説明し、どう合意したか。そしてご本人の状態はどう変化し、どのような対応を行ったかをコミュニケーションアプリや介護記録システムを利用して、正確にログとして残しておきましょう。
システム上に残された客観的な記録は、万が一の際の強力な証拠(エビデンス)となり、真摯にケアに向き合ったスタッフを守ることにつながります。
効率化の先にある「本来のケア」への回帰
ICTやセンサーの活用に対して、「機械任せで冷たい」という印象を持つ方もいるかもしれません。しかし、現場では逆の効果を実感するはずです。例えば、見守りセンサーが変化を検知して知らせてくれれば、スタッフは過度な見回りという業務から解放され、その分の時間をご本人やご家族に寄り添う時間に充てることができます。
また、センサーで呼吸状態や睡眠の深さを把握できれば、「そろそろ最期のときが近いかもしれない」という予測が立ちやすくなります。適切なタイミングでご家族に連絡を入れることができれば、ご家族が最期の瞬間に立ち会い、手を握って見送れる可能性が高まります。業務を効率化して生まれた余裕を、事務作業ではなく「人」に向ける。これこそが、ICTを活用した看取りケアの本質的な価値です。
テクノロジーは「温かい看取り」を実現するためのパートナー
ターミナルケア加算の取得は、施設としての専門性と信頼性を高める大きな一歩です。しかし、それを支える現場スタッフの負担を無視して進めることはできないしょう。
ICTを、血の通っていない冷たい機械と捉えるのは正確ではありません。ICTは、スタッフの見逃しへの不安や雑務の負担を取り除くことで、人間らしく利用者に寄り添う時間を創出するための、頼れるパートナーです。テクノロジーの力を借りて、スタッフが心に余裕を持ち、ご本人とご家族のかけがえのない時間を支えられる体制を作ることこそが、これからの介護施設に求められる温かい看取りの姿ではないでしょうか。
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記事監修
藤野 雅⼀(富津市天⽻地区地域包括⽀援センター センター⻑)
保有資格:社会福祉⼠、介護⽀援専⾨員
淑徳大学社会福祉学部卒業後、障害者支援施設に通算17年間、高齢者関連事業所に通算11年勤務。2017年より千葉県の高齢化率40%を超える過疎地の地域包括支援センターでセンター長を務める。2024年4月から2025年3月まで、月刊『ケアマネジャー』(中央法規出版)にて「障害福祉サービスから介護保険サービスへの移行」等をテーマに連載記事を手がける。
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