コニカミノルタ

アニュアルレポート2015

Giving Shape to Ideas

特集2 対談:コニカミノルタのコーポレート・ガバナンスについて
自由にモノを言える風通しの良い風土が、
透明で健全な企業活動を可能にする。

取締役会議長 松﨑 正年、取締役(社外取締役)近藤 詔治

コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社取締役、コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社代表取締役社長などを歴任後、当社取締役兼代表執行役社長を経て、2014年4月から現職

トヨタ自動車株式会社常務取締役、日野自動車株式会社代表取締役社長、会長などを歴任後、2011年6月から当社社外取締役

民主的・オープンな発想に基づき、早くからガバナンス体制の構築を推進

コニカミノルタのコーポレート・ガバナンスについてのお考えをお聞かせください。

松﨑
当社は、会社法の定める指名委員会等設置会社です。取締役会の中に社外取締役が過半数を占める3つの委員会(指名委員会、監査委員会、報酬委員会)を設置し、これらが取締役候補の指名や、代表執行役や取締役による職務執行の監査、報酬決定などを行うことによって、経営の透明性・業務執行の適正化を担保しています。
近藤
コニカミノルタでは、執行権を持たない取締役が取締役会の議長を務め、かつ社外取締役の比率が1/3以上、執行権を持たない取締役を過半数にすることを定めていますね。
松﨑
実際、当社では、取締役11名のうち社外取締役が4名、執行権を持たない取締役が7名、その1人である私が議長を務めています。
近藤
今まさに多くの上場企業が目指している非常に進んだガバナンスシステムといえますが、統合当初からかなり積極的に取り組んでおられますよね。
松﨑
ええ、現在のガバナンス体制のルーツはコニカとミノルタの統合前にまで遡ります。コニカの社長を2001年3月まで務めた植松富司氏が、退任後、いったんは代表取締役会長に就任したのですが、自らの社長時代を振り返って「もっと厳しく経営をチェックする仕組みが必要」と痛感しました。そこで、「自分は経営を監督する側に回る」と、代表権を放棄することを決意して執行部からも外れ、法律の専門家の協力も得ながら、ガバナンスの強化に着手したのがきっかけです。
近藤
つまり“会社法が改正された”から、“何か問題が起こった”から、といった受け身の理由ではなく、「権力を有する者こそ厳しくチェックされるべき」という、極めて民主的でオープンな理念に基づいて自発的に始まった取り組みだったのですね。
松﨑
おっしゃる通りです。監督する立場に専念することを決意した人間が旗振り役となって進めてきたからこそ、妥協することなく徹底したガバナンス体制を構築できたのだと思います。

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外部の客観的な視点を採り入れ、経営課題への迅速な対応を実現

社外取締役の選任基準や期待する役割について教えてください。

松﨑
当社における社外取締役の選任基準には、大きく分けて5つのポイントがあります。1つめは一定の独立性基準を満たしていること。2つめは、近藤さんのように組織運営の実績を持った方、もしくは技術や財務といった特定分野での専門性があることです。3つめは、優れた識見を持ち、当社の経営に関して適確な質問や指摘をしていただける方。4つめが、委員会の委員や委員長としての資質です。たとえば、監査委員あるいは監査委員長になった時に、執行部や会計監査人と適確なプロセスを踏まえて議論していただける方でなければなりません。そして最後の5つめは、当社の取締役として十分な時間を割いていただけることが条件です。さらに、私が指名委員として社外取締役の候補者選定に参画するようになってから留意していることとして、社外取締役の得意分野のバランスや今後の当社の重要経営テーマにフィットする人を候補者として選定するようにしています。
近藤
自分がその基準をすべて満たしているかどうかわかりませんが、2011年の就任以来、社外取締役の一人として、何でも自由に発言させてもらっていることは確かです。
松﨑
社外取締役に期待しているのは、外部の視点から当社の経営をチェックしていただくことですから、そうやって忌憚のないご意見をいただけるのが一番ありがたいのです。近藤さんには、以前、ハードディスク用ガラス基板事業の撤退を検討した時にも貴重なご指摘を賜りました。
近藤
社内の人間だけで議論していると、どうしても事業への思い入れや人間関係が絡むためになかなか決断できないものです。しかし、われわれ社外の人間には、そんなエモーショナル部分は関係ありませんから、何の遠慮もなく“改善が見込めない事業は一刻も早く撤退すべき”と言えるわけです。また、就任以来“事業の分社化によって、グループ売上の7割を占める情報機器とその他の事業を同じ重みで扱うのは非効率ではないか”と指摘してきた点についても、2013年4月の経営体制再編においてしっかりと対応していただいたと思っています。
松﨑
そうした事業構造の問題点については、社内でも常々感じてはいるのですが、社外取締役の方からはっきりご指摘いただくことで、より課題が鮮明化して迅速に対応できるメリットは大きいと思います。

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さらなる収益拡大に向けて各事業での実行力の強化を

社外取締役に事業内容を理解していただくための説明や情報提供はどのように行われているのでしょうか?

松﨑
取締役会の開催にあたっては、すべての社外取締役に事前に詳しい資料を提供し、重要な事案については個別に説明する機会を設けています。
近藤
そのほかにも新製品・新技術の発表会に出席したり、実際に国内外の研究所や工場を見学したりする機会があります。
松﨑
さらに、私が議長に就任した2014年からは、リクエストに応えて社外取締役との懇談会を年数回、開催しています。正式な取締役会とは別に、各事業のチャネルの状況や地域戦略などについて情報提供し、重要なテーマについて話し合う機会を設けています。
近藤
時間が許せばもっといろいろな現場を見てみたいのですが、社外取締役に対する説明・情報提供としては、量・質ともに十分な水準にあると評価しています。

実際に事業の現場に足を運んで、近藤様は、コニカミノルタにどのような印象を抱かれましたか?

近藤
トヨタ自動車および日野自動車で長年、生産・調達分野のマネジメントに携わってきた経験をもとに言わせていただけば、まだまだ改善できる余地があると感じます。事業環境が激変するなかでコニカミノルタは大変うまく経営の舵取りをされてきたと思いますが、それに加えて各事業における現場の実行力を高めていけば、もっともっと利益をあげられる優れた会社に成長できるはずです。
松﨑
そうですね。もっと実行力を強化していきたいと思います。

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ガバナンス・コード73原則のうちすでに65項目への対応を完了

2015年6月からコーポレート・ガバナンス・コードの適用が始まりましたが、コニカミノルタとしてどのような取り組みが必要だとお考えですか?

松﨑
最初にご説明したように、当社の場合、早い段階からガバナンス体制構築を進めてきた経緯もあって、新たに取り組まなければならない項目は多くはありません。実は、今回のガバナンス・コードが、当社の現状を点検するための格好のツールになるのではないかと考え、発表後に照らし合わせてみたのですが、全73原則のうち65項目についてすでに対応済であることがわかりました。
近藤
残りの8項目への対応についても、現在、盛んに議論が進んでいますね。
松﨑
これから対応していきたいのが、原則3-1に盛り込まれている取締役・経営陣の選任プロセスに関する透明性の向上です。CEOの選任についての方針や手続きなどを改定して、そのプロセスを指名委員会や取締役会が監督できる仕組みに変えていく予定です。また、CEO以外の執行役の選任は取締役会の決議事項であり、指名委員会は報告を受けるだけなのですが、この執行役の選任プロセスにも指名委員会が関与できる体制に変えていきたいと考えています。
近藤
先日、指名委員会内でも議論したのですが、経営陣の選任プロセスに、外部の意見を採り入れることは、企業の透明性・公平性を担保するうえで非常に重要なポイントだと思います。トップの人選にさえも外部の目が光っていることを考えれば、一人ひとりの社員も常に社会を意識して行動せざるを得なくなるはずですからね。

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オープンで誠実な経営を貫き社会から信頼される企業として成長していく

持続的成長の実現に向けて、今後どのような取り組みが必要でしょうか?

松﨑
当社では、10年以上前からアンケート形式の評価シートを用いて取締役会の自己評価を実施してきました。その項目のなかには、取締役会運営の改善点などに加え、当社の中長期的経営課題に関する質問項目もあるのですが、毎年、多忙ななかでも非常に内容の濃い回答を寄せていただいております。こうしたご意見、ご指摘をもとに、PDCAサイクルを回し、企業経営の舵取りをさらにレベルアップさせていきたいと考えています。
近藤
さらに投資家との対話を通じて得られる情報も経営における重要なヒントになりますね。
松﨑
おっしゃる通りです。私自身もCEO時代にいろいろな投資家の皆様との対話を通じて「投資家の方々はこういったリスクを重視しているのか」と気づかされることも多く、大変勉強になりました。今後も投資家との対話を重視し、その視点を経営に活かしていく必要があります。また、DJSIなどの社会責任投資(SRI)インデックスの調査結果も、経営の足腰を強化するために有効活用していきます。
近藤
もう一つ、持続的成長のために欠かせないのが、ガバナンス構築の目的でもある経営の透明性や健全な企業活動といったものをコニカミノルタの風土や文化として浸透・定着させていくことです。その原点となるのが、社員一人ひとりの嘘のない誠実な姿勢だと思います。
松﨑
同感です。昨年再構築した経営理念の筆頭に「Open and honest」を掲げたのも、当社の良きDNAである公正さや誠実さといった価値観を、これからもしっかりと継承していこうという強い意志を表したものです。
近藤
私は、「お言葉ですが‥‥」というフレーズが大好きです。相手が上役であっても自分が正しいと思うことであれば、はっきりとモノを言うことができる。そんな風通しの良い風土が、透明で健全な企業活動を可能にします。コニカミノルタには、すでにそういった風土が育ちつつあると思いますが、これからも社会からより一層信頼される会社となって成長を続けていただきたいと考えています。
松﨑
ご期待に応えられるよう全力を尽くします。今後ともご指導のほど、よろしくお願いいたします。

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