コニカミノルタ

ヘルスケア

Senciafinder(センシアファインダー)の使用経験
日本鋼管福山病院 健康管理科
今田 貴之 先生

はじめに

日本鋼管福山病院は1971年5月、現在地に製鉄所の保健センターとして開設されました。以来、製鉄所従業員の健康管理業務を行い、企業・病院の発展とともに業務範囲が拡大してきました。現在は製鉄所の従業員約4,300名、および関連企業約7,200名の従業員の健康管理を行っています。日本鋼管福山病院では、2017年2月にコニカミノルタ社の画像処理プロセッサーSenciafiderを導入し、経時差分処理の運用を開始しましたのでその使用経験を紹介します。

お話を伺った先生

日本鋼管福山病院 健康管理科
今田 貴之 先生

経時差分処理とは

胸部X線撮影は簡便かつ安価であり、患者に対する侵襲も少ないため、集団検診をはじめ、胸部疾患の一次検査として広く行われています。しかし、得られる情報量は読影者の能力に大きく依存し、十分に読影するためには相当の知識と経験を必要とします。コンピュータによる画像解析の結果を医師に示すことで、その診断を支援するコンピュータ支援診断(computer-aided diagnosis:CAD)があります。CADを利用することにより、経験の浅い医師も、経験豊富な医師と同程度の読影能を示しうる可能性も示されてきています(参考文献:1、2)。

経時差分処理は、その胸部単純X線写真の利用価値を最大限に引き出すCADと言われています(参考文献:3、4)。経時差分処理とは、同一被験者の撮影時期の異なる2枚の胸部正面像から差分画像を生成することで変化を可視化し、比較読影の支援ツールです。本処理は、まず現在画像と過去画像の2画像間を比較して、局所的に現在画像にマッチングするように、過去画像を変形する、ワーピング処理を行います。その後、現在画像から過去画像を差分することにより、経時差分画像が生成されます。2画像間の変化のみを差分画像として表現することにより、肋骨などの正常構造物や変化がない陳旧性病変の陰影を抑制し、新しく出現した陰影や病変の活動性をより明瞭にすることが可能となります。

これまでの研究では、胸部単純X線写真を用いた肺結節の描出における経時差分画像の有用性が多く報告されています(参考文献:3-6)。肺結節の検出についての読影実験では、診断能力を示すAz値が経時差分画像を利用することにより、平均0.873から平均0.969まで有意に改善しており、経験年数を問わず、研修医でも読影専門医でも有用であり、特に研修医でより正診率の向上が認められています(参考文献:5)。また経時差分画像が追加されることにより1画像多く読影することになるため、読影時間の延長が懸念されましたが、読影時間の比較実験では正常例・異常例ともに読影時間は短縮し、特に正常例では読影時間は約半分となる結果であり、検診施設などの正常画像の多い読影環境では有用と考えられます(参考文献:7)。

導入の経緯

肺癌は臓器別癌患者死亡率1位であり、死亡者数は年々増え続けています。初期の肺癌は、胸部単純X線写真上では小結節や限局性すりガラス影として認められることが多く、小病変の検出および評価には、経験を積んだ読影医でも容易とは言えません。
また、平成16年新医師臨床研修制度が始まると医師の偏在が起こり、地方では医師不足・高齢化の問題が生じ、当院では検診の読影業務を勤務時間外で対応しており、医師の過重労働、結果返却の遅延が生じていました。
これらの問題が少しでも解決するよう、診断精度の向上と読影時間の短縮に有効とされている画像処理技術の「経時差分処理」を使用したいと考え、この処理機能を持ったコニカミノルタの画像処理プロセッサーSenciafinder(センシアファインダー)の導入を決めました。

現場での導入効果の報告

経時差分処理は特に検診現場での利用が進んでおり、以下のような導入効果が明らかとなっています(参考文献:8、9)。

1)読影時間の短縮
読影の質を落とすことなく、同じ時間でより多くの検診を実施する施設も現れてきている。経時的変化の描出は、検診において「病気がない」ことを確認でき有効。

2)2次検診に回るケースの減少
経時的差分画像が、病変有無の曖昧性を減少させる方向性に働き、2次検診の実施数が減少した。

3)経時的差分画像での病気発見事例あり
経時的差分画像との併用で病気が発見された事例があり、経時的差分画像なしの読影は考えられないと言われている施設が報告されている。

4)病気の経過観察に有用
病気が既にあることがわかっている患者の経過観察のために経時的変化を見ることが、客観的な変化具合を示す指標として有用。
当院において、検診画像は「異常あり」か「異常なし」とはっきり線引きできる画像ばかりではないため、グレーゾーンで精査にまわすかどうかを悩むときは、経時差分画像を積極的に活用しています。経時差分画像で変化の有無を確認できることは心強い診断支援で、私にとってはなくてはならない読影のツールとなっています。

有効症例

当院における、経時差分画像の有効症例を3つ紹介します。

症例1:縦隔病変 サルコイドーシス
30代男性で、年1回の職場健康診断の胸部単純X線写真です。現在画像を見た場合、肺野部には特に異常は見られず、肺門部についても若干の腫大があるものの、正常と診断される可能性があります。しかし、経時差分画像を見ることにより、正常構造とは明白に異なる陰影が肺門部に認められました。胸部CT検査では、縦隔内及び両側肺門部リンパ節腫大を認め、呼吸器内科に紹介、経気管支肺生検により、サルコイドーシスと診断されました。

現在画像
過去画像
経時差分画像
胸部CT

肺門部は見落としやすく重要な読影ポイントですが、経時差分画像により一目で変化が確認出来ます。

症例2:肺野末梢病変 肺癌
60代男性で、職場健診で異常指摘された症例です。1年前の過去画像には腫瘤陰影はなく、現在画像では左中肺野に濃度上昇が見られます。この陰影は肩甲骨と重なっているために、見落としやすい陰影です。しかし、経時差分画像では、左中肺野末梢に存在する異常陰影が描出されています。胸部CT検査では、左S8末梢に径15mm大の結節影を認め、肺癌と診断されました。

現在画像
過去画像
経時差分画像
胸部CT

現在画像には、左中肺野に濃度の上昇がありますが、過去画像との比較では淡い変化のため、直ぐには気づきにくいです。このように読影が難しい肺野末梢などでも経時差分画像で変化が確認できます。

症例3:骨と重なった病変 肺癌
50代男性で、1年前の過去画像では異常を指摘できず、現在画像では、左肺尖部に結節が疑われますが、左鎖骨と重なっており、指摘は必ずしも簡単ではありません。しかし、経時差分画像では、左肺尖部に存在する異常陰影が明瞭に描出されています。胸部CT検査では、左肺尖部に径30mm大の内部に空洞を伴う辺縁鋸歯状の不整形腫瘤を認め、肺癌と診断されました。

現在画像
過去画像
経時差分画像
胸部CT

現在画像には、左肺尖部に濃度の上昇がありますが、過去画像との比較では淡い変化で、また骨となっているため直ぐには気づきにくいです。このように読影が難しい骨との重なり部分などでも経時差分画像で即座に変化を確認できます。

終わりに

2019年4月1日より「働き方改革関連法」が順次施行され、医師の働き方改革についても議論が行われています。経時差分処理は、読影業務にあたる医師の身体的・時間的な負担軽減だけでなく、病変の見落とし防止や、異常なしと診断するのにも役立つため、精神的な負担軽減にもなると考えます。大規模病院や画像専門医だけではなく、一般の日常診療でも経時差分処理が広く普及し、受診者の利益と読影業務にあたる医師の負担軽減になることが望まれます。

参考文献

1.
Ashizawa, K. , MacMahon, H. , lshida, T. , et al. :
Effect of an artificial neural network on radiologists’ performance in the differential diagnosis of interstitial [ung disease using chest radiographs. AJR, 172, 131 1 N 13f5, 1999.
2.
Kobayashi, T. , Xu, X. W. , MacMahon, H. , et al. :
Effect of a computer-aided diagnosis scheme on radiologists’ performance in detection of lung nodules on radiographs. Radioiogy, 199, 843-848, 1996.
3.
Johkoh, T. , et al. :
Temporal subtraction for detection of solitary pulmonary nodules on chest radiographs; Evaluation of a commercially available computer-aided diagnosis system. Radiotogy, 223, 806 – 81 1, 2002.
4.
松迫正樹,県門克典,沼口雄治 : 検診の胸部単純X線写真におけるコンピュータ支援診断の有用性についてCT所見との比較. 臨床放射線, 49, 79 – 88, 2004.
5.
Uozumi, T. , et al. :
ROC analysis of detection of metastatic pulmonary nodules on digital chest radiographs with temporal subtraction. Acad. Radiol. , 8, 871~878, 2001.
6.
Kakeda, S. , et al. :
Lmproved detection of lung nodules by using a temporal subtraction technique. Radiology, 224, 145 – 151, 2002.
7.
寺澤岳*, 青木隆敏* *産業医科大学放射線科学教室
日本胸部臨床 75(4): 358 – 365, 2016.
8.
坂井修二ほか:胸部単純X線撮影の経時的差分. 画像診断23(9): 1088 - 1097, 2003.
9.
Tsubamoto M et al :
Temporal Subtraction for the Detection of Hazy Pulmonary Opacities on Chest Radiography. AJR Am J Roentgenol 179 (2): 467 – 471, 2002.

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