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菊池和子 写真展


作者の撮影ノートより

新たな試み

2002年の12月から2008年の10月まで、ポルトガルのリスボンでのんびりと暮らしました。日本にいたときはテーマに沿って撮影していたので、撮影の対象を見つけるまではのんびりと散歩をしながらポルトガルの「今」を見てみようと思いました。 「ポルトガルのアフリカ人」「ポルトガルにいる移民たち」をテーマにしようかと勢い込んではみたものの、あまりにも大きな言葉の壁に「撮りたいこと」と「撮れること」のギャップに気がつくのに時間はかかりませんでした。 そうこうしているうちに「ぶらぶら歩き」をしながら引き寄せられるようにシャッターを押すことの快感にどっぷりとつかりました。 私にとっての「新たな試み」は、まさに「ぶらぶら歩き」そのものだったのです。

最も印象に残ったこと

ポルトガルはEU加盟国の中でも最貧国に位置する国ですが、なぜか人々の表情が穏やかです。古色蒼然とした街並みのなかで、人々がよく挨拶を交わし会話に興じています。中でも中高年の男性たちが広場や公園でカルタをしながらワイワイと政治やフットボールを話題にしているのは驚きでした。この国には人のつながりが現在進行形で色濃くあるのです。まるで日本の昭和30年代のような、そして、ブレッソンやドアノーが撮ったかつてのパリのような、そんな感覚に陥ってしまうほどでした。 ポルトガルの人々と街が「時との語らい」を楽しんでいるように感じるとともに、東京にしか暮らしたことのない私は、その「競争論理からはるか遠くにある暮らし」に強い憧れと安堵感を覚えました。

作品エピソード

日本に引き上げてきて2年がたち、「ポルトガルでの時との語らい」と「年齢」の相乗効果で周りを見まわしている自分に気づきます。 私が暮らす品川区には大きな幹線道路が何本も走り、鉄道路線もJR・私鉄・モノレールなど縦横に通っています。「東京湾から山の手の台地までの表情の違い」や、「高層ビルの無機質な香りと路地裏の昭和の香り」に驚きながら、「品川ぶらぶら歩き」を楽しんでいます。「PORTUGAL」に続く作品としてそのうち形ができてくることでしょう。 そして、私にとって人生最大の出会いといってもよい「筋ジストロフィーの慎大郎君」の3冊目の写真集を作ろうと取り組みを始めたところです。先天性の筋ジストロフィーで生まれた彼は一度も歩くことなく車椅子とともに暮らしてきました。15歳までの命と宣告されていた彼が、23歳となりました。病状はかなり進行し、今では呼吸器をつけねば生きていくことができません。車椅子もストレッチャー式のものになりました。そんな彼の今を「難病そのもの」に向き合って撮ってみたいと思っています。

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