気候関連財務情報開示(TCFD)
戦略
クリックするとページ内の該当箇所へジャンプします。
気候関連のリスクおよび機会に係る組織の事業・戦略・財務に対する影響
気候変動の物理的影響が顕在化し地球環境が破壊されれば、経済や金融に混乱を引き起こす可能性があるといわれています。これは、コニカミノルタの事業にとってもリスクであると認識しています。一方、ビジネスを通じて環境課題を解決することで機会を創出することができ、企業の持続的な成長へつながると考えています。
コニカミノルタは、最先端の技術を積極的に取り込み、強みとする画像IoT技術とデジタル入出力の技術を融合させることで、気候変動を含む社会課題の解決に寄与するソリューションを生み出すデジタルカンパニーへの業容転換を進めています。そして、2020年度に策定した長期の経営ビジョンにおいて「気候変動への対応」をマテリアリティとして特定し、2030年までに「カーボンマイナス」を実現することを目標に設定しました。モノからコトへ、お客様への提供物が変化していくなかで、製品プロダクツに関わるCO2排出量だけではなく、サービスを加えてCO2を削減し事業成長につなげることを目指します。この目標をバックキャスティングし、気候変動対策に関わる中期目標および年度計画を、製品の企画・開発、生産・調達、販売などの事業中期計画と連動させることで、ビジネスを通じてカーボンマイナス目標の達成を目指しています。
気候変動シナリオ分析の実施と結果
地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定の合意のもと、世界全体が加速的かつ野心的に低炭素社会へ移行する可能性があります。一方、移行が思うように進まず世界各地で気候変動の著しい影響が顕在化してしまうおそれもあります。
コニカミノルタは、この2つのシナリオを想定し、将来にわたりグループの業績に悪影響を及ぼす事業リスクと、気候変動における課題の解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれで特定しています。
シナリオ分析を行う際の枠組みとして以下を活用し、気候シナリオ分析の対象事業分野の特定、重要な気候関連リスクおよび機会の特定、気候変動に関する既存の科学的シナリオの検討、シナリオに対するリスクおよび機会とその財務影響の検討と明確化、今後の対応の方向性・方針・戦略の検討のプロセスを経て実施しています。シナリオ分析の結果特定された気候財務影響は、コニカミノルタグループの基幹17事業・部門で構成される環境推進会議において、報告・審議され、環境統括部長が承認し、今後の対応の方向性・方針・戦略・施策を指示・展開しています。
- 使用した科学的シナリオ: IPCC RCP2.6、RCP8.5 IEA 2DS、CPS
- リスクと機会の分類: 移行リスク(政策・法律、技術、市場、評判)、物理的リスク(急性物理、慢性物理)、機会(資源効率、エネルギー、製品/サービス、市場、レジリエンス)
- 「財務影響」の定義と評価基準: 「大」 追加コストまたは利益減少 10億円以上 「中」 追加コストまたは利益減少 1~10億円 「小」 追加コストまたは利益減少 1億円未満
- 「財務効果」の定義と評価基準: 「大」 利益創出 100億円以上 「中」 利益創出 10~100億円 「小」 利益創出 10億円未満
- 「時間軸」の定義と評価基準: 「長期」 10年以上 「中期」 3~10年以内 「短期」 1~3年以内
●気温上昇が2℃以下に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合:
世界全体が低炭素社会へ移行した場合、温室効果ガス排出規制、エネルギー効率規制、欧州サーキュラーエコノミー(循環型経済)に関する規制、炭素税等、新規・追加の環境関連の法規制が厳格化した場合には、コニカミノルタグループでは、遵法のための追加的義務および費用が発生するおそれがあり、原価上昇や事業機会の損失につながる可能性があります。また、ステークホルダーからの再生可能エネルギー調達の要求の高まりに対し、適時および適切に対応できなければ、投融資および販売機会の逸失、企業ブランドイメージの低下につながる可能性があります。また、気候変動の影響を抑えようと社会・顧客の志向が変化すると、オフィスにおける紙への出力機会の減少、化石燃料や化石資源の代替化による製造・調達コストの増加など、コニカミノルタグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
コニカミノルタでは、生産工程の効率化を追求するとともに、生産技術の開発・改善を進め、CO2 排出削減とコストダウンを同時に実現する「サステナブルファクトリー活動」を推進しています。また、化石燃料に依存しない事業運営が持続的に成長できる企業の必須要件であるとの考えから、再生可能エネルギー100%での事業運営を目指す国際リーダーイニシアティブ「RE100」に加盟しています。
「RE100」では、2050年までに自社の事業活動で使用する電力の調達を100%再生可能エネルギー由来にする目標を設定し、再生可能エネルギー由来電力の普及が比較的進んでいる欧州、北米、中国に所在する自社生産拠点および販売拠点を皮切りに、電力購入契約を順次見直し、再生可能エネルギー由来電力への切り替えを行っています。
また、サプライヤー先でのCO2排出削減活動として、当社が培った省エネ専門家の技術・ノウハウをデジタル化して省エネ診断パッケージとしてサプライヤーへ提供し、サプライヤーと一体となってエネルギー削減に取り組む「DXグリーンサプライヤー活動」を推進しています。この活動を通じて、サプライチェーン全体でのエネルギーコスト削減とCO2 排出削減に取り組んでいます。2021年度からは、DXグリーンサプライヤー活動を、サプライチェーンの“カーボンニュートラル化”に向けた活動へと進化させ、「カーボンニュートラルパートナー認定制度」を新たに創設し、運用を開始しました。デジタル化した省エネ診断パッケージを活用してできるだけ少ないエネルギーでモノづくりを行い、そのうえで残ったエネルギーは再生可能なものを使用していき、調達先の脱炭素化を支援します。活動期間を3年として、省エネルギーによるCO2排出量を6%削減したうえで、再生可能エネルギー100%化を行います。
お取引先が“カーボンニュートラル企業”として顧客や投資家から選ばれる企業になるよう能動的にCO2削減を支援します。この取り組みを段階的に拡大し、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成することができれば、移行リスクへの対応にとどまらず、強靭なサプライチェーンを基盤とした企業の販売競争力の向上、および新たなビジネス機会の創出が期待できます。
一方、低炭素社会への移行が加速すると、事業機会を生み出す可能性があると考えています。
中長期的には紙に代わる情報共有の手段の需要拡大を見込み、既存の複合機の事業から“as a Service”モデル(プロダクトとDXによる高付加価値サービス)へ変容していきます。また、当社の強みである無形資産(顧客接点、技術、人財)と最新のIoTやAI技術を組み合わせた独自のプラットフォームビジネスを確立し、エネルギー負荷や温室効果ガス排出を大きく低減させ、社会全体で高まる脱炭素社会への期待に応えていきます。
また、中期的に、大量生産・大量廃棄など無駄な生産を抑え事業モデルを変革するオンデマンド生産プロセス、紙出力への依存をなくし多様な働き方を支えるコネクテッドワークプレイス、エネルギーおよび資源使用量を抑制する材料加工プロセス変革ソリューション、シェールガスなど温室効果ガスのパイプラインからの漏洩を非破壊で検査する画像IoTソリューション、企業の環境・サステナビリティ経営を支援するエコシステム、新たな資源採掘の抑制に貢献する再生プラスチック、バイオ材料の製造・活用技術など、顧客の需要や嗜好変化に対応することができれば、売り上げが増加する可能性があります。
短期的な視点では、継続的な省エネルギー活動を積極的に推進することで自社工場での原価低減にとどまらず、お取引先やビジネスパートナーと連携することで新たなビジネス機会を創出できる可能性があると考えています。
気候変動の「リスク」への対処
コニカミノルタへの影響 | 対象セクター | 分類 | 財務影響 | 時間軸 | 対処 | |
---|---|---|---|---|---|---|
調達・製造コストの上昇 | ・ステークホルダーからの再生可能エネルギー調達の要求 | インダストリー 情報機器 |
市場評判 | 中 | 短期 | 生産・研究開発・販売拠点における再生可能エネルギー由来電力の導入 |
・化石資源・化石燃料の代替化 | インダストリー | 政策・法律 | 中 | 長期 | CO2フリー燃料の導入検討 | |
・新たな排出規制・税制への対応 | インダストリー | 政策・法律 | 中 | 短~中期 | 省エネ生産技術開発 | |
製品開発コストの上昇 | ・新たな製品エネルギー効率規制と市場への対応 | 情報機器 | 政策・法律 市場 |
中 | 短期 | 環境ラベル新基準相当の製品省エネ設計、公共調達・入札要件への対応 |
製品サービスの需要変化による売上減少 | ・オフィスにおける紙への出力機会の減少 | 情報機器 | 市場 | 大 | 短~中期 | ペーパーレス事業へのビジネス転換 |
・非持続的な資源利用、非再生利用設計による製品競争力の低下 | 情報機器 | 政策・法律 評判 |
中 | 中期 | 再生材の利活用、製品3R設計 |
気候変動の「機会」への対処
コニカミノルタへの影響 | 対象セクター | 分類 | 財務効果 | 時間軸 | |
---|---|---|---|---|---|
製品サービスの需要変化による売上増加 | ・データセンターの利用を最小化するエッジコンピューティング | 情報機器 インダストリー |
製品/サービス | 大 | 中期 |
・無駄な生産を抑えるオンデマンド生産プロセス | 情報機器 | 製品/サービス | 大 | 短~中期 | |
・多様な働き方を支えるコネクテッドワークプレイス | 情報機器 | 製品/サービス | 大 | 短~中期 | |
・エネルギーを削減する材料加工プロセス変革ソリューション | インダストリー | 製品/サービス | 中 | 短~中期 | |
・シェールガスなどパイプラインの漏洩検査システム | インダストリー | 製品/サービス | 小 | 短~中期 | |
・企業の環境・サステナビリティ経営を支援するエコシステム | 環境経営 | 製品/サービス | 小 | 短~中期 | |
・使用済み樹脂の再生材化技術 | 情報機器 | 製品/サービス | 小 | 短~中期 |
●気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合:
世界各地で気候変動による物理的リスクが顕在化した場合、極端な異常気象や大規模な森林火災などの発生により森林資源の保護に関する規制や社会要求が強まることで、コニカミノルタグループでは紙原材料の調達が不安定になり事業機会の損失につながる可能性があります。また、気候パターンの変化など気候変動の慢性的な影響が発現すると、自然資源の調達が不安定化し、原材料等の供給量が制限または一時停止して工場の稼動に影響を及ぼす可能性があります。また、大規模な台風や洪水などの急性的な気候災害が発生すると、コニカミノルタグループの設備や労務環境が被災し、従業員の就業が困難になる可能性があります、その結果、自社拠点およびサプライヤーで一時的に操業が停止してサプライチェーンが寸断し、生産および出荷が遅延する可能性があります。
コニカミノルタの主力事業であるオフィス事業では、紙出力を必要とする複合機事業に加え、新しいデジタルソリューションを提供するデジタルワークプレイス事業の拡大を加速し、事業ポートフォリオの転換を推進しています。
具体的には、自治体の業務変革支援サービスなどを先行事例として業種業態に合わせたソリューションで支援する事業の比率を高めます。また、自然資源の調達が不安定化し、原材料などの供給量が制限または一時停止して工場の稼動に影響を及ぼす可能性があるため、安定供給リスクが高い原材料は、調達先の複数確保や代替材料検討に取り組んでいます。
気候災害への対応では、主力事業であるオフィス事業、プロフェッショナルプリント事業の消耗品用部品生産、印刷用トナーの生産および充填を行う拠点として、日本、欧州、北米に自社生産拠点を複数展開し、消費地で生産して供給する、レジリエンスの高いサプライチェーン体制を確保するよう努めています。自社生産拠点および主要サプライヤー拠点では、世界資源研究所(WRI)が開発・提供している総合的な水リスク評価ツール「Aqueduct」による分析を毎年実施しています。水リスクが高いと評価された拠点を特定して、水リスクへの対応策を講じるべく計画的に実施しています。
また、大規模な自然災害の発生時に備えて、業務継続のための具体的な行動計画をまとめた「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」を策定しています。ワールドワイドに、かつサプライチェーンを含めた視点から、主要事業である情報機器事業、被災時のニーズの高い医療機器をはじめとして各事業部門・子会社で体制を構築するとともに、災害発生直後に被害状況などを情報収集してBCP発動の要否を判断する「初動体制」を整備しています。
一方で、気候変動による物理的影響が、事業機会を生み出す可能性もあると考えています。
中期および長期的には、急性的な自然災害への安全・安心の期待から、異常気象・自然災害による影響を未然防止し予防保全型インフラメンテナンスを実現する画像IoT・センシングソリューション、被災時にニーズが高い災害医療現場で活用できるX線撮影診断、超音波診断など画像を活用したヘルスケアソリューションなどコニカミノルタのソリューション事業が社会の新たな需要を取り込むことができると考えています。
気候変動の「リスク」への対処
コニカミノルタへの影響 | 対象セクター | 分類 | 財務影響 | 時間軸 | 対処 | |
---|---|---|---|---|---|---|
生産能力減少による収益減 | ・気候パターンの変化にともなう自然資源の供給量不足・供給停止 | インダストリー | 慢性物理 | 大 | 長期 | 特定の自然資源に依存しない製品開発 |
・大規模気候災害の発生にともなうサプライチェーン分断 | 情報機器 | 急性物理 | 大 | 中期 | 事業継続管理(BCM)の構築、消耗材の域別分散生産および供給、人・場所・国・変動に依存しない生産体制 | |
・水資源の枯渇・取水制限 | 情報機器 | 慢性物理 | 小 | 長期 | 生産・調達拠点の水リスク評価、水使用量の削減 | |
製品サービスの需要変化による売上減少 | ・異常気象および森林火災の発生にともなう森林資源へのアクセス制限 | 情報機器 | 慢性物理 | 大 | 長期 | ペーパーレス事業へのビジネス転換 |
気候変動の「機会」への対処
コニカミノルタへの影響 | 対象セクター | 分類 | 財務効果 | 時間軸 | |
---|---|---|---|---|---|
製品サービスの需要変化による売上増加 | ・急性的な異常気象・自然災害への防災・減災に貢献する画像IoT・センシングソリューション | インダストリー | 製品/サービス | 中 | 中期 |
・災害医療現場における画像診断を活用したヘルスケアソリューション | ヘルスケア | 製品/サービス | 小 | 中期 |
コニカミノルタの気候関連リスクと機会
これらのシナリオ分析結果を踏まえ、売上比率の高い複合機を中心とした従来のモノ売りから“as a Service”モデルへ転換しDXを中心とした事業成長を見込める経営計画を策定しました。そして、長期の経営ビジョンにおいてコニカミノルタが取り組むべき5つのマテリアリティの一つとして「気候変動への対応」を設定すること、気候変動への対応の目標として「カーボンマイナス」の達成時期を2030年へ前倒しすることを取締役会で承認しました。
低炭素社会への早期移行を実現するべく、製品ライフサイクルCO2排出量の削減、CO2削減貢献量、および再生可能エネルギー由来電力利用率の各目標のさらなる前倒し達成を検討しております。