コニカミノルタ

統合報告書2017

Giving Shape to Ideas

特集1: プラットフォームビジネスの確立へ
お客様のビジネスの現場で、ワークフロー変革を支援する「Workplace Hub」

高収益なプラットフォームビジネスの構築を目指して、当社は、その中核となる戦略的商材「Workplace Hub」を新たに開発しました。新たな価値を創出するサービスを開発するとともに、高収益事業への育成を目指します。

「Workplace Hub」を基盤に顧客企業の潜在的な課題を解決

近年、IoTの進展で企業には膨大なデータが蓄積されています。エッジコンピューティングは、そうしたデータの高速・高精度な処理・分析を可能にする技術です。当社のエッジIoTプラットフォームである「Workplace Hub(WPH)」は、企業におけるデータの利活用や、生産性の向上、情報共有やコラボレーションをビジネスの現場で支援し、お客様企業のワークフロー改善に貢献していきます。

WPHの事業化において大きな強みとなるのが、長年培ってきた“見えないものを見える化する”技術です。当社では、画像処理技術によってオフィスでの人・モノの動きや帳票に書かれた情報をデジタルデータ化し、AIを活用して、顧客企業が抱える潜在的な課題への解決策を提案していくことを目指しており、WPHはその中核となる商材です。

また、世界で約200万社にデジタル複合機を提供し、販売チャネルを有していることも強みの一つです。開発にあたっては、グローバルで約3,500名にヒアリングを実施。そこでの意見や要望を集約し、WPHのサービスに反映しています。

さらに、WPHの事業化においてはグローバルIT企業とのパートナーシップを構築していきます。これによって、WPHで提供する多様なアプリケーションを獲得するとともに、当社およびパートナー企業で相互に顧客基盤を活用。パートナー企業とWIN-WINの関係を築き、WPH事業を拡大していきます。

高収益事業への育成を目指し順次サービスを拡充

当社では、WPHをプラットフォームに中堅・中小の顧客企業に「All in OneマネージドITサービス」を提供していきます。専任部署がない、コスト負担が過大になるなどの理由からIT導入に踏み切れない企業に対して、“顔の見えるパートナー”として、各種ITインフラの管理・運用、アプリケーションの導入やライセンス管理、セキュリティ対策などをトータルにサポート。また、社内外との情報共有やコラボレーションを支援するサービスを提供するほか、クラウド上にマーケットプレイスを設置し、さまざまな最新アプリケーションをラインアップします。これらのサービスは、初期費用なし、月額課金で利用することができます。

さらに今後は、AIを活用して帳票処理など定型業務の自動化も実現するとともに、将来的にはWPHに接続されたオフィス・工場内の各種機器から人・モノの動きや機器の稼動状況などを分析し、新たなソリューションの開発も進めていきます。

当社では、このWPHを2017年度下期から全世界で順次発売します。また、2018年度には製造業向け、病院向けソリューションの投入も計画しており、顧客企業に新たな価値を提供する高収益事業へと育成していきます。

ビジネスパートナーからのメッセージ

コニカミノルタとのパートナーシップで、お客様のデジタルビジネスを支援していきます。

シスコは、市場により根ざした事業展開、お客様のデジタルビジネス支援を重要な戦略として掲げており、その中でもIoTは注力分野のひとつです。IoTにおけるイノベーションはシスコ1社だけでは実現できず、業種・業界を越えたエコパートナーとの共創が不可欠です。

今回シスコは「Workplace Hub」のグローバル・エコシステム・パートナーとして協業させていただいておりますが、これは「働き方改革」を推進している弊社にとっても大変意義深いことであり、エッジIoTプラットフォームというコンセプトも、弊社が提唱するフォグコンピューティングにとても親和性の高いものだと考えております。さらに、我々の強みであるコラボレーション、セキュリティとも合わせ、「Workplace Hub」によるお客様のデジタルビジネス支援の加速の一翼を担ってまいります。

シスコシステムズ合同会社
執行役員 最高技術責任者(CTO) 兼 最高セキュリティー責任者

濱田 義之

All in One マネージドITサービスのビジネスモデル

Workplace Hubの活用事例

製造業向けソリューション

機器メンテナンス費用の削減

課題:さまざまな年式の設備を使用しており、古い設備からはデータを収集できず、人の経験に頼った運用・メンテナンスで業務の無駄や不要な維持コストが発生。

提供価値:WPHとデータ収集ツールを連携させ、全設備の稼働情報を可視化、分析、統合管理するソリューションを提供。最適な時期におけるメンテナンスの実施によって、ライフサイクルを通じたメンテナンス費用の削減を支援。

本来業務への集中による生産性向上

課題:雇用人員の制約もあり、社員が間接業務に多くの時間をとられる。また、直接業務にリソースを投入できず、生産性の向上が課題に。

提供価値:Radiant社機器で実施した検査のデータをWPHに蓄積し、自動的に検査記録や日報を作成することで、これら業務にかかる工数を削減。また、MOBOTIX社機器で収集した人やモノの導線データを分析し、生産性の向上につながるワークフローを提案。

医療向けソリューション

IT管理担当者の業務負荷軽減

課題:診療、薬剤、施術などのシステムを異なるベンダーから調達した結果、システム全体の管理が困難。また、オンプレミスでシステムを構築したために、管理コストが増大するほか、バックアップなどに必要なストレージ容量も不足。

提供価値:WPHによって院内のITインフラやアプリケーションの一元管理を可能にするソリューションを提供。WPHのクラウドストレージサービス・バックアップサービスで、ストレージ管理業務やファイルバックアップ業務を撤廃し、IT管理担当者の業務負荷を軽減。

医療サービスの高度化

課題:地域医療連携や遠隔医療の実現には、セキュアなネットワーク環境の構築や、電子カルテシステムをはじめとする各種医療・診断データの互換性確保が必要。

提供価値:WPHでセキュアに医療・診断データを蓄積・相互利用できる環境を提供。院内のデータだけでなく、在宅患者のバイタルデータなどもモバイル機器などを通じてWPHに統合。地域全体の医療サービスの高度化や、各医療機関における経営効率向上・業務負荷軽減に貢献。

Key Person Interview

「Workplace Hub」の提供を通じて新たなIoT時代にお客様の力になる

BIC-EU Director
デニス・カリー

Q 「Workplace Hub」を開発した背景は?

デジタル化が目もくらむスピードで進行する現在、このデジタル化が当社にどういう意味をもたらすのかを自問自答してきました。ワークプレイスでの行動様式がどう変わるのか、そして、新しい世界で当社の存在価値をどう示せるのか。IoT時代において、自らを変革するだけではなく、市場そのもの、何よりもお客様を変革したいのです。
デジタル化の恵みを享受するには、今現在の市場と将来の伸びゆく市場の架け橋が必要です。その架け橋になるには、当社の持つ価値と能力を最大限に活用し、お客様と市場にその価値を提供しなければいけません。
世界中、数百万のオフィスに、当社の複合機を設置させていただいている、この事実に気付いた時に、頭の中で化学反応が起こりました。この1㎡の複合機設置スペース、お客様が今そのワークプレイスで必要とされている価値のみならず、将来のITサービスの市場において当社の地位を確固たるものにするための着想が生まれたのです。

Q 具体的な開発スキームやプロセスは?

当社の世界5極で活動しているビジネスイノベーションセンター(BIC)は、お客様の潜在的なニーズを正確に定義して、それを満たすコンセプトを具現化するための申し分のないプラットフォームビジネスです。
BICはお客様に近いところで、お客様起点のアプローチで、付加価値の高いソリューションを創り出します。
BICチームの事業創出の知見をベースにして、国を超え、数多の発想を事例に結実させるWPHグループは、ビジョンを現実のものにするために生まれました。

Q ビジネス拡大に向けた方策は?

お客様のワークプレイスには当社の複合機が設置されているので、新しい顧客価値を素早く検証することが可能です。世界中に張り巡らせたお客様へのサポート網と質の高いサービスに基づくお客様の信頼もテコにすることができます。それゆえに、WPHがお客様に受け入れられるポテンシャルは、既存の複合機のお客様から、複合機のお客様ではないものの、当社のITサービスに関心のあるお客様まで、幅広い範囲に及びます。
私たちが開発している新しいIoT、AIと意思決定支援などのサービスは、当社の市場ポジションをかつてなく強固なものにすることでしょう。

Q WPH事業の将来展望は?

まずは紙からデジタルへのシフトによって喪失される売上減を相殺することから始まり、スマートワークプレイスソリューションのプロバイダーとしての認知度を高めていきます。WPHはITと将来のワークプレイスを志向する新しいプラットフォームの成長の礎石になるものであり、当社の提供価値を市場で素早く検証し、お客様のニーズを正確に予見し、我々の戦略とポートフォリオを素早く正しい方向に向かわせることができるのです。言い換えれば、WPHは将来における価値創造の基礎として機能していくということです。それができれば、当社はデジタル化の不確実性の中で、しなやかな強さを持ち得るに違いありません。

Q 近い将来に実現したいことは?

コアなプラットフォームを基盤として、さまざまな業種業態向けのソリューションを提供します。当社はWPHによって、多様な業種とそこへのチャネルに向けて積極的に事業を展開し、IoTやAIを活用したオフィスサービス、製造業、医療など、さまざまな分野でターゲットを絞り込んだソリューションを提供していきます。