家族になる
Column 01

チーム育児の効果

「ワンオペ育児」はとっても大変

育児を一人でやろうとしてはいけません。こう言われると「でも、実際にやっている人もいるのに」と思われるかもしれません。

「ワンオペ育児」という言葉を聞いたことはありますか? ワンオペというのは、ワンオペレーションの略称で、飲食店やコンビニエンスストアーなど一人ですべての業務をこなすという意味。これと同じように、子育てや家事などを一人でこなす状況を指して、ワンオペ育児と言われています。

しかし、このワンオペは、「大変だな」ではすまされません。実際、ワンオペを強いる職場で過労死が起きて訴訟問題に発展するといったこともあるほどです。このように職場で置き換えて考えると、次々と想定外のことが起こり、想定外が当たり前の育児を慣れないワンオペでする事がどれだけ大変なことか理解できるのではないでしょうか。

古典的な育児本である『育児の百科』(松田道雄・著)でも、父親が家事育児を手伝うようにと書かれています。この本が出版されたのは、なんと1967年です。皆さんのお母さん、おばあさん世代が育児をしていた頃、もうすでに専門家がワンオペ育児に警鐘を鳴らしていたのです。

「チーム育児」でママの負担を減らそう

育児にかかわる人が複数いることは、ママにとっても、赤ちゃんにとっても良い効果が期待できます。ここではその2つの効果をご紹介しましょう。

1つ目の効果は、「ママの負担が減る」ということです。出産によって、ママの身体は大きく変化します。

まず、育児や授乳で出産前よりもかなり体力を使います。ちなみに授乳時期のママは、1日平均350kcal普段よりも余計に必要とされます。これは体重50kgの人が1時間ジョギングをするのに匹敵するカロリーです。睡眠不足の中、毎日走っているのと同じだけの体力を使っているのです。

このような体力の消耗に加え、産後は急激なホルモンバランスの変化に適応しなければなりません。そのうえ、一人の人間の命を抱える責任の重さがのしかかります。これをママ一人で行うとなると、身も心も限界状態です。会社なら、ブラック企業ですね。

ですから、ママが少しでも心身ともに休めるよう、パパはもちろん、親兄弟・姉妹や親戚、ご近所で頼れそうな人、育児サービス、家事代行、便利家電、とにかくあらゆるパワーを借り、チームで育児をすることが大切です。決して、ママ1人でやろうとは思わないことです。

赤ちゃんにも良いこと

チームで育児をする2つ目の効果は、たくさんのかかわりが赤ちゃんの発達にとって有効だということです。

私たち人間は、他の哺乳類に比べて、未成熟である期間がとても長いのです。食、排せつ、移動、危険からの回避など多くのことを、長期間にわたって養育者に依存します。そのため、もともと人間は集団で育児を行ってきました。

赤ちゃんは、親や周りの人から得られた愛情や安心感、信頼感を足がかりにして、対人関係を育んでいくのです。その効果はすぐに表れるものではないかもしれません。しかし、いろんな大人が子どもにかかわることで、赤ちゃんは人の多様性を知ることができるでしょう。

参考文献 1. 松田道雄著 定本育児の百科 岩浪書店 東京
2. 明和政子著 ヒトの発達の謎を解く―胎児期から人類の未来まで 筑摩書房 東京
3. Bowlby J. The role of attachment in personality development. In: A secure base: parent-child attachment and healthy human development. New York: Basic Books
4. 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会 報告書 Accessed 5 [cited:Aug 10.2020]
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf