介護におけるBCP(業務継続計画)とは?
策定法とICT活用について解説

2026年6⽉24⽇

2021年度の介護報酬改定により介護事業所におけるBCP(業務継続計画)の策定が義務化され、3年間の経過措置を経て2024年度の介護報酬改定により完全適用となりました。自然災害や感染症が発生しても利用者へのサービスを継続できるよう備えることは、介護事業の運営において欠かせない取り組みです。

この記事では、介護事業所でBCPが義務化された背景やBCPの策定手順、実効性を高めるための注意点のほか、ICTの活用法などについて紹介します。

介護事業所におけるBCP(業務継続計画)とは?

BCP(業務継続計画)とは、大規模地震や水害、感染症の流行などの緊急事態が発生しても、重要な業務を優先して継続し、早期に事態を復旧させるための事前計画です。介護分野におけるBCPは、一般企業のBCPとは異なり、利用者の安全確保とサービス継続の両立が求められます。これまでも災害や感染症が発生するたびに、スタッフが出勤できなかったり、ライフラインが止まったりするほか、情報が届かないといった問題が繰り返されてきました。

一方で、実務の現場では、厚生労働省が公開しているBCPの雛形の各項目をコピー&ペーストしただけといったケースも少なくないでしょう。自施設の実態が反映されていないBCPは、災害発生時などで対応すべき業務内容を誰も覚えておらず、その場しのぎの対応に戻ってしまう危険性があります。さらに、緊急事態をきっかけとして、介護保険法にもとづいた人員配置基準を大きく下回る状態が続けば、営業停止や廃業に直結する可能性もあります。経営を守るという側面でも実効性のあるBCPの策定は避けられません。

介護事業所においてBCPが義務された背景

介護事業所におけるBCPは、各地の震災や豪雨災害、そしてコロナ禍を背景に義務化されました。2021年度の介護報酬改定で介護事業所におけるBCPの策定は義務化対象に追加され、3年間の経過措置を経て2024年度に完全義務化されています。
自然災害や感染症の拡大を通じて明らかになったのは、介護サービスが止めてはいけないインフラであるという現実です。利用者の生活を支える介護は、一度サービスが途絶えると、命や尊厳に直結するダメージになります。その公共性の高さから、国は介護事業者に対しBCP策定を義務化し、書類として整えるだけでなく、実際に機能する計画を求めています。BCPが未策定の場合は、「業務継続計画(BCP)未策定減算」の対象となり、所定単位数の1~3%が減算する可能性があるため必ず策定しましょう。

介護事業所でのBCP策定手順

BCPを策定する際は、最初に手順を押さえておくと内容の抜け漏れを防止できます。BCPの策定は、下記の3つのステップで進めていきましょう。

1 基本方針の策定

事業所としてのBCP基本方針を策定し、責任者を含む推進体制を明確にします。誰が何を担当し、緊急時に誰が判断するのかを決めておくことが重要です。併せて、職員全員への周知と、定期的な研修・訓練の計画策定も求められます。
なお、それらの方針が現場に浸透していなければ、BCPはいざというときに機能しません。BCPの内容を確認すれば、職員自身が取るべき行動がわかるような内容にしましょう。

2 リスクの洗い出し

続いて、地震や水害、台風、感染症といった事業所が直面しうるリスクを洗い出し、影響度と発生確率を分析します。具体的には、ハザードマップを確認したり、過去の災害事例を調査したりすることで、自地域で起こりうるリスクを把握します。その上で、優先すべき業務(利用者への食事、排泄、服薬介助など)を特定し、何を最優先で対応するか明文化しましょう。

3 具体的な対応計画の作成

具体的な対応計画を作成する際は、自然災害と感染症の項目を分けておくことが重要です。
自然災害の項目では、災害別に事前の備えと発生時の対応、備蓄、代替施設の確保について記載します。建物・設備の安全対策、非常用電源や給水体制、食料・衛生用品の備蓄基準のほか、どのレベルの災害でBCPに記載した対応を実施するか、安否確認や避難の手順などを含めて具体的に定めます。

感染症の項目では、感染症発生時の対応フロー、ゾーニング、個人防護具(PPE)の備蓄、職員の健康管理体制、職員確保計画といった、具体的な対策の記載が必要です。併せて、保健所や行政との窓口担当者、出勤制限の判断基準、スタッフ不足時のシフト調整もあらかじめ決めておきます。

さらに、厚生労働省が公開している雛形(ガイドライン)の内容を参照し、連絡体制や避難計画、備蓄リスト、代替サービスの確保なども盛り込んでください。
他施設および地域との連携を強化する意味でも、近隣の法人との協力関係の構築や、所属団体を通じた協力関係の整備、自治体を通じた地域での協力体制の構築などを計画に含めておくことも有効です。台風や線状降水帯による長時間の停電・断水など、地域ごとの災害リスクに応じて、どのレベルでBCPを発動するかを記載すると、現場も判断がしやすくなります。

BCP作成時の注意点

BCPの内容を整えても、現場で機能しなければ意味がありません。BCPを策定する際は、下記の2点に注意して、実効性の高い内容に仕上げましょう。

実効性の薄いBCPにしない

実効性の薄いBCPにすることは避けましょう。例えば、厚生労働省が作成した雛形の丸写しで自施設の実情に沿ったアレンジが加えられていなかったり、連絡網が個人の携帯電話に依存していたりするといった状態では、実効性のあるBCPとはいえません。なお、紙カルテへの依存やオンプレミス(自社でのサーバー運用)だけで業務データを管理していると、被災時に情報が途絶えるリスクがあります。また、地震と感染症しか想定しておらず、水害や土砂災害、広域停電の想定が抜けているBCPも少なくありません。

こうした実効性のないBCPにならないよう、複雑な計画書とは別に、スタッフ全員が携帯できる「初動対応カード(簡易版BCP)」の準備と、LINE等を使ったシンプルな安否確認フローの構築を行うことをおすすめします。一目で、今やるべきことがわかる状態にすることが、緊急時の混乱を防ぐ上で重要です。

業務の優先順位付け(トリアージ)を行う

非常時には、すべての業務をこなすことは不可能なため、優先順位付け(トリアージ)を行うことになります。命に直結するケア(服薬・水分補給・排泄・緊急時の医療的対応)を最優先とし、ときとして入浴やレクリエーション、居室内の細かな掃除などは一時的に中止・簡略化する判断基準を、BCPに盛り込んでおきましょう。

トリアージを行う際は、平時と同じ基準で全員に同じサービスを提供しようとせず、「命にかかわるリスクが高い人」と「自力である程度対応できる人」を見極めて動くことが大切です。同時に、利用者をリスク別に分類することで、限られた人員をどこに重点的に配分するかを判断しやすくなります。具体的には、常時介助が必要な人と、自立度が中程度で一部の介助が必要な人、自立度が高く見守りが中心な人といったように分類をします。

災害時に備えるためのICT化の進め方

BCPにはICT化による情報の確保(データ保全)と、通信手段の確立も重要です。誰がどこにいるか、どの利用者がどの状態か、どの業務がどこまで進んでいるかといった情報が途絶えると、現場の混乱につながります。水害や火災時は、サーバー室や書庫が被災し、紙のカルテやオンプレミスで管理しているデータが一度に失われるリスクがあると想定しておきましょう。

また、システム復旧を担当できるスタッフが被災して出勤できなければ、復旧の目処が立たなくなる可能性もあります。そのため、下記に紹介するように平時からICTを前提としたクラウド型の情報管理を整備することが重要です。

重要書類は電子化して保全する

重要書類を電子化して保全することは、災害時の備えとして重要です。カルテをはじめ、契約書や同意書、各種申請書類、BCP関係書類といった重要書類を紙のまま保管している施設はまだ少なくありません。その状況は災害で破損・紛失するリスクがあるだけでなく、復旧後の請求や行政報告にも支障をきたす可能性があります。
しかし、複合機で書類をスキャンし、クラウドへ直接保存するワークフローを構築すれば、施設が被災しても別拠点や自宅から必要な書類にアクセスし、行政への報告や請求業務が滞らない体制を整えられます。

緊急時の指揮命令を支える連携ツールを用意する

緊急事態の際は指揮命令を支える連携ツールが必要です。大規模災害時には、電話がつながりにくくなることが想定されます。音声通話だけに依存せず、普段使い慣れたLINE連携型の業務連絡ツールや「HitomeQ(ひとめく) コネクト」のようなアプリを活用し、安否確認と指示出しをスムーズに行えるよう、平時から連絡手段を確立しましょう。

施設内ではインカムを活用することで、避難誘導や安否確認の指示を一斉に伝えやすくなります。BCPには、どのツールで、誰が、誰に対して指示・報告をするかというコミュニケーション設計を含めておくことが有効です。

ICTツールを活用した訓練を実施する

BCPは作って終わりではなく、ICTツールを活用した訓練による検証と見直しを繰り返すことで実効性が高まります。避難訓練や机上訓練を行う際には、実際にインカムや見守りセンサー、連絡アプリなどを使ってみましょう。例えば、「豪雨により一部居室が浸水した」という想定で、「HitomeQ ケアサポート」などのセンサー通知を見ながら、どの居室から優先的に対応するかを検討する訓練を行えば、非常時のオペレーションをより現実的にイメージできます。

なお、少人数体制で全居室を見回ることは現実的ではないため、BCPは実現性のある設計にすることが重要です。見守りセンサーなどのICTを活用して、異常性が見られる居室だけ訪室するといった効率的なオペレーションの構築が求められます。訓練のたびに課題を洗い出し、BCPや初動対応カードを更新していくPDCAサイクルを回すことが、実効性を高める近道となります。

信頼される施設づくりをコニカミノルタジャパンは総合的に支援します

BCPは、利用者の命と事業継続に必要な取り組みです。利用者の命と事業継続、そしてスタッフの働く場を守る計画として実効性を高めておくことは、施設経営の安定化と信頼獲得につながります。また、ICTやクラウドを活用したBCPを進めておけば、利用者・家族からの信用が高まるだけでなく、安心して働ける環境として、職員の定着率向上や採用力強化にもつながるはずです。

コニカミノルタジャパンは、見守りセンサーやクラウド記録ソフト、連携ツールなどを総合的に提供しています。機器の導入後は、IT導入補助金の申請支援や、導入後の運用定着を支える伴走支援まで、一体的にサポートいたします。
下記のホワイトペーパーでは、ICT導入によって得られる加算など、ICT投資を事業の成長につなげるための視点を詳しくご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。

介護経営に悩んでいる方への
「ICT×加算取得」ガイド

介護報酬改定を背景にICT導入は必須要件へと変化。データ連携で収益向上とコスト削減を両立し、今すぐ始める介護経営改革の実践ポイントを解説。

記事監修

コニカミノルタ 金子史歩

藤野 雅⼀(富津市天⽻地区地域包括⽀援センター センター⻑)
保有資格:社会福祉⼠、介護⽀援専⾨員

淑徳大学社会福祉学部卒業後、障害者支援施設に通算17年間、高齢者関連事業所に通算11年勤務。2017年より千葉県の高齢化率40%を超える過疎地の地域包括支援センターでセンター長を務める。2024年4月から2025年3月まで、月刊『ケアマネジャー』(中央法規出版)にて「障害福祉サービスから介護保険サービスへの移行」等をテーマに連載記事を手がける。

お問い合わせはこちら

「まずは話を聞いてみたい」でも大歓迎。
導入前も、導入後も、安心して頼れる存在です。