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竹谷 出写真展


作者の撮影ノートより

撮影の前に

私は瀬戸内海に面した港町で生まれました。広島県の川尻というところです。山の斜面に家々がひしめきあい、人一人がやっと通れるほどの路地が迷路のように続いていました。
早朝の潮の香り、どこからともなく漂う線香の匂い、排水溝からかびくさい匂い、夕暮れ時には煮炊きする匂い、いまでは、そういう「匂いの記憶」だけが鮮明に残っています。
また、その匂いが嗅ぎたくて瀬戸内の島々を歩きました。

最も印象に残ったこと

香川県の佐柳島に、両墓制という「埋め墓」と「参り墓」とに分けて墓を設ける風習があります。私がその島に行った年には、全国で死者行方不明者98人をだした台風がありました。その台風で「埋め墓」として積み上げられていた石が波でさらわれ、ただの石の山になっていました。老婆がそこに独り座っており、そばには墓石がひとつ。夫の墓をなおしているという。ひとつひとつ、石を積み上げている。ゆっくり、しっかりと、ていねいに。
その所作にしばらく見入ってしまいました。かたわらには木偶に棒が挿してあります。死者がそれを杖にしてあの世に向かうのだ、とのことでした。

作品エピソード

ある島の港で船を待っていると、島の駐在さんがこちらにやって来る。「きのう女の子の写真撮ったのは、あんただろう?」昨夜は島の女子小学生全員に猥褻なことをされなかったか、と電話をかけ、夜中の3時まで私を探していたと言う。ちなみに私は島内のキャンプ場にいたのだが。駐在所に連れて行かれ、女の子本人と両親もやって来て事情を聞かれる。
どうも撮影しているところ見ていた島の人が通報したらしい。小さな島で大人の男が女子小学生の写真を撮っていたということ、で話に尾ひれがつき大事件になった、という事らしい。後日撮った写真を送ることで両親に納得してもらう。「このご時勢みんなこういう話題には敏感になっている」と、駐在さんの一言。
その写真は、路地でアイスクリームを食べる女の子とうずくまる猫でした。

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