KONICA MINOLTA

KAGUYAプロジェクト

MICHICAKE by KAGUYA PROJECT

MICHICAKEは、PMS(月経前症候群)のお悩みを
サイエンスとセルフモニタリングの視点からサポートするメディアです。

みなさん、こんにちは。
私は京都大学医学部附属病院の産婦人科で、さまざまなライフステージの女性特有の病気や症状に対応する外来診療を担当しています。女性特有のお困りごとには生理痛、更年期障害、その他いろいろありますが、私は20年以上の臨床経験のなかで最近特に「月経前症候群(PMS)」の問題の大きさを痛感するようになりました。

月経前症候群(PMS)は見えにくい、とらえにくい病気です。「普通」と「異常・病的」との間の線引きも実際は難しいものです。ココロにもカラダにも症状があらわれるので、どこで治療をすればよいのか、あるいはそもそも治療できるものかどうかさえ、わかりにくいものです。産婦人科医師たちは良い治療法(くすり)があることを知っていますし、私も「PMSは気付きさえすれば比較的簡単に治療できるもの」と長く思っていました。しかし私は7年前から大学病院において複雑な病状の患者さんたちに向き合うことになり、一般に知られているくすりだけでは十分には改善しなかった方や長年(10年以上も!)重いココロの症状に苦しんできた方がたくさんおられるのだということに気付きました。既に他の医療機関で治療を受けても改善しなかったケースでは「次の手」を探ることは必ずしも容易ではなく、私は自分の力の不十分さを思い知ることもありました。

ここから私にできることは何か・・・患者さんをより正確に理解するために「本人のお話をじっくり聞く」ことが何よりも必要だ、治療が容易ではないケースではなおさら重要だと考えました。どんなときにカラダはどのようになっていて、そのときのココロはどのような状態で、そういうときの生活はどうなっているか。そのお話に耳を傾けることをPMS診療の中心軸にしてPMSの説明と生活指導をし、本人と相談しながらくすりの治療も行いました。

私が診察の度に「ココロ」と「カラダ」と「生活」のそれぞれにおいて同時に何が起こっているかを患者さんに尋ねるものですから、患者さんも真剣に答えてくださいました。患者さんたちは私の診療にとても協力的で、中には前回の診察日以降の様子をスムーズに説明できるようにメモを用意して(しゃべることを決めて!)診察室に来てくださる方もありました。よほど症状がつらいときはそのような「振り返り」も難しいのですが、くすりの効果も加わってココロとカラダのしんどさが幾分か軽くなるとやりやすくなっていきます。1~3ヵ月では一進一退と改善がないように見えても、1年、2年の単位で継続的に診療していますと、くすりの効果と生活面での試行錯誤の成果があいまって随分元気になられ、患者さんと一緒に喜び合うこともしばしばありました。PMSに向き合う過程で、「生活習慣の改善」以上に、生き方・考え方の転換を果たしたり仕事の転機を迎えられたりした方もおられました。

このようにして私は、患者さんたちの言葉や姿からたくさんの気付きをいただき、PMSの治療薬の飲みやすさや効き目についてもそれを正直に伝えてくださる患者さんたちから学びました。私のPMS診療スタイルは患者さんたちとの協働作業で築いたものと言えます。

「もっと早く今の治療に出会えていたら・・・以前はどうすればよいか、どこに行けばよいかもわからなかった。」
「私以外にも悩んでいる人はたくさんいると思いますよ。」
「他のPMSの人はどのような生活をしているのだろうか。同じようにつらい思いをしている人と話をしてみたい。」
このような声を多くのPMSの患者さんたちからお聞きしました。

診察室で患者さんを待っているだけではそのような声に応えることができない・・・
ココロとカラダと生活をつながったものとして振り返るライフスタイルの提案が、PMSで苦しむ人の助けになるのではないか・・・
そして、必要な時に適切に専門家につながるための道しるべを提供したい・・・

PMSと向き合い、ココロとカラダが喜ぶライフスタイルをみなさんと一緒に考えていく、支え合っていく。そのようなプロジェクト、心を込めて育てていきたいと思っています。

平成29年3月7日
江川美保

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