気候関連財務情報開示(TCFD)
戦略
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気候関連のリスクおよび機会に係る組織の事業・戦略・財務に対する影響
コニカミノルタは気候変動リスクに対処するため、2050年にバリューチェーン全体で温室効果ガス(GHG)排出を実質ゼロにする「ネットゼロ」を長期目標として掲げ、気候変動への対応を5つのマテリアリティの1つに位置付けています。この長期目標に向け、気候関連のリスクを事業上のリスクと統合的に捉え、製品の企画・開発、生産・調達、販売に至るまでの中期事業計画と、環境目標および年度計画を連動させています。
また、事業成長の機会として、「カーボンマイナス」(自社の排出量を上回る社会での削減貢献)を掲げ、2025年度の達成を目指しています。当社のコア技術を融合させAIを活用して強化し、ワークフローやサプライチェーン変革を提供することで、顧客や社会の脱炭素ニーズに対応し、社会に必要とされる事業の成長と新たな事業の創出を推進しています。
このような環境課題対応を通じて、企業価値を高めることがコニカミノルタの成長戦略の中核です。
気候移行計画
コニカミノルタでは、パリ協定および1.5℃目標に整合した「科学的根拠に基づく目標(SBT:Science Based Targets)」を設定し、短期・中期・長期にわたる時間軸で段階的な移行計画を策定しています。
●中長期の取り組み
産業構造の転換を先取りする活動として、水素やアンモニア、メタネーションなどCO2フリー燃料の導入、CCS(CO2回収・貯留)技術の活用など、化石燃料依存からの脱却に向けた革新的手段を検討しています。当社が主催する企業間の共創の枠組み(環境デジタルプラットフォーム)では中長期を見据え、技術開発の進展に積極的な関与を期待する多種多様な企業が集まり、ワーキンググループにおいて技術動向・ロードマップ、課題やノウハウを共有し、具体的施策について議論しています。
事業機会においては、持続的成長に向けた技術開発テーマに先行投資を行い、DX推進によるイノベーションを加速しています。例えば、コニカミノルタが保有するAI強化センシング技術の強みを活かし、微生物を用いて非化石資源由来の原料から合成するバイオものづくり技術の開発を進めています。また、ペロブスカイト型太陽電池、再生プラスチック技術などの成長の芽を全社強化テーマとして掲げ、成長基盤の確立を目指しています。
●短中期的な取り組み
【事業活動】
<グリーンプロダクツ活動>
環境負荷低減に貢献する製品を商品企画段階から検討し環境価値を創出する「グリーンプロダクツ活動」を推進実行しています。産業印刷事業領域などを拡大することで、お客様先でのCO2排出量を大幅に削減し、お客様の脱炭素化および循環型社会の形成の実現を後押しします。印刷産業やアパレル産業のサプライチェーンを変革するオンデマンド生産デジタルソリューション、製品カーボンフットプリントを低減した機能材料、使用済みプラスチックの分別性・リサイクル率向上に貢献する材料技術・センシング技術などにより、大量生産・大量廃棄の事業モデルを変革し、お客様企業の生産性向上に貢献します。
<グリーンファクトリー活動>
メーカーとしての製造・モノづくりの環境負荷低減を行う「グリーンファクトリー活動」を推進実行しています。製造拠点への再生可能エネルギー導入や、製品を製造するプロセスおよび設備におけるエネルギー生産性向上に取り組んでいます。
<グリーンマーケティング活動>
各国地域の販売拠点で再生可能エネルギー利用などを通じて環境負荷低減を行うとともに、お客様の環境経営の課題を解決しながら当社ソリューションの販売機会を創出する「グリーンマーケティング活動」を実施しています。
これら事業を通じた活動は、中期環境計画のなかで「施策による自社製品ライフサイクルCO2排出削減量」「自社製品ライフサイクル以外でのCO2削減貢献量」「自社製品における地球資源※使用削減量」「自社製品以外での地球資源※使用量の削減貢献量」を重要管理指標に設定し、経営戦略の中核を担う活動として推進しています。
- ※
- 地球資源 :原油や鉱物資源などの新たな採掘をともなう資源で、一般に枯渇性資源と同義
【全社横断活動】
<インターナル・カーボンプライシング>
インダストリー事業を中核に据えた経営戦略において、スコープ1,2排出量が増加する可能性があります。そのため、インターナル・カーボンプライシングを活用したCO2排出抑制の施策を実施しています。
<カーボンニュートラルパートナー活動>
サプライヤーとともに脱炭素化を目指す「カーボンニュートラルパートナー活動」を推進実行しています。自社拠点で培った省エネ・再エネ導入のノウハウを、部材を供給するサプライヤーへ提供し、再エネ導入の目標設定や導入支援を通じて、サプライヤーも含むパートナー全体のカーボンニュートラル化を推進しています。
<環境デジタルプラットフォーム>
気候変動への対応は、1社単独では限界があるという認識のもと、業界や規模を超えた企業同士が協働し、新たな環境価値を共創する「環境デジタルプラットフォーム」を創設し運営しています。ワークショップやナビゲーションMAP、技術・サービスのマッチングを通じて、実効性の高い取り組みを加速しています。
レジリエンスと経営戦略
当社は、IPCC RCP2.6/8.5やIEA NZE2050等の科学的シナリオを用いて、1.5℃シナリオおよび2℃超の物理リスクシナリオを想定し、移行リスク(政策・法律、技術、市場、評判)および物理的リスク(慢性・急性)への財務影響を評価しています。この分析結果を踏まえ、環境推進会議にて方針策定と事業戦略への反映を行っています。
- 長期環境ビジョン「エコビジョン2050」はこちらからご覧ください
(環境>方針 :エコビジョン2050) - 気候変動への適応はこちらからご覧ください
(環境>気候変動への対応 :気候変動への適応)
気候関連シナリオ分析の実施と結果
コニカミノルタでは、気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合と、気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合の2つのシナリオを想定し、2030年の時点でコニカミノルタグループの業績に影響を及ぼす事業リスクと、気候変動における課題の解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれ特定しています。
シナリオ分析は、以下のプロセスを経て実施しています。
- 気候変動シナリオ分析の対象事業分野の特定
- 重要な気候関連リスクおよび機会の特定
- 気候変動に関する既存の科学的シナリオの検討
- シナリオに対するリスクおよび機会、想定される財務影響の明確化
- 今後の対応の方針・戦略の検討
シナリオ分析の結果特定された気候関連財務影響は、コニカミノルタグループの事業部門およびコーポレート部門で構成される環境推進会議において報告・審議され、代表執行役社長が任命したグループ環境責任者より、今後の対応の方針・戦略・施策の徹底を指示・展開しています。
●気温上昇が2℃以下(1.5℃相当)に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合:
気候変動の「リスク」への対処
| コニカミノルタへの影響 | 対象セグメント | 分類 | 財務影響 | 時間軸 | 対処 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 調達・製造コストの上昇 | ・ステークホルダーからの再生可能エネルギー調達および温室効果ガス排出ネットゼロの要求 | デジタルワークプレイス事業 インダストリー事業 |
市場 評判 |
中 | 短期 | 生産・研究開発・販売拠点における再生可能エネルギー由来電力の導入 |
| ・化石資源・化石燃料の代替化 | インダストリー事業 | 政策・法律 | 中 | 中~長期 | CO2フリー燃料の導入検討、ICPの導入、調達戦略の最適化 | |
| ・新たな排出規制・税制への対応 | デジタルワークプレイス事業 プロフェッショナルプリント事業 インダストリー事業 画像ソリューション事業 |
政策・法律 | 大 | 短~中期 | 省エネ生産技術開発 | |
| 製品開発コストの上昇 | ・新たな製品エネルギー効率規制と市場への対応 | デジタルワークプレイス事業 プロフェッショナルプリント事業 |
政策・法律 市場 |
中 | 短期 | 環境ラベル新基準相当の製品省エネ設計、公共調達・入札要件への対応 |
| 製品サービスの需要変化による売上減少 | ・オフィスにおける紙への出力機会の減少 | デジタルワークプレイス事業 プロフェッショナルプリント事業 |
市場 | 大 | 短~中期 | プリントチャージに依存しない収益モデルへの転換 |
気候変動の「機会」
| コニカミノルタへの影響 | 対象セグメント | 分類 | 財務効果 | 時間軸 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 製品サービスの需要変化による売上増加 | ・印刷産業のサプライチェーンを変革するデジタルソリューション | プロフェッショナルプリント事業 | 製品/ サービス |
大 | 短~中期 |
| ・製品カーボンフットプリントを低減した機能材料 | インダストリー事業 | 製品/ サービス |
中 | 短~中期 | |
| ・アパレル産業のサプライチェーンを改革するデジタルソリューション | プロフェッショナルプリント事業 | 製品/ サービス |
小 | 短期 | |
| ・使用済みプラスチックの分別性・リサイクル率向上に貢献する材料技術・センシング技術 | インダストリー事業 | 製品/ サービス |
小 | 中期 | |
| ・インクジェット技術による生産プロセスの変革 | インダストリー事業 | 製品/ サービス |
小 | 短~中期 | |
| ・メタンガスの漏洩の早期発見と排出量の削減に貢献できるガス漏洩検査システム | 画像ソリューション事業 | 製品/ サービス |
小 | 中期 | |
●気温上昇が2℃を超え、気候変動の物理的影響が顕在化した場合:
気候変動の「リスク」への対処
| コニカミノルタへの影響 | 対象セグメント | 分類 | 財務影響 | 時間軸 | 対処 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 生産能力減少による収益減 | ・気候パターンの変化にともなう自然資源の供給量不足・供給停止 | インダストリー事業 | 慢性物理 | 大 | 長期 | 特定の自然資源に依存しない製品設計と開発 |
| ・大規模気候災害の発生にともなうサプライチェーン分断 | デジタルワークプレイス事業 プロフェッショナルプリント事業 |
急性物理 | 大 | 中期 | 事業継続管理(BCM)の構築、消耗材の域別分散生産および供給 | |
| ・水資源の枯渇・取水制限 | デジタルワークプレイス事業 プロフェッショナルプリント事業 インダストリー事業 |
慢性物理 | 小 | 長期 | 生産・調達拠点の水リスク評価、水使用量の削減 | |
| 製品サービスの需要変化による売上減少 | ・異常気象および森林火災の発生にともなう森林資源へのアクセス制限 | デジタルワークプレイス事業 プロフェッショナルプリント事業 |
慢性物理 | 大 | 長期 | プリントチャージに依存しない収益モデルへの転換 |
気候変動の「機会」
| コニカミノルタへの影響 | 対象セグメント | 分類 | 財務効果 | 時間軸 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 製品サービスの需要変化による売上増加 | ・急性的な異常気象・自然災害への防災・減災に貢献する画像ソリューション | 画像ソリューション事業 | 製品/ サービス |
小 | 中期 |
| ・災害医療現場における画像診断を活用したヘルスケアソリューション | 画像ソリューション事業 | 製品/ サービス |
小 | 中期 | |
<シナリオ分析の前提条件>
- 使用した科学的シナリオ: IPCC RCP2.6/8.5、IEA NZE 2050、CPS
- リスクと機会の分類: 移行リスク(政策・法律、技術、市場、評判)、物理的リスク(急性物理、慢性物理)、機会(資源効率、エネルギー、製品/サービス、市場、レジリエンス)
- 「財務影響」の定義と評価基準: 「大」 追加コストまたは利益減少 10億円以上 「中」 追加コストまたは利益減少 1~10億円未満 「小」 追加コストまたは利益減少 1億円未満
- 「財務効果」の定義と評価基準: 「大」 利益創出 100億円以上 「中」 利益創出 10~100億円未満 「小」 利益創出 10億円未満
- 「時間軸」の定義と評価基準: 「長期」 10年以上 「中期」 3~10年未満 「短期」 1~3年未満
コニカミノルタの気候関連リスクと機会

