第5話および第6話にて解説した問題の核心については、それらを考察する過程で解決の糸口もご紹介しています。あらかじめお伝えしているように、全てを一挙に解決するような「特効薬」はありませんが、いずれも互いに相関する事柄です。良い循環を生み出して全てを徐々に解決していき、理想状態に持っていくことが可能と考えます。それを定義すると、以下のようになると考えます。
これらのどこに相関があるのかを分かりやすくするため、もう少し小さな粒度にブレイクダウンしたものが下図になります。誤解の無いように補足すると、企業にとってもっとも大事なのは「自分達の事業はお客様にどのような価値、利得をもたらすのか、そのために自分達の組織は何をやらなければならないのか」という外向き視点の相関図です。ですがそれは企業によって千差万別であり、それぞれの企業が自主的に描くべきものなので、ここではご紹介を割愛し、組織内部の変革に限定した相関図としています。
一見、複雑で連鎖的な因果関係に感じるかもしれませんが、これまでの記事をお読みいただいた皆様であれば、矢印で結ばれた個々の要素と要素同士は違和感のない内容と思います。個々の企業・団体においては、現状で達成している部分、あるいはあてはまらない部分なども混在していると思いますので、自社の課題部分にフォーカスして考えてみてください。
ここで、「このチャートを自社で実現させるにあたって、どこが難しそうか?」を考え始めると明確な答えが思い浮かばないかもしれませんが、無理もありません。このチャートは、あえて主格を抜いた表現になっているのです。例えば、左下にある「気軽に何でも話せる間柄と場の形成」をするのは誰でしょうか。気軽に話すのは個々の従業員だとしても、「間柄」が示す相手はメンバー?上司?あるいは「場の形成」をするのは社長?それとも各職場の組織長でしょうか…?
そうなのです。このチャートは経営層、組織長、担当者など全ての職位の視点が入り組むように混在しており、最終的には全階層の従業員が行動変革を織りなして初めて達成できる姿が描かれているのです。
経営者視点で企業の変革プランを考える時、最大のジレンマになるのは「既存事業の運営を一切止めずに、新たなものに変えていくこと」です。経営者には、与えられたコンディションのなかで最高の業績を出すという責務がありますし、また前回のコラムでも解説した通り、組織体制も現状の継続を前提としたなかで最適化されているので、簡単に変えられるものではありません。
また、階層をまたいで変革を進めていくのは、一段と難しいことです。改革の発起人が経営層であれば「トップダウン型」と呼ばれ、担当者が発起人の活動は「ボトムアップ型」もしくは「草の根活動」などと呼ばれるものになります。
多くの企業におけるトップダウン施策のなかで、革新的でありながら担当者レベルまで腹落ち感があってすぐ行動に移せるものは稀でしょうし、逆にボトムアップ型活動から生まれた提案を上位がしっかり受け取り、会社や事業全体の流れを変えることも稀です。それは、ある階層から見た全体像や重要事項が他の階層でも同様の位置付けとはならないためです。経営層、組織長、一般職、どの階層から見ても、日々注目している指標や業務内容に直接関与し、かつ皆が共感できる変革プランというのはそう簡単に存在し得ないのです。
そのような背景もあり、ここで私たちから全ての読者の企業・団体で通用するような変革プランやその立案のためのフレームワークをご提案することはできません。ですが、これまでコニカミノルタジャパンが自ら試行錯誤し、部門や階層を超えた大きな取り組みのなかで見出した一つの答えありました。
それは、「働く時間の使い方の向上は、全ての階層に共通して共感できるテーマである」ということです。「働く時間を充実した良い体験の時間にしたい」や「煩雑で工数のかかる業務の時間を減らしたい」というのは多くの従業員が共感し得る願望であり、経営層から見ても「時間あたりの業務生産性の向上」はコスト削減や収益の向上にもつながるため、否定する要素がありません。
また、時間の重要性は業務の種類も問いません。例えば業界にイノベーションを起こそうという取り組みから既存事業を守るという取り組みまで、あるいは接客業務でもバックオフィス業務でも全てにおいて通用します。その理由はシンプルで、働く人にとってもお客様にとっても、人生の時間は有限であり貴重なものだからです。
この、自然の摂理のようなごく当たり前の法則を企業活動の基軸として捉えたコニカミノルタジャパンはさらに、良い時間の到来をただ待つのではなく、むしろ積極的に手に入れようというスタンスを取り、これを「いいじかん設計」と呼ぶことにしました。いま私たちから皆様にご提供しているソリューションは機能も提供価値も様々ですが、それらを通じて実現したいことはただ一つ、働くお客様の「いいじかん設計」の実現なのです。
「いいじかん設計」の考え方はごくシンプルで万人に通用するものであることが分かるかと思いますが、それを数々の職場・現場でどうやって実現していくのかについても、これもまた非常にシンプルです。「いいじかん設計」では、皆様の働く時間を3つの「じかん」に分類しています。
「いいじかん設計」のアプローチは、このなかで「作業じかん」を短縮し、「創造じかん」と「自分じかん」をほどよく取れるように設計していくのです。全ての人にとって1日24時間は変わりませんから、これら3つの時間の総量は設計の前後で同じになります。「作業じかん」が今まで通りだとしたら、「創造じかん」や「自分じかん」は絶対に増やせません。これを実現するプロセスとしては、最小単位となる従業員視点であっても、次のようなステップを踏むことになります。
いかがでしょうか。これは1から取り組んで3で終わりではなく、3で獲得した能力によって、1や2の取り組みをさらに増強させることができます。特に2と3のサイクルを積極的に回している個人が組織でアイデアを持ち寄り皆で前進することができたら、その組織や会社はどうなるでしょう。最初は改善活動の延長線上だったものがいつしかイノベーションが見えてくるという筋書きも、いささか現実的に思えてくるのではないかと思います。
ここまでのコラムをお読みいただいた皆様は、「いいじかん設計」という言葉が、コニカミノルタジャパンの単なる商品ブランドやコンセプトではないことをご理解いただけたかとと思います。「いいじかん設計」の主体は常に皆様の企業や団体のなかにあり、そしてコニカミノルタジャパンはあくまでそれを応援する立場です。
先ほどご紹介したチャートをあらためてご覧いただきましょう。お客様が「いいじかん設計」の取り組みを始めようと考えたとき、「おそらく最初に着手するところだろうけれど、その第一歩を上手く踏み出すための知見や仕組みを持ち合わせていない」という部分(右下)をマーキングしています。これらに対し、特に手厚く支援するソリューションをご用意しています。
例えば、「業務効率化による時間的余裕の創出」を考えたとき、定型の手続きや処理を自動的にこなしてくれるような、RPAあるいはワークフローオートメーションツールを想像すると思います。しかし実際はRPA一つとっても、導入開始時の狙い通りに活用できている企業は少ないのではないでしょうか。なかには「以前本格的にRPA導入を検討したことはあるけれど、関連する部門や従業員数が多くて普及浸透や運用の具体的計画が描けず頓挫した」というお客様もいらっしゃると思います。
コニカミノルタジャパンでは、自社実践で多くの部門やステークホルダーに関わるような生産部門の業務をRPA で効率化してきた実績があり、この体験のなかで得たナレッジをもとに、お客様の部門横断展開プロジェクトをご支援した実例が豊富にあります。
あるいは、「コミュニケーションの選択肢と頻度の拡大」に関して、部門間や階層を超えたつながりを強化するためにフリーアドレスが有効策と思うものの、実際どう始めれば良いか分からないという方もいらっしゃるでしょう。
コニカミノルタジャパンでは、オフィス空間の改装と保管文書電子化を組み合わせ、部門を超えたフリーアドレスが実現できる環境をご提供しています。こちらも、私たちが本社オフィス移転と共に2013年から取り組んできたナレッジが基になっています。
オフィスを改装すると、従業員の働き方を変えるための大きなチャンスがやってきます。設えを変えただけで働き方を変えることは難しいですが、人は目に見える物や景色で意識や行動が大きく左右される特性を持っているため、オフィスの改装は行動変革のきっかけとしてもっとも効果的です。逆に、昨日までと全く同じオフィスで「今日から働き方を変えましょう」とスローガンだけを掲げても上手くいかないのは容易にご想像がつきますよね。
「そもそもITを運用できる人材がいないし、利便性だけを追求してセキュリティーの事故を起こしたら大変なので導入に踏み切れない」という方もいらっしゃるでしょう。多くの中小企業のお客様にあてはまるケースです。
コニカミノルタジャパンではそのようなお客様向けに、セキュアなITインフラをご提供するための各種サービスを「IT-Guardians」としてご提供しています。その提供範囲は拠点内LAN、無線LAN、ストレージサービスなどの物理インフラから、マネージドPCサービスやITサポートサービスなど、故障対応や使い方がよく分からない時のITヘルプデスク(問い合わせ窓口)まで、ご提供範囲は多岐にわたります。中小企業のお客様では、FAX業務の電子化やテレワークの為のコミュニケーションツールなどの業務アプリケーションと「IT-Guardians」のセキュアなITインフラをセットでご導入いただいている事例がほとんどです。
このように、新たなITや取り組みを導入頂く際の不安要素や知見不足の懸念を取り払い、「作業じかん」の縮小に速やかに入っていただけるよう、コニカミノルタジャパンはご支援します。
様々な業種や業務での成功事例は自社での取り組み目標を検討する際に参考になります。同じ課題を持つ企業がどのように課題を解決したのか、業種、業務特有の課題を解決する方法はあるのか、サクセスパックで検索してみてください。
本コラムをお読みいただいた皆様には、これらを題材として社内の方々と対話をしていただきたいと思います。例えば先ほどのチャートを素材にして、自分の所属する組織にあてはまるのか、あるいは違うと思うのならどこがどう違うのか、従業員同士で話し合ってみることをおすすめします。皆様が所属する企業・団体のトップ、経営層の方ともし気軽にお話しができる環境があれば、そもそも2030年問題をどう捉えていて、どんな対策をしようとしているのか、このコラムシリーズの冒頭のデータや想像する未来を材料として、ご意見を伺ってみるのも良いかと思います。また、ご自身が経営者であるという場合は、直属の部下の方と対話し、メンバーの自己研鑽の必要性など、様々なお話しができるかと思います。
そして、たくさんの方々とお話をする過程で、まずは自社内の実践者、味方を増やしていく活動をおすすめします。「ひたすら『作業じかん』に没頭している方が気楽だ」という方でも、2030年問題が及ぼす企業や働く人への影響を知ると、答えは変わるかもしれません。
「いいじかん設計」というのは、社会全体、会社全体の目線で理想像を捉えて改善に取り組むための、自分視点の「働き方」のことで、従業員満足度の向上、会社の収益力向上の両者のバランスをとりながら進めていくためのキーワードです。多くの方を巻き込み、2030年問題に打ち勝つ取り組みを始める活動を起こし、その過程においてコニカミノルタジャパンを頼りにしていただければ幸いです。明るい日本を国内企業の活性化で取り戻していきたい。それが私たちコニカミノルタジャパンの願いです。
ここまでお読みいただいた皆様、本当にありがとうございました。コニカミノルタジャパンが取り組む「いいじかん設計」はこれからも続きます。現在、このシリーズコラムのスピンオフの続編として、今回ご紹介している課題解決のための商品の担当者、自社実践の経験者などへのインタビュー記事を近日中に公開します。
今後も「いいじかん設計」をよろしくお願いいたします。
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いいじかん設計 編集部
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