開発者インタビュー 分光測色計「CM-25cG」

写真左側から、(開発部 先行開発グループ)阿部 芳久、竹部 洋佑、(開発部 第一開発グループ)河野 利夫

写真左側から、(開発部 先行開発グループ)阿部 芳久、竹部 洋佑、(開発部 第一開発グループ)河野 利夫

2016年10月より自動車内装の測定に適した分光測色計「CM-25cG」を販売開始。
自動車内装の色管理において、グローバルでベストセラー製品であった分光測色計「CM-2500c」の後継機種として開発された、分光測色計「CM-25cG」。
色の品質管理において、とりわけ最先端の機能や世界トップレベルの精度が求められている中、お客様の想いを実現するための開発者の探求の原動力はどこにあったのか、その想いを実現するために開発現場ではどのような苦労があったのでしょうか。
センシング事業本部 開発部 阿部芳久氏、竹部洋佑氏、河野利夫氏にお話を伺いました。

分光測色計 CM-2500cから
新製品 分光測色計 CM-25cGの製品開発に至るまでのストーリー

従来製品CM-2500cの後継機として開発を開始する際、意識したポイントについてお聞かせください。

従来製品CM-2500cの後継機として開発を開始する際、意識したポイントについてお聞かせください。

竹部:色管理は、ものづくりの開発現場・品質管理・生産現場において重要な役割を担っており、あらゆる業界で測色計が活用されています。特に自動車業界では外装部品や内装部品において、色に加え光沢などの管理も厳しく行われています。
色や光沢は目視で判定されるケースもありますが、作業者ばらつきや観察条件の違いなどにより、メーカーとサプライヤー間での品質基準のトラブルを招くケースもあり、測定器が活用されます。

弊社製品のCM-2500cは2004年の発売以降、自動車内装品質管理において広く普及し活用されています。しかし近年、自動車内装品質レベルの高まりや品質管理の効率化などを背景に、よりお客様のニーズ、ワークフローに適した新商品の開発を望まれてきました。 顧客価値提案のためにお客様のユースケース、品質管理方法、実際の現場を把握して商品仕様に繋げることを意識しました。そのため、開発者自ら欧州、中国を中心に30社以上の完成車メーカーや部品サプライヤーを訪問し、実際の現場も拝見させていただきました。その中で得た次世代機種CM-25cGのキーワードは、「高精度で測色計と光沢計を一体化」・「自動車内装品質管理の効率化に寄与する機能と製品形状」です。

色と光沢の「Two in One」測定と低器差を実現

お客様のニーズをヒアリングした結果、CM-25cGで実現した性能は何ですか。

竹部:自動車内装の品質管理は、ほぼすべての部品で色と光沢の管理が行われています。今までは測色計と光沢計それぞれで品質管理を行うことが一般的でした。色と光沢をお客様が求める性能で同時に測れる測定器がないためです。
CM-25cGでは、一体化しながらも測色や光沢測定に関する国際規格に適合させ、器差(機器間誤差)も業界トップレベルの精度を実現しました。

CM-25cGでは⊿E*ab 0.15の器差を実現していると伺いました。※

自動車業界は、要求品質レベルが高い上に裾野が広いため、部品の色や光沢の品質管理が複雑で多くの工数がかかっているケースが少なくありません。それを受けて、品質管理の効率化・グローバル対応を目的としたデジタルデータマネージメントを求めるケースが増加しています。器差が小さいことで各工場・取引先で同等の結果が得られるので、色差ではなく絶対値による管理を可能にします。
グローバルに展開するコニカミノルタだからこそ、世界各地のお客様に器差の小さい測定器を提供することでデジタルデータマネージメントに貢献できると自負しています。

※ BCRAシリーズⅡタイル12色の平均値ΔE*ab 0.15以内
(MAV、コニカミノルタマスターボディ基準、当社条件による)

器差の小さい安定した測定器を提供

器差の小さい安定した測定器を提供

お客様ニーズに応え、
考え抜いて設計された測定器形状と左右測定ボタンの機能

小型・軽量。測定ボタンをボディ左右に配置し、利き手を問わず使いやすいデザイン

小型・軽量。測定ボタンをボディ左右に配置し、利き手を問わず使いやすいデザイン

CM-25cGでは流線型の測定器形状と左右の測定ボタンを採用されていますが、
この設計にはどんな意図が込められているのですか?

竹部:お客様へのヒアリングを行う中で、製品の形状・機能を改善することでよりユーザビリティを高めることができると考えました。
具体的には、ダッシュボードの先端やステアリング周辺などアクセスしにくかった部位を測れるように測定器先端部を低くし、小型・軽量に加え測定ボタンをボディ左右に配置することで利き手を問わず、誰でも使いやすいデザインを実現しました。
機能面では、BlueToothR通信、着脱可能な充電池の採用でワイヤレス使用を可能とし測定の自由度を高めました。また、ヘビーユーザーでも安心してご活用いただくことができる光源の高耐久化も実現し、お客様のワークフローに適した機能を実現できたと感じています。

“測定値の信頼性”と“新たな価値”を届けるために

新たな機能・高い測定精度を実現したCM-25cG。これらを実現する際に苦労した点を教えてください。

河野:お客様の求めるレベルで、高精度に色+光沢の「Two in One」測定を実現することに苦労しました。世界中で定められている規格でお客様のニーズである“測定値の信頼性”と“新たな価値”を届けることは技術的な視点において難しい点でした。
例えば、CM-25cGでは樹脂の筐体を採用していますが、一般的な光沢計の筐体は金属で作られています。その理由はサンプルに接触する面が金属だとサンプルを傷つけてしまうからです。光沢値測定における規格に準拠しつつ、樹脂の筐体でCM-25cGを開発することはハードルが高いものでしたが、CM-25cGにおいて実現することでお客様の活用シーンにおいて安心して測定いただける製品の開発が実現できました。

河野:お客様の求めるレベルで、高精度に色+光沢の「Two in One」測定を実現することに苦労しました。

光学設計の開発時にも苦労された点があるとお聞きしました。

河野:求められる器差レベルや高さ変動に強い光学設計など、従来製品のCM-2500cから格段に向上させることは技術的に困難なことでした。
高さ変動とは、お客様が測定器を手やロボットで持って被測定物に当てる際に、被測定物の形状(湾曲等)や、測定器の当て方によって生じる測定器と被測定物間の隙間や傾きのことで、他の測定器はわずかな高さ変動で測定値が大きく変動してしまいます。しかしCM-25cGは従来製品CM-2500cと比較して10倍以上の測定精度を向上することができ、お客様に信頼性の高い測定器をお届けできたと自負しています。

CM-25cGではコニカミノルタならではの実現した技術があるとお聞きしました。

河野:CM-25cGでは光沢値の測定において、3mmと10mmで測定径を切り替えることが可能です。
光沢測定における測定径の切り替え機能は市販されている主なハンディ型光沢計にはない機能であり、近年増加している小径測定を望まれるお客様のご要望をもこの1台で満たすことができます。

3mmと10mmで測定径を切り替え

3mmと10mmで測定径を切り替え

顧客視点の開発を進める中でマネジメント上意識したポイントはありますか。

顧客視点の開発を進める中でマネジメント上意識したポイントはありますか。

阿部:お客様の視点に立って一歩先の顧客価値を提案するために「デザイン・シンキング」の考え方でCM-25cGの開発を進めました。
分光測色計CM-25cGのリリースまでに複数回お客様に実際のプロトタイプを見て頂き、商品コンセプト・使い勝手・測定値信頼性などをご確認いただきました。このような各チェックポイントにおけるお客様からのフィードバックに対応しながら決めた目標の開発スケジュールで進めていく難しさがありました。
しかし、お客様と現物を用いて何度も直接対話することで、お客様のニーズや変化を捉えた価値提案に繋げることができたと考えています。

最後にCM-25cG製品開発における“想い”をお聞かせください。

最後にCM-25cG製品開発における“想い”をお聞かせください。

阿部:自動車業界において、環境対策やコスト面から塗装レス加飾など新しい技術も導入されています。これら出来栄えの定量化・品質管理を行うニーズは今後もますます高まると考えています。分光測色計CM-25cGをはじめとした弊社計測器は、こうしたトレンドやニーズに迅速に対応しています。今後も、お客様の現場、ニーズをより深く理解し、安心・信頼してお使いいただける商品を提供していきます。