光源が変わると、色の見え方はこんなに変わります。

測色計(刺激値直読方法/分光測色方法ともに)には測定用照明光源が内蔵されていますが、物体の色は照明する光源によって違って見えます。したがって物体の色を測定するためには、各種の光源の代表的な特性を規定しておく必要があり、これらはCIE(国際照明委員会)やJISなどで定められています。図28は、代表的な光源の分光分布です。分光測色計には図28の照明光源データが内蔵されており、それぞれ目的に応じた照明光源によって、色彩値の測定ができます。同時に、ある製品が「さまざまな照明光源下においてどのように見えるか」といったシミュレーションを行うこともできます。刺激値直読方法の測色計は一般的に、測色用標準イルミナントD65/測色用補助イルミナントCのどちらか1種類で測定します。

図28-(1) 標準の光
図28-(2) 代表的な蛍光ランプ(国内)
図28-(3) 代表的な蛍光ランプ(国内/海外)
図28-(1) 標準の光
1
測色用標準イルミナント D65…紫外域を含む昼光で照らされている、物体色の測定用光源です。CIE、ISO の基準光です。色温度は 6504 Kです。
2
測色用補助イルミナント C…昼光で照らされている、物体色の測定用光源です。色温度は 6774 K です。
3
測色用標準イルミナント A…白熱電球で照らされている物体色の測定用光源です。色温度は 2856 K です。
図28‒(2) 代表的な蛍光ランプ(国内)
4
F6…白色
5
F8…演色 AAA 昼白色
6
F10…3 波長形昼白色
図28-(3) 代表的な蛍光ランプ(国内/海外)
7
F2…白色(CWF)
8
F7…演色 A 昼光色
9
F11…3 波長形白色(TL84)

例えば、分光測色計の測色用標準イルミナントD65で試料(りんご)を測定した場合(例1)と測色用標準イルミナントAで試料(りんご)を測定した場合(例2)の比較を見てみましょう。
(例1)で、Aは測色用標準イルミナントD65の分光分布グラフです。Bは試料(りんご)の分光反射率グラフです。Cは試料(りんご)から反射される光の分光分布で、A×B=Cとなります。(例2)の A’は測色用標準イルミナントAの分光分布グラフです。Bは(例1)と同じ、試料(りんご)の分光反射率グラフです。
C’は試料(りんご)から反射される光の分光分布で、A’×B=C’となります。「私たちが色を感じるプロセスと測色計の違いについて。」の図25のAC、(C’)にあたるわけです。CC’を比べてみると、C’の方が赤成分の光が強くなっていますね。「赤みの強いりんご」というふうに見えるはずです。このように、物体の色は、照明光源の違いによっていろいろと変化して見えるのです。分光測色計は、実際にはB試料の分光反射率を測定し、本体にメモリーされている各種光源の分光分布データと人間の目に対応する分光感度データから、各種光源下での色彩値を演算して表示します。

ページトップへ戻る