3 測色計の基礎知識
色についての最も基本的な「りんごはなぜ赤く見えるのだろう?」「色の見え方の違いはどうして起きるのだろう?」といった、ごく当たり前のように思えることが、案外よく分からないものです。生産現場や学術研究の場における色彩管理に、いっそうの厳密さが要求されるようになると、さらにくわしく色の正体を知ることも必要になってきます。ここではその色の世界に、もう少し深く入り込んでみましょう。

私たちが色を感じるプロセスと測色計の違いについて。

人間の目に見えるのは可視光線領域の波長の光ですが、光は色そのものではありません。「目の網膜を刺激して、視感覚を起こすことのできる放射」と定義づけられている通り、目に入ってきた光に対して、目の網膜が刺激を受け、脳が反応することによって初めて「色」という概念が生まれるのです。スペクトル(赤・橙・黄…)の中の「赤」・「緑」・「青」の3つの色が一般に、光の三原色と呼ばれています。人間が色を知覚できるのは、この三原色の光に対応した感覚(センサー)が、人間の目にあるからと考えられています。

図23は、人間の目に対応する分光応答度(色を見分ける3つの応答度)を示したものです。これを等色関数と呼び、エックス・バーλ(エックス・バー・ラムダ)は、赤の波長域に大きな応答度を持ち、ワイ・バーλ(ワイ・バー・ラムダ)は、緑の波長域に大きな応答度を持っています。また、ゼット・バーλ(ゼット・バー・ラムダ)は、青の波長域に大きな応答度を持っています。これが、物体からの光を受けエックス・バーλ)、ワイ・バーλ)、ゼット・バーλ)の割合(刺激)の変化によって、種々の色になるわけです。この分光応答度は、CIE(国際照明委員会)で標準観察者の分光応答度として規定されています。

図23 人間の目に対応する分光応答度(等色関数)

刺激値直読方法と分光測色方法

刺激値直読方法とは、図24-(2)のように、この、人間の目に対応する分光応答度とほぼ同一の応答度を持つ三つのセンサーエックス・バーλ)、ワイ・バーλ)、ゼット・バーλ)で試料を測定し、直接「三刺激値」と呼ばれるXYZの3つの値を測定する方法を言います。一方、分光測色方法は図24-(3)のように、試料から反射された光を回折格子等で分光し、これを複数のセンサーで受光して、各波長の反射率を測定します。そして、そのデータをもとにマイコン部で積分計算を行い、三刺激値XYZの3つの値を算出します。ここでは、試料(りんご)の値がそれぞれX=21.21、Y=13.37、Z=9.32になっています。この3つの数値をもとにしてL*a*b*などの各種表色系による色の数値表示が行われるわけです。

コニカミノルタ製「分光測色計CM–700d」は、試料からの反射光を36個のセンサーで受光します。
図24 人間の目と刺激値直読方法/分光測色方法の測定原理

分光反射率グラフ表示

分光測色計は、色の数値化はもちろん、色の波長成分(反射率)をグラフ化して表示します。色はスペクトル(波長成分)がさまざまな割合で混ざり合ってできています。刺激値直読方法の測色計では、各表色系を使い、その色度図の中で、求める色がどの位置にあるかを知ることができます。分光測色計では更に、物体から反射された光を回折格子等で分光し、これを複数のセンサーで受光して各波長の反射率(光の量)を測定し、グラフ化することができます。

図25 色彩測定における三刺激値の求め方の原理

図25は、色彩測定における三刺激値(XYZ)の求め方の原理を表したものです。図25で、A試料(りんご)からの反射光(分光分布)がBセンサーに入ると、それぞれ3色に分解され、C三刺激値(XYZ)がわかります。C=A×Bで求められます。Cを各分光応答度別に見てみると、C–1:エックス・バーλ)、C–2:ワイ・バーλ)、C–3:ゼット・バーλ)のようになります。それぞれ斜線部(XYZ)を積分計算で求めた値が三刺激値になります。

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