パルスオキシメータ知恵袋 基礎編

パルスオキシメータに関する生体の知識

血中酸素飽和度で何が分かるの?


大気に含まれた酸素は呼吸によって肺に吸い込まれます。肺は約3億の小さな肺胞からできており、肺胞は毛細血管に取り囲まれています。肺胞壁や毛細血管壁は大変薄い構造のために、肺胞に入った酸素は瞬時に肺胞から毛細血管内へと移行します(成人では安静時に0.25秒)。血管内に拡散した酸素の多くは赤血球内のヘモグロビンと結合し、一部は血漿に溶解します。酸素を多く含んだ血液(動脈血)は肺静脈から心臓の左房・左室を経て、全身の各臓器に運ばれ、各臓器の細胞に供給されます。輸送される酸素量は、主にヘモグロビンと酸素の結合の程度(肺の因子)・ヘモグロビン濃度(貧血の因子)・心拍出量(心臓の因子)の3つで決定されます。

酸素飽和度は体に輸送される酸素量の指標の一つで、特に肺に関係して体に充分な酸素を供給できているかの指標となります。

また一方で脈拍も測定できますが、心拍出量は1回あたりに拍出する量と時間あたりに拍出する回数(=脈拍)ですので、心臓因子の一部指標もパルスオキシメータで掴めることになります。

酸素は体をどのように流れるの?


我々が生命を維持するためには酸素が必要です。空気中の酸素は呼吸によって肺に取り込まれ、肺の毛細血管を経由し全身に運ばれます。

  • 酸素が肺内に入り、炭酸ガス(二酸化炭素)が肺から大気中へ排出される過程を換気と呼びます。
  • 吸入された空気は上気道から末梢気道を通り肺へと分配されていきますが、これを分布と呼びます

肺は肺胞と呼ばれる組織が集まって形成されていますが、肺胞内から肺胞膜を介して肺毛細血管へ酸素が入り、また逆に炭酸ガスが肺毛細血管内から肺胞内に出て行く過程を拡散と呼びます。

酸素が血液中を運ばれる仕組みを教えて?


血液の大きな役割のひとつが、酸素を肺から受け取って組織へと運び、組織からは二酸化炭素を受け取ってこれを肺に運ぶことです。

気体の液体中(血液中)に溶ける量はその気体の圧力(分圧)に比例します。また気体の溶けやすさは気体ごとに違います。酸素は1mmHg につき血液100mlで0.3ml溶けますが、これは二酸化炭素の溶けやすさの1/20にしか過ぎません。酸素が血液に溶ける能力だけでは充分な酸素を運搬することができません。そこで酸素の運搬役としてヘモグロビン(Hb)が登場します。

ヘモグロビンは1分子当たり4つの酸素分子を結合する能力があります。ヘモグロビン1g には酸素 1.39mlが結合できます。血液100mlには約15gのヘモグロビンが存在していますので、血液 100mlで20.4mlの酸素がヘモグロビンに含まれることになります。

酸素飽和度って何?

酸素と結合したヘモグロビンを酸化ヘモグロビン(HbO2)、酸素と結合していないヘモグロビンを還元ヘモグロビン(Hb)と呼びます。
酸素飽和度とは血液中のヘモグロビンのうちどれだけが酸素と結びついているかを示すもので、下記のような数式で定義されています。

ヘモグロビンには酸素が4個までつきますので、酸化ヘモグロビンといっても酸素が1個、2個、3個、4個の組み合わせがありそうです。しかし、ヘモグロビンにとっては、酸素がついていないか、あるいは酸素が4個ともついている状態が安定しており1個、2個、3個しかついていない組み合わせは非常に不安定なのです。そのため実際には、酸素が一つもついていない還元ヘモグロビン(Hb)の状態か、酸素が4個ともついている状態での酸化ヘモグロビンとなります。酸素飽和度は SaO2 と SpO2 があります。SaO2 は動脈血を採血して測った酸素飽和度、SpO2 はパルスオキシメータで測った酸素飽和度で、それぞれ動脈血酸素飽和度、経皮的酸素飽和度ともいいます。

PaO2と SpO2の関係はいつでも同じなの?


血液中に溶ける酸素の量が酸素分圧に比例しますが、ヘモグロビンに結合する酸素の量も酸素分圧が高くなれば増えていきます。酸素分圧を PO2と表記しますが、動脈血の酸素分圧を特に PaO2と表記します。しかしヘモグロビンに結合する酸素の量は溶存酸素と異なり比例関係ではなく図にすると S字上の曲線を描きます。この図を酸素解離曲線と言います。

酸素解離曲線は「標準酸素解離曲線」と呼ばれるもので、体温37℃、pH7.4の条件のものです。条件が変わると右にずれたり左にずれたりします。
体温が下がる、pH が上がると左にずれ、体温が上がる、pHが下がると右にずれます。

右図の pH低下の場合の曲線ですとPaO2 80 mmHg(Torr)で酸素飽和度80%となります。これでは充分に酸素が運搬できないと思われますが、毛細血管部分40mmHg(Torr)では酸素飽和度は 30%に下がります。すなわち組織には80%-30%=50%の酸素が放出されます。標準時 では逆に 98%-75%=23%でしたので標準よりもずっと多くの酸素が供給されることになります。

mmHg とTorrについて

1気圧は 760 mmHgですが、これは1気圧の時にできる水銀柱の高さが約760mmだからで、 この「Hg」は水銀のことです。

一方、世界ではじめて水銀を利用して大気圧を測定したのがガリレオの弟子トリチェリ(Torrichelli)で、彼にちなんで圧の単位を Torrで表すようになってきました。mmHgとTorrは基本的に同じで、大気圧は 760 mmHg =760 Torr です。PaO2 は最近では Torrが使われています。

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