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公開日2026.04.17

印刷産業の未来を拓く採用と定着 
~選ばれる理由を創るには~

印刷産業の未来を拓く採用と定着 印刷産業の未来を拓く採用と定着

※本記事は、日本印刷技術協会(JAGAT)河原氏にご執筆いただきました。

日本の印刷産業は、事業所数において全製造業の6%を占める上位5業種に入る巨大産業であり、市場規模(製造品出荷額等)は約5.1兆円と、わが国経済の重要拠点としての地位を維持しています。しかし、その構造はデジタル化やインフレ、さらには働き手の価値観の変化によって、かつてない転換期にあります。

2025年春に印刷業界に入った249名を対象とした『新入社員意識調査2025』と最新の産業統計『印刷界OUTLOOK 2025/2026』からは、これまでの「人手不足を補うための採用」から、「組織の変化を担う人材を迎え、共に成長していく体制づくり」への転換が求められていることが読み取れます。本稿では、若手人材の「安定への渇望」と「自分らしい貢献」をキーワードに、新たな時代の採用・定着戦略を展望します。

印刷市場の変容と「求められる人材像」のシフト

印刷市場は2021年から3年連続で増加傾向にありますが、その要因はインフレによる単価上昇や事業領域の拡張にあります。10年単位の長期推移で見ると、市場規模は減少傾向を辿ってきましたが、2018年以降は5兆円前後で横ばいになり、足元では再び改善し始めています。

「第3のメディア」としての実力

電通『2025年 日本の広告費』によれば、商業印刷(DM、チラシ、カタログ、ポスター、POP等)は依然として印刷関連領域の中核を占める存在であり、その市場規模は約1.7兆円規模と推計されています。インターネット広告費が最大規模を占め、テレビメディアがこれに続く中で、商業印刷はそれらに次ぐポジションに位置する、実質的に国内第3位の広告メディアです。放送が免許制であるのに対し、参入が自由な印刷メディアは、1社あたりの取扱額こそ目立ちにくいものの、市場全体としての裾野は広く、依然として大きな可能性を有しています。

成長を支えるパッケージとデジタル融合

また世帯構造の変化による単身世帯の増加や製品の高機能化を背景に、パッケージ印刷は推計1.3兆円規模へと堅調に成長しており、出版印刷を大きく上回る第2の柱となっています。この構造変化に伴い、現場に求められるスキルも大きく変化しました。従来の大量生産に関する技能に加え、オンデマンド印刷による少量多品種やパーソナライズへの対応、Web to Printの活用、デジタルマーケティングとの連携、さらにはSDGsに対応した脱プラスチックや紙化に関する知識が、現代の印刷会社における基本的なビジネス条件となっています。このような背景から、これからの印刷業界を担う人材には、単なる作業者ではなく、顧客の課題を解決する情報加工の担い手としての資質が求められています。

数字で見る印刷界

出典:印刷界OUTLOOK 2025/2026
※JAGAT info掲載時の数値です。(2026年4月時点)

採用戦略のアップデート:多様化する人材像と接点の「質」

かつての「男性・高卒・製造中心」という印刷業界の採用イメージは、もはや過去のものです。2025年度の新入社員属性を見ると、女性比率が65.5%と過半数を大きく占め、最終学歴も大学卒が55.8%に達しています。この変化は、企業側に「多様性」を前提とした環境整備を突きつけています。

デジタルネイティブを惹きつけるチャネル戦略

就職活動において、新入社員の4人に3人が「就職ナビサイト」を利用しています。オンラインでのコミュニケーションに長けた彼らにリーチするためには、ナビサイトやSNSといったデジタルチャネルでの情報発信の質を維持・強化することが不可欠です。ただし、単に露出を増やすだけでは不十分です。新入社員はSNSを「企業の雰囲気や社員の声をリアルに知る手段」として活用しています。作り込まれた広告よりも、現場のリアルな体温が伝わるコンテンツこそが、母集団形成の質を左右します。

比較されるインターンシップの重要性

大学卒の58.3%、専門・短大卒の47.2%がインターンシップを経験しており、その約半数は2社以上を経験して「比較・検討」を行っています。新入社員からは「仕事内容を具体的にイメージできた」という肯定的な声の一方で、「座学中心で現場体験が少なかった」「個別評価が欲しかった」という不満も挙がっています。他業界のインターンも経験した上で自社を選んでもらうためには、工場見学や実習といった「五感で感じる、ものづくり体験」をプログラムの核に据え、個別フィードバックを通じて「あなたを必要としている」というメッセージを届けることが、採用競争力の強化に繋がります。

インターンシップへの参加状況

インターンシップへの参加状況
出典:新入社員意識調査2025

選ばれる企業の絶対条件:生活の安定と心理的安全性

採用活動において、学生が「仕事の内容」以外で何を重視しているかを知ることは、ミスマッチを防ぐ上で極めて重要です。

「安定」はすべての前提である

新入社員が企業選択で重視した情報のトップ3は、「待遇・福利厚生(58.2%)」「残業時間・有給取得率(39.4%)」「企業のビジョン(36.1%)」です。現代の若者にとって、ワーク・ライフ・バランスや生活基盤の安定は、仕事への意欲を語る前の「絶対的な前提条件」です。この安定への渇望を軽視したまま「やりがい」だけを強調しても、優秀な人材の心には響きません。まずは安心して働ける土台が整っていることを、数字と制度で具体的に示す必要があります。

決定打は「人」と「社風」

入社を決意したポイントとして、採用選考編では「面接でのコミュニケーション(47.4%)」がトップに挙がり、企業属性編では「社風が良い(46.2%)」が圧倒的です。一方で、採用ウェブサイトやパンフレットの影響度は、決定の段階では限定的であるという結果が出ています。候補者は、面接官の態度や社長・役員の印象を通じて、その企業の「本質」を見極めようとしています。対面での誠実な対話の質こそが、自社の魅力を伝える最強の武器となります。

人材定着の鍵:期待と現実のギャップを埋める育成設計

せっかく獲得した人材をいかに定着させるか。ここには、今の組織の仕組みそのものを見直さなければならない大きな課題があります。

「ものづくり愛」と実務のギャップ

印刷業界を志した理由の第1位は「本や紙加工の製品が好き(44.6%)」であり、紙メディアへの親和性が強い志望動機です。2位に「生活・文化産業だから(35.7%)」、3位に「デザイン系の仕事がしたい(33.3%)」が続き、彼らは印刷をクリエイティブな仕事として捉えて入社しています。しかし制作職、生産職の実際の業務はデータチェックや出力、進行管理、機械オペレーションなど、地道で精度が求められる作業の積み重ねです。

営業職の場合、見積作成、工程調整、新規顧客獲得に向けたアプローチに加え、納期短縮やコスト圧力といった営業先からのプレッシャー対応が中心となり、クリエイティブな提案イメージとのズレが生じます。この「イメージしていたクリエイティブ」と「現場の実務」のズレが早期離職のリスク要因になります。ミスマッチを防ぐためには、以下のストーリー提示が効果的です。

印刷業界を選んだ理由

印刷業界を選んだ理由(複数回答可)
出典:新入社員意識調査2025

専門性の再定義とキャリアの具体化

地道な作業を単なるルーティンではなく「品質担保の専門スキル」として再定義することで、業務の魅力は大きく高まります。制作職におけるデータチェックや版面設計は最終品質を左右する重要工程であり、生産職の機械オペレーションは高精度な印刷物製造の基盤です。また、営業職の工程調整や納期対応は顧客信頼を築く中核業務といえます。これらの役割が価値連鎖全体を支えている点を具体的に示すことで、「品質を守り、信頼を創る専門職」という誇りあるキャリア像を提示できます。

制作職では、入社後1〜3年でデータチェックや版面設計を経験し、面付け、フォント知識、色管理といった専門スキルを習得します。生産職は印刷機操作や品質検査を段階的に習熟し、安定した品質を支える技術力を身につけます。営業職は既存顧客のフォローから新規開拓へと役割を広げ、見積精度の向上や工程提案力を高めていきます。

例えば「1年目:見積支援・機械補助、2年目:顧客ヒアリング・色調整、3年目:新規提案受注・工程管理」といった成長モデルを示すことで、キャリアの具体像をより明確に伝えることができます。

「学び」を通じたエンゲージメント向上

新入社員は教育プログラムにおいて、実践的かつ体系的な学習機会を強く求めています。最も希望が多いのは「工場見学・印刷実習(41.8%)」であり、伸ばしたい能力としては「マナー・一般常識(53.3%)」や「コミュニケーション能力(51.2%)」といった社会人基礎力が上位を占めます。OJTは必要ですが、過剰に依存しすぎず、外部リソース・資格試験を活用し、客観的な成長指標を持たせることは、新入社員の満足度向上とスキル習得に直結します。

企業から提供されるプログラムで希望する内容

企業から提供されるプログラムで希望する内容(複数回答可)
出典:新入社員意識調査2025

多様なキャリアパス:管理職を望まない7割への回答

定着における現代的な課題として、新入社員の7割弱は、経営幹部や管理職への昇進を現時点では希望していないという現実があります。

「責任」よりも「専門性」や「安定」

昇進を望まない理由の第1位は「責任ある立場を望まない(45.9%)」であり、精神的負担への懸念が根強くあります。一方で、「専門分野のエキスパートを目指したい(21.8%)」という前向きな職人志向も一定数存在します。彼らを繋ぎ止めるためには、従来の「昇進=マネジメント」という単一の成功モデルを押し付けるのではなく、「特定の技術や知識を極めることで、管理職と同等の評価や処遇が得られる専門職コース」を制度化することが不可欠です。

また、上司や先輩に対しては「丁寧に指導してくれる(74.2%)」ことや「リーダーシップ(54.1%)」「公平性(47.5%)」「ポジティブなフィードバック(45.1%)」を求めています。部下の貢献を認め、その価値を言語化して伝える「認められている実感」こそが、10年以上の長期勤務を支える精神的な支柱となります。

働き甲斐の再定義:印刷産業の価値を「社会の文脈」で語る

人材が定着し、自律的に動くためには、「自分たちの仕事が社会の役に立っている」という誇りが不可欠です。

サステナブルな産業への誇り

日本の製紙・印刷産業は、古紙回収率83%を誇り、再生可能エネルギー利用率も44%に達する、世界トップクラスの循環型産業です。原料の木材は合法性が確認された植林からの調達が100%であり、紙を使うことは森林資源の健全化プロセスに参加することでもあります。このような「環境と調和する高度な製造・情報産業」であるという事実は、若手人材の共感を生む強力な武器になります。

生活を支える不可欠なインフラ

通販市場は14兆円を超えて成長しており、その売上高の31%をカタログやDMといった印刷メディアが支えています。また、地方自治体の情報発信や文化継承において、全国に遍在する1万3,371の印刷事業所は「地域の情報加工センター」として不可欠な存在です。自社の仕事が「顧客の売上をどれだけ伸ばしたか」「地域の課題をどう解決したか」という成果を現場にフィードバックすることは、若手のやりがいを育む最強の定着施策となります。

まとめ:安定を土台にした共創の組織へ

今回の調査と統計から導き出される結論は、新入社員が求めているのは、「安心して働ける強固な土台(安定)」を前提とした上で、自分の適性を活かして「社会や顧客に貢献できる場(自己実現)」が得られる環境であるということです。

採用においては、5.1兆円市場の可能性とサステナブルな価値をエビデンスに基づき伝え、面接という「対話の場」を誠実なものにする。

育成においては、丁寧なOJTと外部教育を組み合わせ、早期に「全体のつながり」と「自分だけの役割」を実感させる。

定着においては、管理職コース一辺倒のピラミッド型組織から脱却し、専門性を尊重するとともに、フレックスタイム制や副業、資格支援などの「柔軟な働き方」を認める組織へと進化させる。

印刷会社は、地域の情報を加工し、価値を増幅させる「知の拠点」です。その拠点を支えるのは、技術でも設備でもなく、最終的には人に他なりません。2023年の従業者1人あたりの売上高は2,082万円へと改善が進んでおり、生産性は向上しています。この改善を支えるのは、変化を楽しみ、自律的に学ぶ人材です。新入社員のリアルな価値観に寄り添い、彼らが「この会社で、自分らしく生きていける」と確信できる場所を創り出すこと。それこそが、激変する市場環境を勝ち抜き、印刷業界の未来を拓くための経営戦略です。

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