家族になる
Column 05

「産後うつ」ってなに?

10人に1人が発症する「産後うつ病」

「産後うつ病」という名前を聞いたことはありますか?かわいい赤ちゃんに会えるのを待ち望んでいると、「こんなに楽しみにしているのに、そんなこと自分には関係ない」と思う方もいるかもしれません。
ところが、調査結果によれば、出産をしたママのおよそ10人に1人が産後うつ病になっているということがわかってきました。この数字を見ると、赤ちゃんに対する愛情に関係なく、出産を経験するママの誰もが経験する可能性があるということがわかります。万が一に備えて、産後うつとはどんな状態なのか知っておくことが大切です。

産後の気分の落ち込みはホルモンの乱れが原因

出産後、ママの身体はホルモンバランスの急激な変化にさらされます。これが原因で、産後のほぼ半数のママに気分の落ち込みがやってくると言われています。これを「マタニティーブルーズ」といいます。些細なことで泣きたくなったり、感情が不安定になるといった症状が出ますが、ほとんどの場合産後、2週間ほどで軽減します。
しかし、前述のように10人に1人のママが2週間を過ぎても心が苦しい状態が続き、症状がより深刻になると産後うつと診断されます。

うつ病とは?

うつ病が疑われるのは、次のような症状がある時です。
・中核症状のどちらか(または両方)があり、かつ付随症状の中で少なくとも4つ以上の症状のため、毎日の日常生活に支障をきたしている状態が少なくとも2週間以上持続している場合、うつ病を疑います。

中核症状:
気分の落ち込み
興味または喜びの喪失

付随症状:
食欲・体重の変化
睡眠障害
口数も動きも極端に少なく、考えや行動のテンポが遅いか、強いいらつきがある
気力の減退
母としての役割を果たせない、または過度に自分を責める
思考・集中・決断が困難
自殺念慮や自殺企図がある

産後は、授乳のため食欲や体重が変化しやすく、夜中の授乳や絶え間ない赤ちゃんのお世話で睡眠も十分にとれないことが多いものです。初めての慣れない育児に心が折れることもあるでしょう。一生懸命に頑張ってもうまくいかないことで不必要に自分を責めてしまうかもしれません。
このように、産後のママは心も体も不安定になっています。うつ病になってしまうことも決して珍しくない状況だということを理解することが大切です。

産後うつにならないようにするには

海外の研究によれば、産後うつを引き起こすきっかけになるものとして、下記のような身体的・精神的・社会的な要因が挙げられます。

・過去にうつを患ったことがある、
・出産前後のサポートの欠如
・ストレスの大きいライフイベント(親しい人の死別や離婚や失業など)
・収入の低さ
・パートナーとの関係の問題など

中でも、出産前後のサポートについては、出産前にパートナーや家族と話し合い、体制を整えることで解消することができる問題とも言えます。産後の家事分担について決めておいたり、子育て支援サービスについて調べたりすると心が軽くなるでしょう。このように、自分たちでコントロールできるストレスにかんしては、事前に対処しておくことで、産後うつになるリスクを軽減することができます。
もし、「うつかな」と思ったら、無理をせずにまずは睡眠時間をしっかり確保しましょう。「初めてなのだから育児がうまくいかなくて当たり前」なのです。自分を追い詰めないように、気分転換をすることも大切です。遠慮せずに周りに「助けてほしい」と言ってください。辛い時はためらわずに心療内科の受診をして治療を受けましょう。

参考文献 1. 早田聡著、岡野禎治監修 EPDS活用ガイド 南山堂
Werner E, Miller M, Osborne LM, Kuzava S, Monk C. Preventing postpartum depression: review and recommendations. Arch Womens Ment Health 2015 Feb;18(1):41-60.