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國森康弘写真展


作者の撮影ノートより

新たな試み

日本海に浮かぶ島根県の離島で、本人が望む自然死を24時間年中無休の体制で支える看取りの家「なごみの里」を撮影させてもらった。そこでは入居高齢者1人に対し介護職3人という、採算を考えればあり得ない手厚い体制で介護していた。
おばあちゃんたちの枯れ枝のような、余分な肉をそぎ落とした体がまぶたに焼きついている。悲壮感や哀れさなどは微塵もない。その自然な美しさにただ圧倒されたのだった。圧倒された自分はどうやってシャッターを押せばいいのか分からなかった。
まずは、おじいちゃん、おばあちゃんと同じように、紙おむつを履いてみた。そして、「寝たきり」のまま小も大もやってみた。とても難しかった。肉体的にも、精神的にもきつかった。物心がついてから“初めて”のおむつだった。…無理やり出してみた。
おばあちゃんたちにはかなわない―。そう思えたとき、ようやくシャッターを押せた。

最も印象に残ったこと

あるおばあちゃんが生前に握ってくれた手のぬくもりを覚えていた。葬式の日、棺の中で眠る額に手を当てた。予想をはるかに超えて、ただただ冷たかった。もうその肉体におばあちゃんはいなかった。
その葬式の中で、おばあちゃんに触れる人と、触れない人がいた。触れた人は息を引き取るときに、ずっとそばで手を握り、体をさすり、感謝と別れを交わした家族だった。触れない人は、そんな看取りをできなかった家族だった。
おばあちゃんをしっかり看取った娘と孫娘は、笑顔だった。おばあちゃんも笑顔を浮かべていた。

今後の作品制作について

人生の最期をどう迎えるか―。それを自身で考え、選び取り、まっとうして逝ったおばあちゃんたちは凛としていた。看取った家族たちも満足そうな表情を見せた。自分は、あたりを包んでいた空気感をどこまで写真に写しこめただろうか…。
まだまだ力不足でご本人方には申し訳ないとは思いつつ、今後も温かな看取り、笑顔の旅立ちを何年かけても撮り重ね、いずれ世界でも類をみない“あったか死”の写真集にしたい。

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