コニカミノルタ

アニュアルレポート2012

Giving Shape to Ideas

  • 財務分析
  • 連結貸借対照表
  • 連結損益計算書
  • 連結株主資本等変動計算書
  • 連結キャッシュ・フロー計算書

財務分析

事業環境

2011年3月に発生した東日本大震災、同7月以降のタイ洪水被害など、未曾有の災害により当社グループが関わる産業界においても、サプライチェーンが混乱し、調達および生産活動に対して直接・間接の影響を受けました。

内外のマクロ経済については、債務問題を抱えて先行きの不透明感を増す欧州経済の世界経済へ与える影響が懸念された中で、米国経済は比較的堅調に推移し、中国など新興国経済も総じて高い成長率を維持しました。一方、日本国内の経済は、東日本大震災やタイ洪水の影響、さらには著しい円高の進行により、とりわけ輸出比率の高い製造業にとって厳しい状況が続きました。

営業概況

売上高
グラフ

東日本大震災、タイ洪水、欧州景気の低迷などの影響の中で、新製品の投入、大口顧客の獲得、新興市場での販売力強化など拡販に努めましたが、著しい円高の進行により、為替換算による297億円の減収影響を受けた結果、当期の売上高は、前期比100億円(1.3%)減の7,678億円となりました。

営業利益
グラフ

売上総利益は、前期比7億円(0.2%)増の3,553億円となりました。売上高の減少、震災やタイ洪水の影響による調達コスト増や受注停滞があったものの、主力製品の販売増、全社的なコストダウンや生産性改善への取り組みなどにより、売上総利益率は46.3%となり、前期より0.7ポイント改善しました。

販売費及び一般管理費は、積極的なM&Aによる増加の一方で、徹底した削減に努めた結果、前期比4億円の増加に留まりました。

以上の結果、営業利益は、前期比3億円(0.8%)増の403億円となりました。為替換算による減少分74億円の影響を除くと、実質的な営業利益は前期比19.3%の増益となります。

税金等調整前当期純利益

営業外損益は、為替差損の減少11億円などの影響により、55億円の損失(前期は68億円の損失)となりました。特別損益は、在外子会社清算に伴う為替換算調整勘定取崩益37億円、出資金売却益6億円などがあったものの、投資有価証券評価損27億円、固定資産除売却損18億円、事業構造改善費用11億円、減損損失8億円などがあった結果、19億円の損失(前期は50億円の損失)となりました。

以上の結果、税金等調整前当期純利益は、前期比47億円(16.7%)増の328億円となりました。

当期純利益
グラフ

当期純利益は、法人税率変更等に伴う税負担の増加33億円などを織り込み、前期比54億円(21.1%)減の204億円となりました。

セグメント別概況

情報機器事業

オフィス分野では、当期における「bizhub(ビズハブ)」シリーズのA3MFPモノクロ機の販売台数は前期並みの水準に留まりましたが、カラー機は日米欧アジア他の全地域で販売台数を伸ばし、A3MFP全体でも前期を上回りました。当分野の成長戦略として、お客様に最適なプリント環境を提供することを目的としたOPSコンセプトの販売体制をグローバル規模で強化した結果、欧州の大手自動車メーカーBMW社(本社:ドイツ)や米国航空宇宙局(NASA)などから事務機器運用管理について複数年契約を受託するなど、グローバルに事業展開する大口顧客向けの販売実績は着実に積み上がってきました。さらに、持続的な成長と将来を見据えたサービス事業への業容拡大の核となるITサービス力強化を目的として、ITサービスプロバイダーの買収を進めました。欧州では2011年4月にKoneo社(本社:スウェーデン)を、また米国では2010年12月に当社グループの傘下に入ったAll Covered社(本社:カリフォルニア州)のもとでTechcare社(本社:イリノイ州)など計9社を相次いで買収し(うち2社は2012年4月1日が効力発生日)、欧米市場におけるITサービス網の拡充に努めました。また、2012年1月からシリーズの最上位機として「bizhub C754/C654」のカラー機2機種を発売し、当分野における商品競争力の一層の強化を図りました。

プロダクションプリント分野では、2010年秋から販売を開始した新シリーズ「bizhub PRESS(ビズハブプレス)C8000/C7000/C6000」のカラー機3機種が企業内印刷やデジタル商業印刷向けに好調に推移し、当期のカラー機販売台数は日米欧アジア他の全地域でいずれも前期を大きく上回りました。モノクロ機も海外市場を中心に前期を上回る伸びとなり、当分野全体の販売は当期を通して好調に推移しました。

これらの結果、情報機器事業の売上高は、5,475億円(前期比1.5%増)となりました。円高に伴う為替換算による減収影響244億円を除いたベースでは約6.0%の増収となります。営業利益は、394億円(前期比5.4%増)となりました。当期は、震災やタイ洪水等の大規模な自然災害の影響を受ける中で、一部部材の調達難を抱えながらも、開発、調達、生産各部門の連携によって販売への影響を最小化することに努め、円高の中にあっても前期比で増収増益となりました。

オプト事業

ディスプレイ材料分野では、2011年夏以降、液晶業界全般に調整色が強まる中、年初から新製品を投入した視野角拡大用VA-TACフィルムの販売が韓国および台湾向けに好調に推移しました。また当社の強みとする薄膜タイプのTACフィルムも順調に採用実績があがり、これらを合わせた当期のTACフィルム全体の販売数量は前期を上回りました。

メモリー分野では、HDD用ガラス基板は上半期にはPCメーカーでの生産調整、下半期には一部のHDDセットメーカーがタイ洪水に被災した影響を受け、当期の販売数量は前期並みの水準に留まりました。光ディスク用ピックアップレンズはブルーレイディスク用、DVD用とも市況は好転せず、当期の販売数量は前期を下回りました。

画像入出力コンポーネント分野では、回復傾向にあったデジタルカメラ・ビデオカメラ向けレンズユニットは、タイ洪水の影響を受けた一部顧客からの受注が停滞し、当期の販売数量は前期を僅かに上回る水準に留まりました。一方、カメラ付携帯電話用光学ユニットは、上半期は低調であったものの下半期からの採用機種の拡大に伴い、販売数量は前期を上回る水準を確保しました。

これらの結果、オプト事業の売上高は1,243億円(前期比4.3%減)となりました。営業利益は、一部製品での売上減少や価格低下による減益影響を主力製品の販売増やコスト低減、経費削減などでカバーし、140億円(前期比9.6%増)となりました。

ヘルスケア事業

医療用デジタル入力機器のカセッテ型DR(デジタルラジオグラフィー)「AeroDR(エアロディーアール)」および卓上型CR(コンピューテッドラジオグラフィー)「REGIUS Σ(レジウスシグマ)」の新製品2機種を上半期から発売、下半期には回診車向けDRなどラインアップを拡充し、国内外の医療施設に向けて販売エリアを順次拡大してきました。病院市場では「AeroDR」を、診療所市場では「REGIUS Σ」を中心に拡販に努め、当期におけるデジタル機器の販売台数は前期を上回りました。

一方、フィルム製品は、中国を中心とした新興国市場での拡販に努めましたが、日本をはじめとする先進国市場でのフィルムレス化の流れに歯止めが掛からず、当期の販売数量は前期を下回りました。

これらの結果に円高の影響や販売価格低下も加わり、ヘルスケア事業の売上高は730億円(前期比14.1%減)となりました。営業利益は、売上減少および銀価格の高止まりによる減益がありましたが、コスト低減や経費削減などを実施し、0.9億円(前期比46.9%減)となりました。

キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フロー:
グラフ

税金等調整前当期純利益328億円、減価償却費492億円、のれん償却額88億円などの増加と、運転資本の増加49億円、法人税等の支払い61億円などとの相殺により、営業活動によるキャッシュ・フローは723億円のプラス(前期は679億円のプラス)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フロー:

情報機器事業における新製品のための金型投資およびオプト事業における設備投資を中心とした有形固定資産の取得による支出291億円のほか、情報機器事業においてITサービスおよび直販の強化を目的に欧州や米国における買収をすすめたことによる、子会社株式取得による支出55億円および事業譲受による支出23億円などにより、投資活動によるキャッシュ・フローは427億円のマイナス(前期は447億円のマイナス)となりました。

この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは296億円のプラス(同232億円のプラス)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フロー:

社債の発行による収入400億円および長期借入金の純増加額124億円と、短期借入金の減少額164億円、配当金の支払い79億円などの相殺により、財務活動によるキャッシュ・フローは263億円のプラス(前期は129億円のマイナス)となりました。

設備投資および減価償却

グラフ

当期の設備投資の総額は、前期比89億円(20.8%)減の340億円となりました。事業別では、情報機器事業177億円、オプト事業66億円、ヘルスケア事業23億円、その他72億円となりました。当期に実施した主な設備投資は、情報機器事業における新製品の金型投資やオプト事業における生産能力増強などです。減価償却費については生産設備の償却が進んだことなどにより、前期比58億円(10.7%)減の492億円となりました。

研究開発

グラフ

研究開発費は、情報機器事業や将来の成長分野へ投下した結果、前期比0.9億円(0.1%)減の725億円となりました。なお、事業別では、情報機器事業441億円(前期比2.4%増)、オプト事業102億円(同1.1%減)、ヘルスケア事業49億円(同31.5%減)、その他131億円(同10.8%増)となりました。

財政状態

資産の部
グラフ

流動資産は、主に、現金及び預金の増加27億円、有価証券の増加540億円、受取手形及び売掛金の増加108億円があった一方で、繰延税金資産が102億円減少したことから、前期末比640億円(12.8%)増加の5,659億円となりました。

固定資産は、有形固定資産が償却が進んだことにより前期末比117億円減少の1,789億円となりました。無形固定資産は情報機器事業における企業買収によりのれんなどが増加した一方で、全体として償却が進んだ結果、前期末比10億円減の873億円となりました。

投資その他の資産は、投資有価証券が株価下落に伴う時価評価などにより前期末比18億円減少した一方で、繰延税金資産が前期末に比べて78億円増加したことなどから、52億円増加の697億円となりました。

これらの結果、当期末の総資産は、前期末比565億円(6.7%)増加し、9,020億円となりました。

負債の部
グラフ

流動負債は、支払手形及び買掛金が134億円増加した一方で、借入金が296億円減少した結果、前期末比135億円の減少となりました。

固定負債は、400億円の社債発行や長期借入金の増加249億円などにより、前期末比641億円の増加となりました。

以上の結果、当期末の負債は、前期末比505億円(12.1%)増加の4,670億円となりました。

なお、当期末の有利子負債は、前期末比353億円増加の2,279億円となっています。

純資産の部
グラフ

利益剰余金は、当期純利益の計上204億円、配当金の支払い79億円などにより、前期末比113億円増加の2,228億円となりました。一方、為替換算調整勘定は、円高の進行に伴い前期末に比べて60億円減少しました。

以上の結果、当期末の純資産は、前期末比59億円(1.4%)増加の4,349億円となりました。

なお、当期末の自己資本比率は、前期末比2.5ポイント低下し、48.1%となりました。

配当政策

配当に関する基本方針
グラフ

当社では、株主の皆様への利益還元を経営の重要課題と捉えており、連結業績および成長分野への戦略投資の推進などを総合的に勘案しつつ、株主の皆様へ継続的に利益還元することを基本としています。具体的な配当の指標としては、連結配当性向25%以上を中長期的な目標としています。自己株式の取得については、当社の財務状況や株価の推移なども勘案しつつ、利益還元策の一つとして適切に判断していきます。

当期の配当と今期(2013年3月期)の予定

当期は、市場競争の激化や円高の進行、顧客における生産調整や二度にわたる大規模災害の発生によりサプライチェーンに関わる影響を受け、売上面では厳しい状況が続きました。しかしながら、利益面では好採算の主力製品の販売増や徹底した費用管理に努めた結果、営業利益以下、当期純利益まで見通しを概ね達成することができました。これらの状況を踏まえ、期末配当は予定通り1株当たり7.5円の配当とさせていただきました。第2四半期末配当と合わせた年間配当金は、1株当たり15円となります。

今期の配当については、引き続き予断を許さぬ状況にある経営環境にありますが、今期業績予想の達成を前提として、第2四半期末配当、期末配当ともに1株当たり7.5円、年間配当1株当たり15円を予定しています。

今期(2013年3月期)の見通し

当社グループを取り巻く世界の経済情勢は、財政問題を抱える欧州経済は依然として先行きに不透明感が強く、米国経済は緩やかな成長が期待されるものの暫くは一進一退の状況が続くものと予想されます。中国やインドなどアジアを中心とした新興国では成長の鈍化が見込まれるものの、引き続き先進国を上回る高い経済成長率を維持するものと思われます。また、日本国内の景気は震災からの復興需要が下支えし、回復に向かうことが見込まれます。

情報機器事業では、プロダクションプリンティング機の需要が国内外市場ともに引き続き需要拡大するものと見込まれます。また、MFPは、新興国市場での需要成長が牽引するとともに、先進国市場においてもOPS展開を梃子にしてグローバルレベルでの大口顧客向け需要が拡大するものと予想しています。

産業用材料・機器事業(注)では、液晶テレビなどデジタル家電製品は長引いた在庫調整も解消に向かい、総じて需要回復が見込まれます。ヘルスケア事業では、病院市場やクリニック市場などを中心にカセッテ型DR機や小型CR機への需要拡大が持続するものと見込まれます。

このような状況に鑑み、今期の業績見通しについては、以下のように予想しています。

(注) 当期において、セグメント情報における報告セグメントは、「情報機器事業」、「オプト事業」、「ヘルスケア事業」の3区分としていましたが、2012年4月のグループ内組織再編に伴い、今期(2013年3月期)より「情報機器事業」、「産業用材料・機器事業」、「ヘルスケア事業」の3区分に変更することとします。
2012年度業績予想(2012年7月27日現在) (億円)
売上高 8,000
営業利益 480
営業利益率 6.0%
のれん代償却額 88
のれん代償却前営業利益 568
のれん代償却前営業利益率 7.1%
当期純利益 220
 
設備投資 500
減価償却費 550
研究開発費 730
フリー・キャッシュ・フロー -100
営業CF-設備投資CF 300

なお、為替レートについては、USドル:80円、ユーロ:100円を前提としています。