コニカミノルタ

ヘルスケア

日常診療と検診の医療安全に有用な
Senciafinder(センシアファインダー)
一般財団法人 恵愛会 聖隷富士病院

はじめに

聖隷富士病院(図1、2)は、1946年に静岡県富士市に開院以来、地域医療に貢献している小規模病院(病床数151床)です。その診療は、救急、癌、慢性疾患、そして終末期医療と多岐にわたっています。聖隷富士病院は、2018年9月にSenciafinderを導入しましたので、その初期使用経験を紹介します。

お話を伺った先生

塩谷 清司 先生
聖隷富士病院 放射線科部長/Ai情報センター

杉村 正義 先生
聖隷富士病院 放射線課技師長

山本 正二 先生
Ai情報センター理事長

髙野 英行 先生
千葉県がんセンター 診療部長/Ai情報センター

図1. 聖隷富士病院外観
図2. 聖隷富士病院から望む富士山

Senciafinderとは

Senciafinderは、胸部単純X線写真に対して、骨減弱処理bone suppression(鎖骨/肋骨を減弱して、見えにくい病変を見やすくする)と経時差分処理temporal subtraction(時間差のある画像間で引き算し、見えにくい変化を見やすくする)の二つの機能を併せ持った画像処理プロセッサーです。骨減弱処理と経時差分処理は、肋骨や肺門に隠れているために指摘が難しい、いわゆる”かくれんぼ肺癌”や、経時的変化がないように見えるが実は緩徐に増大している肺癌を検出するのに有用と報告されています(参考文献:1~10)。

Senciafinderを当院に導入する際、”まだあまり普及していない医療機器を、コストをかけて、当院のような小さな病院になぜ導入する必要があるのか?”という理由を病院に説明する必要がありました。日常診療で撮影される胸部単純X線写真上の肺癌が見落とされることは少なくありません(参考文献:11~14)。そのため、「肺癌を見落として示談や訴訟となってから、数百万~数千万円という賠償金を払うよりも、そのお金をSenciafinderに投資して、そうならないようにするべきではないでしょうか?小さな病院だからこそ医療安全に役立ち、日常診療の安心にもつながるSenciafinderを導入することが必要です。」と病院に説明しました。

外来診療におけるSenciafinderの有用性

1日当たり数十人の外来患者さんを診察しなければならない各診療科医師が、それらの患者さんの胸部単純X線写真を外来で観察する時間は非常に限られています。そして、全ての医師が胸部単純X線写真の読影が得意なわけではありません。Senciafinder導入後、複数の先生方から、「画像は増えたが(注1)、病変の有無が把握しやすくなったので、判断に迷う時間は減った」、「Senciafinderがなければ気が付かなかった病変があった」といったコメントをいただいています(図3a~f)。Senciafinderは、外来診療における胸部単純X線写真の読影時間短縮と診断精度の向上に寄与しています。

注1:
胸部単純X線写真撮影後、Senciafinderによる骨減弱処理は即時に、経時差分処理は数分以内に専用サーバーを用いて自動で処理が開始され、生成された画像はPACSへ自動送信されます。なお、撮影から生成画像のPACS到着までの時間は、システム全体の状況によって異なるようです。診療医師は、モニター上で、通常の胸部単純X線写真とその骨減弱処理画像および経時差分処理画像の合計3種類の画像を観察します。
図3a. 今回受診より2年5ヶ月前の胸部単純X線写真。肺に腫瘤影があるとは言えない。
図3b. 今回受診時の胸部単純X線写真。図3aと比較すると、左肺門部に径2cm程度の結節が出現しているように見える(矢印)
図3c. 図3bの骨減弱処理画像。図3bの左肺門部結節(疑)は、肋骨が減弱されても描出されており(矢印)、肋骨の重なりによる陰影ではなさそうである。
図3d. 図3bの経時差分処理画像。(図3b-図3a)左肺門部結節(疑)は、白く強調表示されている(矢印)。
図3e. 胸部CT(高分解能CT、水平断、肺野条件)。左舌区に長径3cm大の充実性腫瘤(矢印)があり、気管支B4bが途絶(矢頭)しており、肺癌を強く疑う。4年前の胸部CT(未掲載)上、同部に腫瘤は認めなかった。
図3f. 胸部CT(冠状断、肺野条件)。図3eの腫瘤は、縦隔に軽度浸潤している(矢印)。

Ai情報センター(参考文献:15)

ご遺体のCT/MRIを撮影/撮像して、死因を診断する死亡時画像診断Autopsy imagingは、人工知能Artificial IntelligenceのAIと区別するために、Aiと略されています。一般財団法人Ai情報センターは、中立的な立場でAiに関する画像鑑定業務を行う第三者機関として2009年に設立されました。その後、ご遺族や関係各所からの強い要望があり、現在では生体画像の鑑定も行っています。

検診での肺癌見落とし例

Ai情報センターが取り扱う生体画像鑑定例には、検診(注2)胸部単純X線写真上の肺癌見落とし訴訟例が少なからず含まれています。それらの検診受診者の典型的な臨床経過は以下のようなものです。

進行肺癌と診断されたX年当時○歳の男性または女性

X-2年、X-1年:胸部単純X線写真上、「異常所見なし」の判定

X年:胸部単純X線写真上、「異常所見なし」の判定だったが、その後、肺癌に関連する症状が出現し、精査の結果、手術適応のない進行肺癌と判明

X+α年:治療中または既に死亡

検診受診者またはその遺族からの「もっと早い時期に肺癌が発見されていれば、手術を受けることができた」という訴えに対して、鑑定 依頼元(損害保険会社が多い)から以下のように質問されます。X-2年、X-1年、X年それぞれについて、「胸部単純X線写真上、異常影は認められますか?」「肺癌の可能性を指摘する義務はありますか?」「病期はどの程度ですか?」 Ai情報センターに所属する複数の放射線科専門医は、それぞれが画像を鑑定し、充分に議論をした後に、鑑定依頼事項にお答えしています。しかし、このような鑑定症例の胸部単純X線写真は、後ろ向きに観察してもX-2年では肺癌を同定できないか、または注意深く観察するとあるように見えるというような存在診断自体が難しいものです。そして、X-1年では肺癌は描出されているものの、検診の読影条件では容易に見落とされてしまうかもしれないと思えるものです。鑑定の読影条件は、読影前から肺癌があることがわかっている、画像を必ず経時的に比較する、鑑定画像のみを時間をかけて読影できるといった点で、検診のそれとは大きく異なっています。検診の読影を仮定して鑑定することは必ずしも容易ではありませんので、Ai情報センターの鑑定担当医間でも意見が分かれることがあります。同様なことは今までの検診肺癌見落とし訴訟の鑑定例でも起こっています(参考文献:16)。


注2:
検診は対策型検診と任意型検診に大別されます。対策型検診(住民健診や職域健診)は、集団全体の死亡率を下げるために予防対策として行われます。任意型検診(人間ドック)は、医療機関・検診機関が任意に医療サービスを提供し、個人が自分の死亡リスクを下げるために受検するものです。検診の肺癌見落とし例の裁判の傾向は、対策型検診の判決は棄却傾向が強く、任意型検診のそれは認容例が多くなっています(参考文献:16)。

検診におけるSenciafinderの有用性

外来診療におけるSenciafinderの有用性と同様に、検診におけるそれを確認するために、Ai情報センターで今までに鑑定した検診肺癌見落とし症例に対して、Senciafinderを試行しました。具体的には、胸部単純X線写真のDICOMデータをSenciafinderに通して(注3)、X-2年、X-1年、X年の骨減弱画像3枚と、(X-1年)-(X-2年)、X年-(X-1年)の経時差分画像2枚を生成させました。その結果、X年に見落とされていた肺癌は、X-1年またはX年の骨減弱画像上で明瞭に描出され、(X-1年)-(X-2年)またはX年-(X-1年)の経時差分画像上でも、白く強調表示されることが確認できました(訴訟に関連する鑑定画像なので、この紙面に掲載できませんが、図3と同様のことが起こりました)。これが意味することは重大です。実際に肺癌と診断された数ヶ月~1年以上前に病変が指摘されていれば、より早期の段階で肺癌と診断され、訴訟自体が起こらなかったかもしれないからです。検診で肺癌が見落とされて訴訟や示談となった場合、検診受診者とその家族、検診提供者である医療機関、そして読影医のそれぞれに肉体的、精神的、経済的、時間的に大きな負担がかかります。このような不幸な事態を回避できれば、それは大きな福音となります(注4)。


注3:
Senciafinderは、コニカミノルタ社製以外のDR/CR装置で撮影された胸部単純X線写真に対しても適応できます。
注4:
本稿は依頼されて執筆したわけではありません。訴訟事例の検診受診者の多くは、受診当時働き盛りの年齢でした。検診にSenciafinderが普及すれば、検診の見落としで受診者の命が失われる割合を少しでも減らすことができると考えたことが、執筆動機です。

Senciafinderはコンピュータ支援診断である

検診の読影業務を担当している読影医は、1件当たりの読影時間が平均5秒という非常に限られた時間内で多数の読影件数をこなし、少ない有所見率(4.5%)の中から病変を見落としなく検出する必要があります(参考文献:17)。そのため、”肺がん検診の読影はそんなに楽しくはない”(参考文献:18)と言われることがあります。このような読影医の業務負担の軽減と見落としを防止するための一つの方法として、コンピュータ支援診断があります。これは、コンピュータ情報処理による画像情報の解析結果を、読影医の画像診断補助として活用する手法を指し、病変の検出を支援するcomputer-aided detection (CADe)と、それに加えて診断までを支援するcomputer-aideddiagnosis (CADx)に大別されます。病変の検出を支援するSenciafinderはCADeに分類されます(参考文献:19)。第一著者が実際に検診に携わっていた頃、100名前後の胸部単純X線写真を20分程度で読影し、そのうちの数名程度を有所見者として拾い上げるという読影状況でした。当時、骨減弱処理と経時差分処理の有用性は研究レベルの論文によって既に報告されていましたが(参考文献:1~10)、現在のSenciafinderのように、それらの技術が集約商品化されて、市中検診で広く活用されることが可能な状況にまでは至っていませんでした。今後、Senciafinderが検診に標準装備されるようになれば、“肺がん検診の読影はそんなに楽しくはない”という状況が改善されるかもしれません。

Senciafinderは車のエアバッグの役割を果たす

車のシートベルトが重症~死亡者を低減させる効果は50%と見積もられています(参考文献:20)。そして、シートベルト着用の運転者について、エアバッグ(注5)装備の有無別に人身損傷程度の構成率を比較すると、「エアバッグ装備なし」の車の重症~ 死亡率は0.53%、「エアバッグ装備あり」の車のそれは0.31%となっており(参考文献:20)、シートベルトを着用した上で、エアバッグが装備されていれば、交通事故の重症~死亡率は減少します。検診の胸部単純X線写真の読影を車の運転に例えると、最低限の読影能力はシートベルトに相当し、Senciafinderはエアバッグに相当します。検診にSenciafinderが装備されていれば、肺癌見落としによる検診受診者の死亡率が減少することを期待できます。現在、ほぼ全車にエアバッグが装備されているのと同様、今後、全ての検診にSenciafinderが標準装備されることが理想的です。


注5:
正式名称はSupplemental Restraint System(補助拘束装置)エアバッグです。‘補助的’とあるように、エアバッグはシートベルト装着を前提とした上で、その効果を最大限に発揮します。交通事故死の死後CTを読影していると、シートベルト未装着のエアバッグ展開症例では、心臓破裂の所見を少なからず認めます(参考文献:21)。

検診への画像処理プロセッサー導入の勧め

訴訟症例に対してSenciafinderを試行し、その有用性を確認した経験から、少なくとも任意型検診である人間ドック(注6)は、Senciafinderのような、胸部単純X線写真上の骨減弱処理、経時差分処理の機能を持った画像処理プロセッサーを装備すべきと考えます。今後、Senciafinderのような画像処理プロセッサーを導入した検診施設が見落としの少ない質の高い検診を施行していると謳うことで検診施設間格差が広がるだろうと予想しています。さらに、それを未装備の検診施設で肺癌見落としが起こった場合、訴訟では不利な状況に陥るようになってくるかもしれません。これらの理由から、胸部単純X線写真上の骨減弱処理、経時差分処理の機能を持った画像処理プロセッサーを、できるだけ早く検診へ導入することが勧められます。


注6:
検診は対策型検診と任意型検診に大別されます。対策型検診(住民健診や職域健診)は、集団全体の死亡率を下げるために予防対策として行われます。任意型検診(人間ドック)は、医療機関・検診機関が任意に医療サービスを提供し、個人が自分の死亡リスクを下げるために受検するものです。検診の肺癌見落とし例の裁判の傾向は、対策型検診の判決は棄却傾向が強く、任意型検診のそれは認容例が多くなっています(参考文献:16)。

参考文献(インターネットの最終訪問は全て2018年11月23日)

1.
Oda S, et al. Performance of radiologists in detection of small pulmonary nodules on chest radiographs: effect of rib suppression with a massive-training artificial neural network. AJR 193:397-402, 2009.
2.
Li F, et al. Improved detection of subtle lung nodules by use of chest radiographs with bone suppression imaging: receiver operating characteristic analysis with and without localization. AJR 196:534-41, 2011.
3.
Freedman MT, et al. Lung nodules: improved detection with software that suppresses the rib and clavicle on chest radiographs. Radiology 260:265-73, 2011.
4.
Schalekamp S, et al. Bone suppressed images improve radilogists’detection performance for pulmonary nodules in chest radiographs. Eur JRadiol 82:2399-405, 2013.
5.
Kano A, et al. Digital image subtraction of temporally sequential chest images for detection of interval change. Med Phy 21:453-61, 1994.
6.
Difazio MC, et al. Digital chest radiography: effect of temporal subtraction images on detection accuracy. Radiology 202:447-52, 1997.
7.
Johkoh T, et al. Temporal subtraction for detection of solitary pulmonary nodules on chest radiographs: evaluation of a commercially available computer-aided diagnosis system. Radiology 223:806-11, 2002.
8.
Matsuda T, et al. Effect of temporal subtraction technique on the diagnosis of primary lung cancer with chest radiography. Radiat Med 21:112-9, 2003.
9.
Kakeda S, et al. Effect of temporal subtraction technique on interpretation time and diagnostic accuracy of chest radiography. AJR 187:1253-9, 2006.
10.
Sakai S, et al. Integration of temporal subtraction and nodule detection system for digital chest radiographs into Picture Archiving and Communication System (PACS): four-year experience. J Digit Imaging 21:91-8, 2008.
11.
Potchen EJ, et al. When is it malpractice to miss lung cancer on chest radiographs? Radiology 175:29-32, 1990.
12.
Turkington PM, et al. Misinterpretation of the chest x ray as a factor in the delayed diagnosis of lung cancer. Postgrad Med J 78:158-160, 2002.
13.
The Royal College of Radiologists. Missed lung cancers on chest radiographs.
https://www.rcr.ac.uk/audit/missed-lung-cancers-chest-radiographs
14.
Del Ciello A, et al. Missed lung cancer: when, where and why? Diagn Interv Radiol 23: 118-126, 2017.
15.
Ai情報センター
https://autopsyimaging.com/
16.
岡本祐司:検診における癌の見落とし
https://avance-media.com/iryou/2015111802/
17.
中村大介、他:深層学習を用いた胸部X線画像の診断支援システム. Rad Fan 15:29-31, 2017.
18.
肺癌検診の読影が楽しくない理由
https://www.m3.com/open/clinical/news/article/461301/
19.
小林 剛、他:「胸部単純X線CADアプリケーション」Bone Suppression処理の開発.
https://www.konicaminolta.jp/about/research/technology_report/2015/pdf/12_kobayashi.pdf
20.
交通事故総合分析センター:シートベルトを締めていますか? -エアバッグを装備し た車だから大丈夫だと思っていませんか?-
http://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info55.pdf
21.
Shiotani S, et al. Postmortem computed tomography findings as evidence of traffic accident-related fatal injury. Radiat Med 26: 253-60, 2008.

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