• 2023.10.12

    女性の離職率はなぜ高い?組織として考えるべき改善ポイントとは

    関連タグ人手不足
    女性の離職率はなぜ高い?組織として考えるべき改善ポイントとはのキービジュアル

INDEX

2015年当時の内閣は少子高齢化が深刻化している日本において、構造的な問題に取り組む姿勢表明として「一億総活躍社会の実現」を目標に掲げました。その社会は、女性も、男性も、お年寄りも若者も、障害や難病のある人も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる全員参加型の社会であるとされました。そして、子育てしながら、介護しながら活躍できる社会の実現を、あらゆる政策を総動員して目指すことが示されました。
しかし、女性の離職率に注目すると、未だ実現にはほど遠い現状であることが分かります。女性が離職せざるを得ない背景とは何か。離職率を押し上げている原因を知ることで、障害となっているものが見えてきます。今回は女性が長く働ける職場づくりについての課題を取り上げ、具体的な対策や取り組み、注意点を解説します。

女性が働きやすい組織を形成することの重要性

女性が働きやすい組織を形成することの重要性因

はじめに女性が働きやすい組織が求められている背景と、その理由を解説します。

女性とシニアの雇用拡大により労働力人口は維持されている

日本国内の就業者数は2022年(令和4年)平均では前年より10万人の増加となっていますが、男女別に見ると男性は12万人の減少であるのに対し、女性は22万人の増加です。労働力人口が減り続けているなかでも、就業者数が増加しているのは、女性やシニアが労働力として社会参加を果たしている結果と言えるでしょう。
女性やシニアを含めた全員参加型の社会でなければ、社会を安定的に維持していくことが難しくなっているのが現実です。企業単位で見た場合でも、女性の労働力の活用は安定的な経営に不可欠な要素となりつつあることは推測されます。

出典:令和5年総務省統計局による「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約

女性が働きやすい職場であることは健全な組織づくりが成功している証となる

女性が働きやすい職場では、古い時代の価値観の排除が進んでいると考えられます。属性にとらわれずに能力を認められ、女性だからとお茶くみや掃除を義務付けられるといった差別がされません。
柔軟性のある考え方によって運営が行われている企業は、誰にとっても可能性が開かれています。人を属性で見るのではなく、能力や適性に合った配置が行われ、業務負担が適切に振り分けられます。適材適所が実現できれば、人的リソースを合理的に活用でき、良好な経営につなげられます。
雇用に際して性別ではなくスキル・能力・経験といった本来あるべき基準が適用されることで、人手不足の解消にも寄与します。性差によって選別が行われなければ、それだけ優秀な人材採用の枠が拡大することになるでしょう。

全従業員を公平に扱う姿勢は企業イメージ向上の好材料として、投資家、消費者など社会からの支持を受けやすくなります。実際、女性の活躍推進に取り組む企業では資本市場における評価が高く、株価でも好パフォーマンスが見られることから、企業の発展性に貢献していると言えます。
また、両立支援等助成金・女性活躍加速化コースなど、女性の活躍や労働者の多様性を推奨する国からの支援を受けやすくなるため、企業としても事業拡大や成長のステップの機会が得られます。
人手不足と女性の職場環境については、以下の記事で詳しく解説しています。

女性の離職率が高い背景

次に女性の離職率の現状とその要因について解説します。

女性の離職率の現状

厚生労働省の「雇用動向調査」によると、2021年の離職率は男性12.8%、女性15.3%となっています。女性の離職率の推移を見ると、2020年からの2年間は15%台に落ち着いていますが、2007年以降から長く17~18%台を推移していました。男性との差異は4~6ポイントまで開いている年もあります。
女性は入職率・離職率とも男性と比べて大きく上回る傾向が見られ、多くが職に就く一方でまた辞める人も多いという状況が明らかです。

■女性の置かれた社会背景

各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数において、2022年の日本の総合スコアは0.650、順位は146か国中116位です。先進国のなかで最低レベルであり、アジア諸国のなかでも韓国や中国、ASEAN諸国よりも低くなっています。
この数値から見ても、日本は女性が働きやすい社会でないことが理解できます。端的には、そもそも男女格差が根強い社会であるということが言えるでしょう。

出典:内閣府 男女共同参画局「共同参画」2022年8月号
■女性の離職率が高くなる要因

女性の離職率が高くなる大きな要因には、以下の2つが挙げられます。

1.非正規雇用労働者に占める割合の差

2021年における非正規雇用労働者の割合は、男性が21.8%に対し、女性は53.6%と働く半数以上は正規雇用ではありません。
非正規雇用では一時的に人材を補うケースが多く、雇用が不安定なこともあり、短期での離職につながりやすい傾向が見られます。

出典:内閣府 男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版 」 2-7図 正規雇用労働者と非正規雇用労働者数の推移(男女別)
2.ライフステージの変化に伴う離職

先のジェンダー・ギャップ指数から見ても分かるように、結婚・出産・育児・介護など依然として女性が私的生活の負担割合を大きく担う傾向が高いと言えます。多くの場合、女性のキャリアは男性のキャリアと比べて軽視されがちで、生活の変化に伴い離職の選択を迫られます。
また、こうした事情から離職を余儀なくされる女性に対し、支援の受け皿が十分でないということも、大きな課題となっています。

女性の離職率が高くなる背景とその要因

厚生労働省の「雇用動向調査結果」において、女性が離職する理由として以下のような回答が挙げられています。

・自分の希望する仕事ができない
・能力・実績が正当に評価されない
・労働対価が適切ではない
・残業が多く、休暇が取得できない
・人間関係の悪さ
・結婚・出産・育児・介護
・心身の不調
・勉強のため

なかには個人的な事情も見られますが、多くは企業の女性に対する労働環境の不整備が原因となっている可能性が色濃く表れています。

女性の離職率が上がる原因

女性の離職率が上がる原因
■子育て支援の不足

子どものいる女性が仕事を続ける上で避けて通れないのが、子育てとの両立です。出産前後に産休育休、会社復帰の制度が整ってないため離職せざるを得ないというのは珍しくありません。
復帰した後も、子どもに関わる事情による早退・欠勤など、緊急時の対応のフォロー体制がないと安心して仕事を続けられなくなります。

■介護など家庭問題へのサポート不足

子育てと同様に、家族の問題として大きなウエイトを占めるのが介護です。介護休暇制度が確立されていない、また関連する厚生福利制度が利用できないなどによって、一人で負担を抱え込む状態では離職を選ぶしか道がない場合があります。

■評価制度が不透明

同期入社の男性よりも昇格が遅いという不満を感じることがあります。成果よりも属性が判断基準となっており、どれほど良い成績を上げても、責任のあるポストに就かせてもらえないというケースもあります。そうでなくても、評価基準が明確に示されていないと不満の原因になります。
働きが正当に評価されないと、仕事へのモチベーションが下がり、離職へと気持ちが傾いていきます。

■ハラスメント対応が整備されていない

パワハラ、セクハラ、マタハラが横行し、精神的に追い詰められたことでの離職も存在しないとは言えません。相談窓口や上申する手段がなく、組織として改善するための体制が整備されていないことも離職を招く要因です。

■ロールモデルがない

女性で成功した例がない企業、高位の管理職に女性が登用されていない企業では、職場で働き続けることに将来性を感じられなくなります。
家庭と仕事を両立できる自信が失われる、ビジネスパーソンとして目指す道が見つからないといった気持ちから、離職を選ぶ可能性があります。

女性の離職率を改善するポイント

女性の離職率改善に向けて企業として考えるべき改善ポイントを解説します。

組織として変わる重要性を認識する

女性の離職率改善に向けて、先ずは組織としてその問題を重視していく姿勢が求められます。
現場の働き方や業務の問題点などの現状を把握し、女性にとって何が働き続けることを阻害する要因なのかを明らかにする必要があります。アンケート、SNS投稿など、広く忌憚のない意見を収集し、従業員の本音を掘り起こします。組織の役職についての男女比を数値化し外部に公表することで、企業として女性の雇用に関する課題解決に向けた本気の姿勢を示します。

性差を基準とした作業や業務の廃止など、硬直化した制度是正に取り組みます。
多様性を全社的に認めていくためのガイドラインを設けるのも、有効な施策です。従業員や管理者のなかには、慣例に従っているだけで差別をしていると気付いていない人がいる可能性もあります。不平等感の排除を徹底するために、作業の分担割合の基準を明確化し、差別につながる言動を厳しく管理していきます。

女性の離職率改善に向けた具体的な取り組み

■仕事・業務に関する取り組み

評価制度の公正化・明確化により、客観性があり、従業員が納得できる基準を明示する必要があります。
業務について個人的な希望に耳を傾ける機会を設ける、不満がどこにあるのか、改善の方策について意見を聞くなど、企業側からの歩み寄りの姿勢を強化していきます。
男女によらず昇進昇格に機会を均等に与える一方で、あえて昇進を望まない意見もあることに留意する必要もあります。適性や指向を重視しながら、適材適所に取り組みます。

■労働環境に関する取り組み

残業の実態を把握し、作業フローや効率の悪い業務がないかの見直しを行います。IT化による業務の効率化などで改善を図る方法もあります。マニュアル・ワークフロー導入などにより業務の標準化を行い、在宅ワークのしやすい環境整備を進めます。
育児・介護に関わる制度の導入に加え、休暇取得の手続きの簡便化や各部署への通達を徹底し、休暇中のフォロー体制の整備を行います。

【コニカミノルタジャパンの事例:育児休暇・介護休暇】

男性の育児休暇の取得も年々増加。また、社員だけではなくその家族の生活スタイルに合わせた制度活用も可能としています。要介護者がいる人の就労を助けるための制度も提供しています。

■コミュニケーション活性化への取り組み

社内カフェ、フリースペースなど、部署間交流もしやすくなる施設の設置を検討します。
育児・出産、介護などの会話がしやすい環境づくりの一環として、オンライン・オフラインでのコミュニティーの創設も有効策です。またオフィスレイアウトの変更により、会話が自然発生しやすい環境づくりを行う方法もあります。

【コニカミノルタジャパンの事例:フリーアドレス制】

オフィスは一部を除き全席フリーアドレス。気分を変えるため、気軽な仲間近くでの業務、プロジェクトによる集散など、柔軟性のある座席チョイスが可能です。

■キャリアへの不安をなくすための取り組み

経営層・管理層に女性を積極的に登用し、キャリアへの道筋を示します。
eラーニングやセミナーなど学習機会の提供を行う、資格取得支援の制度を設けるなど、個々のニーズへの積極的なサポート体制を整備します。また生涯にわたって仕事が続けられることを示すための制度を設ける方法もあります。

【コニカミノルタジャパンの事例:兼業・副業解禁、ジョブ・リターン制度導入】

兼業・副業を解禁することで従業員のニーズに応えながら、多様な知見や技術を自社のイノベーションへとつなげることが期待されます。
ジョブ・リターン制度は、育児・介護・配偶者転勤によって本人の意図に反して退職せざるを得なかった場合や、自己のキャリアアップのための留学・転職などによる離職に対して、再び自社に戻ってさらなる活躍の機会を提供する制度です。

企業の理解不足が女性の離職を招く

「女性はすぐ辞めるから」という上司がいる企業には、今後も離職が続くリスクがあります。離職率を下げるためには、先ず企業がそこにある問題を理解しなければなりません。社会的な立場、ジェンダーに関する危機意識の欠如などに気付かなければ、現状を変えることはできないでしょう。人材不足が加速するなかで、女性を企業の大きな戦力として活用していくことが求められます。そのためにも、長く働ける職場とはどのようなものなのかを、自社なりの視点で考える必要があります。

いいじかん設計 編集部

関連記事

タグから記事を探す

 
ニューノーマル時代の働き方づくりに役立つ資料が満載!無料ダウンロードはこちら
ニューノーマル時代の働き方づくりに役立つ資料が満載!無料ダウンロードはこちら
オフィス見学 OFFICE TOUR
オフィス見学 OFFICE TOUR
メルマガ登録 MAIL MAGAZINE
メルマガ登録 MAIL MAGAZINE
お問い合わせ CONTACT
お問い合わせ CONTACT