アプリケーション
ハイパースペクトルカメラによる接着剤の検出
接着剤の塗布状態を可視化するハイパースペクトル非接触検査
接着剤は包装、建設、電子機器、航空宇宙など、さまざまな産業で広く使用されています。接着剤を適切な量・位置に適用することは、コスト削減、生産性向上、廃棄物削減に大きく貢献します。しかし、透明な接着剤の検出は、一般的なRGBカメラでは困難です。そこで、ハイパースペクトルカメラ(HSC)が有効なソリューションとして注目されています。
本稿では、フィンランドSpecim社製の異なる波長帯域に対応する複数モデルを用いて、接着剤の検出性能を比較した事例を紹介します。
実験概要
段ボールおよび合成ゴム上に3種類の接着剤(それぞれ湿潤状態・乾燥状態)を塗布し、Specim FX17カメラで測定を行いました。使用したハイパースペクトル画像のスペクトル分解能は8 nm、ピクセルサイズは約0.3 mmです。取得データに対し、主成分分析(PCA)および部分最小二乗判別分析(PLS-DA)を適用しました。
| 機種名 | 対応波長 | 波長分解能 | ピクセル分解能 |
|---|---|---|---|
| Specim FX17 | 900-1700 nm | 8 nm | 0.3 mm |
| Specim SWIR | 1000-2500 nm | 12 nm | 2.3 mm |
| Specim FX50 | 2700-5300 nm | 35 nm | 0.3 mm |
測定対象と条件
解析手法:主成分分析(PCA)、部分最小二乗判別分析(PLS-DA)
接着剤:エポキシを含む3種(各種:湿潤・乾燥状態)
背景材:段ボール、合成ゴム
・接着剤1、2、3(接着剤3はエポキシ)を、段ボールおよび合成ゴム上に塗布
・上段が湿潤状態、下段が乾燥状態
検出結果
1. Specim FX17(900–1700 nm)
FX17カメラで取得した近赤外線画像にPCAとPLS-DAを適用した結果、以下のことが明らかとなりました。
・段ボール上の接着剤は比較的高精度で検出可能
・接着剤3(エポキシ)の検出性能は高い一方で、他の種類に対する感度は低い
・特に、接着剤1はゴム上では検出できなかった
検出精度に差が見られた要因として、接着剤の塗布量が挙げられます。エポキシは他の接着剤に比べて厚みがあり、光学的に検出しやすかった可能性があります。また、湿潤状態と乾燥状態の区別は限定的でした。
2. Specim SWIR(1000–2500 nm)
SWIRカメラは、FX17の波長範囲を含む広範な波長帯域をカバーしています。SWIRでは以下の成果が得られました。
・段ボール上の接着剤は良好に検出可能
・ゴム上の薄く乾燥した接着剤1も検出できた
・湿潤・乾燥状態の識別精度が向上(ただしさらなる改善の余地あり)
3. Specim FX50(2700–5300 nm)
FX50カメラでのPCAとPLS-DAの結果から、以下のことが明らかとなりました。
・3000–3500 nmの波長域で接着剤の吸収が顕著
・非常に薄い接着剤層やゴム上の乾燥接着剤1も検出可能
・ただし、接着剤の種類ごとの分離は困難(特に接着剤2と3)
検出の総合評価
接着剤の検出性能
段ボール上:3台すべてのカメラで接着剤を検出可能
合成ゴム上:FX50が最も優れ、全ての接着剤を検出。SWIRはFX17より優れ、乾燥した接着剤1も検出可能
接着剤の種類分離
段ボール上:3台とも良好に分離可能
合成ゴム上:FX17とSWIRが優れる。FX50では、接着剤2と3の分離が不十分
湿潤・乾燥状態の識別
段ボール上:SWIRが最も高精度
合成ゴム上:いずれのカメラでも十分な分離は困難
製品情報
ハイパースペクトルカメラ
Specim FXシリーズ
Specim FXシリーズは、可視光から長波赤外(約400〜12,300 nm)までの広範な波長領域を用途に応じたモデル構成でカバーするラインセンサ型ハイパースペクトルカメラです。高い分光・空間分解能に加え、マシンビジョン向けインタフェースに対応しており、高速かつ安定したデータ取得が可能です。
研究開発からインライン検査まで幅広く活用されており、成分分析、品質評価、異物検査、素材の選別など多様な課題に対して新たなソリューションをご提供します。



























