栗原恭子 写真展「ベランダから降りてみようかしら」

展示概要

作者コメント

朝、ベランダに出て挨拶する景色がある。田んぼ、木に囲まれた家、畑、墓・・・。
かつて江戸の人たちの食をささえた見沼田んぼの、これはきっと、ずっと昔から続いてきた農家の単位ではないかと思う。いちばんワクワクするのは、田んぼに水が入るとき。かわいい苗がふるえている。蛙の声にはげまされ、風が吹くとなめらかに波立つ。
夏になると、たしかな稲穂。頭をたれるとき黄金になる。真っ赤な空はどこまでも遠い。太陽がずずずっと崩れると、不思議なことに、富士山は走ってきたように浮き上がる。
ベランダには朝顔くらいしか植えられないが、このベランダからは四季の営みが見える。なんと嬉しいことか・・。
そして私は飽きもせず、このあたりを歩き回っている。目の前の田んぼがいつまでもこのままであってほしいと願っている。

作者プロフィール

栗原恭子(くりはら・きょうこ)

1938年生まれ 埼玉県在住
57歳まで臨床検査技師の仕事をする
2009年より現代写真研究所でドキュメンタリー写真を学ぶ
現在、現代写真研究所日曜撮影専科に在籍中

展示作品

カラープリント A3ノビ 約40点

作者の制作現場

作者の撮影ノートより

撮影の前に

私はガンバルのが嫌いな人です。撮影もガンバルといつもうまくいきません。
計画を立て撮影アングルを計算したり、撮影場所を確認することなど、まずありません。だから撮影は気分と直感です。その景色やその人と気持ちがかよった時、これがチャンスです。この呼吸が合うまで待っています。私にとって、これはかなり大変なことなのです。

作品エピソード

小白サギの“ボク”を狙っていた時、私は岸の桜の木に身を隠していた。川の中にくちばしを入れて、虫を取って振り回したり、首を後ろに回したり、伸びをしたり・・・やっと良い格好のボクを写すことができた。行きつけの喫茶店のママに見てもらったら「あら、白サギがいると聞いていたけど、本当にいるのね」・・・地元の人も見たことがないなんて。そんな写真を撮ることができた喜びと驚きが湧き上がりました。

最も印象に残ったこと

撮影している時に偶然お知り合いになったおじいさん。しゃれた帽子をかぶって、裾にレースをあしらったシャツを着ているおじいさんは、96歳と言った。「小さい時のこの川は折れ曲がっていてね。水が出て困った。それでまっすぐにした。その時ここは岩槻だったので、川のこっち側になったけれど、そのままなのだよ」そして、その田んぼの稲がどのくらい育っているか、熱心に見てつぶやいた。「この時期ならうまくいっている。こんなもんだな」

同時開催

運営終了のお知らせ

当館は2017年1月23日を以って運営を終了しました。長い間ご愛顧いただき、本当にありがとうございました。

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