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公開日2025.05.29

UVインクジェットを実現させたコニカミノルタの技術と展望

UVインクジェットを実現させたコニカミノルタの技術と展望について解説するコニカミノルタ 木戸 UVインクジェットを実現させたコニカミノルタの技術と展望について解説するコニカミノルタ 木戸

※本記事は、2025年3月に開催されたJAGATトピック技術セミナー2025の講演内容をもとに構成しています。

2025年3月に開催されたJAGATトピック技術セミナー2025において、コニカミノルタが実現させたUVインクジェット技術と展望について講演しました。コニカミノルタは2016年にAccurioJet KM-1を発売し、以来、様々な技術革新を通じてお客様のビジネスを支援しています。本コラムでは、そのUVインクジェット技術について詳しく解説します。

コニカミノルタのUVインクジェット印刷機の進化

まずは、プロフェッショナルプリント事業の産業印刷領域の主力製品である29インチ枚葉UVインクジェット印刷機「AccurioJet KM-1」について詳しくご紹介します。

2016年に、コニカミノルタは「AccurioJet KM-1」を発売しました。この画期的な印刷機は毎時3,000枚という高生産性を実現し、B2デジタル印刷市場に大きな変革をもたらしました。以来、AccurioJet KM-1シリーズは多くのお客様のビジネスに寄り添いながら進化を続けています。

2020年には、さらに進化したモデル「AccurioJet KM-1e」を発売。このモデルはUVインクジェットの利点を最大限に活かすため、メディア対応力を拡大しました。透明プラスチック、有色紙、蒸着紙、キャンバス紙などに対応し、生産機としてのアプリケーションの幅を広げています。

もともとオフセット印刷品質が売りのAccurioJet KM-1シリーズですが、2022年にはさらなる高画質化を実現したオプション「HD(High Definition)モード」が登場。このモデルは一般商業印刷だけではなく、フォトアルバムや高級カタログ、パッケージなどの市場にも用途を広げています。2023年にはインラインの自動検査ユニットを搭載し、画像品質やメディア対応力とあわせて、お客様のワークフローの効率化やコスト削減も実現しています。

そして2024年に開催されたdrupaでは、新たなモデル「AccurioJet 60000」(発売時期未定)を発表しました。AccurioJet 60000は、2016年から進化を続けたUVインクジェット技術の集大成であり、B2サイズ毎時6,000枚という飛躍的な生産性を実現します。自己診断・品質管理機能が充実しており、自動化によって処理速度が最大限に高まり、稼働時間が長くなることで生産効率の大幅な向上が期待できます。

こうしたデジタル印刷に関する技術革新を通じて、コニカミノルタは地球環境への負荷を軽減するだけでなく、働く人々の負担も減らすことを目指しています。匂いや残留物を軽減したクリーンな労働環境の提供や作業の効率化による従業員の負担軽減など、地球にも人にも優しい環境の実現を目指した製品開発を続けています。

コニカミノルタのUVインクジェット印刷機の進化

進化を続けるUVインクジェット印刷機

なぜ、AccurioJet KM-1eはUVインクなのか?

AccurioJet KM-1eが目指したのは、「コンパクト」かつ「環境負荷が少ない」印刷機です。一般的なデジタル印刷機では当たり前となっているヤレ紙削減や小ロット対応に加え、KM-1eはさらに進化を遂げています。

まず、消費電力量にこだわりUV-LEDで瞬間的に硬化させる技術を採用しています。これにより乾燥プロセスが不要となり、電力消費量が大幅に削減されます。また、UVインク硬化時にインク成分が揮発しないため排気ダクトも必要なく、VOCゼロを実現しています。

次に、コニカミノルタの強みであるスキルレスな操作性による工数削減です。B2サイズの印刷機でありながらPOD(プリントオンデマンド)のように簡単に操作できるため、難しいトレーニングをせずに印刷作業をすることが可能です。

デジタル印刷の利点は、「誰でも」「いつでも」「必要な分だけ」印刷できることです。これにより、必要以上にエネルギーや資源の消費を抑えるだけでなく、使用する人の負担も軽減されます。これが、コニカミノルタが考えるデジタル印刷の環境貢献です。

UVインクによる環境貢献

UVインクによる環境貢献

なぜコニカミノルタはオフセット印刷に近づけることに妥協しないのか?

AccurioJet KM-1eの商品コンセプトは、印刷事業者が未来を生き抜くためのアナログからデジタルへの変革を支援することです。この変革を加速させるためには、以下の6つの要素が重要です。

生産性(B2サイズ)
プレコート不要
印刷品質
用紙対応力
色安定性
両面印刷

コニカミノルタはこれら6つの要素を、独自のゲルUVインクと専用ヘッドの組み合わせで実現しました。これにより環境負荷が少なく、人間中心の操作性を備えたクリーンで健康的な職場を提供し、オフセット印刷に匹敵する品質を実現しています。

印刷事業者が未来を生き抜く変革を支援

アナログからデジタルへの変革を支援

コニカミノルタが実現した技術ブレークスルー

ここからは、独自のゲルUVインクと専用ヘッドを実現したコニカミノルタの技術について3つのポイントをご説明します。

まず一つ目が、HS-UVインク技術による高画質化です。高生産性と印刷品質を両立するために、用紙上で瞬時にゲル化(相転移)するHS-UVインクを独自開発しました。通常のUVインクでは表面張力でドットが集まり、眠い画質になってしまいます。しかし、コニカミノルタが開発したゲルUVインクは、紙上でゲル状になったドットが記録位置から動かず、高画質を維持できます。その結果、非常にシャープで綺麗な画を実現でき、色滲みのないオフセット印刷品質を提供します。

2つ目は、高精度のヘッド・メディア温度制御技術です。HS-UVインクの性能を最大限に引き出すために、インクジェットヘッドから射出するまでのインク流路内でインクを均一に溶解し、高温状態を安定に維持するインク流路技術を新規開発しました。また、多種多様な用紙種・紙厚の用紙に対して、用紙温度を精密に制御する独自のインクジェットプロセス技術を構築。これにより、自然な画像光沢と高い印刷品質を実現しています。

3つ目は、ILS(インラインスキャナー)による高品質画像の安定供給です。高解像度の高品位画像を安定して出力するために、プリンタ機内に搭載されたインラインスキャナーにより、印刷された画像を解析し画像出力にフィードバックする技術を採用しています。この技術により、インクジェットヘッドのノズル間でのインク射出の特性差を瞬時に補正し、高品位画像の安定再現を実現します。

コニカミノルタが実現した3つの技術

コニカミノルタが実現した3つの技術

HS-UVインクだから可能になった高色域と安定性

HS-UVインクのもう一つの特長は、高色域と安定性です。コニカミノルタは昔から色に非常にこだわってきました。色にこだわるコニカミノルタだからこそ、自社開発のHS-UVインクは広い色域をカバーすることを目標として開発されました。

このHS-UVインクは、Japancolor2011を完全に表現するだけでなく、パントーンカラーの約7割をカバーすることが可能です。さらに、デジタル印刷機分野ではコニカミノルタが世界で初めてFOGRA53認証を取得しました。

また、近年注目を集めているRGB印刷においても、4色印刷でありながら特色を入れたような鮮やかさを表現することが可能で、同人誌業界からも非常に注目されています。

HS-UVインクだから可能になった高色域と安定性

広い色域をカバーし、4色ながらRGB印刷にも対応可能
出典:東京平版株式会社様 公式サイト

コニカミノルタのUVインクジェット技術を活用して、ビジネスを成功させているお客様が多くいらっしゃいます。例えば、この技術は作品の細部まで鮮やかに再現できるため、1冊数十万円もする高画質な美術本や写真集の印刷に採用されています。

最近では、トレーディングカードの印刷にも活用されています。また、AccurioJet KM-1eと弊社のデジタル加飾機を組み合わせることで、製品の魅力を最大限に引き出し、消費者の関心を引く印刷物を展開することもできます。

さらに、コニカミノルタはブランドオーナーにもデジタル印刷を活用した取り組みを提案しています。この働きかけにより、デジタル印刷の利点を活かした魅力的なマーケティング戦略を展開し、効果の高い販促事例も生まれています。

「誰でも使える」をコンセプトに実現した技術力

ここまでは、印刷技術(高生産性・高画質・高色域)についてご説明しました。ここからは、「誰でも使える」を実現した技術についてご紹介します。

労働人口の減少が進む中、特に印刷業界では熟練工の高齢化や技術継承の課題が深刻です。こうした状況のなかで印刷業界の発展のためには、属人化の解消が非常に重要です。そこでコニカミノルタが考えたコンセプトが、「誰でも使える」を実現することです。

「誰でも使える」を実現するためにまず開発したのが、自社開発専用コントローラー「IJ Manager」です。AccurioJet KM-1eの操作性はプロダクションプリンターと同じGUIを採用しているため、A3サイズのオンデマンド印刷機に慣れたオペレーターでも簡単に使いこなすことができます。必要な操作はコントローラー画面から行えるため特別な訓練は必要なく、2~3日のトレーニングで1週間使っていただければ、印刷業務を行うことが可能です。

知識や経験を要する品質管理や検品作業においても、AccurioJet KM-1eは画像検査装置を内部に搭載し、リアルタイム画質検査とリカバリープリントを実現しています。検品作業を自動化し、品質管理を簡素化することでオペレーターの負担を軽減でき、実際に導入いただいたお客様からも非常に高い評価をいただいています。
AccurioJet KM-1eお客様導入事例はこちら

「誰でも使える」がコンセプト

「誰でも使える」がコンセプト

持続可能な印刷サプライチェーンの構築

最後になりますが、コニカミノルタが目指すのは「持続可能な印刷サプライチェーンの構築」です。私たちはこれを「三方よしの実現」とも呼んでいます。ブランドオーナー、印刷会社、社会それぞれに対して持続可能な社会を創り、働きがいの向上や活性化、気候変動への対応、有限な資源の有効活用を目指しています。

コニカミノルタが目指す持続可能な印刷サプライチェーンの構築

コニカミノルタが目指す持続可能な印刷サプライチェーンの構築

コニカミノルタは、「見たい」と望む全ての人に対して、紙とデジタルを通じて新しい世界を「見せる」ことに取り組んでいます。これからも印刷業界のみなさまと共に、ワクワクする未来を目指してまいります。

コニカミノルタ 木戸真一朗

コニカミノルタ株式会社 プロフェッショナルプリント事業本部

木戸 真一朗

Profile:前職から数えて10年以上インクジェット関連の事業に携わった経験を活かし、様々な印刷会社の課題解決できるようにな魅力ある商品の企画立案や思いを込めたコニカミノルタの商品を幅広く知って頂くためにグローバルにてプロモーション活動を積極的に行っております。

Profile:前職から数えて10年以上インクジェット関連の事業に携わった経験を活かし、様々な印刷会社の課題解決できるようにな魅力ある商品の企画立案や思いを込めたコニカミノルタの商品を幅広く知って頂くためにグローバルにてプロモーション活動を積極的に行っております。

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