太陽電池 計測カレッジ

ソーラーシミュレーターと分光放射計

国際規格では太陽電池評価用の基準太陽光として、AM1.5Gを定義しています。
しかし、日本でAM1.5Gの基準太陽光を観測できるのは年間に1~2日しかなく、現実の太陽での測定は困難です。そのため、通常は太陽の代わりに基準太陽光と似た分光スペクトルを持つソーラーシミュレーターが太陽電池の照射光源として使用されています。
分光放射計はソーラーシミュレーターのスペクトルを管理するツールとして使用されています。
このセクションでは、ソーラーシミュレーターと分光放射計についてご紹介します。

擬似太陽光

太陽光のスペクトルは大気圏外では図1に示すような形状ですが、地表に到達するまでに大気中の空気分子との散乱、水蒸気や酸素などの吸収等により変化します。また図3に示すように、太陽からの入射角度によりスペクトルは異なります。IEC規格では太陽電池評価用の基準太陽光として、宇宙用のAM0、赤道直下用のAM1.0、温帯地域用のAM1.5Gを定義しています(IEC 60904-3)。日本においても、AM1.5Gの基準太陽光、1000W/m2の放射照度、温度25℃で測定することが規格化されています(JIS C8913等)。
しかし、日本で基準太陽光を使用しての測定は困難です。そのため、擬似的な太陽光として基準太陽光と似た分光スペクトルを持つソーラーシミュレーターが太陽電池の照射光源として使用されています。

擬似太陽光

ソーラーシミュレーターは光源にキセノンランプを用いた1光源式が知られています。この光源に特殊な光学フィルターを組み合わせることによってAM1.5Gに近い分光スペクトルを持つ、ソーラーシミュレーターになります。

国際規格

ソーラーシミュレーターは太陽電池を評価する上で非常に重要な装置であるため、精度についての規格が決められており、それによってランク分けがされています。(表1)
JIS規格は国際規格に準じて規定されており、太陽電池の種類によって求められる精度も異なるため、複数の規格があり、ソーラーシミュレーターは「等級AAA」と表示されることがあります。これは、以下三項目において全てAランクであることを表しています。(JIS C8942においてはMS、MAがあります)

  • 放射照度(w/m2)場所むら(%)
  • 放射照度時間変動率(%)
  • スペクトル合致度(AM1.5Gに対する合致度)

表1:ソーラーシミュレーターのランク

項目 規定内容 ランク分け内容 【%】
JIS C 8912 IEC 60904-9 / ASTM E927-05
Class Class
A B C A B C
スペクトル合致度 各規格で設定されている波長帯毎に評価し、全ての波長帯で該当する等級の合致度を満足しているか判定 75

125
60

140
40

200
75

125
60

140
40

200
時間変動率 測定時間内の放射照度の変動率を測定 <±2 <±3 <±10 <±2 <±5 <±10
放射照度の場所ムラ 有効照射面積の4%以下を有する受光器にて、17点以上の放射照度を測定 <±2 <±3 <±10 <±2 <±3 <±10

また、PV-2030+では、シリコン系以外の太陽電池も増えていくことをロードマップとして示されておりますように、シリコン系以外の太陽電池についてもソーラーシミュレーターの要求仕様が規定されており、シリコン系よりも厳しい規定となっております。(表2)

JIS C 8912 / IEC-60904-9 (結晶系太陽電池セル・モジュール測定用)
JIS C 8933 (アモルファス太陽電池測定用)
JIS C 8942 (多接合太陽電池測定用)
ASTM E927-05 (Direct AM1.5、Global AM1.5)

表2:太陽電池用ソーラシミュレーター JIS要求事項

結晶系太陽電池 C8912 アモルファス系太陽電池 C8933
/色素増感型太陽電池 OITDA-PV01
多接合系太陽電池C8942 CIGS太陽電池太陽電池
TS C0050
波長帯域(nm) 相対エネルギー分布 波長帯域(nm) 相対エネルギー分布 波長帯域(nm) 相対エネルギー分布 波長帯域(nm) 相対エネルギー分布
未定義 350~400 6.2% 350~400 4.1% 未定義
400~500 18.4% 400~450 11.8% 400~450 7.8% 400~500 16.8%
450~500 14.9% 450~500 9.8%
500~600 19.9% 500~550 14.6% 500~550 9.7% 500~600 18.1%
550~600 14.3% 550~600 9.4%
600~700 18.4% 600~650 13.8% 600~650 9.1% 600~700 16.7%
650~700 12.9% 650~700 8.5%
700~800 14.9% 700~750 11.5% 700~750 7.6% 700~800 13.6%
未定義 750~800 6.7%
800~900 12.5% 800~850 6.2% 800~900 11.3%
850~900 5.8%
900~1100 15.9% 900~950 3.4% 900~1100 14.5%
950~1000 3.8%
未定義 1000~1050 4.4%
1050~1100 3.8%
未定義 1100~1300 9.0%
合計 100%   100%   100%   100%

また、JIS規格ではソーラーシミュレーターの管理について規定しております。(表3)
管理方法においては、測定器を用いて管理することが出来ます。

表3:ソーラーシミュレーター管理項目(JIS8912/8933/8942)の記載内容

項目 測定間隔 測定方法例
放射照度の場所ムラ 月1回以上 基準セルを移動させながら短絡電流を測定
時間変動率 月1回以上 基準セルの短絡電流を連続測定
スペクトル合致度 6か月に1回以上 分光放射計で測定

分光放射計を利用したスペクトル合致度測定

合致度判定

前項で紹介しましたが、JISを含めた国際規格は、太陽電池の測定に際してAM1.5Gの基準太陽光の分光放射照度に近似したソーラーシミュレーターで測定することを要求しております。この近似度(=合致度)を評価する指標として下記のスペクトル合致式を定義しています。

合致度判定

Mi: スペクトル合致度
E0(λ): 波長λでの基準太陽光の分光放射照度(W/m2/nm)
Es(λ): 波長λでのソーラーシミュレーターの分光放射照度(W/m2/nm)

国際規格では、測定する太陽電池の種類が異なれば、太陽電池の分光感度が異なる事、及び図3に示すように一般にソーラーシミュレーターと基準太陽光の差が750nm以降で大きく異なる事を考慮して太陽電池の種類毎に相対エネルギー分布を変えています。(表2)
この相対エネルギー分布から算出されます、基準太陽光の分光放射照度とソーラーシミュレーターの分光放射照度を比較します。表1で示されている判定基準でソーラーシミュレーターの等級が決定されます。

このようにソーラーシミュレーターの等級設定、及び管理、スペクトル合致度判定に分光放射計が一般的に用いられております。(表3)

分光感度が広い結晶系太陽電池では計算波長帯域を100もしくは200nm毎ですが、分光感度が狭いアモルファス系、多接合系、及び色素増感型(DSC)では50nm毎になっています。
これはアモルファス/多接合/DSC系の太陽電池を測定する場合、より基準太陽光の分光放射照度に一致したソーラーシミュレーターで測定する事が必要になります。一方、分光感度が結晶系よりも広いCIGS系についても、合致度が合っていることが求められております。

ソーラーシミュレーターの適用規格がスペクトル合致度に及ぼす影響について

2社(A社、B社)のスペクトル合致度A級(JIS C8912方式)1光源式ソーラーシミュレーター(キセノンランプ型)のスペクトル合致度を、分光放射計を用いて評価した結果を表4、表5に示します。
この表のように、JIS C8912ではA級とされるソーラーシミュレーターが、C8942ではC級となってしまうことが分ります。これは1光源式のソーラーシミュレーターでは800nm以上で見られる、キセノンランプの輝線がJIS C8942で規定されている相対エネルギー分布の要求事項を満たさないことに起因します。(図3)
このため、多接合型太陽電池をこのスペクトル合致度がAランクを満たさないソーラーシミュレーターで測定すると、太陽電池に照射するエネルギー量が基準太陽光と比べて誤差が大きくなります。したがって、変換効率の測定等、高精度のデータを得ることが難しくなります。
ソーラーシミュレーターの分光放射照度スペクトルが基準太陽光との乖離幅を小さくするには、基準太陽光と一致度の高い2光源式のソーラーシミュレーターを使用することが理想です。

I-V曲線概念図 図3:基準太陽光とソーラーシミュレーターの分光放射照度

表4:A社、B社のC8912方式によるスペクトル合致度判定

  エネルギー分布率 スペクトル合致度
A社 B社 A社 B社
400~500 18.3% 17.3% 0.99 0.94
500~600 21.5% 19.2% 1.08 0.96
600~700 19.4% 17.0% 1.05 0.93
700~800 15.5% 14.7% 1.04 0.99
800~900 12.2% 15.3% 0.98 1.22
900~1100 13.1% 16.5% 0.82 1.04
スペクトル合致度 0.82~108 0.92~1.23
等級 A B

表5:A社、B社のC8933/C8942方式によるスペクトル合致度判定

判定方式 C8933 C8942
A社 B社 A社 B社
350~400 0.90 1.08 1.03 1.13
400~450 0.90 0.98 0.89 0.88
450~500 0.99 0.98 1.08 0.98
500~550 0.97 0.94 1.06 0.94
550~600 1.07 1.04 1.1 0.98
600~650 1.00 0.94 1.06 0.92
650~700 1.04 1.00 1.05 0.92
700~750 1.09 1.09 1.08 0.99
750~800 未定義 0.99 0.96
800~850 1.25 1.73
850~900 0.67 0.66
900~950 0.99 0.97
950~1000 1.11 1.2
1000~1050 0.49 0.68
1050~1100 0.8 1.34
スペクトル合致度 0.90~1.07 0.94~1.09 0.49~1.25 0.661.73
等級 A A C C
  • 擬似太陽光のソーラーシミュレーターの仕様は太陽電池毎に規格で定められています。
  • 分光放射計はソーラーシミュレーターを管理する有用な測定ツールです。
  • スペクトル合致度を高近似にするには、2光源式ソーラーシミュレーターの利用が有効です。

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