アプリケーション
ハイパースペクトルカメラによる薄膜厚さ検査
透明フィルム / コーティングの膜厚評価におけるハイパースペクトルイメージングの可能性
薄膜やコーティングの厚さは、その機能性に大きく影響する重要な品質パラメータです。従来のX線技術や光学分光法は、卓上またはインライン検査システムで広く使用されていますが、一般的にスポットタイプ(一点のみを測定)のセンサーを用いるため、ジグザグ状の検査パターンしか形成できず、フィルム全体を完全に監視することができません。
これに対して、ラインスキャン(プッシュブルーム)方式のハイパースペクトルカメラは、これらの制約を克服し、フィルムやコーティング全体を高解像度で検査することが可能です。
実験概要
本アプリケーションにおけるハイパースペクトルイメージングの有効性を検証するため、Specim社は波長範囲935~1700nmに対応するスペクトルカメラ(Specim FX17)を使用し、4種類のポリマー薄膜サンプルを測定しました。サンプルの公称厚さは、それぞれ17µm、20µm(2枚)、および23µmです。
鏡面反射法を用いて干渉を詳細に解析し、スペクトル位置および干渉波間の距離に基づいて厚さを推定しました。厚さのヒートマップへの変換には、Matlabを使用しています。
λₚ:極大値(ピーク)が現れる波長(nm単位)で、p番目のピークを表す
n:フィルム材料の屈折率
α:鏡面反射セットアップにおける入射角
検査結果
Specim FX17 で取得したスペクトルデータから計算された平均厚さは以下のとおりです。
測定値が公称値をわずかに上回った原因としては、測定時にフィルムが伸張されていなかったことが考えられます。
| FILM1 | FILM2 | FILM3 | FILM4 | |
|---|---|---|---|---|
| 公称厚み [μm] | 17 | 20 | 20 | 23 |
| 測定値(平均値) [μm] | 18.4 | 20.05 | 21.7 | 23.9 |
| 標準偏差 [μm] | 0.12 | 0.076 | 0.34 | 0.183 |
また、FILM1 では、局所的な圧力により生じたと思われる2つの細い溝が検出されました。
検査結果と活用メリット
ハイパースペクトルイメージングは、従来の光学分光法に基づく薄膜製造およびコーティング品質管理システムの効率を大きく向上させる技術です。Specim FX17などのハイパースペクトルカメラは、1秒間に数千ラインの画像取得が可能であり、薄膜の全数インライン検査を実現します。これにより、品質の一貫性が向上し、廃棄物の削減にも寄与します。
また、ポイント型分光計を用いたXYスキャン方式と比較して、卓上型検査システムにおいても大幅な検査速度の向上が期待でき、加えてハイパースペクトルカメラは可視・近赤外光など無害な光のみを使用するため、X線センサーのような放射線リスクを回避できるという利点もあります。
理論上、安全マージンを考慮した場合、FX10は1.5~30 µm、FX17は4~90 µm の膜厚測定に適しており、用途に応じた柔軟な機種選定が可能です。
製品情報
ハイパースペクトルカメラ
Specim FXシリーズ
Specim FXシリーズは、可視光から長波赤外(約400〜12,300 nm)までの広範な波長領域を用途に応じたモデル構成でカバーするラインセンサ型ハイパースペクトルカメラです。高い分光・空間分解能に加え、マシンビジョン向けインタフェースに対応しており、高速かつ安定したデータ取得が可能です。
研究開発からインライン検査まで幅広く活用されており、成分分析、品質評価、異物検査、素材の選別など多様な課題に対して新たなソリューションをご提供します。



























