開発者インタビュー 自動スキャン分光測色計「FD-9」

写真左側から、(開発部 先行開発グループ)原田 孝仁、山本 譲  (開発部 開発3グループ)板東 亮二

写真左側から、(開発部 先行開発グループ)原田 孝仁、山本 譲  (開発部 開発3グループ)板東 亮二

自動スキャン分光測色計「FD-9」には数多くのユニークな機能が搭載。
それらを実現するまでに開発現場ではどのようなこだわりや苦労があったのでしょうか。
センシング事業本部 開発部 山本譲氏に話を伺ってみました。

自動スキャン分光測色計「FD-9」の開発するに至った背景は何ですか。

自動スキャン分光測色計「FD-9」の開発するに至った背景は何ですか。

様々な業界で自動化や効率化による生産性や品質の向上が現場で求められている中、グラフィックイメージング・印刷業界もその例外ではありません。
そこで、色を測定して数値管理するというプロセスにおいても、「なるべく人手をかけずに速くかつ正確に自動測色したい」というお客様の現場の声に応えることが我々の使命だと思い、自動スキャン分光測色計「FD-9」が誕生しました。

高精度測定かつ超高速スポット測定が実現

「測定精度を保ちつつ、自動測色のスピードを速くして欲しい。」というお客様の要望に応えるべく、
「超高速スポット測定(1500パッチ4分以内)」が実現したわけですが、1パッチずつセンサーを停止させて測定を行っているにもかかわらず、なぜ他社製品に比べて測定スピードを速くすることが出来たのですか?

6mmパッチのような小さいものを高精度で測定するためには、連続測定方式で測定する場合、センサーの動くスピードを落とす必要があるのですが、それではお客様が要望とする仕様である1500パッチ4分以内が達成できませんでした。そこで我々は、各パッチの上でセンサーを高精度測定に必要な時間だけ止め、次のパッチへの移動を速くするという「スポット測定方式」を採用することにしました。このスポット測定には測定すべき各パッチの正確な位置情報を入手することが不可欠なのですが、「FD-9」には後述にあります、自由フォーマット機能のために搭載された画像センサー(Contact Image Sensor(CIS))で取得した情報を活用することで、超高速スポット測定を実現することが出来ました。

人間の目の代わりとなる『Contact Image Sensor (CIS)』の搭載

「自由フォーマット機能」というのは、これまでのコニカミノルタの測色計にはなかった、 まったく新しい発想の機能だと思いますが、この機能を搭載するために苦労した点や工夫した点を教えてください。

「FD-9」では専用フォーマット、マーキングなしで印刷物内にあるパッチ領域が自動検出できるよう画像処理を行っています。(図1参照)人間の目、および脳は非常に優れているので、印刷物内のパッチ領域をいとも簡単に見つけることができます。「FD-9」には人間の目の代わりとしてContact Image Sensor(CIS)を搭載(※測色用に分光センサーも搭載)し、この情報を画像処理(特徴抽出、画像認識)しています。
測定開始前にプレスキャンで印刷物全面の画像情報を取得し、取り込んだ画像の中にある線の情報を頼りに等間隔に並んだ線・矩形のかたまりをパッチ領域として検出しています。例えば、英字のI(アイ)という文字が印刷物の中に含まれていた場合、人間はすぐに文字であると認識できますが、画像処理ではあるひとつの縦線として認識されますのでパッチ領域の検出には邪魔な線となります。他にも印刷物にキズが入っている場合、人間はキズ・異物として認識できますが、画像処理ではまたあるひとつの線として認識されてしまいます。

図1. プレスキャンによる画像情報取得結果
「FD-9」では専用フォーマット、マーキングなしで印刷物内にあるパッチ領域が自動検出できるよう画像処理を行っています

図1. プレスキャンによる画像情報取得結果

「FD-9」では専用フォーマット、マーキングなしで印刷物内にあるパッチ領域が自動検出できるよう画像処理を行っています

このように取得した画像情報の中からいかにして、邪魔な線やノイズを取り除きパッチ領域を検出するかが、コニカミノルタグループの研究開発部門の協力を得ながら取り組んだ拘りでもあり、苦労した点でもあります。
また、標準付属品である測定ユーティリティソフトウェア「FD-S2w」を使用することで、「FD-9」が検出するパッチ領域以外の任意箇所も測定点として設定することが可能です。このパッチ領域はもちろん、印刷物内の画像の色も測定できる点は自由フォーマット機能の大きな魅力の一つで、工夫した点です。

現場の声にこたえた『簡単』、『正確』、『超高速』の
新世代チャート自動測色計

測色用分光センサーに加えて、画像情報取得のためのCISも搭載することで、
「FD-9」の超高速スポット測定や自由フォーマット機能が可能となったのですね。

その通りです。CISで取得した画像情報は測定前、測定中にも活用し、常時「FD-9」の紙送りにズレがないことを確認しています。もしズレがあれば紙送りを微調整することで、パッチ領域の正しい位置を高速スポット測定することが出来ます。
また、CISを搭載したことにより、「FD-9」はQRコードを読み取ることも可能です。印刷機の種類や印刷条件などの情報を埋め込んだQRコードをチャートとともに印刷して、「FD-9」で測定すれば、測色後のデータ処理も非常に簡単になります。

その他にも多数の特長が詰まった自動スキャン分光測色計「FD-9」をぜひ一度ご使用頂き、その便利さや速さを実感して欲しいです。