マテリアリティの評価・特定プロセス
マテリアリティ設定の背景
人口増加、少子高齢化、デジタル革命の進行、バイオテクノロジーの利用拡大、世界構造の多極化、気候変動の深刻化など、複雑化するマクロ環境の中、将来の予測は難しくなっています。このような不透明で不確実な時代であるからこそ、コニカミノルタのDNAを再確認しつつ、2030年にコニカミノルタが取り組むべき社会・環境課題を明確にし、そこから逆算して、企業として「今、何を成すべきか」を設定していく必要があります。
コニカミノルタは将来、組織や個人が爆発的に増加するデータを活用して多様な価値を創造し、持続的に発展する自律分散型の社会が到来すると考えています。個別化・多様化による豊かさの実現とともに、潜在的に予測される社会・環境課題を、進化した技術により解決していく必要があります。
そのためコニカミノルタは、持続可能な開発目標(SDGs)やマクロトレンド、多様なステークホルダーからの要請事項を考慮に入れ、2030年に想定される社会・環境課題を洞察し、「解決すべき社会・環境課題」と「コニカミノルタの事業成長」の両評価軸でマテリアリティ分析(重要度評価)を行い、取り組むべき5つのマテリアリティ(重要課題)を設定しています。
「人間中心の生きがい追求」と「持続可能な社会の実現」を高次に両立させるとともに、5つのマテリアリティを追求し、長期的な企業価値の向上を目指します。
なお、3年に1度の中期経営計画の策定時にマテリアリティの妥当性を定期的に検証しています。
評価・特定プロセス
STEP1 課題のリストアップ
GRIスタンダードやSDGsなどの国際的なフレームワークやガイドライン、各専門分野のマクロトレンドなどを参照しながら環境・社会・経済面での課題を広範囲にリストアップしました。
リストアップにあたっては、ストックホルム・レジリエンス・センター※の「SDGsウェディングケーキモデル」を参照しました。このモデルはSDGsの概念を表す構造モデルとして作成され、SDGsで設定されている17の目標の関係性をつかむことにつながります。17の目標が「ECONOMY」「SOCIETY」「BIOSPHERE」の3層に分類されており、「BIOSPHERE」が土台となって持続可能な「SOCIETY」「ECONOMY」を支え、「SOCIETY」の目標を達成することで持続可能な「ECONOMY」の基盤を作ることができます。この関係性を念頭に置きながら、課題を抽出しました。
また抽出にあたっては、コニカミノルタが関連する、あるいは関連する可能性がある事業領域、そのサプライチェーン/バリューチェーンを範囲として、社会・環境変化や規制・政策動向、ステークホルダーからの要請事項などを考慮して進めています。
※ ストックホルム・レジリエンス・センター:
https://www.stockholmresilience.org/research/research-news/2016-06-14-how-food-connects-all-the-sdgs.html
参照したフレームワーク、ガイドラインなど
- GRIスタンダード
- SASBスタンダード
- ISO26000
- 持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)
- 国連グローバル・コンパクト10原則
- OECD多国籍企業行動指針
- 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
- 気候変動をはじめとした各専門分野のマクロトレンド(パリ協定・欧州サーキュラーエコノミーなど)
- 国際統合報告評議会(IIRC)「国際統合報告フレームワーク」
- ストックホルム・レジリエンス・センター「SDGsウェディングケーキモデル」
ステークホルダーからの当社へのさまざまな評価や対話・要請
- IR説明会、事業説明会等での投資家などとの対話
- CDP等、国際NGO・NPOとの対話
- 各種ESG調査での要請事項
- グリーンマーケティング活動でのお客様との対話
- 環境デジタルプラットフォーム参加企業との対話
- TCFDコンソーシアム ラウンドテーブルでの投資家などとの対話
STEP2 課題の抽出と重要度評価
リストアップした課題の中から、特にコニカミノルタの事業に関連性の高い分野を抽出したうえで、重要度評価を行いました。
コニカミノルタのマテリアリティ分析は、リスクと機会の側面をそれぞれ評価している点に特徴があります。リスクと機会をそれぞれ評価することで、SDGsを進めるにあたり、企業に期待されている「社会・環境課題を機会と捉えビジネスを通じて解決することで事業成長を図る」ことを実践しています。
マテリアリティ分析は、「ステークホルダーにとっての重要度」と「事業にとっての重要度」の2軸で評価し、優先順位づけを行っています。
「ステークホルダーにとっての重要度」では、お客様、お取引先、株主・投資家、従業員などを定義し、それぞれ5段階の評価基準により定量化を行っています。また「事業にとっての重要度」におけるリスクでは発生した場合に失われる利益の大きさ、機会では創出される利益の大きさ、すなわち、財務的影響に応じて5段階の評価基準を設定しています。
【機会側面】
働きがい向上および企業活性化 | デジタル技術を使った「働き方」のソリューション提供による、お客様企業の生産性向上と創造的な時間の創出 |
現場で働く人のワークフローを変革する製品・サービスの提供による、お客様企業のサプライチェーンでの生産性と働きがいの向上 | |
新しい価値を生み出す源泉である「人財」の潜在力を引き出し、「個が輝く」組織へ | |
中小企業のデジタルデバイド(IT格差)解消による、人手不足の解消とサイバーセキュリティーの強化 | |
健康で質の高い生活の実現 | 画像IoTを使ったシステムと現場オペレーションのコンサルティングサービスによる介護業務のワークフロー変革と介護業界の労働力創出 |
高付加価値の医療サービスを提供することで、疾病予防、疾患を早期発見し、医療費を削減 | |
遺伝子検査技術などを活用した創薬プロセスの革新による、医薬品開発の効率化 | |
途上国における医療サービスのアクセシビリティ向上 | |
社会における安全・安心確保 | ガス等を可視化する製品・サービスの提供による、お客様企業の現場および社会の安全・安心向上 |
高度な計測・検査を可能にする製品・サービスの提供による、お客様企業の品質確保 | |
気候変動への対応 | 製造プロセスへのソリューション提供による、お客様・社会のエネルギー/CO2負荷低減 |
働き方改革ソリューションの提供による、ペーパーレス、ユビキタス社会の実現 | |
DXを活用したお取引先の環境負荷低減支援による飛躍的なCO2削減とコスト削減の実現 | |
有限な資源の有効利用 | オンデマンド生産による無駄のないお客様企業のサプライチェーン構築 |
お客様企業のワークフロー、サプライチェーンのロス削減 |
横断的課題 | SDGsイノベーション創出が埋め込まれた企業文化の形成 |
投資家とのESGリレーションの向上 | |
ESGを活用した顧客関係強化 |
【リスク側面】
働きがい向上および企業活性化 | 急速な制度・環境の変化にともなう社内のスキルと業務とのミスマッチの発生 |
ダイバーシティを重視した環境づくりの停滞による、従業員の多様性と自律性、イノベーション力の低下 | |
社会における安全・安心確保 | 製品・サービスにおいて、使用者の生命、身体に重大な被害を及ぼす事故が起きた場合の社会的信用の失墜 |
製品・サービスにおいて、情報漏洩・プライバシー侵害につながる重大なセキュリティ事故が発生した場合の社会的信用の失墜 | |
生態系汚染やヒトへの健康被害につながる物質の使用による操業・製品出荷への影響 | |
気候変動への対応 | エネルギー価格の高騰/原料不足による部材コストアップ/供給の不安定化 |
エネルギー価格の高騰/原料不足によるペーパーレスの進行 | |
異常気象によるサプライチェーンの寸断 | |
有限な資源の有効利用 | サーキュラーエコノミーへの対応遅れによる競争力低下 |
水資源の枯渇・水リスクによる生産の遅延・停滞 |
横断的課題 | ビジネスパートナーのガバナンス不足による社会的信用の低下 |
STEP3 妥当性確認、特定
サステナビリティに関する中期計画を推進する機関である推進会議では、これらのマテリアリティの評価プロセスおよび分析結果の妥当性を検証し、優先的に取り組むべきマテリアリティを確認します。特定したマテリアリティは、経営層による審議のうえ、取締役会による承認を受けています。
本マテリアリティ特定プロセスについて、中期経営計画の策定プロセスのなかで必要に応じて見直しが行われます。この見直しにより、課題設定と計画の妥当性を担保しています。