公開日2025.01.09
注目の補助金を徹底解説!
中小企業省力化投資補助金の申請ポイントと対策


2024年度から新たに始まった「中小企業省力化投資補助金」について、印刷会社が人手不足を解消し、生産性を向上させるための申請ポイントと対策を詳しく解説します。この記事では、6年以上にわたり印刷会社の補助金申請をサポートしてきたコニカミノルタジャパンの補助金担当者が、そのノウハウをお伝えします。
※本記事は、2024年12月20日時点の「中小企業省力化投資補助金 公募要領」に基づいています。補助金の情報は日々更新されるため、最新情報は下記よりお気軽にお問い合わせください。
中小企業省力化投資補助金とは
中小企業省力化投資補助金は、2024年に開始された新しい制度で、今後の活用が期待される補助金です。特に印刷会社向けのカテゴリ登録が始まったばかりで、早めに補助金の内容や流れを理解しておくことが重要です。
この補助金は国の予算が5,000億円と高額で、最大1,000万円(上限額引き上げで最大1,500万円)まで補助が出ます。引き上げ上限額の1,500万円で計算すると、約33,000社以上の事業者が採択される見込みです。
2026年9月まで随時公募受付を行っており、不採択の場合も再チャレンジが可能です。採択結果も申請から約1か月でわかるため、ぜひ活用していただきたいお薦めの補助金です。
この補助金の大きな特徴は、中小企業の人手不足解消につながる「省力化製品」の導入費用の一部が補助される点です。省力化製品とは、人手不足を補うための製品で、中小企業庁の「製品カタログ」に登録された製品が対象となります。
また、他の補助金とは異なり、販売事業者とお客様との「共同申請」という形で手続きが進みます。他の補助金では最終的な申請手続きをお客様側で行いますが、中小企業省力化投資補助金では販売事業者とお客様が互いにやり取りをしながら申請を進めていきます。

申請要件や補助額
補助対象
補助金の対象は、人手不足が課題の中小企業です。印刷会社(製造業)では、従業員数が300名以下、もしくは資本金が3億円以下の企業が対象となります。従業員数と資本金のどちらか一方を満たしていれば問題ありません。ただし、みなし大企業やみなし同一法人は対象外となります。
補助上限額
補助上限額は、従業員数に応じて異なります。従業員数が5名以下の場合は200万円、6名~20名以下の場合は500万円、21名以上の場合は1,000万円が上限となります。従業員数が増えるほど、段階的に補助額が上がります。さらに、条件を満たすことで補助上限額がそれぞれ引き上げられます。
補助上限額引き上げの条件
事業終了時に「給与支給総額が6%以上増加」し、かつ「事業場内最低賃金が45円以上増加」することが求められます。補助上限額を引き上げたものの、事業終了までに賃上げが達成されなかった場合は交付額が減額されます。
補助上限額 | 補助率 |
---|---|
従業員数5名以下 200万円(300万円) |
1/2 |
従業員数6~20名以下 500万円(750万円) |
1/2 |
従業員数21名以上 1,000万円(1,500万円) |
1/2 |
※補助事業実施期間内に一定以上の賃上げを達成した場合、()内の額に補助上限を引き上げ
補助対象経費
補助対象経費は、省力化製品の本体価格およびそれに関わる搬入設置費用です。ただし、中古品、無償提供品、交付決定前に契約して購入した省力化製品は補助対象外となります。必ず採択されてから契約、購入、納品を行うようにお願いします。
活用メリット
中小企業省力化投資補助金の活用には多くのメリットがあります。
まず、随時公募受付のため、いつでも申請が可能です。これにより、お客様のタイミングに合わせて柔軟に申請を行うことができます。
次に、申請から採択結果発表までの期間が短く、交付申請後約1か月で結果がわかります。迅速な対応が求められるビジネス環境において、このスピードは大きな利点です。
さらに、万が一不採用となった場合でも、申請内容を見直して再チャレンジが可能です。これにより、改善点を反映させた再申請ができ、補助金活用のチャンスが広がります。
採択結果発表後はすぐに事業を実施することができるため、事業の立ち上がりが非常に速く、迅速に実行に移すことが可能です。
これらのメリットを活用することで、人手不足を解消し生産性を向上させるための設備投資を効果的に行うことができます。
補助対象外となる事業
中小企業省力化投資補助金には、補助対象外となる事業もあります。既に所有する製品の置き換えで、省力化効果が得られない事業は補助対象外です。例えば、印刷機の入れ替えは補助対象外となります。
※新規導入/増設は補助対象
ただし、上記の条件は2024年12月20日時点の情報であり、今後変更される可能性があります。例えば、レジ・券売機は入れ替えが補助対象に変更にされるなど、国も事業に合わせて柔軟に条件を変えていく可能性があります。
そのため、申請を検討される場合は最新情報をご確認ください。

全体の流れと申請手続き
交付申請から補助金の支払いまでには、いくつかの段階を経る必要があります。まず、補助金の交付申請を行います。採択後は12か月以内に製品を導入する必要があります。印刷機の導入では問題ないと思いますが、万が一12か月を過ぎると採択が取り消される可能性があります。
製品を導入し代金を支払った後、実績報告を行います。その実績報告が完了すると、国が確定検査を行います。この検査が完了した後に補助金が交付されるという流れです。補助金が交付された後も、他の補助金と同様に3年間は国に対して効果報告を行う義務があります。

申請手続き
申請は、販売事業者とお客様との共同申請となりますが、まずは事前に「gBizIDプライム」を取得していただく必要があります。gBizIDプライムは補助金の電子申請に必要なアカウントです。
gBizIDプライムを取得し、対象となる省力化製品を選定した後は、販売事業者がお客様をマイページに招待することから始まります。マイページとは、申請に必要な項目を入力するページです。交付申請から決定まで、お客様と販売事業者がマイページを通じて一緒にやり取りをしながら手続きを進めていきます。
下の図の緑部分が販売事業者の作業、青部分がお客様の作業となります。各ステップに応じて必要な情報を入力していきますが、お客様側で困ったことがあれば、販売事業者がサポートいたしますのでご安心ください。

事前準備内容
申請を開始する前に、3つの事前準備を行っていただく必要があります。
① 事業計画の策定
これは審査の肝になる部分です。まず、どのような内容で申請するかを販売事業者と一緒に検討します。お客様から補助金検討の打診をいただき、販売事業者側で公募要項の要件に合致しているかを確認します。その後、ヒアリングを行いながら一緒に事業計画を策定していきます。
② gBizIDプライムの取得
これがないと申請自体ができないため、必ず取得をお願いします。事前にアカウント登録を完了し、ID・パスワードをご準備ください。
③ 交付申請に必要な情報や書類の取得
他の補助金に比べて、比較的少ない様式になっています。従業員名簿や財務諸表、貸借対照表、履歴事項全部証明書、法人税の納税証明書などをご用意ください。また、人手不足を証明する書類も必要です。
事前に準備が必要な書類

事業計画の策定
まず、販売事業者とお客様が協力して、製品カタログから選んだ省力化製品を活用し、労働生産性の向上目標(年平均成長率3.0%以上/3年間分)を達成する見込みの事業計画を作成します。労働生産性の年平均成長率の算出方法についても、販売事業者側でサポートいたしますので、まずはご相談ください。
作成した事業計画をもとに、応募・交付申請時に以下の(1)~(3)を入力または添付をします。特に(1)と(2)が審査時に非常に重要です。ここでしっかり定量的な数字を示し、どの程度の効果が見込めるのか、見込めた効果をどう活用していくのかを明確にする必要があります。ここは販売事業者側でもしっかりサポートいたします。
省力化を進めるための事業計画(1)~(3)
項目 | 作業者 | 概要 |
---|---|---|
(1)導入製品の使用方法 | お客様が入力 | 省力化効果を発揮するための使用方法について、①使用者、➁使用場所、③使用時間、④使用目的を入力し、➄でその説明を200文字程度で行います。 |
(2)省力化により既存業務から抽出できると期待されている時間・人員の使途 | お客様が入力 | 既存業務から抽出される時間・人員の使途について、選択リストから当てはまるものを選択し、選択した内容について200字程度で説明をします。 <選択リスト> ・今後の従業員の減少に対する業容維持(時短営業の回避など)のため ・従業員の負担軽減のため ・新規の受注獲得・業容拡大のため ・その他 |
(3)製品の導入により期待される省力化の効果 | 販売事業者が作成して添付 | 販売事業者が【指定様式】省力化効果判定シートをダウンロードし、必要事項を入力のうえ応募・交付申請時に添付します。 |
【入力例】(1)導入製品の使用方法
① 使用者 | 例)印刷オペレーター |
---|---|
② 使用場所 | 例)印刷工場、店舗 |
③ 使用時間 | 例)営業時間中、9時~17時 |
④ 使用目的 | 例)印刷物出力業務 |
⑤ 説明(200文字程度) | 現状、印刷工程では製版・刷版作業は全て印刷オペレーターの手作業での制作・目視確認が必須のため、作業工数負荷と印刷制作物の納期長期化が課題です。オンデマンド印刷機導入により製版・刷版制作の作業を不要にするとともに版の保管場所や管理工数削減も進め、大幅な作業時間短縮と省人化を実現します。削減出来た時間や人件費は新たなリソースとして、短納期小ロット印刷の新商品開発に充て、賃上げ実現に活用いたします。(198文字) |
【入力例】(2)省力化により既存業務から抽出できると期待されている時間・人員の使途
説明(200文字程度) | 印刷工程での作業負荷増の原因となっていた版制作時間分の時間が10分~30分が→0分となり、版制作の時間確保が不要となります。また、版制作後の調整印刷等の印刷前準備においても30分→5分と工数と時間の大幅削減により時間創出と人員確保を行い、多品種小ロット印刷サービス等の他新規印刷業務に活かします。さらに従来の刷版CTP現像のための現像薬品が不要となるため、環境にも配慮した印刷事業を進めてまいります。(200文字) |
---|
上記はあくまで一例です。お客様の課題にあわせて質の高い事業計画を策定することが、採択率を上げるポイントです。具体的には、省力化製品をどの業務で使用するのか、現在の業務状況や課題、そして省力化製品の導入によってどのように人手不足が改善されるのかを明確に記載します。
また、労働生産性の向上目標を達成する見込みを示し、事業計画の実施によってどのように付加価値が生まれるのかを具体的に説明します。これらの要素をしっかりと盛り込んだ事業計画を作成することで、審査が通過しやすくなります。
賃金引上げ目標について
補助上限額の引き上げを希望する場合は、賃金引き上げについての申告を行い、給与支給総額を入力する必要があります。賃上げの目標としては、以下の2つの条件を満たすことが求められます。
A | 事業場内最低賃金を45円以上増加させること |
---|---|
B | 給与支給総額を6%以上増加させること |
AとBの条件は、両方とも満たさなければなりません。さらに、これらの条件は採択されてから実績報告が終わるまでの間に達成する必要があります。これにより、補助上限額の引き上げが適用されることになります。
人手不足であることの確認
本補助金は、人手不足に悩む中小企業向けの制度です。そのため、人手不足に該当しない場合は申請対象となりません。事業計画の中にも、人手不足であることが確認できる内容を記載する必要があります。
以下のいずれかの理由を選択し、人手不足であることを示す書類の提出が必要です。
・限られた人手で業務を遂行するため、直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている。 |
・整理解雇に依らない離職・退職によって従業員が前年度比で5%以上減少している。 |
・採用活動を行い求人掲載したものの、充足には至らなかった。 |
・その他、省力化を推し進める必要に迫られている。 |
例えば求人募集中であれば、求人サイトの画面のスクリーンショットを確認書類として提出することができます。現在求人活動を行っているのであれば、書類準備の手間がかからないためおすすめです。
採択率を上げるポイント
補助金の採択は最終的に総合的な判断によって決定されます。総合的な判断とは、事業計画全体を通して辻褄が合っているかどうかを意味します。そのため、計画がしっかりと合理的に説明されているかが重要です。
次に、高い労働生産性の向上が期待できるかどうかも評価のポイントとなります。省力化への投資がどのように労働生産性を向上させるかを具体的に示すことが求められます。また、単なる工数削減以上の付加価値創出が期待できるかどうかも重要です。工数を削減して余剰した時間や人手をどのように活用するかが鍵となります。
さらに、賃上げに積極的に取り組む姿勢も評価されます。大幅な賃上げによる補助上限額引き上げの適用を含め、賃上げに関する具体的な計画や実績を示すことで、事業の持続可能性と従業員の満足度向上をアピールすることができます。
申請時の留意事項
遡及申請は不可 | 既に購入済のものや発注済のものは補助対象外です。 |
---|---|
他設備投資系補助金同様に財産処分の制約があります | 取得から一定の年数を経過する前に財産処分を行う場合は、帳簿価額を上限とした納付等の制約があります。減価償却期間が終わるまでは使用継続が前提ですのでご留意ください。 |
賃上げには未達成時のペナルティ有り | 実績報告時に賃上げ目標が未達の場合、補助上限引き上げを行わなかった場合の補助額まで減額がされます。また実績報告後に賃下げすることは認められません。 ※効果報告時に実績報告時の賃金と比較され、補助金返還となる場合があります。 |
リース購入はファイナンス ・リース取引のみが対象 |
中小企業等が対象リース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されること等を条件に、対象リース会社が販売事業者に支払う購入費用を補助対象として、対象リース会社へ補助金を交付します。なお、対象となる製品は製品カタログに掲載された製品に限られます。 |
効果報告は必須 | 事業実施後の効果報告を怠ってしまうと補助金返還となる場合があります。補助金受領後も後年作業がありますので、ご留意ください。 |
補助対象外となる事業者
① | みなし大企業/みなし同一法人 ※中小企業であっても、グループ会社内で1回のみ申請可能(みなし同一法人) |
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② | 省力化補助金の交付決定を受けた事業者 ※今後、各申請における補助額の合計が補助上限額に達するまでは、複数回の応募・交付申請が可能となる予定 |
③ | ものづくり補助金の交付決定を受け、10ヶ月を経過していない事業者 |
④ | 過去3年間に2回以上、ものづくり補助金の交付決定を受けた事業者 |
⑤ | 事業再構築補助金に採択され、その補助対象である事業に用いるための機器導入 ※全く別の事業で申請する場合は申請可能 |
⑥ | 観光庁「観光地・観光産業における人材不足対策事業」で交付決定を受けた、または申請を行っている |
⑦ | 国庫および公的制度からの二重受給 ※公的医療保険・介護保険や他の補助金との補助対象経費重複は不可 ※テーマ・事業内容がIT導入補助金と同一または類似の業務は不可 |
⑧ | 省力化補助金の製造事業者、販売事業者 |
補助対象製品
2025年1月現在、コニカミノルタの補助対象製品は、9機種が中小企業庁のカタログに登録されています。ラベル印刷機に関しては、中小企業省力化投資補助金事務局にて製品カテゴリ登録に向けた審査準備が進んでいる段階となります。今後の状況により対象外となる可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
また、補助対象に含まれるオプション構成は機種ごとに異なります。最新のカタログ登録状況とあわせて、詳しくはお近くの担当営業またはこちらまでお問い合わせください。
補助対象
カラー印刷機 | AccurioPress C14000 /C12000 |
---|---|
AccurioPress C7100 | |
AccurioPress C4080/C4070 | |
AccurioPress C84hc | |
モノクロ印刷機 | AccurioPress 7136/7120 |
加飾印刷機 | AccurioShine 3600 |
ラベル印刷機 | AccurioLabel 230(※) |
※登録申請予定
補助金に関するお悩みをトータルサポートします!
今回の中小企業省力化投資補助金以外にも、さまざまな補助金が存在します。特に、来年度にはものづくり補助金が再開される予定であり、他にも新たな補助金が始まる見込みです。国も例年より補助金を上乗せする方向で動いており、印刷会社の皆様にとっても設備投資の大きなチャンスとなるでしょう。
今回の補助金に限らず、他の補助金も含めてコニカミノルタがしっかりサポートさせていただきます。ご検討の場合は、まずはお気軽にご相談ください。
![]() コニカミノルタジャパン株式会社 佐藤 達夫6年以上にわたり補助金に関する申請支援に携わっており、印刷会社で活用出来る最適な補助金のご紹介と申請に関する事業計画作成から採択後の実績報告までトータルでサポートを行っています。 6年以上にわたり補助金に関する申請支援に携わっており、印刷会社で活用出来る最適な補助金のご紹介と申請に関する事業計画作成から採択後の実績報告までトータルでサポートを行っています。 |
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