睡眠
Column 03

赤ちゃんの睡眠のためのヒント

赤ちゃんの睡眠のためのヒント

寝かしつけにはいったいどれくらいの時間がかかるのでしょうか?
2018年に博報堂が3歳未満の子どもを持つ母親550名を対象に行ったインターネット調査1)では、6割以上の母親が寝かしつけに悩んでいると回答していました。また、寝かしつけにかかる時間として、最も多い回答は30分~45分未満でしたが、15%の方は60分以上かかると回答していました。赤ちゃんの個性や状況によっては寝かしつけに苦労されることがあるかもしれませんので、妊娠中から産後に利用できるサポートやサービスについて考えておくといいでしょう。
また、以下に睡眠のためのヒント2)をいくつか参考に挙げていますので、赤ちゃんに合った方法を探してみてください。

昼夜のリズムを作る

日中に寝かしつける時は、日常の騒音や光を気にする必要はありません。カーテンを開けたり、家族と同じ空間で賑やかに過ごしたりするといいでしょう。一方、夜は照明を暗くし、あまり騒がしくせず静かにします。赤ちゃんへの刺激を必要最低限にすることで、「夜は寝る時間」ということを赤ちゃんが少しずつ学んでいきます。

大泣きする前に寝かしつける

赤ちゃんが眠い時に出すサイン(あくび、目をこする、目を大きく見開く、ぐずるなど)をキャッチして、「わーっ」と泣き出す前に抱っこをしたり、背中をトントンしてあげると、眠りにつきやすいでしょう。赤ちゃんによってこのサインに違いがありますが、赤ちゃんと過ごすうちに、その特徴がわかってくるようになります。そうすると、少しずつ寝かしつけも楽になっていくでしょう。

就寝前の習慣を作る

心地いい就寝前の習慣を作ることで、生活リズムができ、赤ちゃんが安心して眠れるようになるといわれています。お子さんの状態に合わせて、生後3ヶ月くらいを目安に始めてください。寝る前の習慣の一例として、「入浴する」「パジャマに着替える」「絵本を読む」「部屋の明かりを消して落ち着いた雰囲気にする」「子守唄を歌う」「音楽を流す」などがあります。

反射で目覚めるのを防ぐ

多くの赤ちゃんが、「モロー反射」といって赤ちゃん特有の反射によって、睡眠中に目覚めてしまうことを経験します。その解決策の1つにおくるみがあります。下記の正しい使い方を知り、安全に使いましょう。

使用上のポイント

– おくるみを使う場合は、生まれてすぐから使用するのが最も安全であることがわかっています。SIDS(乳幼児突然死症候群)リスクが最も高い時(生後2〜3ヶ月)に、突然使い始めることは避けてください。
– おくるみで赤ちゃんをしっかりと包みますが、きつすぎてはいけません。
– 赤ちゃんの両足は自由に動くことができるようにしてください。
– おくるみで赤ちゃんの頭を覆わず、赤ちゃんの体温が高くなりすぎないようにしてください。
– 赤ちゃんをベッドに入れたら、暑くなりすぎないようにおくるみを外してください。
– 赤ちゃんは必ず仰向けに寝かせましょう。

赤ちゃんにとって「良い睡眠」って?

赤ちゃんが何度も目を覚ますことは、成長するうえでは適切なことといわれています。逆に、赤ちゃんにとって10時間続けて寝ることは、健康的ではありません。赤ちゃんの睡眠リズムに合わせることで、ママやパパなどの睡眠が細切れになるため、ご家族にとっては負担となってしまうでしょう。とはいえ、それも一時的なもので、赤ちゃんは成長に伴い長時間寝られるようなっていきます。

ここで一息~出産の今と昔~

最近では、分娩経過に問題がなければ、経膣分娩であれば当日から、帝王切開であれば翌日から、歩いたり、赤ちゃんのお世話をします。どこの病院でも同じように指導されるでしょう。
では、昔はどうだったのでしょうか?調べてみると、少し違いがあるようです。大正時代のある看護学書3)では、「褥婦(出産後の女性)は初めの二三日は厳重に背位(仰向け)をとり安静を保ち、便通の如きも其儘の位置にてなさしむべし。其後は子宮の収縮佳良にして悪露も過多ならず、その他身體に異常なきときは時々左右交互に側臥位(横むけ)を取らしむべし。第二週の初めよりは授乳・食事又は排便・排尿に際し、短時間牀上に起坐する(座る)も可なり。」と書かれていました。つまり、「母親は分娩後2、3日はずっと(排泄の時も)仰向けのまま過ごし、産後2週間経ってから少しずつトイレに行ったり、食事をしたりするのに座れるようになる」と記載され、その理由としては、「産後の早い時期にからだを動かすと子宮がもとに戻るのを妨げたり、悪露(産後の出血)が長く続くため」と説明されていました。

このように、時代とともに、そして科学の進歩とともに産後のケアや育児のあり方は変化しています。そのため、今は当たり前だと思っていることが、近い将来に大きく変わっているかもしれません。深刻に考えすぎず、肩の力を抜いて長い育児生活を乗り切っていきましょう。

参考文献 1. 「子どもの睡眠・寝かしつけ」調査 博報堂こそだて家族研究所・ママスタジアム 2018年10月
https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2018/12/20181210.pdf
2. Paruthi, S., Brooks, L. J., D'Ambrosio, C., Hall, W. A., Kotagal, S., Lloyd, R. M., Malow, B. A., Maski, K., Nichols, C., Quan, S. F., Rosen, C. L., Troester, M. M., & Wise, M. S. (2016). Recommended Amount of Sleep for Pediatric Populations: A Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine. Journal of clinical sleep medicine : JCSM : official publication of the American Academy of Sleep Medicine, 12(6), 785–786.
https://doi.org/10.5664/jcsm.5866
3. 碓居 龍太(監修)(1926).新選看護学全集下巻 第十九版 南山堂