河井蓬写真展「Downtown Cats」

展示概要

作者コメント

ある日の早朝に市街地の小さな神社で猫の写真を撮っていると、猫が好きなら居場所を教えてあげるよ、と見知らぬ人が繁華街のあちこちを案内してくれた。
人気のない早朝のビルの隙間や裏通り、駐車場の隅を遠くからそっと覗いてみると、今まで気づかなかった野良猫たちがあちらこちらに暮らしている。
時に人に可愛がられ時に人から忌まれながらも、ただ猫らしく街に生き、世代を重ねていく野良猫たち。
野生のまま都市に適応した姿に惹かれ、彼らが街へ姿を現す深夜から早朝にかけての繁華街に幾度となく通い、今もずっと野良猫を撮り続けている。

作者プロフィール

河井 蓬(かわい よもぎ)

2007年頃までの数年、エンジニアとしてデジタルカメラ用の画像処理エンジン及びセンサの開発に携わる。

2008年
カメラ関連業務から離れたのを機に、撮る側に立場を変え猫を撮り始める。
2011年
個展「彼の尻尾、彼女の爪痕」Cloud9(大阪)
2012年
個展「The days of cats and coffee.」アルテスパーツィオ(大阪)
2013年
個展「寺の猫たち」コニカミノルタプラザ(東京)、Cloud9(大阪)
2015年
二人展「境内に棲む」オリンパスプラザ(東京・大阪)

展示作品

カラー A3 約40点(予定)

作者の制作現場

作者の撮影ノートより

撮影の前に

無用なトラブルを避けるため普段はカバンをカメラに仕舞い撮影時だけ取り出すので、直ぐに出し入れできるメッセンジャーバッグを使う。
ごくたまに一脚を使うが、殆どは手持ち撮影になる。レンズは3本ほど、単焦点の広角・標準と中望遠か中望遠ズーム。それとは別に素早く取り出せるようにコンパクトを1台。予備のメモリカードとバッテリ、それから小さな懐中電灯も持つが、街は意外に明るく殆ど必要にはならない。
それくらいでカバンは一杯となるし、数時間歩ける程度の重量としても、この程度が限界となる。
決して治安の良くない街で撮ることが殆どだが、撮り歩くときは気持ちが入っているのか殆ど怖さを感じない。ただ街の雰囲気を感じるように気をつけて、不穏なものを感じたときは撮るのを止めるようにしている。

最も印象に残ったこと

夜の繁華街で「マッサージ、ジューゴフン、サンゼンエーン」と片言で客引きの女が声を掛ける。女たちを無視して、私はただ野良猫を追っていた。
そんな客引きの女たちが多くいる路地で撮影をしている私が邪魔だったのだろう、おそらくそこを仕切っていた男に怒声を浴びせられ軽自動車で追いかけられたことがある。必死に細い路地をいくつかすり抜け、男を撒いた。
その一週間後には路地に舞い戻り、周囲には気をつけながらも撮影を再開していた。
数か月経つころには女たちも私を覚え、私にはマッサージの声掛けは無駄と相手にしなくなった。
そして車で追いかけられてから二年半ほど経ったある夜、いつもの路地で撮影している私に一人の女が片言で一言「マイニチ、ネコチャン」と。
それだけのことだけれど、いつの間にか自分もこの街に馴染んだのだと思う。

作品エピソード

DMにも使っている、ビル壁面の無骨な足場からこちらを見下ろす猫は、繁華街での撮影を始めて程無く撮影したものになる。
この猫は一定の間隔を保ったまま、猫に導かれるように、表通りから路地へ、そしてビルの壁面へと移動して、それを追った私は最後には今まで気づきもしなかった1mほどの幅の狭い通路へ入り、そこから猫を見上げることになった。
こちらを見下ろした猫が、まるで「野良猫の住む街へようこそ」と、異世界の一端へ案内してくれたような気がしている。

同時開催

運営終了のお知らせ

当館は2017年1月23日を以って運営を終了しました。長い間ご愛顧いただき、本当にありがとうございました。

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