コニカミノルタ

統合報告書2017

Giving Shape to Ideas

CEOメッセージ

課題提起型デジタルカンパニーへ。
持続的な成長が可能な
高収益事業へと転換させていきます。

代表執行役社長 兼 CEO
山名 昌衛

当期業績と前中期経営計画「TRANSFORM 2016」の振り返り 中長期の成長のために、業容転換に向けた仕込みを遂行

いわゆる “IT革命”によって、ビジネスモデルや産業構造といったマクロレベルから、働き方やライフスタイルなどの個のレベルに至るまで、近年の人間社会は大きな変化を遂げました。さらに現在では、あらゆるモノがネットワークにつながるIoTによって、さまざまな領域において今までになかった新たな価値やビジネスが次々と創造されつつあります。私は社長に就任する前から、これから到来するIoT時代を見据え、これまでの当社の戦い方を変え、当社をゲームのルールを変える存在にすることを決意しておりました。

コニカミノルタの強みは大きく2つあります。一つは、長い歴史を重ねていくなかで蓄積してきた「コア技術」です。創業のカメラ・フィルム時代から培ってきた画像技術や材料の技術、微細加工技術、あるいは光学の技術です。これまで当社は、世界最高感度のフィルムや世界初の自動焦点カメラ、世界初のズーム機能搭載複写機など、世界初や世界一を生み出してきたDNAを持っているモノづくりの会社です。

もう一つの強みが、デジタル複合機や医療用画像診断装置、計測機器などの販売・サービスを通じて培った、全世界約150カ国・約200万企業のお客様との「つながり」です。これらのお客様の業種は、製造、流通・小売、印刷、医療・介護など多岐にわたっていますが、すべての業種においていえるのは、ITの活用によるワークフローの革新による生産性の向上、あるいはマーケティングROIの向上やビジネスモデルの変革を求める動きが、近年ますます強まっているということです。

そうした認識のもとで、私たちは2014年から中期経営計画「TRANSFORM 2016」を着実に実行し、お客様への提供価値の向上に努めるとともに、3年間で1,200億円を超える投資を実行し、持続的な企業成長につなげるためのさまざまな“仕込み”を進めてきました。

なかでも重要度の高い“仕込み”が、既存事業の高付加価値化と新たな事業の創出につながる技術や知見、ノウハウ、人財などの獲得を目的とした「戦略的M&A(企業買収)」です。情報機器やヘルスケアの分野を中心に、世界各地で多くの魅力のある企業を選別し、グループに加えてきました。

例えば情報機器事業では、デジタル化の進展にともなう成長が見込まれるラベルやパッケージなど産業印刷分野での競争力を強化すべく、金や銀の箔押しやニス盛りなどさまざまな加飾印刷をデジタルで実現する、世界でも数少ない企業であるフランスのMGI社を連結子会社化しました。一方、ヘルスケア事業では、世界最大市場である米国で、プライマリーケアを中心に医療画像診断機器、アプリケーションや医療ITソリューションサービスを提供するViztek社を買収しました。また、新規事業を創出するための技術の獲得を目的として、分散処理型のモニタリングカメラや独自のビデオマネジメントシステムを持つドイツのネットワークカメラメーカーMOBOTIX社を連結子会社化し、当社の強みである画像入力、色計測機器を強化しました。さらに、製造工程での外観検査を自動化する技術を有する、米国のRadiant社も買収しました。これにより、これまで人間の目に依存していた検査工程の自動化を進め、製造業の生産性向上を支援するビジネスを構築する体制が整いました。

さらに、この3年間で実施した戦略的M&Aには、今後の事業展開に不可欠なワークフロー改革の提案ができる人財や、そのノウハウ獲得を目的としたものも数多くあります。欧米を中心に30社以上のITサービス企業を買収し、お客様の業態別ワークフローに精通した多くの人財を確保できたことは、「Workplace Hub」の事業化を見据えた仕込みでもありました。

このほかに、新規事業を創出していくプロセスを「型」として当社に定着させていくための“仕込み”も実施しています。世界5極でビジネスイノベーションセンター(BIC)を開設し、それぞれのトップも含めて、当社にとっては異業種である領域での実績と知見を持つ、多くの優秀な人財を採用しました。お客様企業や大学、スタートアップ企業などとのコラボレーションにより、各BICでは顧客を起点としたビジネスモデルの仮説立案、検証、事業化のサイクルを回せるアジャイル的な事業開発体制を整備しています。すでに100を超える新規事業の芽がパイプラインに積み上がっており、Workplace Hubもこの中から生まれた事業の一つです。今後もトライ&エラーを重ねながらさまざまな新規事業を生み出していきます。

前中期経営計画期間での仕込み

当期も事業の高付加価値化に注力

前期に引き続き当期も、顧客に密着して顧客の課題を洞察し、「モノにコトを加える」ことにより顧客の課題解決を提供する、付加価値型の販売の浸透とグローバル展開を進めました。

主力の情報機器事業では、オフィス分野で当社のジャンルトップ戦略の中核であるA3カラー複合機「bizhub(ビズハブ)」シリーズが当期もモメンタムを持続、販売台数はすべての地域で前期を上回りました。複合機市場における競争環境の厳しさは継続していますが、当社独自の複合機を中心とするドキュメントソリューションとさまざまなITサービスを組み合わせて提供する「ハイブリッド型販売」が北米および西欧市場を中心に浸透しており、顧客一社当たりの売上高増、収益率向上に寄与しています。

プロダクションプリント分野では、カラーデジタル印刷システムの最上位機種「bizhub PRESS(ビズハブ プレス)C1100」が北米、中国およびアジア市場での販売が伸長しました。産業用インクジェット分野では、テキスタイルプリント領域では高い生産性を実現する「ナッセンジャー SP-1」をフランスおよびトルコで受注、売上拡大に貢献しました。また、産業印刷領域では、販売活動が各地で本格的にスタートした、インクジェットデジタル印刷機の新製品「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1」とMGI社製のデジタル加飾印刷機により、ハイエンド市場攻略の準備が整いました。

ヘルスケア事業は、米国ではViztek社の貢献もありDR(デジタルラジオグラフィー)の大幅伸長に加え、プライマリーケア市場におけるソリューション製品販売が事業拡大に貢献し、好調に推移しました。日本ではデジタル製品全般の販売が堅調で、カセッテ 型デジタルⅩ線撮影装置の「AeroDR(エアロディーアール)」が国内外で好調を持続、超音波画像診断装置の「SONIMAGE(ソニマージュ)HS1」も日本で販売台数を大きく伸ばすとともに、米国、中国での販売も開始しました。

一方、産業用材料・機器事業は厳しい環境となりました。機能材料分野は、価格圧力が厳しくなるなか、液晶TV向けVA-TACフィルムおよびIPSパネル用Zero-TACフィルム、中小型ディスプレイ製品用超薄膜TACフィルムなど高付加価値製品へのシフトを進めましたが、販売数量、金額とも前期を下回りました。産業用光学システム分野では、計測機器は大口契約にともなう出荷が当期終盤に開始したことも寄与して増収となりましたが、産業・プロ用レンズは最終製品市場の販売減の影響を受け、減収となりました。

これらの結果、当期の連結売上高は9,625億円(前期比6.7%減)、営業利益は501億円(同16.5%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は315億円(同1.3%減)と、グループ全体では残念ながら減収・減益という結果となりました。ただし、この業績数値には為替変動が大きく影響しています。当期の為替は、秋以降は円安に転じたものの、通期ベースでは米ドル・ユーロとも前期比で大幅な円高で推移しました。これは売上高に対しては、918億円の減収要因となり、営業利益についても196億円の減益要因となっています。これらの為替影響を除いた実質ベースで見れば、売上高は対前年比で約2%の増収であり、営業利益についても約16%の増益を確保しています。

なお、当期の年間配当については、厳しい事業環境ではありますが、前期と同じ一株当たり30円とさせていただきました。当社では、配当への基本的な考え方として、配当性向よりも絶対額を重視しています。今後も、持続的な成長を実現するための投資を進めるとともに、しっかりと業績を上げることで、創出された利益・キャッシュを積極的に還元し、株主の皆様の期待に応えていきます。

配当金 / 配当性向

新中期経営計画「SHINKA 2019」で当社が目指すもの 「課題提起型デジタルカンパニー」として社会課題を解決

前中期経営計画期間における、さまざまな“仕込み”を成果につなげるため、2017年4月よりコニカミノルタは新たな中期経営計画「SHINKA 2019」を始動させました。この「SHINKA(進化)」というネーミングには、前中期経営計画「TRANSFORM」による当社自身の業容転換はもとより、お客様企業の変革を支援し、その先にあるビジネスにおける生態系(エコシステム)、さらには人間社会の“進化”を支える新たな価値を創出し、社会課題の解決に貢献したい、という強い思いを込めています。

新中期経営計画において私たちが“目指す姿”として掲げるのは「課題提起型デジタルカンパニー」です。課題提起というのは、いま顕在化している課題はもちろん、まだ見えない潜在的課題までも先取りして、お客様や社会に提起し、一緒になってその課題の解決策を導き出していくという意味です。当社が長年培ったデジタル技術に加えて、AI、ロボティクス、IoTといった革新的技術も活用しながら、お客様が抱える課題をいち早く見つけ出すとともに、これまでの仕込みによって強化された技術・ノウハウを活かしながら、コニカミノルタが率先してこうした課題を解決していくことを目指しています。

こうしたソリューション、サービスビジネスの“起点”となるのは、製品ではなくお客様です。これまで当社は、お客様視点に立った製品・サービスを提供する企業へと自らをトランスフォームさせてきましたが、実際の現場では「事業」をベースとした営業活動が中心となり、本当の意味でのOne コニカミノルタとしての提案にまで昇華できたかというと、課題が残っていると私は総括しています。

そこで「SHINKA 2019」では、この視点を180度転換し、お客様、あるいは市場からビジネスを捉え直していきます。新中期経営計画の始動に合わせて営業体制も抜本的に改革し、従来の事業・製品別の営業体制から、お客様の業種業態別の「Go To Market(GTM)体制」へと移行させていきます。今後は世界200万企業の顧客基盤を「業種・業態」ごとに捉えて、培った製品・サービスの知見・ノウハウを融合し事業や製品の枠を超えて、それぞれに応じた最適な課題提起を行っていく方針です。そして全社を挙げて各業種・業態に最適なワークフローの変革を提案していくことで、お客様のトランスフォームを支援していきます。

課題提起型デジタルカンパニー

高収益企業への変革に向けて体制を強化

「SHINKA 2019」による高収益企業への変革を実現していくために、グループ全体の事業領域を「基盤事業」「成長事業」「新規事業」の3つに分類し、今後は各事業における利益責任を明確化しながら、収益構造の転換を進めていきます。

特にこれからの3年間(2017-2019年度)は、基盤事業の収益性向上とともに、成長事業および新規事業において、前中期経営計画期間で実施したさまざまな“仕込み”を開花させていくことが、経営の重要課題だと考えています。

現在の収益の大半を稼ぐ「基盤事業」では、収益性の強化が重要な経営課題であると捉えています。これらの事業を展開する市場は成熟化が進みますので、事業規模の拡大による収益の拡大ではなく、グローバル視点でのコストの構造改革を軸に収益性の改善を図ります。

今後3カ年で約300億円のコスト改善にも取り組んでいく計画です。製造原価については、マレーシア工場で進めているデジタルマニュファクチャリングの成果を中国などの生産拠点に横展開していくことで約160億円のコスト削減を、またサービス原価については、ディープラーニング、AIなどを活用した故障予知、リモートサービスの強化、パーツの長寿命化などで約60億円の削減を、それぞれ目指します。管理・間接費用についても、グループ間接機能の大幅簡素化などにより、3年間で約80億円のコスト削減を目指しています。

これら「基盤」「成長」「新規」の事業は、別々のものではなく、“三位一体”で進めていくべきものであると考えています。これまで基盤事業で培ってきた顧客との関係性を強化し、そこで得たさまざまな経験や蓄積を、成長事業でのビジネス拡大や、新規事業のビジネスモデル創出に活かすことで、グループ全体を高収益体質の「課題提起型デジタルカンパニー」へと変革していきます。そして、新中期経営計画の最終年度となる3年後の2019年度には、「営業利益750億円以高収益企業への変革に向けて体制を強化上、当期利益500億円、ROE9.5%」を目指します。

仕込みを活かした高収益体質への転換

経営目標値

プラットフォームビジネスで高収益ビジネスの基盤確立へ

成長事業・新規事業において、私が強い確信を持って推進しているのが、「エッジIoTプラットフォーム戦略」と、これを活かすパートナー戦略です。コニカミノルタには世界200万社の顧客基盤がありますが、これは200万社のビジネスの現場に、ネットワークにつながった当社の複合機、デジタル医療診断機器、計測機器が設置されているということです。すなわち、顧客とリアルタイムでつながる膨大なプラットフォームを有し、データを入力し、デジタル化するための「入口(エッジ)」に大きな強みを持つ、ということです。

ビッグデータ解析やディープラーニングなどのサービスを、クラウドサービスとして提供するIT企業は世界に数多くありますが、私はこれらの企業と戦うつもりはありません。コニカミノルタのプラットフォームビジネスは、クラウドサービスも活用しますが、業務の現場に設置したプラットフォームにデータを集積し、解析することで、お客様企業の経営課題や業務課題を現場(=エッジ)で、リアルタイムに解決します。この「エッジIoTプラットフォーム(=エッジで解析・解決するプラットフォーム)」こそが、当社の提供する顧客価値であり、これを他社との差異化のポイントとし、ここから高い収益性を生み出していきます。

この「エッジIoTプラットフォーム戦略」の中核となるのが、2017年3月に発表した「Workplace Hub(以下、WPH)」です。WPHは一般オフィスのみならず生産現場や医療、教育機関など、さまざまな業種業態の現場における業務フローの効率化をサポートすると同時に、時々刻々と変化するリアルタイムデータを分析し、ITインフラの使用状況や働く人の動きを可視化することで、お客様のITインフラ管理コストの削減、ビジネスプロセスの効率化に役立つソリューションを提供します。

このプラットフォームを、先に述べた「業種・業態別の課題解決」へと展開していくなかで、これまでの3年間の仕込みが活きてきます。例えば、WPHにMOBOTIX社のカメラを接続すれば、オフィスや工場内での人やモノの動きをリアルタイムで計測し、効率的な動線設計やスペース活用を提案できます。あるいは製造工場の現場において、WPHにRadiant社の計測機器を接続すれば、外観検査で見つかった不良品がどの工程に問題があったのか、どのサプライヤーの品質検査に問題があったのかなどを分析できます。ヘルスケア分野においても、Viztek社のプライマリーケアのITプラットフォームと接続することで、医療画像データと病院管理データ、患者データを統合した管理が可能になります。

また、こうした戦略を進めるうえで欠かせないのが、パートナー企業とのエコシステムです。WPHの事業化にあたっては、Microsoft社、HPエンタープライズ社、CISCO Systems社、SAP社といったグローバル企業とのパートナーシップ体制を整えました。これらの大手IT企業は、当社の顧客である中堅・中小企業に対して、直接の販売活動を行うことはコストの制約もあり、厳しい状況です。そこで、当社のプラットフォームを活用することで、これまでリーチできなかった企業群へのサービス提供が可能になると期待されています。

これらの戦略によって、これまで進めてきたM&Aや製品開発をプラットフォームで一つにつなげることで、私たちはお客様のビジネス変革をトータルに支援していくことのできる「課題提起型デジタルカンパニー」を目指していきます。

コニカミノルタ流エッジIoTプラットフォーム・パートナー戦略

当社を支える高収益な事業へ。バイオヘルスケア分野に注力

もう一つ、当社が新規事業として位置づけているのが、バイオヘルスケア事業です。現在、高齢化の進展による医療費の高騰が社会問題となっていますが、とりわけ大きな課題となっているのが、効果が見られない投薬や、患者様を苦しめる強い副作用です。そこで、今、世界中で注目を集めているのが、プレシジョン・メディシンです。プレシジョン・メディシンとは、個々人の細胞における遺伝子発現やタンパク質などの特性を分子レベルで判別することで個々の患者を精密に層別化(グループ化)し、患者特性に応じた適切な投薬、治療、予防を可能にする医療です。患者様に対する投薬や治療の有効性向上だけでなく、製薬企業の新薬開発の成功率向上にも寄与し、膨張する国民医療費削減の切り札として世界中で注目されています。

そこで昨年、当社では、「タンパク質高感度定量検出技術(High Sensitive Tissue Testing=HSTT)」という、がん細胞に発現しているタンパク質の数や位置をデジタル化し、分子レベルでの高感度な解析を可能にする技術を確立し、プレシジョン・メディシンの事業化に着手しました。

そして今年の7月には、株式会社産業革新機構(INCJ)と共同で、米国の遺伝子検査ビジネスを展開するAmbry Genetics社(以下、AG社)の買収を発表し、プレシジョン・メディシン分野に本格参入しました。AG社は、「遺伝子検査サービス」を専業とする企業であり、最先端の遺伝子診断技術を保有する米国の遺伝子検査市場におけるリーダー的存在です。この買収により、当社は、遺伝子検査とHSTTの細胞診断という、プレシジョン・メディシンに不可欠な2つのコア技術を保有する、世界でも稀有な企業となります。

こうした大きな社会課題の解決に真っ向から取り組むことで、当社のヘルスケア事業を、社会にとってはなくてはならない、高収益な事業へと成長させていきたいと考えています。まずは、5年後の2021年度には、売上高1,000億円、営業利益200億円を目指します。そして将来的には、日本、米国はもちろんアジアや欧州にも事業展開するグローバル・リーディング・カンパニーへと成長させていきます。

中長期的な企業価値向上に向けて

中長期の企業価値の向上には、あらゆる企業の能力を高めていく必要があると私は考えており、ESGを中心とした非財務側面についても、能力の向上に積極的に取り組んでいく方針です。それもESG側面でのリスクを抑制するといった消極的な捉え方ではなく、“世界のトップランナー”を目指した積極的な取り組みを進めたいと考えています。そのために昨年定めたのが「6つのマテリアリティ(重要課題)」です。この6つはどれも重視していますが、なかでも今後の事業展開のなかで特に重要になると考えているのが「環境」と「ソーシャルイノベーション」です。

気候変動をはじめ地球環境問題は、国際社会全体にとっての喫緊の課題となっています。当社では長期環境ビジョン「エコビジョン2050」を策定し、環境課題の解決と企業成長の両立を目指した取り組みを進めてきましたが、2017年度からは新たに「カーボンマイナス」というさらに意欲的な目標を掲げました。これは、お取引先やお客様、地域社会などさまざまなステークホルダーとの連携によって、2050年に自社によるCO2排出量を上回るCO2削減効果を実現していこうというものです。これにより、当社一社で取り組むよりもずっと大きな環境負荷の低減に貢献していきたいと考えています。

また、社会課題解決型のビジネス開発を推進していくために、「ソーシャルイノベーション」にも力を入れていきます。社会課題のなかでも、高齢化社会における介護やプライマリーケアの充実、バイオヘルスケア領域でのプレシジョン・メディシンの実現、オフィスにおける働き方改革、生産現場におけるモノづくりの革新、流通・小売における新たな業態開発などは、特に当社が力を発揮できる領域だと考えています。

この2つと並んで「ヒューマンキャピタル(人財)」「ダイバーシティ」についても、非常に重視しています。「課題解決型デジタルカンパニー」への進化における最後の鍵は「人財のトランスフォーム」であると考えており、変革の先頭に立ち、豊かな創造力を発揮して顧客価値を生み出していくことのできる人財を、世界各地に数多く生み出していきたいと考えています。それに加えて、社会の発展や社会課題の解決に役立つビジネスを、グループ全体としてさらに広げていくことで、従業員にとってよりやりがいのある仕事を創出し、一人ひとりの仕事に対するモチベーションを高めていきます。またダイバーシティの推進に関しては、私自らが取り組みを主導しており、働き方改革や、キャリアアップ制度など、組織的な制度や風土の改革によって、国籍や性別・年齢を超え、多様な従業員がポテンシャルと創造性を発揮できる環境を、引き続き整備していきます。

これらのマテリアリティに取り組むことで、グローバル企業としての競争力を強化するとともに、国連グローバル・コンパクトへの署名企業として、持続可能な社会の実現に向けてSDGsの達成にも貢献していきたいと考えています。

またガバナンスについても、これまでにもより実効性の高いガバナンスを追求してきましたが、取締役会での一層の戦略議論深耕や、中期経営計画と連動した役員報酬体系の導入など、“攻めのガバナンス”をキーワードに、さらに一段レベルアップさせたいと考えています。

中長期的な企業価値向上の実現に向けた6つのマテリアリティ

以上述べてきたように、新中期経営計画「SHINKA 2019」の実践を通じて、お客様企業とそこで働く人々の課題解決に貢献することは、社会貢献にもつながることであると私は確信しています。お客様の課題を先取りして提起し、ともに解を考え創出していくことでお客様のトランスフォームを支援し、お客様の不可欠のパートナーとなる。そうした活動を継続し、ビジネス社会、人間社会の進化にいつまでも寄与し続ける企業、それがコニカミノルタの目指す姿です。この新中期経営計画が完遂した時、コニカミノルタは、お客様だけでなく、社会にとってもなくてはならない存在になると私は考えています。

コニカミノルタ株式会社
代表執行役社長 兼 CEO
山名 昌衛