離床センサーとは?
種類や選び方、導入時の注意点を解説

2026年6⽉24⽇

高齢者の転倒・転落事故は、どの介護現場にも共通するリスクといえます。夜間や少人数シフトでは全居室を十分に見回ることが難しく、その負担を補う手段として多くの施設で導入しているのが離床センサーです。

この記事では、離床センサーの種類と特徴から、メリット・デメリット、導入時の確認ポイントまで解説します。

離床センサーとは?

離床センサーとは、ベッドや車椅子から利用者が離れようとする動きを検知し、スタッフに通知する機器の総称です。離床センサーが検知するのは、「寝返り」「起き上がり」「端座位(ベッドに腰掛けた状態)」「立ち上がり」「離床・歩行」という段階に分けられ、病院や介護施設で転倒・転落事故の予防に役立っています。

立ち上がりや離床の段階のみを検知するセンサーは誤報が少ないものの、立ち上がりの前兆がつかめない分だけ、スタッフが対応できる時間は短くなるでしょう。

離床センサーを選ぶ際は、「どのタイミングでアラームが鳴ると現場が動きやすいか」「現状の人員体制で対応しやすいアラーム頻度はどの程度か」といったことを整理した上で、離床センサーの種類や検知条件を決めることが大切です。

離床センサーの種類

離床センサーは大きく「接触型センサー」と「非接触型センサー」に分けられます。近年は、カメラやバイタルセンサーを組み合わせた「複合型」も増えています。

接触型センサー(マット式・クリップ式)

接触型センサーは身体に直接触れるタイプで、マット式とグリップ式に大別できます。

マット式には、マットレス上に敷いて体圧を検知するものと、ベッドサイドの床面に敷いて圧力を感知する床置きマットの2種類があります。
マットレスの体圧を検知できるタイプは、ベッド上にいるかどうかを確実に把握できる点が特徴です。後者の床置きマットは設置場所や厚みによってはつまずきの原因になる可能性があるため、動線や設置位置に配慮が必要です。共有スペースや部屋の出入口などに敷くと、つまずきのリスクがある点に注意しましょう。

クリップ式センサーは、紐を衣服やベッド柵に固定し、その紐が外れたり大きく引っ張られたりするとアラームが鳴る仕組みです。価格は比較的安く、古くから使われていますが、紐による拘束感や不快感から利用者が外してしまうケースも多く見られます。また、紐の長さや固定位置の調整が難しく、設定が不適切だと「すぐ鳴る」「危険な動きでも鳴らない」といった問題が起きやすい点が課題です。

非接触型センサー(赤外線・超音波)

非接触型センサーは、赤外線や超音波などを用いて、利用者の動きを離れた場所から検知するタイプです。ベッド柵やフレームなどに設置し、赤外線が遮られた瞬間や超音波の反射変化を捉えて異常を検出します。利用者に機器を装着する必要がなく、衛生的で見た目の圧迫感も少ないという利点があります。

かつては、カーテンの揺れや空調の風、家具の配置替えなど、環境の変化で誤検知が起こりやすいという課題がありましたが、近年はプログラム精度や学習機能の向上により、誤報は減少しています。設置位置や角度を調整することで、「端座位で鳴らす」「立ち上がりで鳴らす」など、検知タイミングを現場に合わせて変えられる柔軟性も大きな特徴です。

なお、コニカミノルタジャパンの「HitomeQ(ひとめく)ケアサポート」は、近赤外線カメラで人の姿勢や動きを解析する非接触型システムです。寝返りから端座位、起き上がり、離床といった流れを高精度に判別し、「起きようとしている段階」や「起床の瞬間」を捉えられます。施設によっては、このようなカメラ型センサーと、バイタル計測を目的としたマット型センサーを併用し、安全性と情報量を高めている例もあります。

複合型(マット+カメラ)

複合型は、マット式による検知の確実性と、カメラによる状況把握を組み合わせた運用です。AI画像解析で姿勢変化や動きを判断しながら、同時に心拍や呼吸などのバイタルもモニタリングすることで、単純なオン・オフのアラームのみならず、転倒リスクの高まりも捉えられます。

一つのシステムで起き上がりから離床まで複数段階を検知し、転倒前後の映像やバイタルの変化も記録できるため、事故後の検証や再発防止、家族への説明にも活用できます。その分、機器は高度になり、導入コストも上がるため、補助金や加算を活用した投資判断が必要になるでしょう。

離床センサーのメリット

離床センサーは介護業務にさまざまなメリットをもたらします。離床センサーのメリットを具体的に見ていきましょう。

転倒・転落を予防できる

離床センサーの代表的なメリットは、転倒・転落の予防です。起き上がりや離床の動きを早期に検知できれば、スタッフが迅速に駆けつけることができ、骨折や外傷などを防げる可能性が高まります。認知症のある利用者や筋力が低下している高齢者の場合、立ち上がりから転倒までの時間は短く、気づいたら床に倒れていたという事態も珍しくありません。その意味で、センサーは気づくまでの時間を縮める役割を果たします。

ひとり歩きを防ぐことができる

離床センサーは、ひとり歩きの防止にも効果があります。夜間に居室から抜け出し、建物内を歩き回ったり、外に出ようとしたりする行動は、本人にとっても家族にとっても大きな不安要因です。居室からの離室や出入口付近の動きを検知できれば、職員が早めに声掛けや誘導を行い、危険な行動に至る前に対応できます。

業務の効率化につながる

離床センサーは、業務効率化の面でもメリットがあります。時間ごとの全室巡回を続けていると、「何も起きていないことを確認するための訪室」が多くなり、夜勤者の負担は大きくなるでしょう。しかし、センサーの通知を基準に訪室すれば、必要時に居室に向かう運用へと変えられます。

施設によっては、空振り訪室が8割以上減った事例や、夜間訪室回数が大幅に減り、夜勤スタッフの歩数が30%程度まで減少した事例もあります。身体的負担の軽減は、心理的な余裕にもつながり、ケアの質や職員定着にも良い影響をもたらします。

空振り訪室が減少した事例については、こちらの記事「「HitomeQケアサポート」を利用している介護施設へインタビュー【医療法人 燦生会 介護老人保健施設 フルリールむかわ】」で詳しく解説しています。

歩数が減少した事例については、こちらの記事「医療法人福寿会 西原敬愛園様 “見えるナースコール”で負担を減らした現場の挑戦」で詳しく解説しています。

天井カメラによる予兆検知が叶う

天井設置型の360度カメラによる見守りシステムは、ベッドサイドの死角を減らし、「起き上がろうとしている段階」から検知できる点がメリットです。「HitomeQ ケアサポート」のように、カメラ映像をスマートフォンで確認できる仕組みであれば、職員は映像を見てから訪室の要否や優先順位を判断できます。毎回、全室を確認する巡回から、危険度の高い居室を優先する運用へと切り替えられ、スタッフの負担が軽減します。

スタッフの保護にもつながる

転倒前後の映像を記録できる点も、HitomeQ ケアサポートのような見守りシステムのメリットです。転倒事故が起きると、「なぜ転倒したのか」「職員の対応は適切だったか」といった点をめぐり、家族と施設側で認識が合わないこともあります。しかし映像という客観的な記録があれば、事実にもとづいて説明でき、職員を無用なクレームから守る手段にもなります。また、転倒前の動きや環境要因を確認することで、再発防止策も具体的に検討しやすくなるでしょう。

離床センサーのデメリット

離床センサーにはデメリットもあります。離床センサーを選ぶ際は、下記のようなデメリットも押さえておきましょう。

誤報による訪室回数の増加

離床センサーには誤報による訪室回数の増加を招くデメリットがあります。感度設定が高すぎたり、設置環境に合っていなかったりすると、実際には危険でない動きやカーテンの揺れなどでもアラームが鳴る可能性はあります。その結果、職員は訪室に追われ、本来のケアや記録に充てる時間が削られていくでしょう。

また、誤報が続くと、「どうせ誤報だろう」という意識が生まれ、本当に危険なアラームへの初動が遅れたり、最悪の場合は見逃したりするリスクが高まります。さらに、「もう鳴らないでほしい」「動かないでいてほしい」という心理が強まると、きつい口調で「動かないで」と伝えるといったスピーチロック、さらには身体拘束につながる行為が生まれやすくなります。離床センサーは、誤報が多い運用のままだと、現場を追い込む原因となるため注意が必要です。

プライバシーの問題

カメラ型センサーの場合、「常に見られている」と利用者に感じさせる点はデメリットです。そのため、どこまで映像を取得するのか、トイレや脱衣の場面をどう扱うのか、誰がどの端末で映像を見られるのか、録画をどのくらいの期間保存するのかといった点を明確にし、本人・家族への説明と同意を丁寧に行いましょう。

コストの問題

離床センサーには、コスト面の負担はあります。機器本体だけでなく、設置工事、ネットワーク整備、システム連携、職員研修など、初期費用は決して安くはありません。しかし、転倒事故の減少による医療・賠償リスクの低下や、スタッフの残業時間の削減、離職率低下による採用・育成コストの減少など、中長期的な効果を見込むと、離床センサーの導入は「コスト」ではなく「投資」となるでしょう。

離床センサーの選び方

自施設に適した離床センサーは、施設の種類や入居者の状態、職員体制によって変わります。代表的な施設の種類ごとに選び方を見ていきましょう。

特別養護老人ホームの場合

特別養護老人ホームは、要介護度が高い方や認知症のある方が多く入居しています。寝たきりや車椅子利用の方が多い一方、ひとり歩きのリスクをはらんだ方も一定数います。夜間は少人数のスタッフで多くの入居者を診る必要があり、転倒とひとり歩きの両方に備えなくてはありません。

このため、アラートの確実性が高いベッドセンサーと、天井カメラ型など広範囲をカバーできる非接触型センサーを組み合わせる運用が有効です。転倒リスクの高い方には早めの検知設定、それ以外の方には誤報を抑えた設定にするなど、個々人の状態に応じた調整もポイントになります。

介護老人保健施設の場合

介護老人保健施設は、在宅復帰を目指すリハビリテーション中心の施設で、「歩くことはできるが不安定」「自分では大丈夫と思っているが転倒リスクは高い」といった利用者が多い点が特徴です。ただ、動きを過剰に制限するとリハビリテーションの妨げになるため、安全確保と自立支援のバランスが重要となります。

離床センサーはベッド上だけでなく、居室の出入口や廊下、トイレ前など、リスクの高い動線上に配置し、安全を確保しつつ活動性を保てる環境を整える考え方が有効です。また、離床センサーから得た情報をリハビリテーションスタッフや看護師と共有し、「どのタイミングで介入するのが適切か」「特定の利用者はどのような動きのクセがあるか」といった情報をチームで把握することで、転倒予防と自立支援を両立しやすくなります。

有料老人ホームの場合

有料老人ホームは、自立度の高い入居者も多く、プライバシーや生活の質への配慮がより重視されます。そのため、「監視されている」と感じさせると、満足度や信頼の低下につながるため注意が必要です。多くの有料老人ホームは、目立ちにくい人感センサーや天井カメラなどを選び、「さりげない見守り」を実現しています。なお、センサーの導入前には入居者と家族に対し、「安全のための見守りであること」「プライバシーに配慮した運用ルールを定めていること」をわかりやすく説明し、安心感を持ってもらいましょう。

離床センサーを選ぶ際に行っておきたいこと

離床センサーの導入を検討している際は、「現場の声」と「実機確認」が不可欠です。離床センサーの導入を検討する際には、下記を行った上で検討するようにしましょう。

自施設の現場スタッフへのヒアリング

離床センサーの導入を検討する際は、実際に利用する自施設の現場スタッフに必ずヒアリングを行いましょう。製品カタログの内容や経営層の判断だけで機種を決めると、「現場で使いにくい」「かえって負担になった」という結果になるかもしれません。
そのため、導入の検討段階からフロアリーダーや夜勤専従者、機器に詳しい介護職・看護師などへのヒアリングが不可欠です。具体的には、どの場面でヒヤリハットが多いか、どのタイミングでアラームが鳴ると助かるか、日常業務として対応できるアラーム頻度はどの程度かといった点を、聞き取っていきます。

メーカーや他施設へのヒアリング

離床センサーの導入を検討する際は、メーカーや他施設へのヒアリングも不可欠です。実機を見て、触り、使っている人の話を聞かないと、使用のイメージは固まりません。
メーカーのショールームでデモ機を確認する、導入している近隣施設を見学させてもらうといった確認も有効です。「導入前後で職員の動きがどう変わったか」「誤報や巡回方法でどんな工夫をしているか」といった具体的な話を聞くと、自施設での再現性や必要な研修内容もわかりやすくなります。

離床センサーは投資対効果を踏まえて賢く選択しよう

離床センサーは、高機能であるほど導入コストはかかりますが、その分だけリターンは豊富です。例えば、空振り訪室や残業時間の削減、職員負担の軽減と定着率向上、採用コストの低減、事故リスクとクレームリスクの低下、ICT化した施設としてのブランド向上など、中長期的なメリットは多岐にわたります。

コニカミノルタジャパンの「HitomeQ ケアサポート」は、天井設置カメラによる予兆検知とスマートフォンでの映像確認により、「誤報に追われる運用」から「必要なケアに集中する運用」への転換を支援するソリューションです。導入後には、介護ロボット導入支援事業補助金といった補助制度の活用支援から、オペレーション定着まで伴走する体制も整えています。「持続可能な介護経営」という視点で、自施設にとって最適な離床センサーの組み合わせもご提案しますのでお気軽にお問合せください。

戦略的な介護経営やICT投資の考え方についてより深く知りたい際は、下記のホワイトペーパーもお役に立ちます。

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記事監修

コニカミノルタ 金子史歩

藤野 雅⼀(富津市天⽻地区地域包括⽀援センター センター⻑)
保有資格:社会福祉⼠、介護⽀援専⾨員

淑徳大学社会福祉学部卒業後、障害者支援施設に通算17年間、高齢者関連事業所に通算11年勤務。2017年より千葉県の高齢化率40%を超える過疎地の地域包括支援センターでセンター長を務める。2024年4月から2025年3月まで、月刊『ケアマネジャー』(中央法規出版)にて「障害福祉サービスから介護保険サービスへの移行」等をテーマに連載記事を手がける。

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