• 2022.03.08

    電子帳簿保存法改正で何が変わる?電子保存の猶予期間についても解説

    電子帳簿保存法改正で何が変わる?電子保存の猶予期間についても解説
    「電子帳簿保存法」が改正となり、令和4年(2022年)1月から施行されました。国税関係帳簿書類について特に電子データで授受した場合はその電子データの保存が義務付けられるものですが、施行直前になって2年間の猶予が設けられました。しかしいずれは、法律の要件に従った電子データの保存が必須となります。企業は今後どのように対応していけば良いのでしょうか。
    ここでは電子帳簿保存法の基本と、企業が対応する際に知っておきたいポイントについて解説します。

INDEX

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、企業のペーパーレス化への取り組みを促進する法律です。はじめに電子帳簿保存法の概要と対象書類について解説します。

電子帳簿保存法の概要

電子帳簿保存法は国税庁が管轄する法律で、正式名は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」、略して「電子帳簿保存法」「電帳法」などと呼ばれています。
この法律では、従来は一定の要件に従って紙で保存しなければならなかった国税関係帳簿や国税関係書類に関し、電子的な方法での保存を認めることで、納税者負担軽減を図っています。
1998年に最初に制定されて以降、段階的な改正により要件の緩和が実施されてきました。

電子帳簿保存の対象となる書類

事業者には、全ての取引を記録、取引の証拠となる書類を保存しておく義務があります。それを示す帳簿や書類は以下のとおりです。

■帳簿:仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など
■書類:貸借対照表、損益計算書、棚卸表、領収書、預金通帳、注文書、契約書、請求書、納品書など

電子帳簿保存法では、上記の国税関係帳簿・書類を電子データで保存することが可能となります。
電子取引については今回の改正により原則電子データでの保存となりますが、それ以外の紙での取引においては電子での保存は任意とされています。ただ社会全体でペーパーレス化への流れが強まっており、今後はさらに電子化が奨励されると考えられます。

電子帳簿保存法改正のポイントは緩和と厳格化

電子帳簿保存法改正の目的は社会のデジタル化を踏まえ、生産性の向上、多様性のある働き方の推進、会計ソフトやサービスの活用による記帳水準の向上を目指すものです。国税関係帳簿書類の電子的保存に関する手続きを見直し、事業者の負担軽減を図る法律という位置づけにあります。

制度改正のポイント

令和3年の改正のポイントを以下に記載します。

■電帳法4条で規定される国税関係帳簿書類の保存方法の特例の適用の承認制度を廃止:改正前は電子取引のみ事前の承認が不要でしたが、改正後は国税関係帳簿書類の電子データ保存とスキャナ保存が申請不要となっています。

■罰則規定の強化:国税関係帳簿書類に係るデータおよび電子取引データを電帳法の要件に従った保存がされていない場合には、税法上保存義務がある帳簿書類として取り扱わないこととなりました。これは、保存義務がある帳簿書類が保存されていない、違法な状況となることを意味します。

■スキャナ保存および電子取引データの改ざん等により不正計算がされている場合の重加算税を10%加重に賦課されます。

国税関係書類のスキャナ保存の要件緩和

電帳法4条3項(スキャナ保存)については概ね要件が緩和されました。以下にポイントを記載します。

■「特に速やかに」(概ね3営業日以内)入力する期限・自署を廃止:紙で受け取った書類を受領者がスキャナで読み取る場合、書類を受領した後、最長で「業務サイクル後速やかに(2カ月と概ね7営業日以内)」入力を行うことが可能となり、また、書類への自署も要件から外れました。

■タイムスタンプが不要:入力期限内に入力されていることが確認できる場合のタイムスタンプ付与が不要になりました。

■適正事務処理要件が廃止:改正後は、スキャナ読み取り後、定期検査に備えて保管が必要とされていた原本は、即時破棄が可能です。また相互けん制のために事務処理担当者が2名必要だった体制が、1名での対応に軽減されています。

■検索要件(検索項目):改正前は、勘定科目などといったその帳簿の種類に応じた主要な記録項目が検索条件として求められていましたが、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つの条件に限定されています。また、範囲指定や条件組み合わせによる詳細な検索機能は不要となりました。(税務職員からダウンロードの要求があった場合それに応じられることが必要)

国税関係書類のスキャナ保存の要件緩和

電子取引データの厳格な保存

緩和された要件がある一方で、電子取引データは厳格化されたと言えます。
以下の取引については電子データでの保存が義務付けられ、書面(紙)に出力しての保存は認められません。

・電子メールやWebサイトを通じた電磁的な方式によって取引情報のやりとりを行う取引
・EDI・電子データ交換(Electronic Data Interchange)を通じて受発注・出荷・請求・支払などの各種取引データを通信回線によってやりとりする取引
・メールにより請求書が送付される取引
・ダウンロードによるクレジットカード明細など
電子取引データの厳格な保存

電子保存に関する2年の猶予期間

令和4年1月に施行された電子帳簿保存法の改正ですが、前述の厳格化された電子取引データ保存の義務に関しては2年の猶予期間が設けられています。
2年の猶予期間が置かれた背景には、法改正への認知度の低さと対応についての混乱リスクがありました。電子保存方式を強硬に進めることにより、対応しきれないと考える事業者が全ての取引を紙で行うようになることも考えられます。こうした背景に誘発され、取引先に対して紙での請求書を要求する動きが懸念されます。
ペーパーレス化の推進に逆行し、全て紙で対応する事業者が増えれば本末転倒です。国は事業者に対して十分な移行期間を与えることで、確実な電子保存を促しています。

なお当初は電子取引データの保存義務に反することで青色申告の承認の取り消しリスクがあるという情報も聞かれましたが、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間は税務調査等の際に税務職員からの求めに応じその電子データを出力した紙の提示または提出をすることができる場合は電子取引データの保存に変えることができます。ただし令和6年1月1日以後に行う電子取引データを出力した紙を保存しても電子取引データの保存に代えることはできません。したがって、災害等による事情がなく、電子取引データが電帳法の保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。

電子帳簿保存の要件

電子帳簿保存の要件

最後に国税関係帳簿書類の保存要件をまとめて紹介します。

■保存期間:7年間あるいは10年間(法人税法の規定による)

法人の場合、電子帳簿であっても紙で保存された帳簿書類であっても全ての帳簿書類の保存期間は確定申告書の提出期限から7年です。また欠損金の繰越控除を受ける場合には、保存期間は最長10年となります。

■電子取引データ保存要件:

・真実性の確保
不正な訂正や削除を防止するために要件を満たす措置が求められています。具体的には、タイムスタンプの付与または訂正・削除の記録が残せること(変更があった場合にはその事実が確認できること)もしくは訂正・削除の防止に関する事務処理の規程を定めそれに沿った運用を行うこと、などが挙げられます。

・可視性の確保
電子取引データの保管を行うシステムに関し、操作説明書やマニュアルなどを備え付けておくことや、「取引年月日」「取引金額」「取引先」による検索などが要件として求められています。

■スキャナ保存の要件:

・真実性の確保
タイムスタンプの付与期間は基本的には2か月と概ね7営業日以内です。ただし入力期限内に入力されていることが確認できる場合は、タイムスタンプは不要となります。

・可視性の確保
スキャナ読み取りでは、解像度200dpi以上で、特に契約書や領収書などの重要書類はRGB256階調以上のカラーでなければなりません。
スキャナ保存では、解像度・階調・書類サイズ(請求書や納品書などの一般書類は除く)などの詳細情報を記録しておく必要があります。

このように満たさなければならない要件が多々あり、どこから対策を始めるべきかお悩みの方も多いことでしょう。コニカミノルタジャパンでは “電子取引データだけに” 特化した支援サービス「電子取引スタートアップサービス」をご提供しています。電子取引データを対象に、シンプルな構成で法的要件に対応でき、早めに対策を取らなければならないけれど、できるだけ導入コストは抑えたいお客様にはおすすめです。以下のボタンよりお気軽にご相談ください。



また特に電子化が難しいと思われている請求書受領処理の電子化ができる「Bill One」も電帳法対策として役立てられます。詳しくは以下のページやコラム記事をご覧ください。

コニカミノルタジャパンでは、電帳法に対応した文書管理システムや電帳法対応支援コンサルティングサービスをご提供しています。お気軽にお問い合わせください。



データ保存要件を確認し法令に沿った対応を!

電子帳簿保存法改正では、企業のデジタル化を促進しようとする国の姿勢が強く示されています。厳格化に向かう電子取引に関しては紙での保存の猶予期間が置かれましたが、いずれは全ての帳簿・書類を電子データによって保存しなければならなくなると予測されます。企業側ではこうした社会的な動きをしっかりと受け止め、早めに社内での対応をしていくことが大切です。

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いいじかん設計 編集部

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