• 2022.06.16

    自治体DX推進に向けて知っておくべき基本や進め方、ヒントになる事例を紹介

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    自治体DX推進に向けて知っておくべき基本や進め方、ヒントになる事例を紹介
    国はデジタルの活用による、多様な幸福の実現という方向性を示しています。すでに、民間企業の多くは生産性の向上を目指しDXを進めていますが、住民にとって身近な行政を担う自治体こそがその推進役とならなければなりません。住民の利便性と業務の効率化を図るために、自治体にはどのような動きが求められるのでしょうか。
    ここでは自治体DXの基本的な考え方と推進方法、実施の参考となる事例について解説します。

INDEX

自治体DXとは?

自治体DXとは?

はじめにDXおよび自治体DXについての基本知識を解説します。

DXの基本

DXは「Digital Transformation」の略称で、直訳すると「デジタル技術による変容」といった意味になります。
DXはスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した “ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる” という概念が基となっており、日本国内では経済産業省が次のように定義しています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”

参考:「DX 推進指標」とそのガイダンス 令和元年7月 経済産業省

この解釈では、DXとは単に技術を導入することではなく、ビジネスモデルの変革や業務・組織、業務プロセス、また組織文化・風土を変革しながら、より優れた状態に導くことを示します。手動やアナログで行ってきた業務を置き換えるだけではなく、そこから生み出される将来的な価値の獲得がDXの目的であると言えるでしょう。
DXについては以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてぜひご覧ください。

自治体DXの定義

自治体DXにおいても、デジタル技術を活用したより良い状態への変革という本質的な意味合いは同じですが、営利的な組織とは目指す方向性が異なります。
総務省が示している自治体DX推進計画では、以下のような方針が示されています。

■デジタル技術やデータを活用した住民の利便性向上
■デジタル技術やAI等の活用による業務効率化
■データの様式の統一化による多様な主体によるデータの円滑な流通促進

自治体DX白書による定義では “自治体・住民等が、デジタル技術も活用して、住民本位の行政・地域・社会等を再デザインするプロセス” とされており、変容に向けた取り組みそのものを指すと考えられます。
企業DXが企業価値の向上や市場競争における優位性の獲得を目指すのに対して、自治体DXは住民本位を基本姿勢とし、住民にとっての自治体をより利便性が高いものとする取り組みです。

自治体DXとICT化・デジタル化との違い

DXと関連性のある言葉には、ICT化やデジタル化があります。それらとの違いを見ていきましょう。

■ICT化:ICTは「Information and Communication Technology」の略語で、「情報通信技術」。ICT化では特にコミュニケーションに関する分野で、業務を情報通信技術へ代替することを指します。
■デジタル化:デジタルとは、情報を数字で表現すること。デジタル化とは、アナログ情報のデジタルデータ化やその活用を指します。

上記の2つは手段であり、DXを実現するために業務に導入する施策となります。変革を促し、加速していくために、業務上でのICT化やデジタル化が求められます。
自治体DXは住民や職員の利便性の向上、サービスの向上を図るための全体的な変革であり、一部の業務に新しい技術を導入することではない点に注意が必要です。

自治体DXを進める重要性

自治体DXを進める重要性

なぜ今、自治体DXが必要とされているのか、変革の重要性について解説します。

自治体の置かれている状況

社会構造の変化や情報技術の発達など、自治体を取り巻く環境は過去とは大きく異なってきています。自治体の業務をこなしていく上でも、従来型の「ヒト・モノ・カネ」を軸とした運用が成り立たなくなってきている時代です。
少子高齢化による人材不足や税金収入の減少は、自治体の成すべき仕事の遂行を阻む要因です。一方、住民ニーズの多様化によって行政の仕事が複雑化、人手不足が深刻になるなか、業務は多岐にわたります。
大量の情報が行き来する状況下にあって、社会変化が加速。自治体にもスピーディーな対応が要求されているのです。

各自治体でも現状に危機感を持って対応を始めています。
DXを推進するための全体方針の策定については、都道府県では29団体(61.7%)、市区町村では219団体(12.6%)が全体方針を策定。またDXを推進するための全庁的・横断的な推進体制の構築については、都道府県では41団体(87.2%)、市区町村では480団体(27.6%)が推進体制を構築しています。さらにDX推進専任部署の設置と、取り組みを推進するための人材育成や登用に力を入れている自治体も多く見られます。

どの自治体も、DX推進に向けた動きが活発化している様子が伺われます。
働き方改革の推進により、自治体組織内部にも大きな変化が生まれています。休日出勤や連日の残業に厳しい視線が向けられる今、業務の効率化、運用の合理化が喫緊の課題となっています。
自治体における働き方の多様化については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてぜひご覧ください。

自治体DX推進で期待できる効果

上記で述べたような厳しい状況下にあって、自治体DXの推進では以下のような効果が期待されます。

■人材不足による業務遅延の解消

・業務標準化が進む:DX推進ではワークフローシステムの導入や作業の可視化により、各種業務の標準化が図られます。一連の流れのなかで業務標準化が進むと、熟練した職員でなくても業務品質を保ったまま処理を行うことが可能となります。

・情報の一元化が進む:情報の一元化により、一度格納されたデータを異なる各部署で活用することができ、再入力の手間が軽減されるといった効果が生まれます。

・体制が整備される:多様な働き方に対応できる体制が整備されれば、通勤困難者や介護・育児に関わる人材の活用も進みます。

■ペーパーレス化の促進

DX推進においてペーパーレス化が図られることによって、押印のための書類回覧といったムダな作業の削減につながります。
データ化により一括処理が可能となり、業務の可視化により人為的なミスも軽減されます。

■利用者の利便性向上

・サービスの向上:自治体DXの軸となる利用者の利便性向上の一例としては、各種処理のオンライン化があります。
すでにマイナンバーカードにより、自治体関連の書類をコンビニなどで入手できるようになっていますが、今後はこうした動きが活発化していくと考えられます。
各種税金の処理も多くがオンライン上で可能となってきています。紙の書類からオンライン上のフォームで申請できる手続きが増えれば、利便性はさらに向上させられます。

・的確でタイムリーな情報発信:コロナ禍によって、SNSを使った自治体からの情報発信が急激に進化しました。様々なチャネルを活用し、情報を迅速かつ的確に提供できることも、DX推進の成果となります。
文書の取り扱いに関しては以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてぜひご覧ください。

自治体DXの進め方

自治体DX推進の流れを解説します。

■DXへの理解の浸透・意識共有

自治体DXを着実に進めていくためには、何よりも当事者間の理解が一致していなければなりません。目的や目指すところに関し、首長や幹部職クラスで理解を共有し、さらに一般職員まで浸透させていく必要があります。

■全体方針の決定

自治体DX推進のビジョン形成により、全体的な推進の方針を固めていきます。それに即した工程表の策定を行い、具体的な進め方を確認します。

■推進体制の整備

DX推進のための担当部門の設置と人材配置を行います。また各部署においても、協力者・責任者を任命します。

■DXの取り組みの実行

DXにおける取り組みでは、運用状況をPDCAサイクルにより進捗管理する方法があります。また最近では、OODA(ウーダ)ループのフレームワーク活用も有効とされています。

PDCAサイクルは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)の順にサイクルを一定方向に回していく考え方ですが、OODAループでは、Observe(観察、情報収集)・Orient(状況、方向性判断)・Decide(意思決定)・Act(行動、実行)というステップを繰り返します。

OODAループは、状況に応じて前段階に戻ったり、場合によっては数段階前からリスタートしたりするなど、柔軟性のある対応ができるため、変化の多い現代社会ではより現実的な手法として注目されています。

自治体DXの事例

自治体DXの事例

自治体DXの具体的な事例を紹介します。

DX推進基本方針の策定に向けた取り組み【福島県】

福島県では、そのエリアの様々な組織と協働して、自治体DX推進に取り組んでいます。地元の大学、県内市町村、民間事業者などとの8回にわたる意見交換会を開催。多角的な視点を取り入れて、基本方針の策定に活かしています。
将来を担う若手職員を中心としたプロジェクトチームを設置し、打ち合わせを重ねて実施しながら、現実性のある方向性を探っています。

DXの取り組みを推進するための工夫【佐賀県多久市】

同自治体では、民間事業者の社員(SE)を庁内に常駐で配置。先進技術に精通した人材の意見を取り入れながら、官学連携による住民サービス向上や業務の課題解決の手法の検討を行っています。

業務改革を実践可能な職員育成のための研修【静岡県袋井市】

DX推進の中核となる職員育成に力を入れる自治体もあります。静岡県袋井市では地域情報化アドバイザーを活用し、業務改革(BPR)を実践できる職員を育成するためのワークショップ型の研修を設計。組織内部の推進力を強化していきます。

コニカミノルタジャパンが支援した自治体DXの事例を次のページでご紹介しています。ぜひご覧ください。



実現性のある自治体DX推進計画に取り組もう

自治体DXを確実に進めていくためには、まず根本的な考え方を実施者全てが理解しておく必要があります。DXを単なるデジタル化と捉えてしまうと、住民本位という考え方がおろそかになり、業務をデジタル化すること自体が目的となりかねません。自治体DXは、住民や現場で働く職員に対して利便性や効率性が還元されるための変革です。
最終的な到達点をしっかりと把握した上で、自組織でできる範囲から段階的に実施していくことで、後戻りのない自治体DXの実現が可能となります。

コニカミノルタジャパンでは自治体・公的機関の皆さまのDX・ペーパーレス・働き方改革などの課題の解決をサポートしています。詳しくは「公共文教・自治体向けソリューション」のページをご覧ください。また、DX推進の具体的な取り組みについては資料でもご紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。


いいじかん設計 編集部

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